第11話 御真画師(結)
ホンドとユンボクは、下絵の上に紙を置き、詳細な線を写し取っていました。
王様はホンドに「檀園…予には誰にも言えない秘密がある…時が来れば明らかにするだろうが…まれに…誰かに打ち明けたいことがある…その秘密を話したいとき…お前ならどうする?…」と言います。
ホンドは「秘密ですか…」と尋ねます。王様は「誰にも言えない秘密だ…」と言います。そして、王様の脳裏には、先代王の遺言の場面が映し出されていました。
先代王は「いつか時が来たら…二人の画工が描いた絵を探し…父を救ってやれ…」と言います。王様は「絵ですか…何のことですか、お祖父様…」と尋ねます。先代王は「2人の画工に命じたが、受取れなかった絵だ…」と答えます。王様が「それは何ですか…」と尋ねると、先代王は「お前の父、思悼世子の肖像だ…」と答えます。
王様は「明らかにすべき秘密…」と言います。
ホンドの脳裏には、友人と師匠が絵を描く姿…師匠の葬儀の時に、友人に「信じられるか…師匠の死に納得できるか…」と言っている自分の姿…それに対して友人が「お前もそうか…お前に話すことがある…弔問後に家に来てくれ…」と言っていた友人の姿…友人が暗殺されてむしろの上に寝かされている姿…その死に顔を見て、泣き叫ぶ自分の姿…が、映像として浮かんできました。
ヨンボクの脳裏には、父の前でノリゲをさわって遊ぶ幼き日の自分の姿、その自分を絵に描く父の姿、刺客に暗殺される父の姿、父と一緒に刺殺される母の姿、そして泣き声も出すことが出来ずに、父母が切り殺されるところを見ている幼き日の自分の姿が映し出されていました。
王様とホンドとユンボクの三人の接点が、各々の脳裏に映し出されていました。まだそれを三人とも気付いていませんでした。
王様は「檀園…下絵が終わり次第、仕上げも頼む…」と言います。ホンドは「はい、殿下…」と言うと、ホンドとユンボクは低頭します。王様は、玉座から立ちあがり、退室します。ホンドとユンボクは、自然に視線を合わせます。しばらくしてホンドはユンボクに「始めよう…」と言います。ユンボクは「はい…」と答えます。
ホンドはユンボクに「襟から描け…」と言うと、席を譲りユンボクと交代します。
ユンボクは、最初のひと筆がなかなか描けませんでした。緊張しているのか、筆を持つ手の汗を服でふきます。それを見ていたホンドは、ユンボクの手をそっと握ります。ユンボクは横目でホンドの顔を見上げます。ホンドはユンボクの手を持ち上げて、筆を取ります。そして、ユンボクに「大丈夫だ…これは集中を要することだ…わずかな手の汗で…ダメになる事もある…」と言います。そして「ところで…昨日のあれはどこだ?…」とユンボクに聞きます。ユンボクは驚いたように「あれは…」と言います。そして「師匠の足までふいたものを使えますか…」と言ってごまかします。ホンドは笑いながら、ユンボクから取った筆を口にくわえると、懐から、ジョンスクからもらった汗ふきようの布を取りだします。そしてユンボクの手に結んでやります。ホンドはユンボクに筆を持たせると「描きなさい…」と言います。ユンボクはほほ笑みながら「はい」と答えると線を引き始めます。
インムンの家では、ジョンスクがご飯の用意をしていました。そこへインムンがやって来ます。
インムンは不思議そうな顔をしてジョンスクに「それは檀園の分か…」と聞きます。ジョンスクは「はい…一緒には食べられないけど…」と答えます。ジョンスクはホンドの為に陰膳をしていました。インムンはジョンスクに「そんなに好きか…」と言います。ジョンスクは、照れくさそうに「お兄様…」と言います。そして「ところで…檀園様に好きな女人はいないわよね?…」と聞きます。するとインムンは「檀園に女?…そんな心配はするな、見た事もない…」と笑顔で言います。ジョンスクの顔が笑顔で満ちていきました。
図画署では別提が、自室で考え事をしていました。
「主上が檀園を大切にするなら…御真画師後に檀園の願いを聞くだろう…もしや…檀園に図画署の別提の座を与え…漢陽に置くかも…」
そこへ、別提の手下の画員が入って来ます。
画員は「別提様…」と言います。別提は振り向くと「どうだった…うまくやったか…」と聞きます。画員は「手抜かりはありません…」と答えます。別提は笑顔で「よくやった…御真画師の画員をまた選ぶようになったら…お前を必ず青竹(チョンジュク=ヒョウォン)の随行画員に推薦する…もうお前も…そんな大事を任されて名を残すときだろう…」と言います。画員は嬉しそうに「別提様を信じます…」と答えます。別提は「ああ、そうか…」と言うと笑いだします。そして「これで少し気分がすっきりした…」と言います。
丹青所では、ぺクぺク先生の孫娘が、ヨンボクの作った顔料で描いた試書きを陽の光に当てて見ていました。
ヨンボクが「返せよ…」と言いますが、孫娘は返しません。そしてヨンボクに「どうやって色分けするの?」と尋ねます。その姿を見ていた丹青所の先輩達が怒り始めます。孫娘から試書きを取り上げると、ヨンボクの目の前で破きます。そして「お前が色を作ろうが食おうが興味はない…だが丹青所の新入りが丹青所の仕事をせず…女と顔料だけを作るとは…」と言うと、細かく破いた試書きをユンボクの顔に投げつけます。そして「夕方までに、溜まった仕事をすべてかたずけろ…」と言います。
ヨンボクは丹青所の仕事をしていました。足場に登ろうとすると、急に目がかすみました。その様子を孫娘が見ていました。
孫娘はヨンボクに「大丈夫?」と声をかけます。ヨンボクは「気にするな…」と言いますが、ヨンボクの様子は明らかにおかしく、孫娘は「イヤよ…」と言います。ヨンボクは「大丈夫だって…」と言います。孫娘がヨンボクの顔を見て「血よ…鼻血が出ている…」と言って驚きます。ヨンボクは、手ですぐに鼻血をふきます。そして足場に上り、仕事を始めます。
ユンボクは、懸命に線を引いていました。ホンドは、ユンボクが額に汗をかいているのを見つけると、汗ふきを差し出します。ユンボクは、汗ふきを受け取って汗をふきます。ホンドはユンボクから筆を取り、自分で線を引き始めます。その繰り返しが続いていました。
ホンドが、疲れと緊張から後ろに倒れようとすると、ユンボクが気づき、すかさずホンドの体を受け止めます。そして「大丈夫ですか…」と聞きます。ホンドは大きく息を吐き出します。
線を引き終わると、二人で写した紙を取り外します。
ホンドはユンボクに「ゆっくりと…そうだ…そっと置け…」と言います。紙を取り外すと、二人はそのまま紙の枠を抱えて立ちあがり、紙の枠を立たせておきます。
ホンドは「絵が傷まないように、真ん中に…」と言います。そして、安全に取り付けると、ホンドは前に出て来て絵を見ます。ユンボクは、後ろに回りホンドの指図に従います。
ホンドが「左の方に…」と言うと、ユンボクは絵を張った枠を左に動かします。「いや、もっと右だ」と言うと右に動かします。「いや違う…お前から見て右の方だ…」と言います。ユンボクがホンドの指図に従おうとすると、絵の枠を倒しそうになります。ホンドは「アッ!気をつけろ…」と言います。細心の注意を払いながら仕事が続きます。
その時ホンドは、ふとあることに着目しました。それは、御真画師の下絵の線を写した紙に写る、ユンボクの影でした。
ホンドは「左に…」と言います。ユンボクが左に寄せると、今度は「また右に…」と言います。ユンボクが右に寄せると、また「左に…」と言います。ホンドは、御真画師に写るユンボクの影を見つめていました。頭・顔・首・肩…そして「そこでいい…」と言います。ユンボクは、何か不思議な気配を感じていました。
ホンドは、ユンボクの影に手を合わせながら、真剣に何かを感じ取ろうとしていました。そして「お前…本当に男か?…」と言います。ユンボクは、目の焦点が定まらず、無言を通します。ホンドは、ユンボクの影を見ながら「どうして答えない?…」と言います。ユンボクは静かに「それは…当り前のことを聞くからです…」と答えます。ホンドは「お前の影が…女人の姿のようだ…」と言います。ユンボクは、悟られまいと気を落ち着かせて「影は単に…虚像に過ぎません…」と答えます。そして「師匠の影は…山の妖怪です…」と言います。ホンドは「影は実態を反映する…そうではないか…」と言います。そして「実態があってこそ…影も生じる…」と言いながら、ユンボクのいる絵の裏に回ります。するとユンボクも同じように、絵の表に回ります。
ユンボクは「しかし…実態も…実態を照らす影も…すべて…真実ではありません…」と言います。ホンドは「では、真実は何で…どこにある…」と言います。ユンボクは「真実は…心の中に…」と言います。その時、ホンドとユンボクの視線が合いますが、すぐにユンボクが反らします。そしてユンボクは「準備できました…師匠…下絵が終わりました…」と言います。ホンドはユンボクをじっと見つめていました。ユンボクは「どうしましたか…」と聞きます。ホンドはうつむきながら少し考えて「明日から…彩色をしよう…よくやった…」と言います。二人は視線を合わせます。そしてユンボクは「はい…師匠…」と答えます。ユンボクの顔は、どこか寂しげでした。ホンドは、ユンボクが男であることを完全に疑い始めていました。
ホンドとユンボクは、明日から始める彩色の為に、倉庫で顔料の検査をしていました。ユンボクはホンドのところへ顔料の壺を持ってくると「これが最後です…」と言います。ホンドは振り向いて「そうか」と答えます。ホンドはユンボクから壺を受け取ると、中の顔料を見ます。ユンボクはホンドが見やすいように、そっと灯りを近付けます。ホンドは顔料の匂いを嗅ぎ異常がないことを確かめてユンボクに渡します。ユンボクは壺の中から顔料を少し取り出し、手の甲に着けて発色を確かめます。ホンドは、そんなユンボクの顔をじっと見つめています。ユンボクはホンドの顔を見ると「異常ありません…」と言います。ホンドは「そうか…」と言います。そして帳簿に通と書くと「行こう…」と言います。ホンドは机の上の灯りを消し、ユンボクは顔料の壺を棚に置くと二人で一緒に倉庫を出て行きます。しかしその壺には、別提の手下の画工によって、何かの薬品が入れられていました。
ホンドとユンボクは寝床を引いて、寝る準備をしていました。
ホンドは、寝床に座るとユンボクの動きをじっと見ていました。そして、御真画師に写るユンボクの影を思い出していました。ユンボクは寝る準備が出来て、ふとホンドを振り向くと、ホンドの視線を感じました。
ホンドはユンボクに「寝よう…」と言います。ユンボクはホンドに悟られないように、明るい声で「はい…お休みなさい…」と言うと、灯りを消して寝ます。そしてユンボクは「師匠は本当に不思議です…」と言います。ホンドは「何がだ?…」と言います。群仙図のような豪放な絵では…筆使いも豪放で…虎の絵や神秘さを描くときは…この上なく精密です…そして御真画師のような精緻な絵では…また別人です…師匠の体の中には蛇が何百匹もいますね…」と言います。ホンドはユンボクを見ながら「蛇だって?…フン、ハッハ…笑わせるな…」と言います。ユンボクは「何かコツでも?…」と聞きます。ホンドは、ハァン…絵を描いて何年になると?…お前のような半人前に分かるものか…こいつめ…」と言います。そして、ユンボクの額を平手でパシッと叩くと「もう寝ろ…」と言います。ユンボクは、額をさすりながら「ぶたないでください…口で言えばいいのに、叩く何て…頭が悪くなりますよ…」と言います。ホンドは「よくなるさ…」と言うと、またユンボクの額を平手でパシッと叩きます。そして「とにかく寝ろ…」と言います。ユンボクは額を手でさすりながら布団をかぶって寝ます。
ホンドはユンボクに「論功行賞のとき…本当にヨンボクのことを頼むのか…」と聞きます。ユンボクは「はい…」と答えます。ホンドは「お前たちは…兄弟に見えないな…」と言います。ユンボクは、その言葉にドキッとします。そして悟られないように「何のお話ですか…」と、聞き返します。ホンドは「友愛が深い…兄弟は争うのが普通だが…お前たちは…とにかく変わっている…」と言います。
ユンボクは寝返りを打つと、ホンドの顔を見て「友愛が深いことはいいことですよ…お休みなさい…」と言います。そして、また寝がえりをして、ホンドに見えないように指を動かします。ユンボクは、ヨンボクと影絵をして遊んだことを思い出していました。指で鳥の形や犬の形を作り、ロウソクの灯りで照らして、障子に写して遊んだことをです。楽しかった映像と笑い声が脳裏に蘇っていました。そこへ父のハンビョンが入って来て「お前たち…まだ反省していないのか…将来、御真画師を遂行し、差備待令画員になり…高霊シン氏の家門を輝かす大画員になるんだ…」と言って叱りつけます。しかし、ユンボクとヨンボクは、懲罰のために手を上げさせられたままクスクスと笑いだします。
父は、反省の色が見えない二人を見て、さらに怒り出し「夜を明かす気だな…さらに2刻、反省しろ…」と言うと部屋を出て行きます。ユンボクとヨンボクは「父上…」と言うのですが、そのすぐ後に目を合わせて、また笑いだします。ユンボクにとっては懐かしい思い出でした。ユンボクは、小さな声で「兄上…少し待ってくれ…」と言います。ホンドはその声を聞くと、ユンボクの方を向いて、ユンボクの後姿をじっと見ていました。
図画署では別提と元老画員が話をしていました。
元老画員が「檀園ですが…下絵を終えたそうです…」と言います。別提は「フン…」と息を吐くと「そうですか…」と答えます。元老画員は「これから彩色に移れば御真は完成です…一体どんな絵を描こうと…主上が秘密にされるのが気になります…」と言います。別提は静かに「そうですな…それは絵の完成後に心配すればいい…」と言います。元老画員はお茶を飲みながら別提を見つめます。
御真画師の会場では、内侍が顔料の壺を運び入れ、並べていました。ホンドとユンボクは、座禅のように目をつぶり、心を静めていました。
内侍が退室すると、ホンドが目を開けユンボクに「さあ…絵具を溶け…」と命じます。ユンボクは「はい」と答えます。二人は描きかけの御真に深々と一礼します。
ユンボクは顔料の壺のふたを次々と開けて行きます。するとユンボクは、顔料の異変に気がつきます。ユンボクは「師匠…」と言いながら、顔料をホンドに見せます。そして驚いた様子で「黒くなっています…」と言います。ホンドは顔料壺を手にして、中をじっと見つめます。ユンボクは「昨晩、確認した時には赤かったのに…これは…赤い色だったのに…」と言って動揺します。ホンドは慌てて他の壺の蓋を開けて見ます。
赤の顔料はすべて変色していました。ユンボクは動揺して「どうしましょう…どうすれば…」と言います。ホンドは「落ち着け…」と言いますが、その顔には苦悩がにじんでいました。ユンボクは「師匠…」と言います。
ホンドは、顔料の壺の中をじっと見つめ、指を中に入れて何かを確かめていました。ホンドが指を出して見ると「これは…」と言います。それを見たユンボクは「何ですか…師匠…」と言います。ホンドは「銀粉だ…」と答えます。ユンボクは「銀粉ですか…」と聞き返します。するとホンドは「朱砂に銀粉を混ぜれば一日で黒くなる…」と言います。ユンボクは、泣きそうな顔で「どうしますか…どうすれば?…師匠…」と言います。ホンドは何か考えながら「騒ぐな…」と静かに言います。そして「一体誰がやった…やられてばかりでいられん…」と言うと、壺を置き立ちあがります。ユンボクも立ちあがって「どちらへ?…」と言います。ホンドは「必ず彩色を完成させないと…」と言います。ユンボクは、切迫した表情で「宮殿外に出るのですか…御真画師中に外に出ては…」と喋りますが、ホンドは静かに「話を聞け…」と言います。そして「ここを動くな…」と言うと退室します。ユンボクはいたたまれずに「師匠…」と言ってホンドを追いかけます。
ユンボクは「師匠…師匠…」と言いながら庭まで出ると、ホンドに追い付きます。そして「方法はあります…」と言います。ホンドは「どんな方法だ…」と言います。するとユンボクは興奮して「兄の色を使います…」と言います。ホンドは「何だと?」と聞き返します。ユンボクは「色を見たでしょう…竜袍を染める顔料で兄が作ったものです…」と言います。ホンドは「正気なのか?…腐った朱砂より大きな災いを呼ぶ…」と言います。ユンボクは「彩色はやめられません…」と言います。ホンドはじっと考えていました。ユンボクは「師匠…」と言います。
ユンボクは、懸命に走っていました。そしてヨンボクの仕事場に付くと、息を切らしながら「兄上…」と呼びます。ヨンボクは、足場に乗って建物の塗装をしていました。ヨンボクはユンボクが来た事に気づきません。ユンボクは小石を拾いヨンボクに投げながら「ヨンボク兄さん…」と叫びます。
ヨンボクは、小石が足に当たるとユンボクが来た事に気づきます。ヨンボクは笑いながら「ユンボク…」と言います。ユンボクはそんなヨンボクの顔を見てホットします。そのユンボクの後ろに、不審そうな顔をしたぺクぺク先生の孫娘がいました。
ヨンボクは、早速顔料を作り始めていました。そこへぺクぺク先生の孫娘がやって来て、ヨンボクが作業している手を握ります。
孫娘は「急いで大量に作ると中毒に…」と言ってやめさせようとしますが、ヨンボクは孫娘の手を振り切って「急ぐんだ…」と言います。その衝撃で作業台から乾燥させたベニバナが落ちます。ユンボクはそれを拾おうとしますが、孫娘はヨンボクの腕を握り「危ないわよ…」と言ってやめさせようとします。ユンボクは、怒って「構わないでくれ…」と言うと腕を振り切ります。そして小さな声で「必要なんだ…」と言うとベニバナを拾い始めます。孫娘は泣きそうな顔で「どうしてなの?…」と言いますが、ユンボクは聞く耳を持ちません。
御真画師の会場では、竜紋の布を掛けた下絵の前に、ホンドとユンボクが座っていました。その表情には、険しいものがうかがえました。
ホンドはユンボクに「いつ届くんだ?…」と聞きます。ユンボクは「すぐだと…」と言います。ホンドは「お前のせいで…私の心はいつも戦場のようだ…」と言います。ユンボクは心配そうな表情で「エエー」と言います。ホンドは「お前のせいで…不安が絶えない…」と言います。ユンボクは、困った表情で「すみません…師匠…」と言います。そして大きなため息をつき「どうすれば…遅れたら大変なのに…」と言います。ホンドは「いつ完成すると?…」と聞きます。ユンボクは泣きそうな表情で「出来たらすぐ…持ってくると…」言います。ホンドは険しい顔をして「見てこい…」と言います。ユンボクは「はい」と答えると立ちあがり退室します。
丹青所では、毒ガスが発生する中、ヨンボクは懸命に顔料を作っていました。
ヨンボクは煙に巻かれながら、窯の中の紅色の液体をひしゃくで混ぜていました。ヨンボクは、苦しそうに咳をしつづけていました。
宮殿では、王様が側近のホン・グギョンに書類を渡すと「ついに今日から彩色だな…」と言います。グギョンは「はい…殿下…」と言います。王様は「檀園なら、平凡な方法は取らないだろう…」と言います。
丹青所では、ヨンボクが懸命に顔料を作っていました。作業台には、ユンボクが画員試験に合格した時の携帯用の羅針盤が置かれていました。そして、その羅針盤に付いている日時計を見ながら作業を進めていました。
王様が宮殿の執務室から出て、御真画師の会場へ向かいます。ユンボクは外に出てヨンボクを待っていました。そこへ役人たちが「もう主上殿下が来られる…急ごう…」と言いながら通り過ぎて行きます。ユンボクの心は焦っていました。
ユンボクは「主上殿下…」と言うと、大きくため息をつきながらヨンボクが来るのを待っています。「早く来ないと…」と言いながら、ユンボクの心は焦るばかりでした。
その頃ヨンボクは、まだ丹青所の色調室で悪戦苦闘をしていました…そして、顔料が出来上がると壺に顔料を入れます。毒ガスと疲れの影響からヨンボクの目はカスミ、ふらつきます。
王様は、御真画師の会場のすぐ近くまで来ていました。ユンボクは以前として、外でヨンボクが顔料を持ってくるのをおりの中の虎のように、行ったり来たりと歩きながら待っていました。
ホンドは一人、御真画師の会場の竜紋の布がかけられた、描きかけの御真の前に座っていました。
ユンボクが疲れて石の上に座っているとヨンボクの声が聞こえて来ました。「ヨンボク…」と…ユンボクが振り向くと、ヨンボクは走って顔料を持って来ました。
ユンボクは立ちあがると「兄上…」と言います。ヨンボクは、息を切らせながら「間に合ったか?…」と聞きます。ユンボクは「はい」と答えると、壺の蓋を取り顔料を確かめます。指の先で顔料を取り感触を味わっていました。
その様子を見ていたヨンボクが心配そうに「使えるか?…」と聞きます。ユンボクは泣きそうな顔で「兄上…ありがとう…」と言いながらヨンボクに抱きつきます。ユンボクは「本当にありがとう…」と涙声で言います。今まで強張っていたヨンボクの顔は頬笑み、ユンボクの背中にそっと自分の手を回します。
ホンドは、顔料が届くのを待ち切れずに、ユンボクを探しに来ていました。そして、二人が抱き合っている姿を初めて見ました。ホンドの目には、好き会った男女が抱擁しているとしか見えませんでした。ホンドは何も言わずに、御真画師の会場へ戻ります。
ユンボクはヨンボクに「ありがとう…助かった…ありがとう…」と言うと御真画師の会場へ戻ります。ヨンボクはその後ろ姿を嬉しそうに見ていました。
御真画師の会場では、ユンボクがヨンボクからもらった顔料を絵具皿で水に溶いていました。王様は自分の御真の下絵の線をじっと見つめていました。ホンドは御真を挟んで王様の前に立ち低頭していました。
王様は「肖像でも生きた筆さばきが感じられるな…檀園…」と微笑みながら言います。ホンドは「はい…殿下…」と言います。王様は「彩色が完成して報審(ポンシム)すれば…大臣達がこの絵にどんな攻撃をするか…それにより…予だけでなく…お前たちに災いが起こるかもしれなぬ…それでも予を信じ、御真を完成させてくれるか…」と言います。ホンドは「殿下…画員はひたすら自分の筆先だけを信じ…他のことは考えてはならず…考えもしません…この肖像中に…主上殿下の魂を込められるか…絵描きの関心はそれだけです…」と言います。王様は振り向くとユンボクを見て「若い画工にも尋ねよう…やれるか…」と聞きます。ユンボクは、顔料を溶く手を止めて低頭します。そして「はい…私は師匠に従います…」と答えます。王様は、満足そうな顔をしていました。そしてふと、ユンボクが溶いた紅色の顔料に気を止めます。
王様は「唐朱紅(タンチュホン=清国製の朱紅の絵具)より澄んで…倭朱紅(ウェチュホン=日本製絵具)より落ち着いている…素朴でほのかに光を放つ…その赤色は何だ?…」と聞かれます。ユンボクは「はい…掌破刑のとき…丹青所に追われた兄のことを覚えておられますか…」と言います。王様は「覚えている…」と答えます。ユンボクは「兄は…調色室で、朝鮮の花で、朝鮮の色を作りました…」と答えます。王様は「朝鮮の色だと?…」と言います。そしてホンドを見て「御真を完成させる時が来たようだ…」と言います。ホンドは無言で深く一礼します。
別提は図画署の自室に、息子ヒョウォンを読んで「最高の画員になるには…文人画も描かなければならない…」と言いながら、絵を描いて見せます。そして「手先と神経を磨いてこそ…好い画員になれる…分かったか…」と言います。ヒョウォンは力なく「はい…」と答えます。別提は元気のない息子を見て「どうした?…ユンボクのことで顔色が悪いのか…」と聞きます。ヒョウォンは何も答えませんでした。別提は「待ってみろ…人のことは分からない…終わるまでもう少し見ていよう…」と、自信ありげに言います。ヒョウォンは「どういう意味ですか?…」と聞きます。
そこへ別提の手下の画員が部屋に入って来て「別提様…」と言います。別提は「ああ…来たか…どうなった?…」と聞きます。画員はヒョウォンを見ると立ちあがり別提の側まで行き、ヒョウォンに聞こえないように小さな声で「彩色を始めたようです…」と言います。別提の顔色がすぐに変わり「何?彩色を始めた?…」と言います。別提は画員に「どうしてだ…一体どこから顔料を手に入れたんだ…」と言います。
丹青所の作業場では、ヨンボクが足場に乗って仕事をしていました。そこへぺクぺク先生の孫娘が来て「ヨンボク…御飯よ…」と、呼び掛けます。ヨンボクは孫娘の方を振り向くのですが、孫娘の姿がユンボクの手を振る姿に見えます。ヨンボクは目をこすって確かめるとそこにはユンボクの姿はなく孫娘がいました。
孫娘は手を振りながら「降りて来て…御飯よ…」と言います。しかしヨンボクは「ユンボクはどこに?…」と言います。孫娘は「何を言っているの…」と不審な顔をして言います。それでもヨンボクは、ユンボクの姿を探していました。
孫娘は、少し膨れた顔で「私の前で、いもしない弟を探すの?…」と言います。
ぺクぺク先生は、色調室で顔料を作っていました。そこへ孫娘が膨れた顔つきで入って来ます。そしてぺクぺク先生に「ヨンボクが変よ…」と言います。ぺクぺク先生は、薬の調合をしながら「どうした?…」と聞きます。すると孫娘は「人を見間違えたり…よく転んだり…目もかすむようで…」と心配そうに言います。ぺクぺク先生は「手先の力が無くなり…呼ばずとも声が聞こえるのか…」と聞きます。孫娘は、ぺクぺク先生を見て「何か知っているんでしょう…どうしてなの?…」と聞きます。ぺクぺク先生は、目を大きく見開いて「中毒症だ…」と答えます。孫娘は心配そうに「中毒?…」と聞き返します。ぺクぺク先生は「短時間で顔料を多く作ったからだ…しばらくは顔料を扱わせずに…様子を見てやれ…幻覚を本物だと思い込む…」と言います。孫娘は心配そうな顔つきになります。
御真画師の会場では、いよいよ彩色に取り掛かります。ユンボクは献身的にホンドの助手を務めます。ユンボクは、ホンドのひと筆ひと筆を確りと見つめていました。
別提は宮殿の倉庫の事務室に来ていました。そして役人に「これは御苦労ですな…」と言います。役人は「チャン別提来たのか…」と言います。別提は「もしや…御真画師の画員達に…何か新たに渡しましたか?…」と尋ねます。役人は「新たに?…」と聞き返します。別提は「例えば…顔料とか…」と尋ねます。役人は素っ気なく「それはない…」と答えます。別提は「そんなはずがない…彩色が始まったのに…」とニヤツいた顔で言います。役人は語気を強めて「私が知る限り何も渡していない…」と言います。別提は役人の顔を覗き込むようにして「ご苦労様…」と言うと、倉庫の事務室から立ち去ります。
別提は、右議政とキム・グィジュの前で「間違いなく…他の色を使って竜袍を塗っています…」と言います。右議政は「それなら…王大妃様の話しのように、御真画師の終わりを待てば…おのずからその過失が表れる…」と言います。キム・グィジュは「そうです…」と答えます。右議政は「御真画師が無事に終わることを必ず阻まねば…」と言います。キム・グィジュは「私が報審(御真を品評し最終判断を下すこと)に参加する王族たちに…話しておきます…」と言います。そして「今度こそ…勝手に振舞う主上の鼻っ柱を折る機会です…」と言います。右議政も「そうだ…絶えず踏みつけて、限界を分からせるのだ…そうしてこそ、若さゆえの血気を鎮められる…」と言います。キム・グィジュも「そのとおりです…」と言います。
丹青所の色調室にはヨンボクがいました。後ろからぺクぺク先生の孫娘が「何をするの?…」と声をかけます。ヨンボクは「竜袍を塗るには7斤5両が必要だ…もっと作らないと…」と言います。孫娘は「ダメよ…」と言って、体を張って止めようとするのですが、ヨンボクは小さな声で「やるしかない…」と言います。孫娘は語気を強めて「弟だからと言って、ここまでするの?…」と心配して言います。ユンボクは穏やかに「アイツは…私だ…」と言います。孫娘は「どういうこと?…」と聞きます。ヨンボクは「アイツが笑えば…私が嬉しい…アイツが泣けば…私が悲しい…自分が幸せになるために…アイツを助けたいんだ…」と言います。孫娘はもうそれ以上何も言うことが出来ませんでした。
ユンボクは外でヨンボクを待っていました。そこへヨンボクがやって来て「ユンボク…」と声をかけます。ユンボクは「兄上」と言います。ヨンボクが走って来ました。
ヨンボクは「始めたそうだな…」と言うと、顔料の入った壺をユンボクに渡します。ユンボクはヨンボクの顔を見て異変に気付き「ところで、兄上の顔…」と言います。ヨンボクはごまかすように手を顔にやり「何か付いているか?…」と言います。ユンボクは心配そうに「顔色が悪い…」と言います。ヨンボクは何もないようにして「日々が働きづめだからな…休めば大丈夫だ…」と明るくふるまいます。そして「お前は疲れないように…たくさん食べろ…」と言います。ユンボクは顔料の入った壺を上に上げて「ありがとう…」と言います。ヨンボクはユンボクのかぶっている冠を両手で真っすぐになおしてやります。ユンボクは心の中で「もうすぐだ…報審が終われば…兄上は図画署に戻れる…少し待ってくれ…」と言います。ヨンボクは笑顔で「頑張ってこいよ…」と言います。ユンボクはヨンボクを見つめながら、小さく何度も首を縦に振ります。ヨンボクは「早く行け…」と言います。ユンボクは笑顔で別れます。ヨンボクはユンボクの後姿をずっと見つめていました。そして振り向いて丹青所に帰ろうとすると急に目まいに襲われ、その場にうずくまってしまいます。
ユンボクは、兄が作った顔料を絵具皿で水に溶いていました。そしてそれをホンドに渡します。ホンドはユンボクから筆を受け取るのですが、一瞬考えて、その筆をユンボクに取るように目で合図します。ユンボクが筆を受け取ると、ホンドは絵具皿もユンボクに渡します。不思議に思うユンボクに、ホンドは「お前が彩色しろ…」と言います。ユンボクは驚いて「私がですか…」と聞き返します。ホンドは、落ち着いた声で「お前の兄が…お前の為に作った色だ…お前の手で…王の竜袍に…その色を塗れ…」と言います。ユンボクは困った表情でしばらく考えて「師匠…」と言います。ホンドはユンボクを見つめて、小さく何度も首を縦に振ります。
ユンボクは、王様の竜袍にヨンボクの作ってくれた朱色を塗り始めます。それが終わると細密な部分をホンドが描き始めます…ユンボクが疲れて筆を持ちながら居眠りを始めると、ホンドがそれに気づき、ユンボクの手からさっと筆を取り上げます。そして「おい…後ろに下がれ…」と言います。ホンドとユンボクは力を合わせて御真を描き続けます。
丹青所の作業場では、ヨンボクが足場に乗って作業をしていました。その時、ヨンボクの目がかすみ始めます。そして「兄上」と呼ぶユンボクの幻聴の声が聞こえます。ヨンボクが振り向くと、そこには女装をしたユンボクの姿が幻影として見えていました。ヨンボクはユンボクを見て嬉しそうに微笑みます。塗料の入った壺を手から話します。壺は地面に落ちて粉々に割れてしまいます。ヨンボクは笑いながら、女装をしたユンボクをモデルにして、自分が絵を描く姿を思い浮かべます。ユンボクは恥じらいの笑みを見せ、ポーズを作ってヨンボクを見つめていました。ヨンボクは真剣にユンボクの絵を描いていました。
ヨンボクが絵を描き終わると、ユンボクの顔から一筋の涙が流れます。そして、とめどもなく、涙があふれて来ました。ヨンボクはそれに気付き、ユンボクに近づくと手で涙をふいてやります。しかしユンボクの涙は止まりませんでした。
気がつくとヨンボクの姿は正装した画師の姿から丹青所の作業員の姿に変わり、ユンボクは足場の上を歩いて立ち去ろうとしていました。ヨンボクは女装したユンボクの姿を見つめながら「ユンボク…」と声をかけます。ユンボクは涙目で振り返ります。そしてまた前を向いて歩いて行きます。ヨンボクは「ユンボク…危ない…ユンボク…ユンボク…来い…ユンボク…こっちだ…私の手を取れ…」と言いながら、女装したユンボクの幻影を追いかけます。そして、足場が無くなったときに地面へと落ちてしまいます。
地面にはぺクぺク先生の孫娘がいました。孫娘は「危ない…」と叫びますが、ヨンボクは地面に叩きつけられます。
その時ユンボクは、御真画師の会場で不思議な気配を感じていました。そして、隣にいたホンドが「完成したな…」と、ユンボクに声をかけます。ユンボクはホンドと視線を合わせます。二人は立ちあがり、御真画師を見つめていました。
ユンボクはホンドに「待ってください…何か足りません…」と言うと前に進み筆を取ります。そして王様の眉毛の中に小さなホクロを描き込みます。ユンボクはゆっくりとホンドを見上げます。そして立ち上がり元の位置に戻ってホンドと二人で、また御真画師を見つめます。二人は見つめ合い、満足そうに笑います。
その時ユンボクが、気が抜けたように倒れます。ホンドはユンボクを抱きとめて「ユンボク…ユンボク…大丈夫か…ユンボク…」と声をかけます。
ユンボクは、画員の控室に運ばれて医師の手当てを受けていました。
医師は「休めば大丈夫だから…起きたら薬を飲ませて…」と言います。ホンドは医師に頭を下げて「はい」と答えます。医師が退室すると、知らせを聞いたのか、王様の側近のホン・グギョンがやって来ました。
ホンドは「これは都承旨(トスンジ)様…」と言います。グギョンは「容態は?…」と聞きます。ホンドは「すぐに回復します…」と答えます。グギョンは「御真を終えると気力が尽きて倒れると聞いた…二人は大事を成し遂げた…宮殿の出入りを許す…報審まで休んで元気を出してくれ…」と言います。ホンドは「そうします…」と答えます。グギョンは退室します。ユンボクは意識が戻らないまま眠っていました。ホンドは、疲れきって座り込み壁にもたれかかります。そして「チビ助が頑張ったな…」と言います。
ユンボクは目を覚まします。ユンボクの前には正装したヨンボクがいました。ユンボクは「兄上…」と呼びます。ヨンボクはユンボクの声に気付いてユンボクを見ると「起きたか…」と言います。ユンボクはヨンボクを見て、小さく何度もうなずきます。
ヨンボクは「もっと寝てろ…」と言います。ユンボクは「どこに?…」と言います。ヨンボクは淋しそうに「寝ていろ…」と言うと立ちあがります。ユンボクが「私も行く…」と言うと、ヨンボクは「お前は来てはいけない…」と言います。ユンボクは怒ったような顔をして「どこへ?」と聞きます。ヨンボクは振り向くとユンボクに「元気でな…」と言います。そして悲しそうな顔をして部屋の戸を開けます。ヨンボクが戸を開けた瞬間、ユンボク目掛けて光が飛び込んで来ます。ユンボクはまぶしさに耐えかねて、手で顔を隠します。ユンボクは「兄上…」と呼びますが、ヨンボクは振り向きもせずに行ってしまいます。
ここで第11話 御真画師(結)は終わります。
ジョンスクはけなげですね!ホンドの為に陰膳までするなんて…よほどホンドのことが好きなんでしょうね。それにしてもホンドは鈍感ですね。せっかく刺繍までしてくれた汗ふきをユンボクの手に巻くなんて…ジョンスクが見ていないからいいのですが、ジョンスクに知れたらジョンスクが傷つくと思わないのかな…
ただ、ホンドがユンボクにひかれて行く気持ちもわかるような気がします。単に才能が有るだけではなく、危なっかしくて面倒を見てやらねばと言う気持ち…どこから見ても女としか見えない容姿…そして今回はついに影を見て確信したような気がします。ホンドは、ユンボクが男であることを完全に疑い始めました。おまけに、ユンボクにはその気が無かったのかもしれませんが、ヨンボクがユンボクの背中に手をまわした時に、ホンドにはそれが好き会った男女の抱擁にしか見えませんでした。黙って、その場を去っていったホンドの気持ちは複雑な物が有ったと思います。
複雑と言えば、ユンボクの心も複雑で、男として生きてきたのに女と言われ…いつもそれを否定して生きねばならない生活は、辛い物が有ったと思います。おまけに師匠から、お前たち兄弟は変わっていると言われれば、兄ヨンボクを意識しなければいけないようになって来ます。兄として思っていた物が、帰り見れば一番近い、自分を守ってくれる異性だったと気づかされたのではないでしょうか。ユンボクの言葉に「真実は、心の中にあります…」と言うのが有りましたが、その心が揺れ始めたのは事実だと思います。これから先も大揺れになると思います。
それから、ヨンボクについては、残酷と言うか可哀想と言うか、何とも表現しようのない人生ですね。父に命じられるままにユンボクを弟として守り続けたヨンボクでしたが、それがいつの間にか愛情へと変わって行ったんですね。顔料を大量に作れば、薬品中毒になると知りながらも、ユンボクの為には作らずにはいられなかった。ヨンボクの心が痛いほどよく分かりました。ヨンボクの言葉に「アイツは…私だ…アイツが笑えば…私が嬉しい…アイツが泣けば…私が悲しい…自分が幸せになるために…アイツを助けたいんだ…」と有りましたが、愛してなければこういうセリフは出て来ないと思います。そして、幻影の中でユンボクの女装の絵を描いていましたが、いつかは描きたいと心底思っていたんでしょうね。ただ…ただ…涙でした。
これからが佳境に入っていくと思います。ますます目が離せないようになってきました。では、次回をお楽しみに…
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