2012年1月7日土曜日

韓流時代劇「風の絵師」第6話同題各画を見ました


6話 同題各画



 図画署の中にはでは、画員試験の合格発表がありました。合格したのは生徒長のチャン・ヒョウォンとユンボクの二人でしたが、図画署の別提や元老画員たちは、ユンボクの合格に不満を抱いていました。

 別提は、合格発表をした役人に「なぜあの者だけ12人なのですか…」と言います。

 すると別の者が「12番目とは誰ですか…」と聞きます。さらに、生徒長のヒョウォンは「誰ですか…名前も書かないものが審査できますか…」と言います。

 役人は、しばらく考えて「その方は…」と言うと、礼曹判事が後ろから出て来て「その方は…主上殿下だ…」と言います。

 別提が驚いて「主上…殿下…」と言うと、ユンボクの父、シン・ハンビョンは「聖恩に感激の極みでございます…」と大声で言うと、一礼をします。ユンボクの目には涙が溜まっていました。



 別提は「どういうことですか…」と礼曹判事に聞きます。礼曹判事は「必ず見ると仰るのをどうする…」と言います。そして、その様子を別提に伝えます。

 王様は「露骨だな…11人の元老画員すべてが…“不通”を与えたはずだ…」と言います。礼曹判事は「そのとおりです、この絵は露骨な春画です。それでは絵を下げます。」と答えます。すると王様は「待て…」と言います。礼曹判事が「えっ…」と言うと、王様は黙ったままで、手で絵を上げろと合図します。

 礼曹判事がユンボクの絵を再び上げると王様は「この絵の価値が分からないのか…」と言います。礼曹判事は神妙な顔つきで「主上殿下も俗画と言われませんでしたか…」と言います。王様は「まさにそれだ…この風景は、見慣れたようで実は違う…端午節の女人の沐浴場は男には禁断の地域だ…見られない…見たとしても女人が警戒するはずではないか…しかし、これは想像した物ではない…見たものだ…」そう言うと王様は立ちあがり、絵を批評します。「技量もすごいが…どんな手を使ったのか、女人に警戒されなかった…自然のままだ…」と言います。そして王様は、ユンボクの絵を手に取り「見える物の本質を見抜いた者の絵だ…幾重もの皮に隠されていた…ありのままの人間…驚くべきことだ…」と言います。

 礼曹判事は、ここまで話すと「そう言うことだ…」と言います。別提は、悔しさ交じりに「ハァー…」と、顔をゆがめながら、大きなため息をつきます。





図画署の中庭では、辞令の交付式が行われていました。生徒長とユンボクは、画員の制服を着て、両手を付いて座っていました。

礼曹判事は辞令を読みあげます。「丁酉年55日画員試験の結果、図画署生徒チャン・ヒョウォン、シン・ユンボクが画員に合格した。チャン・ヒョウォンは熟練した技量で…」と続いています。その様子を見ていたホンドは、前にいた別提に「これで私も漢陽にとどまりますので…別提様とよい思い出を作らねば…」と皮肉交じりに言います。すると別提は「忘れられぬ思い出を作ろうではないか…」と言います。



辞令の交付式はまだ続いていました。

役人が「シン・ユンボクとチャン・ヒョウォンは前へ…」と言います。二人は立ちあがり、礼曹判事の前に進み出ます。

礼曹判事は「画員シン・ユンボク…別一等第二人合格者(別一等=特別画員、第二合格者=成績順位2位)…正祖1510日。」と読み上げると、辞令をユンボクに渡します。そして「画員シン・ユンボクは…王室の画員として任務を全うすることを命ずる…」と言うと、副賞の小型羅針盤を渡します。ユンボクは「命を奉じます…」と答えます。ユンボクは、副賞の羅針盤を見てにっこりと笑い、後ろを振り向きホンドを見ます。ホンドもにっこりと笑います。

「画員、チャン・ヒョウォン。一党合格者、正祖1510日…」と続けられました。





ユンボクの家では、盛大な画員合格祝いが催されていました。図画署の画員や生徒だけでなく、朝廷の役人も大勢招待されていました。

生徒達も宴席に呼ばれていました。生徒の一人が「大したもんだ、詩題では落ちると思った…」と言うと、ヨンボクが嬉しそうな顔で「私の弟だぞ…」と言います。年配の生徒は「オレは11回目の不合格だ…」と言います。するとユンボクが「次は受かりますよ…」と言います。その様子を不満そうな顔で、影から見ていた女人がいました。



ユンボクはヨンボクの手を取って、人のいない裏庭に連れて行きます。

ヨンボクが「何だよ…」と言うと、ユンボクは「早く来てくれ…」と言います。ユンボクは「ここに座って…」と言って、ヨンボクを離れの縁側に座らせると「兄上に上げたいんだ…」と言います。するとヨンボクは「何を?…」と聞きます。ユンボクは「今出すから…」と言うと、画員合格の副賞にもらった、携帯用の日時計付きの羅針盤を出して「さあ…」と言ってヨンボクに渡します。

ヨンボクは「これは何だ?…」と言います。ユンボクは「私は、兄上のおかげで画員になれた…持っていて…」と言います。ヨンボクは「ユンボク…」と言います。ユンボクは「兄上…すまない…そして…ありがとう…」と言います。ヨンボクは嬉しそうに笑って下を向きます。ユンボクは「私は実の弟ではないのに…それなのに、私の為に兄上だけ…」と言うと、ヨンボクがさえぎり、真剣な眼差しで「言うな…実の弟だと思っている…」と言います。ユンボクは「それは分かっている…だからなおさら感謝しているんだ…」と言います。ヨンボクは笑顔で「ユンボク…お前が私の弟で本当に嬉しいんだ…」と言います。ユンボクは「兄上…」と言います。ヨンボクは「また言ったら怒るぞ…」と言うとユンボクはうなずきます。そして、ヨンボクのことを見つめていました。



ユンボクは子供の頃のことを思い出していました。

父のシン・ハンビョンは、ユンボクの服を着替えさせながら「さあ…これからこの子は、お前の弟だ…」と言います。ヨンボクは「弟ですか?…」と不思議な顔をします。ハンビョンは「そうだ…」と言うとユンボクに「どうした兄上と読んでみろ…」といます。ユンボクは、キョトンとした顔で「兄上…」と言います。



父ハンビョンは、続々とやって来る客を門の前で案内していた。そして家の者に「ご案内しろ…」と言います。そこへ、朝廷の役人がやって来ると「吏曹判事様…」と言って頭を下げます。吏曹判事は「めでたいな…」と言います。ハンビョンは「ありがとうございます…」と言います。すると吏曹判事は「御真画師での活躍が充分に期待できるな(御真画師=王様の肖像画を描く)…」と言います。ハンビョンは嬉しそうな顔で「ありがとうございます…何よりも吏曹判事様が頼りです…お入りください…」と言います。吏曹判事は家の中へ入って行きます。



 そこへ、先ほどの女人がやって来てハンビョンの後ろから「およろこびでも私の気持ちを考えて下さい…」と言います。ハンビョンは、半分困ったように笑いながら「お前…」と言います。女人は「実の子は丹青所なのに笑っていられますか…」とハンビョンを問い詰めます。ハンビョンは「中で話をしよう…」と言います。女人はハンビョンの正妻でした。



 家の中では、正妻とハンビョンが話をしていました。

 正妻は「ヨンボクはどうするんですか…そのつもりで拾った子ですか…」と言います。ハンビョンは「おい…言葉に気お付けろ…」と怒ったように言います。そして「最高の画門である高霊シン氏を継ぐのは…ヨンボクではなくユンボクだ…」と言います。すると正妻は「私はイヤです…」と言います。ハンビョンは「10年来の夢がやっと第一歩を踏み出した…始まったばかりだ…いずれ理解できることだろう…」と言います。そして、ユンボクと初めて出会った時のことを思い出します。



 ハンビョンは、ソ・ジンの家に出向いていました。そして「ソ・ジンいたか…」と言います。ソ・ジンは「いらっしゃいませ…」と言います。となりにいたソ・ジンの娘ユンは「こんにちは…」と言ってお辞儀をします。ハンビョンは、まだ幼いユンがちゃんと挨拶をしたのに驚き「おおー…絵を描いていたのか…」と、笑顔で言葉を返します。そしてふとユンの絵に目をとめると視線が固まります。ユンは、庭にいたひよこの絵を描いていたのですが、その絵の素晴らしいことに衝撃を受けます。… 



 ハンビョンは正妻に「見ていてくれ…あの子の生来の才能で…御真画師の機会をつかみそれにより…多くの後援者をつかむことになる…」と言います。





 ユンボクは門の前で、客が来るのを待っています。そこへホンドが来て「自分の祝いの日に何て顔だ…」と言います。ユンボクは「なぜこんなに遅かったのですか…」と、口をとがらせて、甘えたように言います。ホンドは「待っていたのか…」と言います。ユンボクは嬉しそうに「早くどうぞ…」と言って、ホンドを中へ案内します。

 2人は、中庭の縁側で話をしています。ホンドが座っている前で、ユンボクはくるりと回って、画員の制服姿を見せて「少しは画員らしいですか?」と聞きます。ホンドは「何かぎこちないな…」と言います。するとユンボクは「えー、そんなことはないでしょう…」と、甘えたような言い方をして、ホンドの横に座ります。

 ホンドは「お前を画員にするのに、こんな苦労をするとは…三年分年を取った…」と言うと、ユンボクは手を開いて「5年」と言います。ホンドは「何…」と言います。ユンボクは「師匠の顔ですよ…目元のしわがすごいです…」と言います。ホンドは気にして「本当か?…」と言います。ユンボクは「はい…」と答えます。ホンドが「白髪もあるか…」と聞くと、ユンボクは「私の為に随分苦労されたようですね…」と言います。ホンドは「これは何だ…」と言うと「お前も画員試験で苦労したな…」と言います。すると、ユンボクは笑いながら「私にもですか?」と言います。ホンドがユンボクの頭を触っていると、ユンボクは笑いながら「やめてください…」と言います。まるで恋人同士がじゃれ合っている様にも見えます。

 するとホンドが急にまじめな顔をして、ユンボクの耳元で「明日の戌時までに、広通橋まで来い…内密にな…」と言います。

 その時「檀園…」とホンドを呼ぶ声がします。ホンドは慌てて立ちあがります。それにつられてユンボクも…



ホンドは声の主を見ると「来ていたか…」と言います。声の主はインムンでした。インムンはホンドに「見つけたぞ…」と言います。ホンドは「何処にいる…今すぐ会えるか?」と聞きます。インムンは「案内するそうだ…」と言います。

ユンボクは「誰を見つけたんですか?…」と聞きますが、ホンドは相手にもせず、インムンに「行こう」と言うと、二人はユンボクの家を出て行きます。この時ホンドは、自分が探しているユンが、自分の側にいるユンボクであることにまったく気づいていませんでした。ユンボクもまた同じことでした。

家の影からこの様子を見ていたハンビョンは、心配そうな顔をして「そうだ…檀園ならあの子が分かるかもしれない…ハァー…あんなに付きまとうとは…」と独り言を言います。



ホンドは、街中の飯屋で、ユンと同じ年頃の娘にご飯を食べさせていました。

ホンドは娘に「何処で母親と別れた?」と聞きます。娘は、ご飯をガツガツと食べながら「よく覚えていませんね…」と言います。ホンドは「顔を覚えているか?」と聞きます。すると娘は食べながらうなずきます。ホンドは「ホクロはあったか…」と聞きます。娘は食べるのをやめて「ホクロ?」と聞きます。娘は分からないのかしばらく考えて、指で鼻の横を指して「ここ?…」と聞きます。するとホンドが頬の横を指さして「ここに…」と言います。すると娘は「そう…ここよ…ブドウの種みたいに…」と答えます。ホンドは「ああー、そうか…ブドウの種か…ブドウの実ほどでなくて残念だな…」と言うと、ホンドは帰って行きます。

「檀園先生…」と、声をかけながら、娘を連れて来た男がホンドを追いかけて来ます。男は「10年前のことで…はっきり覚えていないんですよ…苦労して連れてきたのに、もう帰るんですか…」と言います。するとホンドが「言うことがデタラメ過ぎる…」と言います。





別提は、チョン・ヨンス右議政(王大妃の叔父)とキム・グィジュ(王大妃の兄)に呼び付けられていました。

右議政は別提に「いつも始末がおろそかだ…図画署の件は任せろと言って…いつもこのザマだ…」と、叱責されていました。別提は「恐れ入ります…」と謝ります。檀園が漢陽に留まるのは、既定の事実だ…あの者が何をどうするかよく見張ってくれ…分かったか…」と言います。別提は、力なく「はい」と答えます。

するとキム・グィジュが「放っておいて、災いを招かぬように…しっかりやれ…」と言います。別提は「はい」と答えます。





トクポンは市中の露店で絵を描く商いをしていました。

絵を見ていた子供達が「上手ね…すごい…」と、口ぐちに言います。そこへ、扇子で顔を隠した両班らしき男が「トクポン…」と、声をかけて遣って来ます。別提でした。別提は、振り向いたトクポンに「久しぶりだな…」と言います。トクポンは「誰…」と聞きます。別提が、顔を隠していた扇を外すと、トクポンは「イダン先生…」と言います。

別提は「画員になれなくとも…図画署にいた者が、皮筆画で暮らすとはな…」と言います。トクポンは、別提を恐れて立ちあがり、絵の道具はそのままにして、走って逃げて行きます。トクポンは、路地を曲がって隠れると、先回りをしていた別提の手下に捕らえられます。

そこへ別提がやって来ると、トクポンは「私は何も知りません…」と言います。別提は「ホンドに会ったな?…」と言います。トクポンは「すみませんでした…」と言います。別提は「何を誤る…会う事もあるだろう…何を話したか?…」と聞きます。トクポンは「何の話も…」と答えます。別提は「お前は…10年前の件で騒いでいるのか…」と言います。トクポンは「そんなことは絶対にありません…」と言います。別提は笑いながら「そうか…誰がお前の師を殺したか知らないが…人を密かに殺せる者たちだろう…だから…気を付けるんだな…」と言うと、手下の画員に目で合図します。手下の画員はトクポンの後ろ手にした手を締めあげます。トクポンは、恐怖と痛みに堪え切れずに「子供が生きていると…」言います。別提は「子供だと?…誰の子だ?」と言います。トクポンは「10年前に死んだ…ソ・ジン様の娘のことです…」と泣きながら言います。別提は「何?…娘が生きている?…」と言います。





別提は、大商人キム・ジョニョンの家にいました。

別提は「これは本当に…」と言います。するとジョニョンは「何事ですか…」と聞きます。別提はため息交じりに「お前が心配でじっとしていられなかった…」と言います。ジョニョンは「心配とは?…」と聞きます。別提は「子供が生きている…忘れたのか…10年前に死んだ画工の娘だ…」と言います。

ジョニョンは「10年前…」と言って考えます。そして「何処の噂ですか…」と聞きます。別提は「噂?…」とすぐに聞き返します。そして「檀園の口から出ても噂と思うか…檀園が探しだそうと走り回っている…まったく…その子供を檀園が見つけたら…死んだと思っていた子供が…生きているとは…始末をどのようにした…これをウサン大監が知れば…」と言うと、ジョニョンは別提の言葉をさえぎるようにして「望みは…何ですか…」と聞きます。別提は笑いながら「物分かりがいいな…簡単に言う…お前の画室が完成したら…有名な絵の愛好家と関係が出来るはず…彼らと私の橋渡しをして欲しい…」と言います。ジョニョンは「最高の画員なら当然のことです…」と言います。別提は「そして息子のヒョウォンのことだが…次の御真画師のとき力を貸してくれ…ヒョウォンが主席画員になれば…それ以上の望みはない…」と言います。ジョニョンは「努力します…」と答えます。別提は、笑いながら「そうか…そうしてくれ…ウサン大監に知らせない…ソ・ジンの娘のことは宜しく頼む…」と言います。ジョニョンは「この事実を…知る者が他にいますか…」と聞きます。





トクポンは街中を注意深く歩いていました。すると反対方向からジョニョンの警護をしている女侍があるいて来ます。すれ違いざまに、女侍はトクポンの肩に毒針を刺します。トクポンは、路上で崩れるように倒れます。周りの者が助けようとするのですがトクポンの意識は戻らずに倒れたままです。



ユンボクは、チョンヒャンに会いに妓房に来ていました。チョンヒャンの部屋をのぞくとチョンヒャンは、仕事へ行こうとしていました。

チョンヒャンは嬉しそうに「画工…早い時間にどうして…試験に通れば三日間の休みがある…知らないのか…」と言います。チョンヒャンは「何の試験に合格したのですか…」と聞きます。ユンボクは「よく考えてみろ…武科や訳官試験を受けたとでも?…」と言います。チョンヒャンは薄笑いしながら「武科ですって?そんな力が何処に?…」と聞きます。ユンボクは「これは…女人の見る目は…何の試験かは中に入って話そう…渡す物もある…」と言うと、チョンヒャンの手を握って部屋の中に入ろうとしますが、チョンヒャンは「お待ちください…お客様がいます…さほど長くは掛かりません…」と言います。すると、ユンボクは「そうか…どうしてもか…」と言います。チョンヒャンは「すぐ戻ります。お待ちください…」と言います。ユンボクは「分かった…」と答えます。

チョンヒャンは、お付きの下女を伴い仕事へ行きます。ユンボクは部屋で待つ事にします。チョンヒャンが庭に出ると女将が待っていました。そして「おもてなしを…心配事がおありのようだ…」と言います。チョンヒャンは「どなたですか…」と聞きます。女将は「大行首、キム・ジョニョン様だ…」と言います。





チョンヒャンがキム・ジョニョンの部屋に入ると、キム・ジョニョンはすでに部屋で待っていました。チョンヒャンが挨拶するとジョニョンはいきなり「今夜…お前を抱けるか…金は望むだけ与えよう…」と言います。チョンヒャンは「漢陽では有名な富豪なので…巨額を望んでも宜しいですか…」と言います。キム・ジョニョンは軽く首を縦に振ります。

チョンヒャンは「旦那様の…全財産を…それであれば…承諾します…」と言います。これを聞いたジョニョンは、いきなり笑いだします。するとチョンヒャンは「それはおしいですか…」と聞きます。ジョニョンは「もういい、酒を継いでくれ…」と言います。チョンヒャンは酒を継ぎます。

チョンヒャンは「惜しいはずです…苦労して集めた財産なのに…力なく零細な商人たちを…脅かして集めたお金です」と言います。ジョニョンは「気を悪くしたか…」と聞きます。チョンヒャンは「旦那様のような方が…卑賤な物の心を察して下さり…感謝です。」と言います。キム・ジョニョンのチョンヒャンを見る目が変わります。

チョンヒャンは「お許し願えれば、来客中なので、これで下がります…」と言うとチョンヒャンは、席を立ち部屋を出て行きます。ジョニョンは「フン」と薄笑いをし「お前を…最も美しい花にしてやる…」と独り言を言います。





ユンボクは、チョンヒャンの部屋で、チョンヒャンに会ったら渡そうと思っていた蝶の  飾り物(ノリゲ)を見ていました。その時、ホンドの声がよぎります。「戌時までに広通橋に来い…遅れるなよ…」と…

チョンヒャンは、慌てて帰って来るのですが、部屋にはもうユンボクの姿はありませんでした。部屋にはユンボクの絵手紙がありました。

「今日か明日また来る…花のない絵が…」と書いてありました。お付きの下女が「それは何ですか…」と聞きます。チョンヒャンは「花がないので、蝶が去ったのだろう…もう少し居てくれればいいのに…」と言います。





ホンドは、広通橋でユンボクが来るのを待っていました。ユンボクが来ると「遅れるなと言っただろう…」と言います。ユンボクは「遅れましたか…」と言います。ホンドはすぐに「行こう…」と言います。ユンボクが「ところで何処へですか…」と聞きます。ホンドは「お前を画員にしたお方に会う…」と言います。ユンボクが「エッ」と言うと、ホンドは「“通”をくれた方…」と言うとユンドクの顔色が変わり「主上殿下ですか…」と聞きます。



二人は、王様に拝謁していました。

王様はホンドに「お前が見守りたいのは、この画工か…」と聞きます。ホンドは「はい…そのとおりです…」と答えます。

王様は、ユンボクに「頭を上げろ…」と言います。ユンボクは恐縮して少しづつ頭を上げます。ユンボクは緊張して、頭を上げてへんな目つきになります。王様は「確かに、非凡な目つきを持っている…」と言います。そして「シン・ユンボクだったな…」と言います。ユンボクは緊張して「はい…殿下…」と言います。王様は「どうして、耳の下のホクロまで描いた…」と聞きます。ユンボクは驚いて、何と返答すべきか分からずに、ホンドの目を見ます。そして「殿下…大罪を犯しました…」と言って頭をまた下げます。

王様はにこりと笑って「描くのは画工の仕事だ…気にするな…」と言います。そして「ただ…お前の兄を助けられないのがもどかしい…」と言います。するとホンドが「聖恩に感謝の極みです…」と言います。ユンボクも「感謝の極みです…」と言ってまた頭を深く下げます。

王様は「2人を呼んだのは頼みたい事があるからだ…」と言います。ホンドが「何でしょうか…」と聞きます。すると王様は「2人の絵を見たい…予が大事にする画員とそのものが大事にする画員の…絵の対決が見たい…」と言います。ホンドは「絵の対決とは…」と聞きます。

王様は「同題各画だ…」と言います。するとユンボクが、いきなり頭を上げて「師匠とですか…」と驚いたように聞きます。王様は「これは勝敗を決める対決だ…」と言います。そして「同じ素材で、各自がそれぞれ絵を描いてこい…都城内に生きる人々を…ありのままの姿で…予は民の姿を自分の目でみたい…しかし王とは…狭い宮廷に縛られている…この瞬間から予の目と足の代わりに街の画員になるのだ…2日後、陽が昇るまでだ…くれぐれも内密にしてくれ…」と言います。



ユンボクは帰り道に、興奮してホンドに「師匠、まだ体が震えています…」と言います。ホンドは「こいつめ…誰が横目でにらめと言った…」と言うと、ユンボクは「直視するなと言ったのでそうしたのです…」と言うと、ホンドは「だからと言って、横目にする奴があるか…」と言います。ユンボクは「初めてだからですよ…」と答えます。

ホンドはユンボクをからかうように「初めてでも、私は違った…」と言います。ユンボクは「それでも…」と言います。するとホンドが「こんな奴と絵の対決とは緊張するな…」と言います。ユンドクは「本当ですか…」と聞くと、ホンドは「そうとも…緊張で体が強張って動かないぞ…」と言います。ユンドクはホンドの背中に手を回し「気楽にいきましょう…私が師匠に勝てると思いますか…」と言って笑います。ホンドもつられて笑います。

ユンボクは「ところで…師匠…主上殿下は…なぜそんな絵を望まれるんでしょう…」と聞きます。ホンドは「なぜだと思う…絵とは図画署の中だけのものではない…絵になる物は、行商人の肩の上にも…飴売りの盆の上にもあるはずだ…」と言います。ユンボクは「女房の水ガメにも…」と聞きます。ホンドは「だから、主上殿下の命に奉じ、ただ描けばいい…面白い対決になりそうだな…」と言います。ユンボクは「では何を描けばいいですか…」と聞きます。ホンドは「それは…ひとまず寝て…画材を集めて夜明け前にここに来い…内密にな…」と言います。ユンボクは、真剣な顔をして「はい…」と答えます。





ユンボクは自室で絵の道具を準備していました。そこへハンビョンがやって来ます。

ユンボクは「何か御用ですか…」と言います。ハンビョンは笑いながら上座に座り「どうして画具を準備している…」と聞きます。ユンボクの脳裏に、ホンドの「内密にするんだぞ…」という声が聞こえて来ます。ユンボクは「ただ…整理をしようと…」言います。ハンビョンは「そうだな…もう図画署の画員だから…行いにも気を付けて、むやみに軽挙妄動はするな…」と言います。ユンボクは「はい」と答えます。そしてハンビョンは「それで言うのだが…檀園のことだ…檀園は、お前が思うほどよい人間ではないから…親しく付き合うな…」と言います。ユンボクは「師匠とですか…どうしてですか…」と聞きます。

ハンビョンは「画員の人生とは…世の荒波にどう乗るかで決まる…世の中の流れを追い…立身出世して名を上げる事も…極めて重要だ…檀園が…妙香山に追放されたのにも理由がある…とにかく…アイツは危険だ…あまり親しく付き合うな、分かったか…」と言います。ユンボクは小さくうなずいて「はい」とだけ答えます。





 ユンボクが、広通橋で立って待っているとホンドがやって来ます。

 ホンドは「夜明から、何って格好で立っているんだ…早く来たな…」と言います。ユンボクが不思議そうな顔をしてホンドの顔を見ていると、ホンドは「何か付いているか…」と言います。ユンボクは顔を横に振り「いいえ…」と軽く言います。そして、自分の道具を持ち「何処へ行きますか…」と聞きます。ホンドは「それ何だが…困った…」と言います。ユンボクは「何処で描くか決めてないんですか…」と言います。ホンドは「どこか知らないか…」とユンボクに聞きます。ユンボクは「知りません…」と答えます。ホンドは「私が一か所…いやダメだ…」と言います。するとユンボクが「何がですか…絵さえ描ければ…何処ですか?…もう夜が明けます」と言うと、ホンドの手を取って出発します。



ユンボクが「何処まで行くんですか…」と聞きます。するとホンドが「もうついた…ここに荷物を置いて行こう…」と言います。ユンボクが「ここですか?」と聞くとホンドは「そうだ…」と答えます。そして「荷物をくれ…」と言ってユンボクの肩から荷物を取ります。

ホンドがぼろ家に荷物をかくすと「さあ行こう…」と言います。ユンボクが「誰の家ですか…」と聞くと、ホンドは「ここか…親しい友の家だ…」と言います。するとユンボクが「あの女人の家ですか…」と聞きます。ホンドは驚いた表情をして「女人?…」と聞き返します。ユンボクは「ユチュン先生が見つけたかと尋ねた女人です…」と言います。ホンドは「ああー、女人だと…いや…歳月が流れたからな…」と言います。ユンボクは「照れることはありません…どれほどの想いで探し続けたのですか…」と聞きます。ホンドは、照れ笑いをします。ユンボクは「その女人は…師匠にとってどんな方ですか…」と聞きます。ホンドはしばらく考えて「私が守るべき人だ…命を投げ出してでも最後まで守るべき人だ…」と言います。そして、ユンボクを見て「さあ、行こう…」と言います。

この時、お互いが、その守るべき女人がユンボクであることを知る由もありませんでした。





チョンヒャンは、妓房で、キム・ジョニョンと女将の前に立たされていました。女将は「美しさを見るには前から…姿を見るには後ろからだそうです…」と言うとチョンヒャンに「後ろを向いてごらん…」と言います。女将はジョニョンに「後ろ姿です…」と言います。そして「どうですか…」と尋ねます。ジョニョンは「目の保養になる…」と言います。

女将は「女人の美を見るには三つの首です…」と言うと、チョンヒャンに「見せなさい…」と言います。チョンヒャンは前を向きます。女将は「首…手首…足首…」と言います。そして「この様に細いのが美人なのです…」と言います。そして「体のすべては親から受け…その中で歯は一生の物です…歯を見せなさい…まず色が明るい事…次に形が整っていること…最後にその大きさが揃っていることです…いかがですか…」と言います。

ジョニョンは「目元が切れ長すぎる…涙が流れやすく悲しいことが起きるという…」と言います。すると女将が「多少目が切れ長とはいえ…鳳凰の目と言って、財物を呼ぶ目です…私にそんな眼識もないとお思いですか…いつにしますか…」と言います。ジョニョンは「2日後…」と言います。女将は「そんなに早く…」と言います。ジョニョンは「もう私画暑が完成する…懸板式に間に合わせるには…今日にでも礼を教えたいが、追い出されるように去らせたくない…余裕をやろう…」と言うと、金箱を出し「前金だ…」と言います。

女将は、金箱を開けて確かめると「そろそろ伽耶琴の音を聞きますか…」と言います。チョンヒャンの目から、一筋の涙がこぼれおちました。





ホンドとユンボクは街中を歩きまわっていました。

ホンドは「何を描けばいいかな…誰を描けばいいのか…」と言います。二人は民の生活を見て回っていました。

ホンドが「あの者を描くか…」と言うと、ユンボクは「あの者を訳もなく描いてどうするのですか…」と言います。するとホンドが「道袍を着ている様子を見ると両班のようだが…扇子越しに女たちを眺める様子を見ろ…あの者の性格が透けて見えないか…」と言います。するとユンボクは「いいえ…私は人だけを見ても…何をするつもりか分かりません…」と言います。するとホンドが「そうか…それじゃどうする?…」と言います。ユンボクは「ついて行きましょう…」と言います。二人は後を追います。その後ろ姿をジョニョンの女侍が見ていました。「檀園が何をするか見張っていろ…」という命令が会ったからです。そして、そのまた後ろを王様の護衛隊員が付けて行きます。



両班の男は酒場へやって来ました。ユンボクは「師匠…よく見てください…あの人が居酒屋に来たので…何がしたいか分かりました…」と言います。するとホンドが「何なんだ…」と言います。ユンボクは「酒を飲むんですよ…」と言います。ホンドはユンボクを見て「当然のことを…」と言います。ユンボクはそれでもめげずに「服の色から、ずっと格の高い家柄のようで…昼間から仕事もせずに…あのように酔うのを見れば品性が分かります…」と言うと、ホンドはユンボクの持っていた四角い枠を「ちょっと貸せ…」と言って覗き始めました。

ホンドは「そのようでもあるが…来てみろ…」と言うと、違う場所に行ってそこからまた覗き始めます。

ホンドはユンボクに「女人の顔を見てみろ…日夜酒を売り顔に疲れが現われていないか…商売が苦しいんだろう…あの両班を見てみろ…日中から顔を赤くして何ってざまだ…あの顔と表情…身振りが物語っている…」と言います。するとユンボクが「ですから…彼らがいる場所を描けば心が分かりますよ…」と言います。ホンドは「違うよ…分かってないな…何も無くても…アイツだけですべてが説明できる…」と言います。ユンボクはそれに反論して「どんな汁かで、具の味も変わります…」と言います。するとホンドが「クッパの話をしたか…何も無くてもあの表情で充分だ…」と怒ります。するとユンボクが「表情の表現は場所が必要です…」と興奮していいます。ホンドは大声で「いちいち口答えするのか…」と言います。ユンボクは切れかかって「ハァー!じれったい…」と言って立ちあがります。今度はホンドが切れて立ちあがり「こっちの言うセリフだ…どうして分からない…」と大声で言います。すると周りが二人の事に気づいてしまいます。二人は周りの目を気にしておとなしく立っていました。





チャンヒャンづきの下女が図画署に来ていました。それを生徒長だったチャン・ヒョウォンの腰巾着の生徒が目ざとく見つけます。

生徒は下女に「誰だ?」と尋ねます。下女は「これは…」と言って、手紙をかくします。すると生徒が「ケウォル屋のマクニョンだな…」と言います。すると下女は「覚えていますか?」と言います。生徒は「もちろん…オレは画工だ…オレの目は並みじゃないさ…ところで何の用だ?」と言います。下女は「シン・ユンボクを知っていますか…」と聞きます。生徒は「ユンボク?」と聞き返します。そして「よく知っている…」と言うと、下女の手から手紙を取り上げます。そして「これは何だ…」と聞きます。



ヒョウォンはすでに図画署で絵を描いていました。そこへ腰巾着の生徒がやって来ます。ヒョウォンは「何だ…」と言います。すると生徒は「チョンヒャンが売られる…」と言います。ヒョウォンは「チョンヒャンが?…誰に聞いた…」と聞きます。すると生徒は、ユンボクに預かった手紙をヒョウォンに渡します。

ヒョウォンは手紙を読むと「何だと?…」と言います。





夜になって、ホンドとユンボクは居酒屋にいました。

ホンドは、橋を出し汁に着けるとユンボクに「これを見ろ…」と言って絵を台の上に描き始めます。そして絵が描き終わると「何も無くても、クッパを食べるのを見るだけで…この人物の品性が見えてこないか…」と言います。そしてクッパを食べている人を指差します。すると急にお腹がすいて来たらしく「クッパが食べたい…」と言いだします。

すると今度はユンボクが「見ていて下さい…」と言って。同じように絵を描き始めます。最初に鳥の絵だけを描くのですが、ユンボクは「これだけではまだ、ただの鳥の絵です…何を望むのかまでは分かりません…しかし…この様に籠を描きいれれば…ただの鳥だったのに…何を望んでいるのか分かって来ます…」と言います。するとホンドが「何を望んでいる?…」と聞きます。ユンボクは「元々鳥は飛びたいのに…鳥かごの中にいる…ですからこの鳥は…逃げ出したいと思うようになります…ですから人も、何処にいるかを絵がいてこそ…心が分かるのです…」と言います。ホンドは「確かに少しは面白い話だ…」と言います。するとユンボクが膨れた顔で「少しですか…師匠も認めているんでしょう?…」と言います。するとホンドが少し慌てたように「一つの接近法ではあるがのう…」と言います。するとユンボクがホンドの手を軽く押して「師匠は困ると平壌訛が出ますよね…そうだね、そうだね…」と言います。ホンドは「ふざけるな…」と言うと軽く額を手で押します。するとユンボクが「なぐらずに口で言ってください…そうだがね…そうだがね…」とふざけて言います。ホンドはユンボクの首根っこを捕まえて倒して抑え込みます。するとユンボクは「師匠…」と言いながらもがきます。ユンボクがホンドのどこかにかみついたらしく、ホンドは「アーアー」と声を出します。周りの客の視線が二人にくぎ付けになり、ホンドは「何でもないです…気にせずどうぞ…」と言います。ユンボクも調子に乗って「どうぞ、どうぞ…」と言うと、ホンドは平手でユンボクの後頭部をバシッと叩きます。

ホンドはユンボクをにらみつけて「とにかく…どう描くかは充分に悩んだ…次は何を描くかだ…」と言います。するとユンボクは「そうですね…こんなに暗くなったのに…今日見たのは居酒屋しかないんです…どうしますか…」と言います。するとホンドが「私が悪かった…居酒屋を描こう…居酒屋を描いてはダメか…」と言います。するとユンボクが「しかし…主上殿下に…」と言うと、ホンドは慌ててユンボクの口を手で押さえます。そして箸でユンボクの額を軽く叩きます。ユンボクは額をこすりながら小さな声で「主上殿下にお見せするには…居酒屋の絵だけでは…」と言います。するとホンドが「ダメな理由は?…」と聞きます。ユンボクは「それでも…」と言いますが、ホンドは「お前は考え過ぎだ…付いてこい…描いてから話そう…」と言います。ユンボクは「師匠…考える事も必要ですよ…」と言います。するとホンドは「後で考えろ…」と言います。二人は荷物を肩に描けると立ちあがり絵を描きに帰ろうとします。



その時です、居酒屋の客の一人が「チョンヒャンが?…」と言うのが、ユンボクの耳に入ります。すると別の客が「ついに売られるのか…」と言います。ユンボクはそれを立ち止って聞いていました。客は「何処にだって?…」と言います。すると別の客が「大行首が買ったそうだ…2千両も出したとか…」と言います。「2千両も…家が一軒買えるな…」と言います。ユンボクは黙っておられなくなり、その客の手を両手で捕まえると「本当ですか…いつですか…」と興奮して聞きます。すると客が怒りだし「ガキが大人に何のマネをする…」と言います。ユンボクは悲壮な顔で「教えでください…いつチャンヒャンが?」と言うとつかみ合いになります。

その時ホンドが「どうした…」と言ってやって来ます。客はユンボクを捕まえて「何て奴だ…横着な奴め…」と言いますが、ユンボクはホンドに抑えつけられながらも「いつですか…いつですか…」と聞きます。客は諦めて「明日だそうだ…」と言います。客はホンドに「酔ったようだな…」と言います。ホンドは「申し訳ない…」と言うと先に出て行ったユンボクを追いかけます。そしてホンドは「何処に行く…」と言ってユンボクの手を握ります。ユンボクは真剣な顔でホンドに「行かなければ…もう会えないかも…」と言います。ホンドは諦めさせようと「主上殿下の命令だぞ…重大さが分からないのか…」と言いますが、それでもユンボクは「行かないと…行かせてください…」と言います。ホンドは「絶対にダメだ…」と言いますが、ユンボクは「お願いします…最後に顔だけでも…まだ時間はあります…お願いです…」と言います。お互いにしばらくの間無言が続きます。しかし、ユンボクの真剣な眼差しを見てホンドは静かに「1時間後には…帰ってこい…分かったか…」と言います。ユンボクは「はい…行って来ます…」と言って妓房へ走って行きます。ユンボクは初めて会った時のことを思い出しながら…





妓房の庭では、チョンヒャンが下女に「確かに渡したか…」と聞いていました。下女は「はい」と答えるのですがチョンヒャンは「それなのにどうして…」と言います。



その頃図画署では、ヒョウォンが父の別提に、チョンヒャンから来た、ユンボクへの手紙を見せていました。

ヒョウォンは嫉妬交じりに「父上…ユンボクは画員になっても妓生に夢中です…画師の資格がありません…」と別提に言いつけます。別提は「ユンボクが妓生に溺れている…」と言います。ヒョウォンが「心を清らかにする3日間なのに…妓生遊びをしたなら…」と言うと、別提は「そうだ…その間は身と心を清く保たねばならぬ…画員の資格がないなら…檀園…奴にも責任を問えるな…」と言います。ヒョウォンは「その妓生が売られたそうです…ユンボクがその噂を聞けば、ケウォル屋に行くはずです…」と言います。別提は「行こう…」と言うとすぐに立ちあがります。

この話をインムンが立ち聞きしていました。インムンも慌ててその場を立ち去ります。



インムンは、シン・ハンビョンのところへ来ていました。

 ハンビョンは、インムンの話を聞くと顔をしかめて「何?…ユンボクがケウォル屋の妓生と…怪しい関係だと?…」と言います。インムンは「そのようです…」と言います。

 ハンビョンは、声を荒げて「そのようなことがあるか…」と言います。インムンは「若さゆえに、あり得るかと…」言います。ハンビョンは「そんなはずがないと言っておる…あの子は…女…とにかくケウォル屋にいるんだな…」と言います。インムンは「はい」と答えます。ハンビョンは「何があったか行ってみれば分かる…」と言います。





 ユンボクはチョンヒャンの部屋に入ります。そして「チョンヒャン…」と言います。チョンヒャンは「なぜ、こんなに遅く…」と言います。ユンボクはチョンヒャンの前に座って「行かないでくれ…」と言います。チョンヒャンは涙を流しながら「行くしかありません…行きますが…」と言うと、ユンボクの手を握り「画工と…もう少し一緒に…早い別れになりました…」と言います。ユンボクは「チョンヒャン…」と言います。

 チョンヒャンは「最後の夜も残りわずかです…時間がないと手紙にも書いたのに…」と言います。ユンボクは「手紙だって?…」と言います。チョンヒャンは「もうどうでもいいことです…最後に…画工に演奏を聴いて頂きたい…」と言います。下女がことを持って来ます。チョンヒャンが流れるような琴の演奏をします。



 ホンドはその頃、絵の構想を練っていましたが、なぜかしらユンボクのことで胸騒ぎがしていました。ホンドは服を着替えながら「とことん面倒な奴だ…」と言うと、ユンボクを迎えに行きます。

 別提と手下の画員は、妓房に向かっていました。その後ろから。ハンビョンとインムンも付いて行きます。



 チョンヒャンの演奏が終わるとチョンヒャンは「あと…画工の弄絃(ノンヒョン)をお待ちします…」と言います。ユンボクは「弄絃とは?…」と聞きます。チョンヒャンは「音を出す楽器は伽耶琴だけですか…男の手に泣いて笑う最高の楽器は…女人の体です…今の私は…品物として売られる前に…最後に…愛する人の胸に抱かれたいのです…」と言います。

 ユンボクは考えていました。何と言えばいいのか…その間にもチョンヒャンは服を脱ぎ始めます。チョンヒャンが服を脱ぎ終わり蒲団に入ろうとすると、ユンボクは小さな声で「いけない…」と言います。そして「私にはできない…」と言います。チョンヒャンは「卑しい妓女の身だからですか…」と言います。ユンボクは「そう、そうではない…」と言いますが、チョンヒャンは納得しませんでした。そして「ではどうして…」と言います。ユンボクは「私にもあなたは…掛け替えのない人だ…しかし…あなたを抱けない…」と言います。チョンヒャンは「私は…主席の座で暮らしても…誰にも…心を許しませんでした…ひたすら…私の音律を知り…私の魂を知る…ただ一人の人を待ちました…やっと会えたのに…最後かもしれないのに…いやしい妓女には…それさえ…贅沢なのですか…」と言います。ユンボクは堪らなくなって、寄り添います。そしてチョンヒャンの手を握り「そうじゃない…」と言います。チョンヒャンは「ではどうしてですか…」と涙を流しながら言います。





その時、ホンドが妓房に入って来ました。別提と手下の画員は妓房の門の前で、ハンビョンとインムンに会います。

 ハンビョンは、別提に「夜更けに、ここに何の御用かな…これから酒宴でも?…」と言います。すると別提が「ドジョウに図画署の対面を汚させたくない為だ…お前は?…」と言います。するとハンビョンが「ドジョウですか?…」と言います。



チョンヒャンの部屋では、ユンボクが自分の服を脱ぎ始めました。そこへホンドが部屋の前まで来ます。ホンドは、部屋の様子をうかがいながらしばらくそっとしています。



 ここで、第6話 同題各画は終わります。





 ユンボクは、やっとの思いで図画署の画員試験に合格しましたが、不思議なことに気がつきました。ユンボクは、二位で合格したのですが、特別画員に命じられました。しかし、一位で合格したヒョウォンは、普通の画員でした。これは何を意味しているのか…図画署の守旧的体質ではないでしょうか。

 ヒョウォンには、審査員11人全員が満点で“通”を与えましたが、詩題を選択したユンボクには、詩の内容も考えずに春画と決めつけ、絵の完成度にかかわらずに、審査員全員が“不通”を与えました。王様はユンボクの絵を見て、図画署の体質を見抜かれたのだと思います。

 伝統的な絵も大切だが、それだけにこだわっていたら、芸術の進歩は有り得ない。芸術の精神性を高める為の詩題ではなかったのかと…そして王様の審査により合格となり特別画員となりました。王様の革新性が見えたような気がします。



 それから前話で、私は「ユンボクが何者か分かった」と言いましたが、今回その答えがはっきりしました。

 ユンボクは、ホンドの友人、ソ・ジンの娘ユンでした。まだ幼いユンが描いているひよ子の絵を見て、シン・ハンビョンがユンの才能を見抜き、養子にしたようです。ただユンは女、図画署の画員にはなれません。そこで男として育て始めたのです。ただ、ハンビョンの目的は不純でした。ユンを著名な画員に育て上げ、多くの後援者を獲得しようとするものでした。それでもユンにとって、この事が不幸だったと決めつけるのは早いようです。なぜならば、ユンの父母は何者かに暗殺されたからです。そして、ヨンボクという優しい兄にも恵まれたからです。この先どうなるかは分かりませんが、じっくり見る必要があると思います。



 最後に、ユンボクはチョンヒャンに愛の告白をされましたが、どんな思いで自分の服を脱ぎ始めたのでしょうか…チョンヒャンの涙ながらの言葉に、どんなに説明しても言い訳としか取られない…これ以上、自分が女であることを隠し続けては、チョンヒャンの心に傷を付けると考えたのかもしれませんね…



 それではこの続き、次回が楽しみです。

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