2011年4月1日金曜日

東日本大震災によって気付いた事(自衛隊の実力)

 東日本大震災が起きて、一つ気が付いた事があります。それは、自衛隊には実力があるという事です。これまでの自衛隊は、阪神・淡路大震災の時に、救助及び復興支援で活躍をして、国民から一定の認知を得ていましたが、関西の一地域による限定的な活動で、救助隊の域を出ていなかったように思います。また国連のPKO活動にも参加はしていましたが、憲法の制約などもあって、他国に比べれば派遣回数も少なく、より安全なところを選んでのものでした。よって自衛隊には、日陰の身で張り子の虎というイメージが付きまとっていました。しかし、東日本大震災以後の活動を見ていると、そのイメージは払しょくされたように思います。

 東日本大震災が起きて、わずか数日で10万人(陸自69,000人、海自15,400人、空自21,300人、原子力災害派遣部隊500人、計106,200人)体制を敷きました。そして、艦船52隻・ヘリコプターは、陸海空あわせて、196機・固定翼機326機を展開しています。また、史上初めての予備自衛官の召集も行っています。これは、自衛隊員の22年度末実数、陸自141,223人・海自41,940人・空自43,270人・総数229,897人(他に統合幕僚監部・情報本部などがあり総数とは一致しない)の5割弱にあたります。これらの指揮を統一する為に、陸海空統合部隊を設置し、陸上自衛隊東北方面総監を指揮官に任命しています。ここまでの流れを見ているとスムーズで、国民に安心感を与えたと思います。

 救助・救援活動はもとより、津波と原発事故で寸断された物流を民間では回復出来ないと分かると、航空自衛隊松島基地、花巻・福島空港、三陸沖に護衛艦ひゅうが(ヘリ空母)を派遣し、これらを起点に自衛隊機や自衛隊の車両を使って物流を回復しようとしています。特に、この様な時に、ヘリ空母を沖合に派遣して活動するという発想は、自衛隊にしか出来ない事だと思います。

 また、原発事故に対して、当然東京電力や消防が当たるものだと思っていたのですが、東京電力ではどうしようもない事が分かると、自衛隊の特殊機関が乗り込んできて、防護服の貸出や放水活動等に関わっています。また、原発の建屋が水素爆発によって吹き飛ばされ、残骸を取り除く為に、放射線に強い戦車をブルドーザー代わりに使用するなど活躍しています。
 サリン事件の時、防護服などの装備を警察に貸出していた事は記憶に有ったのですが、まさか原発事故等の放射能対策をしていた事は知りませんでした。(限定的な核戦争に備えての研究をしていたのかもしれません。)

 また、在日米軍との連携も上手く行っているようです。
 アメリカ軍は、原子力空母(ロナルド・レーガン)を始め20隻の海軍艦艇と140機の航空機を被災地の沖合などに派遣し、およそ13,000人態勢で大規模な支援活動を続けています。この支援活動を「おともだち作戦」と名付け、通常であれば在日米軍司令官が指揮を執るのですが、今回は一階級上のウォルシュ米海軍太平洋艦隊司令官が指揮を執っています。これらの事から考えてみると、事実上初めての日米安全保障条約による米軍の出動と考えてもよいのではないでしょうか。
 アメリカ軍は、救助や物流だけではなく、原発事故に対しても、放射能専門部隊140人を日本に派遣しようとしています。そして、これらの作戦を円滑に進める為に、自衛隊の統合部隊本部に現場の作戦担当者を参加させています。この危機に対して、日米一体となって取り組んでいます。

 この日米一体となって行われている救援活動を周辺諸国は、鵜の目鷹の目、あるいは戦々恐々と見つめているようです。
 その証拠として、ロシアは東北地方に160人以上の救援隊を派遣し、水や毛布の提供を行っていますが、一方で、ロシア軍機は17日、21日に我国の領空に接近しています。もちろん自衛隊機がスクランブルを掛けて追い返しています。また中国は、被災民の救助活動や病院船の派遣などを申し入れしていますが、東シナ海ガス田の東方海域で、26日に警戒監視中の護衛艦いそゆきに異常接近をしています。我国の防衛組織が東日本大震災に集中している時に、防衛体制を為しているように思われます。
 我国は、中国の病院船を震災によって港に接岸出来ないという理由で、派遣を断っていますが、病院船といえども中国軍の船です。民間の船よりは情報収集能力はあると思います。そんな船を日米の防衛組織が展開している真っ只中に入れる事は危険な行為ですし、逆をいえば、中国軍はそれを狙っていたのかもしれません。
 また、この日米一体となって行われている救援活動を沈黙の眼差しで凝視している国があるとするならば、それは北朝鮮かもしれません。なぜならば、いざ有事の時に、日米の連携が大きな障壁になる事は明らかだからです。

 言うまでもなく、これらの事は図上演習ではありません。実際に起きている事です。それに対して自衛隊は、粛々とこなしています。それ相当の実力が無ければ、こなせるものではないと思います。また、地元の自衛隊員も被災者である事を忘れてはいけません。しかし、自身の家庭は二の次にして、国民の為に献身的に活動しています。この規律と国民への思いが、何よりも自衛隊の実力の証しだと思います。

 追記(2011年4月10日)

 2011年4月9日 読売新聞 (朝刊)

「自衛隊の震災救援は80点」

中国が分析

 【北京=佐伯聡士】中国の胡錦濤政権が、東日本大震災後、自衛隊がいかに救援活動を展開し、日本の防衛力がどのような影響を受けたかを注視し、冷静に分析している。
 中国紙「中国青年報」は、国防大学の専門家による総合評価として、自衛隊による救援活動に「80点」をつけた。この専門家は、松島基地(宮城県東松島市)のF2戦闘機などが壊滅的な被害を受けたことや、陸自の装甲車、戦車も海水につかった点を指摘した上で、「自衛隊が少なくとも15%の戦闘力を損失し、自らも復興が必要な中、半数近い兵力(10万人)を動員した。こうした機動力が戦場で出現していれば、精鋭部隊といえるだろう」と評価。

動員10万の機動力を評価/原発事故対応は不合格

 その一方で、「事前に準備された通常の救援活動では余裕があり、自在に対応できるが、(原発事故対応など)通常でない大規模な作戦行動を遂行する能力は不合格だ」と結論付けた。
 また、中国共産党の幹部養成機関である中央党学校の機関紙「学習時報」は「大地震が日本の全体的な軍事力に巨大な影響を与えた」とする論文を掲載。損失について、「日本のミサイル防衛システムも大打撃を受けた可能性がある。」「軍事力の損失に比べ、軍事力を支える基礎的工業力の損害状況が一層深刻だ」とした。
 「中国国防報」は特に、「地震が日本の軍事工業に与えた影響はどれほど大きいか」との見出しで、「自動車、鉄鋼、電子、エンジンなど日本の軍需工業に対する潜在的な衝撃は無視できない」などと伝えた。


 やはり中国は、東日本大震災の救援活動を目を凝らして見つめているようです。自衛隊の救援活動をいろんな機関が分析しているようです。私は防衛問題は素人なので、この分析が正しいかどうかは分かりません。
 ただ言える事は、自衛隊は専守防衛に対応して編成されているということです。自ら攻め込むという能力は持っていません。よって、いざ有事の時は、アメリカが前面に立つことになります。自衛隊は、「アメリカの後方支援をする」ということが定説となっています。これだけの機動力と戦力を持っている自衛隊が、後方支援をする日米一体型の戦闘能力は、周辺諸国には、脅威に感じると共に抑止力になると思います。
kei

追記(2011年5月12日)

自衛隊 陸海空統合10万人部隊

非常任務 士気保つ隊員

体験語り合い、心理負担を緩和

君塚栄治指揮官(陸自東北方面総監)に聞く

 未曽有の災害に自衛隊は初めて、陸海空の部隊を一元的に運用する統合任務部隊(JTF)を編成、10万人態勢で救援活動に取り組んでいる。震災から50日余り。君塚栄治JTF指揮官(陸自東北方面総監)に現状と課題を聞いた。
(編集委員 勝股秀通)

 ◆事前に地域割り

 ●県や市の自治体から医療関係者に至るまで、震災直後は自衛隊の情報だけが頼りだったと言う。
 「東北6県で勤務する自衛官と事務官は2万人。全員が様々な形で救命活動にあたるため、所属ごと事前に担当する地域を割り振るっていた。彼らは地震と同時に動き出した。その後は、御用聞き作戦で避難所を回り、被災者が何人いて、何が必要なのか、という情報を集め、それを集計して県などに伝えた。事前の準備が功を奏したと思う」

 ●現在の10万人態勢をいつまで続けるのか。
 「10万人は象徴的な数字。『全力で支援する』という意味と同義語だと思う。行方不明者の捜索は最終局面に近づき、我々が活動する3原則、すなわち緊急性、公共性、非代賛性にかなう任務はかなりの部分終わってきた。だが、今回は要請されて次々に任務が生まれている。我々からいつまでというゴールを引くことはない。自治体や被災者のニーズの変化に対応する中で体制は変化すると思う」

 ●原発事故への対応では現場から不満も多い。
 「2度目の水素爆発(3月14日)が起きた時は、すぐ近くの病院で入院患者を移送している最中だった。爆発の危険性など知らされておらず、正確な情報がなければ我々は動けない。現実に起こる事故を想定してあらゆる訓練が必要だ」

 ●基地業務にも相当な支障を来したと聞くが。
 「全国から続々と隊員が集まり、基地業務は機能不全となった。例えば駐屯地の給食。効率化を目的に外部委託しているが、震災で業者が被災し、普及後も普段の5倍や10倍の食事など作れない。基地業務は自衛隊の活動を支える基盤だ。平時を前提にした効率化は再検討すべきだと思う」

 ●米軍との日米共同作戦は見事だった。
 「米軍は上から下まで『日本を助ける』という意識で統一されていた。ただし問題もあった。当初、彼らには何ができて、何ができないのか、分からなかった。災害時に米軍の能力を生かす調整手段がなかったことは今後の課題だ。彼らにとっても相当なジレンマで、調整後は、仙台空港や離島、鉄道、学校の復旧などで実を結んだ」

 ◆家族が死亡・不明

 ●妻や子と連絡が取れないまま出動した隊員も多かったのではないか。
 「我々が被災者になることは想定していなかった。震災の発生は部隊が動きやすい時間帯だったが、多くの隊員が家族と切り離されてしまった。家族の安否も分からないまま、任務にまい進しなければならなかった。親や妻子など2親等以内の肉親を失った隊員は200人以上、いまだ家族の安否が不明な隊員も90人を超す。本当に頭が下がる」

 ●行方不明の捜索が長期化し、隊員の精神的な負担が気掛かりだ。
 「心理学など専門教育を受けた幹部を集め、部隊を巡回させるなど組織として対応している。すでに救命の段階は終わり、隊員たちは『家族の一員を一日でも早くお返しする』という気持ちで頑張っている。それでも遺体を収容する度に、部隊では隊員たちが車座になって体験した話を口に出し、次の日に引きずらないようにしている。そうした隊員たちの努力と連帯感が活動を支えている」
読売新聞 2011年5月4日 朝刊



 近年、行政改革によって、自衛隊の定員や予算が削減されていますがそれで良いのでしょうか。今度の東日本大震災で明らかになったことは、警察や消防の皆さんも頑張っておられますが、大規模災害が起きた時に、最終的に救助・救援・復興の主力として活動するのは自衛隊だと言うことです。しかし、自衛隊には本来の業務もあります。この国難の時に、火事場泥棒のように、戦闘機で押し掛けてくる国もあれば、警備活動をしている護衛艦に、ペリコプターで挑発行為をする国もあります。せめて、定員だけでも増やすべきではないでしょうか。安全にはコストが掛かります。

 また、阪神淡路大震災以来、一般的な防災については、自治体と自衛隊が連絡を取り合って訓練や情報交換などがされているようですが、原子力関係については、そのような事が成されているとは聞いたことがありません。今度の原発事故を教訓にして、自衛隊を含めた安全対策を構築すべきではないでしょうか。

 また、これから30年の間に必ず起きると言われている東海沖地震が、単発ではなく東海・東南海・南海と連動して起きた場合、東日本大震災のような大津波が起きると思います。その場合、太平洋ベルト地帯という我国の心臓部が被害にあうことになります。その時の準備もしておかなければなりません。首都機能の分散は言うまでもありませんが、企業の経営体制の分散も必要となると思います。また、救助・救援・復興の主力は勿論自衛隊だと思いますが、その為の法整備や予算も今から考えて置くべきです。

 最後に、今回の大震災で、自衛隊員はよく頑張っていると思います。頭が下がります。ありがとうと言わせて下さい。無事に帰還されることを心よりお祈りしています。
by kei




  

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