2012年1月5日木曜日

韓流時代劇「風の絵師」第5話端午風情を見ました


5話 端午風情



ユンボクは川岸で絵を描いていました。そこへユンボクに服を盗まれた女がやって来ます。女はユンボクを見つけて「あんた!ここにいたのね…服を返して…」と言うと、怒ってユンボクに近寄ります。ホンドはユンボクに「何をした?」と聞きます。ユンボクは慌てて「訳があります…」と言いまがら、描きかけの絵や道具をまとめます。女はユンボクに「服を返して…返さないつもり?」と、すごい剣幕で迫ります。ユンボクの着ている服を引っ張ろうとすると、ホンドがユンボクを助けようと前に出て「何をするんですか?…」と言います。女は興奮して「盗んだのよ…」と言います。ホンドは「何のことか…」と、とぼけますが、女は「のいて下さい…」と言うと、ホンドのかぶっていた物を取り払います。すると女たちが一斉に、キャーと悲鳴を上げます。かぶり物の中から、男のホンドが出てきたからです。



 女は「男の人よ…」と驚きます。ホンドはユンボクに「盗んだのは本当か…」と聞きます。女は遠くの方を見て「こっちへ来て…」と誰かを呼びます。すると、「どうした…」と言って、女を巨木の影で助けた男がやって来ます。男はホンドを見て「怪しげな奴め…白昼に女人をからかうとは…恥ずかしくないか…」と言います。

 するとホンドは、機転を利かして「違うんだ…妻は少々体が弱いので…今日、谷で絵を描くと聞いて、どうしても見守りたかった…それの何が悪い…違うか…」と言います。すると周りの女性から「頼もしいわね…」と言う声が聞こえて来ます。



 女は「違うのよ…服を盗んだのはこの人よ…この人も男よ…」とユンボクに指を指して言います。すると助けに来た男が「どう見ても女だ…間違えていないか…」と女に聞きます。すると女が「服を脱がして…」と言い、ユンボクにつかみ寄ろうとしますが、ホンドが「病弱な妻に何をするんだ…」と言います。そしてユンボクを見て「大丈夫か…」と聞きます。ユンボクは状況に合わせて、額に手をやり「あああ、クラクラする…」と言います。ホンドは「無理はするなと言っただろう…絵なんかいらない…帰ろう…」と言います。その時、ユンボクは図画署の制服を落とします。それを見た女は「あれを見て…」と言います。ホンドは「逃げろ…」と叫びます。ユンボクが絵の道具を取ろうとして戻ると、チョンヒャンが「画工…これは私が…」と言います。ユンボクは「頼む…」と言うと、制服と絵だけを持って、ホンドと走って逃げます。



 渓谷の出入り口では、武官と出会います。武官は「一体何だ…あれはさっきの奴…あいつだ…なんてことを…捕まえろ…止まれ…待て…追うんだ…」と言って追いかけますが、二人はそれを振り切って逃げだします。その様子を別提の手下の画員が見ていました。





 ユンボクとホンドは、どうにか逃げることが出来ました。二人は川の辺の岩場にいました。ユンボクは岩場の影で服を着替えていました。

 ユンボクはホンドに「見ないでください…」と言います。ホンドは「見るはずないだろう…男同士で何を言ってる…頼まれてもするか…」と言います。それでもユンボクはホンドの方を見て、見られないように用心しながら着替えをしています。

 しかしホンドは、なぜかしらユンボクに対して興味が湧く物を感じて、無意識に横目でちらりとユンボクの方を見ます。ユンボクはそんなホンドを見逃さず「師匠!…見ないと言ったのに…」と大声を出します。ホンドは「見たらどうだというんだ…ぐずぐずせずに早く着ろ…ところで…どうして男のくせに骨が細い…女のような…」と言います。ユンボクは驚いて尻もちをつきます。



 ユンボクは慌てて「女ですって?…」と反論をします。ホンドも向きになって「女だと言ってもだませそうだという意味だ…もし女ならとても嫁には行けないがな…」と言います。ユンボクは「ハァー、そうですか…師匠が女なら見向きすらしませんよ…」と言います。ホンドは「私がどうだって?…ホォホォホォー」と言います。



 ホンドは、ユンボクの描いた絵を見ながら着替えていました。そこへユンボクがやって来ます。ホンドはユンボクに「ひどく気になる…完成させてくれ…」と言います。ユンボクは、自分の描いた絵を見て「客がいっぱいで、主がありません…」と言います。ホンドは「明日の午時までに完成できるか?」と聞きます。ユンボクは真剣な顔つきで、首を縦に振ります。ホンドは「しかし…何処で描くつもりだ?…」と聞きます。ユンボクは「行くところがあります…」と答えます。ホンドは「それなら望むものを探して完成させてこい…」と言います。ユンボクは「はい、師匠…」と答えます。



 図画署では、画員試験を受けている生徒達が、夜を徹して懸命に課題と取り組んでいました。生徒長は、旧来の型にはまった伝統の描き方で描いていました。試験官として見回っていた別提は、我が子の絵を見て、納得したようにうなずいていました。

 別提は「そうだ…それでいい…いいぞ…」と、笑いながら言います。そして、皆を見回して「最後まで頑張れ…その紙も筆も顔料もすべて民の血と汗だ…粗末にしてはならん…」と言います。生徒達は一斉に「はい」と答えます。



 インムンが「ポクホン様…」と別提に呼び掛けます。別提は「おおー、インムンか…」と言います。インムンは「お疲れ様です…」と言います。別提は「では頼むぞ…」と言って試験会場の庭を出て行きます。

 インムンは、生徒長の絵を見ると「やはり血筋のち密さがあるな…頑張るんだぞ…」と言います。生徒長は描くのをやめてインムンの顔を見ます。そして神妙に「はい…」と答えます。となりで聞いていた生徒が、生徒長を見て親指を上げて喜びます。そして生徒長に近づいて「ユンボクはまだか…」と言います。生徒長がユンボクの席を見るとユンボクはいませんでした。となりの生徒は「戻らなければ、お前が画員になったのも同然だ…」と言います。生徒長は気難しい顔をして「何を言っている…」と言います。するととなりの生徒が「そうだろう…ユンボクは女みたいでもお前と争う…」ここまで言うと、生徒長はさえぎり「静かにしてくれ…」と言います。さすがの生徒長も神経質になり、少しいらだっているようでした。となりの生徒は、いつもの生徒長と違う神経質な顔を上目使いに見て「分かった、静かにするよ…」と遠慮がちに言います。

 



 ホンドが家に帰ると部屋に男が二人座っていました。一人の男がホンドの顔を見るなり立ちあがってホンドに近づきます。そして「生きてたんですね、ホンド先生…」と言うと、跪き泣き始めます。別の男が「だから生きてると…」言います。ホンドは「トクポン…立ってくれ…トクポン…」と言うと、肩を抱いて立たせます。すると別の男が「怖がり過ぎて、連れて来るのが大変だった…」と言います。ホンドは、トクポンのことを心配していた様子で、男の肩を抱いたまま声を詰まらせ「さあ、座れ…」と言って部屋の奥に連れて行きます。ホンドは別の男に肩を軽く叩きながら「出て行ってくれ…」と言います。そしてトクポンに「さあ座れ…」と言って座らせます。ホンドは「何て格好だ…何処にいた…」と心配そうに言います。トクポンは泣きながら「各地をさまよっていました…」と言います。ホンドは心配そうに「苦労したな…ソ・ジンの消息は?…」と聞きます。その時、出て行った男が部屋の戸を開けて「ところでまた平壌か…馬の準備は時間が…」とホンドに言います。ホンドは男に「入って来るな…」と怒ったように言います。男は「時間がかかるから早く言ってくれよ…」と言うと、戸を閉めてその場を去ります。



 ホンドはトクポンに「とにかく消息は聞いたのか…」と、焦ったように聞きます。トクポンは泣きながら「生きています…」と言います。ホンドは「誰がだ?…」と聞きます。トクポンは「師匠が帰った後、調べてみました…ところが…」と、ここまで言うと、トクポンは周りを見て、誰もいないことを確認して、ホンドに耳打ちします。

 ホンドの顔付が変わります。そして「何だと…子どもが生きている?…」と聞きます。トクポンは「はい、しかし…何処で何をしているか分かりません…」と答えます。ホンドは信じられない様子で「本当に子どもは生きているのか…」と聞きます。トクポンは「確かです…」と答えます。そして「先生…恐ろしいです…まだ怖いんです…」と泣きながらホンドに訴えます。ホンドは「心配することはない…私が何とかする…」と言ってトクポンを慰めます。



妓房では、朝廷の閣僚たちが集まっていました。そこで、絵の批評が行われていました。「また、猫の漢字は…70歳の老人の漢字と中国語の発音が同じです。猫が80歳の意味を持つ蝶を見ているので…長寿を祈る絵でしょう…」と言います。礼曹判事(イエジョパンサ)のキム・シオプは「そうに違いないな…」と言います。するとキム・グィジュ(王大妃の兄)は「そうですとも…」と言います。そして妓房の女将に「どうかな…あの絵を礼曹判事様に差し上げないか…」と言います。女将は「さすがに目の高い道学の先生ですが、その絵を誰が描いたかお分かりでない…」と言います。キム・グィジュは「絵が解釈できれば充分だ…作者の名前がそれほど重要か…」と言います。そして、礼曹判事に「違いますか…」と、同意を求めます。すると末席に座っていた両班が「礼曹判事様の健康を祈って乾杯しましょう…」と言います。皆は「そうしよう…」と言って、盃を取ります。



すると、一番末席の大商人キム・ジョニョンが「私が解釈してみます…」と言います。礼曹判事は「他にも意味が?…」と聞きます。キム・ジョニョンは、一礼して立ちあがり、絵の解釈を始めます。

「この花はセキチクです。花言葉は“青春”…そしてこの下の花です…スミレです…ところが、このスミレは早春に…セキチクは初夏に咲ます…なぜ一緒に咲いたのか…それは伝えたいことがあるからです…昔の人はスミレのことを“如意草”と呼びました。この絵は…礼曹判書様が80歳まで生きても…青春の健康さを保つことを祈り、その他に…“すべてが思いのままに”…そんな意味でしょう…」と言います。すると席上では「そんな意味もあるのか…」と言う声があちこちで聞こえ、笑い声が上がりました。



キム・ジョニョンは「最後に、花が咲く線の流れと右側にいる猫と蝶も呼応しています…何気ない配置のようで、寸分も狂わず…絵全体に漂う生動感。これは…檀園の作品です。」と言います。席上からは「何?…檀園?…」などという声が聞こえて来ます。それに対して、女将は満足そうな笑みを浮かべていました。

両班の一人が「あの紙を取ってみろ…」と言います。すると先ほど解釈していた両班が立ちあがり、名前の上に張っていた紙を取ります。絵には檀園の書名が書いてありました。その場にいた人たちは、驚いたように一斉に「檀園だ…」と言います。末席の方で「あの有名な檀園か…」と言います。



一番上席にいた王大妃の叔父の右議政は、下を向いて嫌な顔をし、兄のキム・グィジュは「何と…檀園だと…」と吐き捨てたように言います。女将は楽しそうに笑みを浮かべて「このケウォル…絵の専門家の前で礼曹判事様に差し上げるのにいい加減な絵は選びません。」と言います。礼曹判事はキム・ジョニョンに「大した眼目だ…」と言います。ジョニョンは「恐れ入ります」と言って頭を下げます。そして「わずかな才の披露をお許しいただいたので、この席の費用はお任せください…」と言います。すると女将が「さすがは、大行首は言うことが違いますね…」と言います。そして「いかがですか…」と言います。

両班たちは口々に「大行首か…奴がキム・ジョニョンか…ウサン大監の金づるだという商人だ…風格は両班そのものだな…」と言います。ジョニョンは「立派な方々が国政を見てくださり…安心して商売が出来ます。感謝の心を現す為に、この席を用意しました。ごゆっくりどうぞ…」と言います。すると、キム・グィジュが盃を持って「さあ、飲もう…」と言います。



女将は、妓房の庭を歩いていました。そこへ、チョンヒャン付きの下女が通りかかります。女将は「マンニョン…」と名前で呼びとめ「チョンヒャンは?…偉い方たちが集まっているというのに…」と言います。マンニョンは、頭を下げて「大切なお客様が来たと…」と言います。女将は「大切なお客?…」と不審に思います。





チョンヒャンの部屋には、ユンボクがいました。ユンボクは、チョンヒャンの奏でる琴の音を聞きながら、酒を飲んでいました。琴の演奏が終わると、ユンボクはおもむろに描きかけの絵を取りだして広げます。そして、真剣な眼差しでチョンヒャンを見つめて「この絵の中に…入ってくれ…」と言います。チョンヒャンは「どうすれば?」と聞きます。ユンボクは「すべてを見せてくれ…その服に包まれた…すべてのものを…あなたの心を…気概…意志…そして…その中に隠された音律…」と言います。

チョンヒャンは、少し考えて立ちあがり、部屋のロウソクを消します。そして黙って服を脱ぎ始めます。ユンボクは座ったままで、静かにチョンヒャンを見つめていました。チョンヒャンは、下着だけになるとユンボクの前に座ります。ユンボクは、気品のあるチョンヒャンの姿を描き始めます。ユンボクとチョンヒャンの心は通い合っていました。



チョンヒャンの部屋の前をキム・ジョニョンが通りかかります。薄明かりのついた部屋が気になるらしく、ジョニョンは立ち止り、少しだけ開いていた扉を扇子でもう少し開けて、こっそりとのぞき始めます。

そこには、下着だけのチョンヒャンの座っている姿がありました。肩から背中にかけての諸肌が、白く美しく輝いていました。ジョニョンは、チョンヒャンの向こうで絵を描いているユンボクにも興味があるようでした。

そこへ女将がやって来ます。女将は部屋をのぞいているジョニョンに気があるらしく、ニッコリ笑いながら、しばらく黙って見ていました。その時、後ろに何か感じたチョンヒャンは、少しだけ振り向くとジョニョンと目が合いました。チョンヒャンは、素知らぬふりをして、扉をそっと締めます。

その時に、女将がジョニョンに声をかけます。

「何に気を取られていたのですか…」と…ジョニョンは慌てて素知らぬ顔をします。そして「部屋を間違えた…」と言うと、その場を立ち去ろうとします。女将は「欲しいものを見たような顔ですね…」と、笑みを見せながら言います。ジョニョンは、鋭い眼差しで振り向いて「言いすぎではないか…」と言います。女将は「言いすぎなら、お詫びします…しかし、行首様と私は…他人にはない目を持っています。」と言います。ジョニョンは「目だと?…」と、挑むような目つきで言います。女将は「最も価値のあるものを見抜く目です…連絡をお待ちします…」と言うと、会釈をして、その場を立ち去ろうとしますが、振り返って「もし行首様が…あの部屋の娘を手に入れれば…行首様の持ち物の中で最高の品物になるでしょう…」と言って、歩いて行きます。



部屋の外の出来事にも気付かずに、ユンボクは絵を描き上げたようです。ユンボクは自分の描いた絵をじっと眺めていました。

チョンヒャンが「もう私は…絵の中で生きられますか…」と聞きます。ユンボクはチョンヒャンを見つめて、静かに首をたてに振ります。チョンヒャンはユンボクを見つめて、静かに「試験に通ったら…私は画工の心の中で生きてもいいですか…」と言います。ユンボクは「心の中で?…」と言うと、少し淋しそうで、何とも言えない表情になりました。そして、チョンヒャンの脱いだ服を取り、自分の手でチョンヒャンに着せながら、優しく「どんな男も…あなたを拒めない…そして…どんな男も…あなたには誠実になる…」と言います。二人の目はしっかりと結ばれていました。しかし、ユンボクの心は晴やかではありませんでした。複雑で重たい雲が漂っていました。





宮殿では、王様が弓の入った箱を開けて、大事そうに取り出していました。弓を構え弦を思いっきり引きます。その眼は鋭く、何かに挑むような眼でした。

王様は、子どもの頃を思い出していました。

「父上…」二人で弓の練習をしている映像…

「お祖父様…父上を助けて下さい…お祖父さま…父上を助けて下さい…」と、泣きながら父の無実を訴える映像…

「早く出て行け…」「お祖父様…お祖父様…」…王様から叱責されても父の無実を訴える映像…そこには王妃(王大妃)の姿もありました。

父が無くなって、喪服を着ながら父の形見の弓を手にする映像が…

そして今、王様はその弓を手にしていました。愛おしく、思い出に浸りながら…そして「少しだけ…待ってください…」と、弓に語りかけていました。





ユンボクは、妓房の門を出て来ました。絵が出来上がった安ど感からか、心がウキウキしていました。

「鞦韆を踏んで…」と課題をそらんじながら、スキップのようにして、小走りで妓房を去って行きました。しかし、門の影で別提の手下の画員が、確りとユンボクのことを見張っていました。画員はユンボクに気付かれないように、密かにユンボクの後を追って行きます。

ユンボクは、人通りのない夜の道で、課題をそらんじながら渓谷での出来事を思い出していました。チョンヒャンと二人で乗った鞦韆(ブランコ)のことを…その時です。別提の手下の画員が後ろから忍びより、ユンボクの後頭部を棒でなぐりました。ユンボクは倒れて気絶します。画員はユンボクを道の隅に引っ張って行きます。そして、手提げ袋を逆様にして、すべてのものを外に出します。その中から、今描いたばかりの絵を見つけ出し、懐に隠すと他の画材を袋に入れて、古井戸の中に入れます。



その時、丹青所では、一人で仕事をしていたヨンボクが、絵具の入ったすり鉢を落として割ってしまいます。そこへぺクぺクの孫娘がやって来て「図画署を追われた画工ね…」と言います。ヨンボクは、自分の失敗を見られてオドオドとした表情で「どなたですか…」と聞きます。孫娘は、少しヒネタ表情で「どうしましょ…すり鉢を壊した新米は、調色室に1年間入れない…」と言うと、ヨンボクに近づいて腰をかがめ、すり鉢をかたずけていたヨンボクの肩に手を置きます。ヨンボクは「何をするんだ…」と言って、孫娘の手を払いのけます。

孫娘は悪戯っぽい目でヨンボクを見つめて、ヨンボクに鍵の束を見せつけます。そして「すり鉢程度なら持って来られるわよ…」と言います。ヨンボクは「どうしてそのカギを持っている…」と言うと、孫娘から取り上げようとしますが、孫娘はカギを持っている手をさっと引いて、取られないようにします。そして「ぺクぺク先生の手伝いでしょう…ぺクぺク先生にホ・オクという美しい孫娘がいるのを…聞いてない?」と言います。ヨンボクは、困った表情で「知らない…」と答えます。孫娘は「うんー」と言いながら立ちあがり「それはお互いに気の毒だわ…」と言って、立ち去ろうとします。ヨンボクは、困った表情で「待ってくれ…」と言います。

孫娘は振り向くと「何?…」と言います。ヨンボクは「どうすれば…すり鉢を持って来てくれる?」と聞きます。孫娘は、悪戯っぽくヒネタ目でヨンボクのことを見回して「あなたの秘密を見たから、私も秘密を作る…」と言います。ヨンボクはオドオドしながら「秘密?」と聞き返します。すると突然孫娘はヨンボクの首に手を回し、ヨンボクにキッスをしました。ヨンボクは驚いて、孫娘を払いのけます。そして口を手で拭きます。ヨンボクは怒った表情で「何のマネだ…」と言います。

孫娘は、すました表情で左手の人差し指をヨンボクの唇にあて「秘密を分かち合ったわ」と言うと、鍵を出し「行こう…」と言って、先に部屋を出て行きます。ヨンボクはほっとした表情でため息をつきます。





ホンドは、古ぼけた家の縁側に座っていました。何か懐かしいような…それでいて物悲しいような表情をして…そして、古ぼけてほこりにまみれた筆を見つけて手に取ります。その後。泥にまみれた縁側を愛おしくなでていました。ホンドの脳裏には、在りし日の思い出が蘇っていました。

ホンドは、大根を食べながら「ここは、ちり一つ無いな…人が住む家か…」と、誰かに言っていました。「ミョンヒをこき使っているのか…」と…話している相手は、友人のソ・ジンでした。ソ・ジンは「うらやましいか…それなら愚痴を言わずに、お前も相手を探せ…」と言います。

そこへ、ソ・ジンの妻と娘が笑いながらやって来ます。妻は「また冗談を?」と言います。ホンドは娘に「ユンお帰り…」と笑顔で言います。ユンは駆け寄り「おじさん…」と言って飛びつきます。ホンドは「そうか…」と言って抱きかかえ、縁側の横に座らせます。ユンはホンドになれているようで、楽しそうに話していました……

ホンドは悲しげな顔をして「何処にいる…ユン…」と言います。





その時、古井戸の中で、ユンボクが気絶していました。ユンボクはうなされていました。そして気がつくと、小さな丸い空に、月が昇っているのがかすかに分かりました。

「ここは何処だ?」と言って立ちあがろうとしますが、足に痛みが走って立ちあがることが出来ませんでした。ユンボクは足を手で押さえ「あっ、あっ、あっー」と痛そうな声を出します。近くにあった画材を取り寄せると有るはずの絵がありません。ユンボクは、慌てて、あるはずの絵を探しますが出て来ません。



ユンボクは、足を怪我しているので、気が焦るばかりで何もすることが出来ませんでした。そして「誰か…誰かいないか…助けてくれ…」と叫び続けます。その時、警備の武官2人が古井戸の側を通っていました。しかし、古井戸からのユンボクの声や物音を聞いて「井戸の幽霊の話は本当のようだな…」と言います。もう一人の武官が「まさか…早く行こう」と言って立ち去ります。ユンボクは懸命に脱出の方法を考えます。そして、脱いだ靴にひもで筆を縛り付けて「井戸だ…井戸の中だ…」と言いながら上に投げあげます。何回も何回も投げあげてやっと成功するのですが、誰も気づいてくれません。





図画署では、生徒たちが懸命に絵を描き続けていました。そこへホンドも様子を見に来ます。ユンボクの席を見るとユンボクの姿はありませんでした。試験官がホンドに気付き、「どうした…」と声をかけます。ホンドは「急に昔の画員試験を思い出して…ご苦労様です。」と言うと、図画署を出て行きます。

 ホンドは心配になりユンボクを探そうと思います。その時そこでばったりと、別提の手下の画員と合います。画員は「檀園先生…」と驚いた表情で言います。ホンドは「この時間に何処へ?」と聞きます。画員は「使いを頼まれまして…急ぎますので…」と言うと、一礼して、歩いて行きます。



図画署の別提の部屋では、画員から渡されたユンボクの絵を別提が破いていました。

別提は画員に「御苦労だった」と言うと、ロウソクの火で破いた絵を燃やします。別提は「もう檀園も…これ以上打つ手がない…」と言うと、燃えている絵を火鉢の中に入れます。



ホンドは、妓房のチョンヒャンの部屋の前に立っていました。そして、中にいるチョンヒャンに、ユンボクのことを聞いていました。

「いつ出た?」と…するとチョンヒャンが「もう一時間になります…戻っていないのですか…」と答えます。ホンドは「本当に知らないのか…」と聞きます。チョンヒャンは「知りません…」と答えます。ホンドは「私が酒宴でもしないと答えないのか…」と聞きます。するとチョンヒャンは「私も本当に心配しています…」と答えます。ホンドは胸騒ぎがして、ユンボクを探し回ります。



ユンボクは、相変わらず古井戸の中でもがいていました。

「もう時間がない…」

ホンドは、ユンボクが通りそうな道を「ユンボク!…」と名前を呼びながら探し回っていました。

ユンボクが、膝を抱えて考え込んでいると、かすかにホンドが「ユンボク!…」と自分の名前を呼んでいる声が聞こえます。ユンボクは「師匠!…師匠!…師匠!…」と叫びながら、古井戸の壁を石で叩き続けます。

「ここです…師匠!……」

「ユンボクはここです…師匠!…」ユンボクの声は、泣き声と変わっていました。

ホンドは、懸命にユンボクを探し回っていました。そして、走りながら角を右に曲がったときに、先ほど古井戸の前で幽霊の話をしていた武官の二人と鉢合わせをします。武官たちはホンドのことを幽霊と間違えて驚き「ウァー」と声を上げて尻もちをつきます。

武官は、ホンドを見て「ここで何を?…」と言います。ホンドは「もしや…小柄な生徒を見なかったか…」と聞きます。武官はすぐに「見なかった…」と答えます。そして「幽霊かと思って驚いた…」と言います。別の武官が「もう遅いから帰ってくれ…」と、泣きそうな声でわめきます。ホンドは、武官の来た方向に歩いて行きます。



その時です。古井戸の方向からユンボクの叩く石の音が聞こえて来ました。ホンドは振り向いて戻って来ます。武官たちは驚いて、身をよけぞります。

ユンボクは、ゆる井戸の中から「ユンボクは井戸の中です…」と叫びます。ホンドは古井戸に近づきます。そして、古井戸の前で、筆を結び付けたユンボクの靴を見つけます。その時「師匠…」と言うユンボクの声がしました。ホンドはあたりを見回します。

ホンドは、古井戸があるのに気が付いて、古井戸の中を見ます。ユンボクは「井戸の中です!…」と泣き叫びます。ホンドは「ユンボクか?」と言います。ユンボクは「師匠…」と答えます。ユンボクはホットしたのか、腰が抜けたように座り込みます。

ホンドが「見つけたぞ…早く来てくれ…」と武官を呼びます。武官たちは恐る恐るホンドの所へ行きます。ホンドは、古井戸の中を見ながら「ユンボク…」と呼びます。そして、武官たちが持っていた灯りを取り上げて、井戸の中を照らしながら「ユンボク…大丈夫か…」と叫びます。ユンボクも泣きながら「師匠…」と答えます。ホンドはユンボクに「そこで何をしている。怪我はないか…」と言います。そしてホンドは、武官たちが止めるのも聞かずに、古井戸の中に入って行きます。

ホンドは井戸底に着くとユンボクに「大丈夫か…なぜここに?」と聞きます。ユンボクは泣きながら「師匠…」と言うと、ホンドの体にしがみ付きます。

ホンドがユンボクを連れて古井戸の壁を登ろうとすると、ユンボクは、足の痛みがひどく倒れ込んでしまいます。ホンドはユンボクの足を調べますが、一人で動くことが出来ないと判断して、「ダメだ…背負ってやる…」と言うと、背中にユンボクを背負います。

ホンドは武官たちの手を借りて、やっとの思いでユンボクを古井戸から引き揚げる事に成功します。ホンドは武官たちに「ありがとう…助かった…」と礼を言います。

ホンドがユンボクに「時間がない、急ごう…」と言いますが、ユンボクは、泣きながら「ダメです…もう終わりです…」といいます。ホンドは「何の話だ…」と聞き返します。

ユンボクは、泣きべそをかきながら「消えました…絵が…無くなりました…」と言います。ホンドは、唖然とした表情で立ちあがり、周りを見回し、とりあえず武官に「ご苦労だった…」と礼を言います。武官は「気お付けて…」と言うと帰って行きます。ホンドは、善後策を考えていました。



ユンボクは泣きながら「どうしますか…師匠?…」と聞きます。ホンドはユンボクの前に座って「ユンボク…こうしてみよう…心に何か思い浮べろ…何か見えるか…さあ、何が見える?…何でもいい…思い浮べろ…鞦韆…鞦韆の女人…渓谷の風の音…水…岩…木…匂い…何でもいいんだ…」と言います。ユンボクは、涙を流しながら、首を横に振ります。

ホンドは「目を閉じろ…閉じるんだ…」と言うと、ユンボクの涙でうるんだ目に手をやって、ユンボクの目を閉じさせます。「何でもいいから思い出せ…見えるもの聞こえるもの…味や匂い…すべての感覚は通じる…一つ思い出せばいい…一つだけでいい…見えるか…何か見えるか…集中するんだ…見えるか…」するとユンボクの脳裏に、渓谷の映像が蘇り始めます。鞦韆を漕ぐ女人…紙を洗う女人…水浴びをする女人…

ユンボクは、目を開き、ホンドの顔を見て「はい…」と言います。ホンドは「よし」と言うと立ち上がり、ユンボクを背中におぶって走りだします。ユンボクは、ホンドの背中で目をつぶり、絵の構想を練って、頭の中で絵を描いていました。





別提の部屋に手下の画員が入って来ました。そして「まだ、戻っていません…」と報告します。別提は満面の笑みを浮かべます。そして「実にさわやかな朝だ…」と言うと、薄笑いをします。





ホンドがユンボクを背負ったまま、図画署の門を開けて入って来ます。生徒や画員たちは振り向いて2人を見ます。二人の息は「ハァーハァー…」と乱れていました。ホンドはユンボクを降ろすと「描けるか…」と言います。ユンボクは小さく首を何回も振ります。





ユンボクは、自分の席に着くと新しく紙を用意します。すると試験官がやって来て「時間内に描けるか…間に合わなくとも寸刻もまたない…」と言います。

ユンボクは硯に水を入れて、墨をすり始めます。そしてしばらく紙を見つめて、目をつぶります。ユンボクが目を開いて、再び紙を見つめると、紙の上に映像が浮かび上がり始めます。ユンボクは一気に描き始めます。

生徒達はユンボクに注目し始めます。生徒達は次第にユンボクの周りに集まり、ユンボクの描く絵を見ていました。生徒達は口々に「おお…何処で見たんだ…こんな非常識な…恥知らずだ…」と言っています。

そこへ不機嫌そうな顔をして、別提もやって来ます。生徒達は後ずさりをして、別提の為に場所を開けます。別提がユンボクの描いている絵を見ると顔が見る見る険しくなります。そして、ユンボクの首根っこを捕まえて、絵を描くのをやめさせます。

ユンボクは驚いて「別提様…」と言います。別提は「兄が春画で図画署を追われ…弟は女人だけの絵か…図画署を侮辱しおって…出て行け…」と、凄い剣幕で言うと、ユンボクを引きずり出そうとします。

ユンボクは、引きずられながらも「別提様、違います…春画ではありません…」と反論します。すると別提は引きずるのをやめて「では何だ…」と大声を上げます。ユンボクは「これは…息をし、話し、叫ぶ、生きている人たちです…端午の日だけの女人たちの姿です…春画ではありません…」と、心の中から叫びます。

しかし別提は、その叫びを理解しようとはしませんでした。

「言葉遊びは他でやるがいい…」と、凄い剣幕で怒ります。ユンボクは「別提様…別提様…」と言いますが、別提はまた、ユンボクを引きずり出そうとします。



 そこへホンドが現われて「追いだせば…試験を受けた事になりません…殿下が御覧の試験です…判断は後でも遅くないはずだ…違いますか…」と強い口調で別提を批判します。別提はホンドの顔をじっと睨みつけていました。その時線香時計の目盛りの鈴が落ちて、チリリーンと音がしました。別提は振り向いて線香時計を確認すると、残る目盛りは一つだけでした。別提はニヤッと笑って「もう線香時計の鈴は一つだな…その後…この者の運命は厳正な審査に従う…いいな…」とホンドに言います。ホンドはユンボクに近づき「急ぐんだ…」と言います。ユンボクはホンドの目を確りとみて、小さくうなづきます。





ユンボクは絵具を出して、色を塗り始めていました。ユンボクの周りには、先ほどよりも多くの生徒たちが集まっていました。中には画員たちの顔もありました。

ユンボクの筆の動きに合わせて、生徒達のため息やら応援の声やらが混じっていました。

絵の大事な個所になって、ユンボクが緊張して筆をすすめられない時などは「点を上手く描けよ…」と、生徒たちから声が掛かりました。

ユンボクが、胸に朱の点を入れると、生徒たちから一斉に「描いた!…」と声が掛かりました。生徒達は皆で拍手をして喜んでいました。生徒の中から「ユスラウメみたいだ…」と声が掛かりました。

ユンボクの目は真剣でした。どこか描き残しはないか…これでいいか…と思いながら、描きかけの絵を見つめていました。そんなユンボクを見てホンドが心配して「どうした?…早く仕上げろ…さあ…」と言います。ユンボクは線香時計を見ながら、メモリがいつ落ちるか気が気ではありませんでした。そしてまた「急げ!」とユンボクに言います。

ユンボクはそれでも描きかけの絵をじっと見ていました。ユンボクの父は、その様子を遠くから、両手を確り握って祈るようにして見ていました。

ユンボクはニヤリと笑って筆を取ります。そして、開いた空間に、覗き見の男の顔を描き始めます。ホンドが「終わったか…」と聞くと、ユンボクは「イヤ…まだです。」と答えます。

鈴のひもに、線香の火が掛かり始めます。ホンドは心配そうに線香とユンボクを交互に見ていました。ユンボクは、それでも動じずに、必死になって絵を完成させようとしていました。そして、ユンボクが線香時計を見上げると…最後の目盛りの鈴が音を立てて落ちてしまいました。

試験官が赤旗を上げて、「試験終了」と大声で号令をかけました。それと同時にユンボクは、目を見開いてホンドの方を向き「描けました!」と言います。生徒達は喜んで拍手をします。ユンボクはホンドの胸に飛びつきます。ユンボクの父はその姿を見て「よくやった!」と言います。

ホンドはユンボクを抱きあげながら「よくやった!…頑張ったな…なぜ心配ばかりかけるんだ…」と言います。ユンボクは涙を流しながら「飯代は返しました…」と言います。ホンドは「高くついたな…」と言いながらユンボクの頭をなでます。そんな二人の姿を生徒達は不思議そうに見ていました。



別提がやって来てホンドに「フン、よく描けたな…やったな…しかし…ここは図画署だからな…どんな意味だか分かるだろう…」と言うと、ニヤリと笑ってホンドの肩を叩き立ち去りました。



選考会では、元老画員たちから「呆れたもんだ…この絵の女人たちは裸でも平気で…表情も淫蕩極まりない…その上…覗き見する男の軽薄極まりない表情は…市場の下品に似合う画法です…色を見て下さい…」と言うと、礼曹判書が「色はどうだ?」と言います。

別提は「多すぎます…」と言います。

するとホンドが「多すぎていけない理由がありますか…」と言います。礼曹判書は、ホンドに「この件にどうして口を出す…」と言います。別提は「色は…節制し抑える対象だ…これほど過度に赤を使い…絵の構図よりも目立てば軽薄ではないか…」と言います。ホンドは「どうしてですか…」と言います。すると「よい絵は自分の存在を過度に主張しない…しかしこれはどうだ…歳時風俗を見せる絵でわざと…女人の裸を描いて人の目を引き…色で人の心を奪っているではないか…これは…軽薄で粗雑な雑技にすぎない…」と言います。

ホンドは「別提様…別提様のお話は、この絵が…人の心を動かし魂を奪うということですね…図画署の誰が…絵一枚で人の心を動かせるんですか…」と声を荒立てて言います。

別提は「この絵は…図画署をばかにしている…」と言います。ホンドは「別提様…」と言いますが、別提は「お前に審査の資格はない…何を騒ぐ!…」と言います。

ホンドは「別提様…あなたも絵を描く人でしょう…シン・ユンボクは詩題を選択しました…何か間違えましたか…」と興奮してどなり声を上げます。別提は「何と言おうとも不合格だ…」と興奮します。そして元老画員たちに賛同を求めます。一人の元老画員が「残念だな…」と言います。

礼曹判書が「檀園…何のまねだ…」と言います。元老画員の一人が「すぐに出て行け…」と言います。すると別提がホンドに「これでお別れだな…実に残念だ…」とわざとらしく言います。ホンドは「図画署は完全に腐った…完全に腐った…」と感情むき出しにいい捨てて、その場を立ち去ります。元老画員の一人が「あの性格は昔のままだな…」と大声で言います。ホンドは帰りながら「腐った…」と叫びます。別提は「元々図画署に合わないものです…自ら出て行くというのなら幸いです…心配ありません…」と言って審査を再開します。





審査の発表の時が来ました。生徒達は中庭に集まっていました。

役人が「画員試験の結果を発表する…」と言います。

「主席、図画署画員チャン・ヒョウォン…」と発表されると、生徒長のまわりで「ヤッター」という声が上がります。生徒長は父の別提を見て笑います。別提も笑みを見せていました。11人の審査員から“通”を得て…55分を取って最高点を獲得した(一人当たり5分なので満点を意味していた)。生徒達は喜んで騒いでいました。しかし、ユンボクだけは一人沈んでいました。ユンボクはホンドを見ていました。ホンドはユンボクを見て、何とも言えない表情で、うなずいていました。周りでは、「生徒長万歳…」と声が聞こえ、生徒長の胴上げが始まっていました。

元老画員たちは別提のところにやって来て、「おめでとうございます…」と声をかけていました。

その時です。役人が「そして…」と続けました。場内が一瞬静まり返ります。

「特選…図画署画員 シン・ユンボク…」と読み上げられました。周りの人たちの顔付が変わります。ユンボクの父が「ユンボク!…」と言います。

別提が「特選画員だと?…何のことですか…」と役人に聞きます。役人は「この生徒は12人の審査員から審査を受け…1つの“通”を得て画員試験に合格した…」と言います。ユンボクはホンドの顔を見て嬉しそうに笑います。ホンドも納得しながら嬉しそうに笑っていました。



別提が、「なぜ、あの者だけが12人なのですか…」と不満をもらします。周りから「12番目とは誰ですか…」と声が出ます。すると生徒長も「誰ですか?…名前も書かぬ者が審査できますか…」と挑むように聞きます。役人は「その方は…」と言うと、後ろから礼曹判書が出て来て「その方は…主上殿下だ」と言うと、ユンボクは目を見開き驚きます。ホンドは納得した表情で、じっと前を見ていました。

別提は「主上…殿下?…」と、呆気にとられた表情で言います。ユンボクの父は「聖恩に感激の極みでございます」と叫んで感謝します。



5話 端午風情は、ここで終わります。





 チョンヒャンはユンボクに「試験に通ったら…私は画工の心の中で生きてもいいですか…」と、告白をするのですが、ユンボクには答えようがありませんでした。自分がチョンヒャンに抱いている感情は、人を愛する感情なのか?…ただ一緒にいると癒されて離れたくないのは事実でした。しかし、ユンボクには自身が女であるという秘密がありました。ユンボクの心の中には、答えようのない苦悩があったのかもしれません。



 しかし、それにしても別提は、ずる賢くて嫌な奴ですね。自分の意志を通す為には、何をやっても通すという腹黒さが嫌ですね。ホンドやユンボクを陥れる為にそこまでやるかという感じです。

 また、芸術的にも守旧派で、古臭いカビの匂いがする考え方で、こう言う人は今の世の中にもいそうですね。現代日本の小泉首相のように、守旧派をバッタバッタと切り刻む人は現われるのでしょうか…ホンドがそれを担うのでしょうか…それとも王様正祖が担うのでしょうか…この先が楽しみです。



 最後に、今回を見ていたら、私はユンボクが何者かが分かったような気がします。ここでユンボクが何者か書くと、興味が半減するので書きませんが…そこまで言ったなら書けよと言われる方もおられると思いますので、キーワードだけをお知らせしておきます。それは、ユンボクの名前に由来しているようです。もう一度、読み直して頂ければ、お分かりになる方もいらっしゃると思います。

 それでは、次回をお楽しみに…

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