2012年1月9日月曜日

韓流ドラマ「風の絵師」第7話正風を見ました


第7話 正風



 チョンヒャンとユンボクは向かい合って座っていました。チョンヒャンの目からは涙が流れていました。堪らなくなったユンボクは自分の服のひもをとき始めました。たとえ、秘密を明かすことになったとしても、チョンヒャンの誠意に応える為には、これ以外の方法はないと思ったのかもしれません。



 ホンドはチョンヒャンの部屋の前まで来ていましたが、部屋の戸を開ける事にちゅうちょしていました。そこへ、図画署の別提やユンボクの父ハンビョン達がやって来ました。

 別提はホンドに「これは…檀園ではないか…」と声をかけます。ホンドの顔色がさっと変わります。しまった…どうすべきか…等と考えたのでしょう。

 別提はホンドに「夜更けに何のようだ?…部屋に知り合いでもいるのか…」と言って部屋の戸を開けようとしますが、ホンドは無言で部屋の戸の前に立ちはだかります。

 別提は「思った通りだな…檀園…ユンボクだな…」と言います。ハンビョンは「待て、イダン…」と言います。しかし別提は「画員になって3日間は…心身を清く保つ期間ではないか…それを我慢できずに妓房とは…図画署画員も腐りきったものだな…そんな者に、王室の画事をする資格があるか…開けろ…」と言います。しかしホンドは、無言で立ったままでした。



 別提は「それなら私が開けよう…」と言うと、ホンドを押しのけ強引に戸を開けます。

 別提が部屋に入って来ると、チョンヒャンとユンボクは驚きます。ユンボクは裸に近いチョンヒャンを気遣って、自分の上着をチョンヒャンに掛けて遣ります。

 別提は「ホッホッー!」と声を上げてハンビョンを見ます。ハンビョンは驚いた様子で「これは…」と言います。別提は「図画署画員たる者が…見るに堪えんな…」と言います。ユンボクは慌てて服を来ます。ホンドは後ろからその様子をじっと見ていました。

 父ハンビョンは、ユンボクを女と知っていたのですから、その驚きは大きく「そんなはずは…」と言います。そしてユンボクに「来い…」と言います。



 ユンボクは「父上、少しだけ時間をください…」と言います。ハンビョンは険しい表情で「早く来るんだ…来い…」と叱りつけると、ユンボクの手を取り、引きずり出そうとします。別提は思惑が当たって笑っていました。

 チョンヒャンは「イルチェ様…」と言うと、ユンボクをかばいます。

 ユンボクは、低頭しながら「父上…違います…」と言います。その時ホンドが「何をしていた…」と言います。ユンボクはホンドの方を向いて「師匠」と言います。

 ホンドは大声で「質問に答えろ…」と言います。別提は、笑いながら「男女の情を聞いてどうする…お前が見守りたい者がこれか…本当に呆れたものだ…」と言います。



 ユンボクは低頭したまま「別提様、今日が最後です…少し時間をください…この女人に伝えることが…」と言います。別提は「そうだな…これが最後だと誰が信じるか…」と、狡猾な顔をして言います。ユンボクが「別提様…」と言うと、ハンビョンが怒って「早く来ないか…」と怒鳴って、ユンボクを引きずり出そうとします。



 そこへ、女将が入って来ます。そして「何の騒ぎですか…もう大人の画工ですよ…真夜中に妓房に群がって何ですか…」と、周りの大人達をたしなめます。

 すると別提が、権威を振りかざして大声で「誰に行っておる…理由が合ってきた…」と言います。女将は負けずに「お帰り下さい…男たるものがする事ですか…筆を取る者が絵を描かず…夜中に騒ぐとは呆れたものだ…」と言います。

 別提は少し驚いた表情で「今何と言った…」と言いますが、女将は強気に「帰って下さい」と言います。別提は、呆れたように「うらぶれた退妓が何をぬかすか…」と言います。女将は「フン、ご存知ないですか…退妓には、口とお金の二つしか残りません…」と言います。



 すると後ろに控えていたホンドが「お前をかばう者はいない…さっさと来い…」と言うと、ユンボクの手を握り、引っ張り出そうとします。しかし、ユンボクはホンドの手を振り払おうと抵抗しながら「放してください…」と抵抗します。

 その時チョンヒャンが、もうこれ以上は無理と思ったのか「お待ちください…」と言って、守り刀を抜きます。その場にいた者の目が一瞬凍りつきます。

 それを見た女将が「何をする…やめなさい…」と言います。

 チョンヒャンは、抜いた守り刀を持ったまま大きく息をして、ユンボクに「これが最後です…」と言うと、自分の肩に掛けた付け髪を守り刀で切り始めます。そしてユンボクに渡します。ユンボクは「いや…また必ず会えるはずだ…」と言います。チョンヒャンは「私は…二度と画工に会えない身です…最後の挨拶をします…」と言うと立ちあがり、朝鮮式の挨拶をします。ユンボクの目からは、涙がとめどもなく流れていました。

 挨拶が終わるとチョンヒャンは「終わりました…お帰り下さい…」と、目を伏せて言います。





 ユンボクは、父によって家に連れて帰られ、納屋に放り込まれていました。

 ハンビョンは、ものすごい剣幕でユンボクに「将来…御真画師を経て、差備待令画員になる者が…せいぜいすることか…妓生遊びとは何だ…」と怒鳴り付けます。ユンボクは「違います…父上…」と、弁解しようとしますが、ハンビョンは聞き入れずに「丹青所で苦労している、お前の兄のことを…少しも考えないのか…」と言います。ユンボクは「違います…」と言いますが、ハンビョンは、ユンボクに「黙れ…」と言います。そして家の者に「門を閉めろ…」と言います。ユンボクは「父上、父上…」と言うのですが、門は締められます。ユンボクが「お許しください…」と叫ぶのですが、納屋の外からハンビョンの「しっかり見張れ」と言う言葉が聞こえて来ます。

 ユンボクは、納屋の中でチョンヒャンからもらった付け髪を眺めます。そして明り取りの窓から月を見て、大きくため息をつきます。しかし、幸か不幸か、今日の出来事で、ユンボクの秘密が深い闇の中に隠されるのも事実だと思います。ユンボクが男であることを疑う者は、しばらくの間出て来ないのでは…



 妓房では、チョンヒャンが女将から叱られていました。

 女将は「お前は行首様のものだ…男を連れ込むなんて…」と、語気を強めて言います。チョンヒャンは「それは掛け替えのない物です…」と、女将に訴えます。女将もチョンヒャンの心を理解しているらしく「誰にも知られるな…」と言うと部屋を出て行きます。

 チョンヒャンは、ユンボクからもらった、蝶のノリゲをじっと見つめていました。そして、そっと手に取り、ユンボクのことを想いながら、大事そうに両手で握りしめていました。





 別提は、チョ・ヨンスン右議政(王大妃の叔父)の邸宅で、ユンボクのことを話していました。

 「常より心身を清く保つべきときに…妓房とは…これは神聖な図画署を侵すものです。」と言います。右議政は「新米のくせに無分別が過ぎるな…」と言います。別提が「師匠はその事実を知りながらも…知らぬふりをしていました…」と言うと、右議政は不愉快そうに舌打ちをします。別提は続けて「事実を朝廷に知らせれば…この機会に檀園を追い出せます。」と言います。

 右議政は、少し語気を強めて「とんでもない話だ…誰より主上の寵愛を受ける檀園を…その程度で追い払えるか…罠を張るなら、確かな方法を探さねばならぬ…違うか…」と言います。別提は神妙な顔をして「はい…」と答えます。





 ハンビョンの屋敷では、ユンボクを閉じ込めた納屋の前で、見張りの門番が座って眠りこけていました。そこへ二人の影が…門番が気付いて目を開けると驚きます。

 門が開けられると、膝を抱えてうずくまっているユンボクの姿がありました。ユンボクが見上げると、そこには王様づきの護衛隊員が立っていました。

 護衛隊員はユンボクに「早く出なさい…絵を描かねば…」と言います。ユンボクは驚いた目つきで護衛隊員を見つめていました。

 ハンビョンは、護衛隊員に「本当に主上殿下が自ら命じたのだな…」と小声で確かめます。護衛隊員は「決して口外してはなりませぬ…」と言います。

 ユンボクは「どうしてこの秘密を?…」と聞きます。護衛隊員は「それよりも…あの方の期待をお忘れなきよう…」と言います。

 ユンボクは護衛隊員の操る馬に乗せられて、ホンドのいるはずのソ・ジン(実父)の家に向かいます。





 ホンドはソ・ジンの家で、王様に与えられた課題の絵を描いていました。ホンドは途中で筆を止めると、ユンボクの言葉を思い出していました。

 「…この様に鳥かごを描きいれれば…ただの鳥だったのに…何を望んでいるか分かって来ます…」

 ホンドは描きかけの絵を見ながら考えます。そしてユンボクの言うように、絵に背景を入れ始めます。

 絵が完成するとホンドは天を仰ぎます。そして、となりのユンボクの席に置いてある白紙の紙を見つめています。ユンボクの幻影がホンドの脳裏に映し出されます。ユンボクが絵を描く姿…振り返りホンドを見て無邪気に笑う姿が…ホンドも一瞬笑うのですが、幻影が消えるとホンドの心は沈みます。



 その時、外で馬の鳴き声がしたことに気付きます。

 外では、護衛隊員がユンボクを馬から降ろします。そして「明日の夜明までです…」と言うと、また馬を走らせ去って行きます。ユンボクが神妙な顔をして下を向いていると、家の中からホンドが出て来ます。

 ホンドは、静かな声で「お前は何者だ…」と言います。ユンボクは、うつむきかげんで「申し訳ありません…師匠…」と言います。ホンドは「申し訳ない?…主上殿下の命令だ…ところがお前は妓生遊びだと?…」と言います。そしてホンドは語気を強めて「女遊びで台無しにするところだった…」と叱りつけます。ユンボクは無表情の顔で「明日からは二度と会えません…」と言います。ホンドは「聞きたくない…女のことは忘れろ…情けない…」と言います。

 するとユンボクは、声を少し強めて「私には誰よりも大切な女人です…」と答えます。ホンドは「女におぼれて出来る仕事ではない…」とユンボクを怒鳴りつけます。ユンボクも負けずに「描きます…その程度の絵くらい…」と言い返します。ホンドが「その程度?」と言うと、ユンボクは「そうです」と答えます。ホンドは、生意気なユンボクに手を上げて「こいつめ…」と言うのですが、手を止めてしまいます。ユンボクは「なぐるつもりですか…師匠が何だというんです…」と叫びます。ホンドはユンボクの目をじっと見て「勝手にすれば好い…どうなろうと私には関係ないことだ…描こうが描くまいが…妓生と暮らそうがな…」と怒鳴りつけると、家の中に入って行きます。ユンボクの顔は、淋しげで苦悩に満ちていました。



 家の中ではホンドが、完成した絵を丸めて筒の中に絵をしまいます。そして道具を手に取ると、家を出ます。

 ホンドはユンボクに「好きにしろ…」と、捨て台詞を残して去って行きます。ユンボクは何も言わずに、大きなため息をして、家の中へ入って行きます。

 ホンドは帰り道、気が晴れずにいました。足は重たく、考えることはユンボクのことばかりでした。ユンボクが怪我をして、初めて絵を描く時に手を添えてやったことや、群仙図を一緒に描いている様子などが、脳裏に蘇って来ました。



 家の中では、ユンボクは絵も描かずに、考え事をしていました。そして脳裏に浮かんで来た物は、画員試験の夜に、怪我をしたユンボクをおぶって、図画署まで走ってくれたホンドの姿でした。ユンボクの目は一点を見つめて淋しげでした。

 ホンドは自宅に付くと荷物を置き、帽子を取り、壁にもたれかかって息を吐きました。考えることはユンボクのことばかりでした。

 ユンボクは、紙の前に座り、絵を描こうとするのですが、なかなか描き始めることが出来ませんでした。





 ホンドは、広通橋の下でユンボクを待っていました。そこへユンボクがやって来ます。ユンボクがホンドの横にそっと立つと、ホンドは、まだ怒っている様子で「描いてきたか…」と言います。ヨンボクは前を見つめて「いいえ…」と言います。ホンドはユンボクを一瞬見ると「よくやった…」と言います。ユンボクは不思議そうな顔をしてホンドを見ると「師匠は描いて来たのですか?…」と聞きます。ホンドは素っ気なく「描いてない…」と言います。ユンボクは、困った表情をしますが、素直に言葉で表現できずに「よかったですね…」と憎まれ口を叩きます。二人の会話はぎこちなく、先にホンドが宮中に向かいます。ユンボクもすぐ後を付いて歩きます。

 ホンドが振り向いてユンボクに「適当に描いたのではあるまい…」と聞くと、ユンボクは反抗して「アアー、天気がすごくいい…」と言います。するとホンドが空を見て「いい天気だと?あの雲を見ろ…夜に頭でも打ったか…」と言うと、細い橋を歩き始めます。ユンボクはすぐ後ろを歩いて行くのですが、ホンドがすぐに振り返るのに気付かずに、つまづいて川に落ちそうになります。ホンドは「注意しろ、よそ見して水に落ちるな…」と言うと前を向いてまた歩き始めます。ユンボクも付いて行くのですが、つまずいて、ホンドの体にしがみ付きます。二人は「アアー」と声を出すのですが、川に落ちずに済みます。ホンドは、何と世話の掛かる奴だと思いながら、ユンボクをにらみつけますが、何も言わずに先を歩いて行きます。





 二人は、宮中の王様の前で低頭して座っていました。

 王様は、机の上に置いてあった箱の上に手を置いて「この中に夜明珠がある…明るい所では普通の石と変わらないが、暗い所では昼のように光る不思議な石だ…これは絵で世の中を照らせという意味だ…」と言うと、箱のふたを開けます。ホンドとユンボクは上目使いに箱の中の石を見ます。

 すると王様が「勝負がつけば勝者に…勝負がつかなければ予の者になる…」と言います。二人は、王様の話を聞きながら、自然と見つめ合います。そして一緒に「光栄でございます…」と言います。

 王様は「絵を持ってこい…」と言います。

 王様が最初に見た絵は、ホンドが描いた絵でした。そして、「監董(カムドン=審査)を始める…」と言います。王様は、ホンドの絵をじっくりと鑑賞します。

 ユンボクは、ホンドの絵を遠目に見ながら「言い張ったくせに…結局気にして背景を描いている…師匠も意地悪だ…」と思います。そして、民がクッパを食べているところを見て「私もクッパが食べたい…」と想いながら、生唾を飲みます。

 王様は、ホンドの方を見ながら「よく描いたな…」と言います。ホンドは「恐れ入ります…」と答えます。



 王様は「若い画工の絵を見よう…」と言います。

 王様は、ホンドの絵の横に、ユンボクの絵を並べて置き、じっくりと鑑賞を始めます。

 ホンドは、ユンボクの絵を遠目に見ながら「時間が無かったろうに…何時こんな絵を描いた…」と思います。そして、首を横に向けてユンボクを見て「お前は…天才でなければ…馬鹿だろう…見ただけでこんな絵が描けるとは…信じられない…」と思います。

 王様は、ユンボクの方を見ながら「うまく描いたな…」と言います。ユンボクは「恐れ入ります…」と言うと深々と低頭します。



 王様は、二人を見て「どうして居酒屋を描いた?」と聞きます。するとユンボクが「はい…ここですでに日が暮れ…」と話しだすと、ホンドがそれをさえぎり「都城の平凡な男女が行き交うので、私たちには慣れたところですが、主上殿下には疎い風景だと考えました…」と言います。

 王様は「キョムジェが描いた『真景山水』(謙齋=キムジェ、チョソン朝鮮時代の山水画)が、風景で朝鮮を見せたとすれば(真景山水画=神が住む場所を描いた絵)…二人の俗画は、人々の姿で朝鮮の服や顔を表現したから、真景人物と言うに足る…よく描いた…」と言います。王様の評を聞く間、二人の視線は自然とお互いの顔を見ていました。そして同時に「光栄でございます…」と言います。



 王様は「では、勝敗を選ぼう…」と言います。

 そして「2人とも生動感を生かしており1点…檀園の絵は、匙・煙草入れ・汁の器・子供の口…この四点で言いたいことを表現した…檀園は音律が分かる…絵の中の音が生きていて…見るに値するから檀園の絵にもう一点…」と言いながらホンドを見ます。ホンドは「恐れ入ります…」と言います。

 王様は、また絵を見ながら「また、ユンボクの絵には…適切に配置された赤と青が中心をなし…これは赤い“丹”青い“青”丹青の色が強調され…色調として充分な選択だ…それゆえ、色の調和で絵に動感を持たせた才により、ユンボクに1点…」と言います。ユンボクは「恐れ入ります…」と言うと、深く低頭します。

 王様は「二点ずつの引き訳だ…」と言います。そして「夜明珠は、予のもとに留まりそうだな…」と言うと、また二人の絵を鑑賞し始めます。

 しばらくたって王様は、ユンボクの描いた絵の花に注目します。そして「夜明珠はユンボクに与えよう…」と言います。ホンドの目が少し輝きます。ユンボクの目は、オドオドとして、焦点が定まりません。ユンボクは、恐る恐る「どうしてでしょうか…」と聞きます。

 王様は、花を指して「これの為だ…」と言います。二人は王様の指の先を上目使いに見ます。王様が「若い画工がよくやった…」と言います。ユンボクは、不思議そうな顔をして「恐れ入ります…殿下…」と言うと、深々と低頭します。





 二人は宮中から一緒に帰っていました。ユンボクは師匠に勝ってしまったという気まずい想いから、頭を下げて歩いていました。そして、分かれ道に差し掛かると別の道を行こうとしますが、ホンドがそれに気づき元の道に戻されます。

 ホンドがユンボクにちょっかいを出して、ユンボクの体を肩で少し押すと、ユンボクも押し黙ったまま、体でホンドを押します。ホンドは少し笑いながら「時間も無かったのにいつ描いた…」と言います。ユンボクはそっぽを向きながら「あんな絵を描くのに時間が必要ですか…」と言います。ホンドは「傲慢な言い方をするな…」とユンボクをたしなめます。そして、夜明珠の入った箱を顔で指して「見せてくれ…これが不思議な石か…」と言って、夜明珠を取りだします。

 ホンドは、角度を変えて、あらゆる方向から夜明珠を見ながら「輝くのか?」と言います。するとユンボクは膨れた表情で「暗い所で見ればとのことでした…」と言います。ホンドが「そうか?…私も聞いた…」と言うと、着ている服の裾を上げて、暗くした中に夜明珠を入れて見ます。ホンドは「オッオッオッー…これは不思議だな…青い光が…」と言います。ユンボクも夜明珠を覗き込むと「ウォー、ウォー」と驚きます。ホンドは「不思議だな…」と言います。そして突然「すまなかったな…怒ってすまない…」と言います。ユンボクもいつものように拗ねた顔で「いいんです…」と言います。ホンドは「男が最後までぶつくさ言うとは…何を拗ねているんだ…」と言います。そして夜明珠を箱の中に入れます。ホンドはユンボクの肩を叩いて「行こう…」と言いますが、ユンボクの顔は、眉毛がへの字に曲がっていました。ホンドは、もう一度「行こうや…」と言います。するとユンボクは真剣な顔つきで「今日です…チョンヒャンと身受け人の初夜が…」と言います。その目つきは淋しそうでした。

 ホンドは少し考えて、ため息交じりに「行こう…その妓女とのいきさつを聞こう…」と言うとユンボクを無理やり引っ張って行きます。





 二人は居酒屋で、さし迎えで酒を飲んでいました。

 ホンドが酒を飲みながら「お前はいくつだ?…」と聞きます。ユンボクは「どうしてですか…」と尋ねます。そして、神妙な顔つきで「18です」と答えます。

 ホンドは「幼い者が、何のよしみで、わずかな縁にこだわるのだ…お前にとっての何だ?」と聞きます。ユンボクは「初めて…心を許した人でした…」と言います。ホンドはその一言で、ユンボクが真剣であった事を理解しました。そしてユンボクに「飲め…」と言って酒を勧めます。ホンドは「それで…どうして知り合った?…」と、また聞き始めます。

 ユンボクは、大きくため息をつくと酔いに任せて話し始めます。

「初めはただの…戯れでした…」と言います。ホンドは「それで…遊びごとです…」と言います。



 その頃チョンヒャンは、下女の手を借りて、お風呂に入って、初夜の前の身を清めていました。

 チョンヒャンも湯船につかりながら「ところが…画工の心が見えて来ました…」と、ユンボクと同じことを考えていました。

 映像はユンボクに変わります。

 ユンボクは「私が傷ついた時…私の為に…涙を流してくれました…

 映像はチョンヒャンに変わります。

 チョンヒャンは化粧をしながら「そして…私のすべてを見せました…」

 ユンボクは「失ってしまった…自分を見つけられました…」と言います。そして大粒の涙を流しながら「あの人を見ていれば…絶対に自分を失うことがない…」と言います。ホンドはユンボクを真剣な眼差しで見つめていました。

 ユンボクは「誰より…大切な人でした…唯一の…人です…あの人に会いたいです…」と言います。

 映像が変わって、チョンヒャンは、大行首キム・ジョニョンと部屋を共にしていました。

チョンヒャンは、心の中で「しかし…もう終わりました…私は…もう品物になります…」と思っていました。そして蒲団の中へ入ります。



ユンボクは「いや…ダメだ…私には大切だ…大切だ…」と言うと、酔い潰れて寝てしまいます。ホンドは、そんなユンボクを見て、独り言のように「何を言っている…」と言います。そして「おい…酔ったのか…おいユンボク…」と言って体をゆすりますが、ユンボクは起きませんでした。ただ寝言で「大切だ…大切だ…」と言うだけでした。



チョンヒャンは、ジョニョンが口づけをしようとしますが、首を振り軽くかわします。ジョニョンは「私を…軽蔑するのか…」と言います。チョンヒャンは「哀れんでいます…」と答えます。ジョニョンは「想う相手が?…」と聞きますが、チョンヒャンは横を向いたまま黙っていました。

ジョニョンは感情を害したのか、立ちあがり去って行きます。服を来て振り向くと「お前の心を得る…その後に…お前の体も得る…」と、静かに言うと部屋を出て行きます。チョンヒャンの目からは涙が流れていました。



ホンドはユンボクを自分の部屋に連れ帰っていました。「さあ…脱げ…」と言いながら靴下を脱がしてやります。「足をのばして…あああー、本当にこいつは…厄介な奴だ…」と言いながら帽子を脱がせます。ユンボクが苦しそうな表情をするとホンドは「苦しいのか…楽にしろ…」と言うと、図画署の制服を脱がせようとするのですが、ユンボクはホンドの手を取って「行かないで…」と寝言を言います。ホンドをチョンヒャンと間違っているようでした。ホンドが「何を言っているんだ…」と言うと、ホンドの手を持ったまま寝がえりを打ちます。その時、王様から戴いた夜明珠が、服の中から出て来て転がって行きます。ホンドは、その夜明珠を手にして、ユンボクの顔を見ていました。ユンボクの瞑った目からは、一筋の涙が流れ落ちていました。

ホンドは不思議な思いに駆られます。ユンボクの流した涙を、自分の指で拭きとります。その指をユンボクの唇にあてようとします。そして、鞦韆で起きたあの事件のこと…ユンボクが女装をして絵を描いている姿を思い浮かべます。

その時、ユンボクが両目をパッと見開きます。そしてまた眠りへと付きます。ホンドは我に戻り、ユンボクを制服のまま寝かしておきます。そして後ろに座って、ユンボクを見つめていました。





あくる朝、ジョニョンの屋敷の庭に、チョンヒャンと下女がいました。

下女が「お嬢様、ご覧ください…」と言います。木の枝に鳥かごが掛けてありました。鳥かごの中にはつがいの小鳥が入れられていました。下女は「手紙もあります…」と言うとチョンヒャンに渡します。チョンヒャンが手紙の封を開けると中にはジョニョンからの手紙が入っていました。

「いつか私を受け入れる準備が出来たら…その鳥かごにいる一羽の鳥を放せ…」と描いてありました。チャンヒャンはじっと鳥かごを見つめていました。

母屋の方では、庭を眺めながらジョニョンが立っていました。そこへ護衛の女侍がやって来ます。

ジョニョンは、女侍に「離れをよく見張れ…外のものを入れぬようにな…」と命じます。女侍は「そうします…」と答えます。ジョニョンは「品物としては…値を付けられぬほどの貴重なものだ…まだ私のものではないが…男と言う者は…望むものを得る為に、必ず争うべき時がある…獣になってでも…その争いには必ず勝たねばならぬ…その時までは大切に守ってやる…」と言います。





ユンボクは、ホンドの部屋でまだ眠っていました。目が覚めて自分が何処にいるか分かりません。そして正気に戻り「檀園先生…」と言います。

ホンドは違う部屋で寝たらしく、起きて何かもの思いにふけりながら制服に着替えていました。そこへ、部屋の外からインムンの声がします。「まだか?…」と…ホンドは「もういい…」と言います。



 外ではインムンの妹ジョンスクが、インムンに「お兄様、あの話を聞きましたか…」と言います。インムンは「何の話だ?」と聞きます。ジョンスクが「端午の日に、旅芸人が来たでしょう…ある両班が一座のコクトゥセ(旅芸人の頭)にお金を渡し…ピリを妾に入れて見つかったんだって…」と言っていると部屋から戸を開けてホンドが出て来ます。そして「朝から何の話だ…」と聞きます。ジョンスクは「男たち同士で…いやらしい…アレですよ…」と言います。ホンドは「やれやれ…」と言いながら、ジョンスクから茶碗を受け取り水を飲みます。そして「それでどうなった…」と聞きます。ジョンスクはまさか聞き返されるとは思わずに驚いた様子で「捕庁で棍杖で殴られ歩けなくなったとか…」と言います。インムンは「何だと…」と言います。ジョンスクは「私にはさっぱり理解できません…息子のような人を抱きたいなんて…」と言います。ホンドには心臓に好くない話でした。



ホンドはインムンと出勤の為歩いていました。ホンドの頭には、ジョンスクの言葉が残っていました。「男同士でいやらしい…アレですよ…」と…そして昨夜ユンボクの涙を指で拭き取ってやった自分の行為を思い出していました。

その時インムンが「おい」と声をかけます。ホンドがインムンの顔を見るとインムンは「何してる…」と言います。ホンドは「何でもない」と笑いながら答えます。インムンは「最近考え事が多いな…好きな女でも出来たか…」と聞きます。ホンドが「まさか…」と言うとインムンは「ジョンスクが知ったら大変だ…」と笑いながら言います。ホンドは情けない顔でため息をつきます。





ホンドが図画署を歩いていると後ろからユンボクが「師匠…」と言って近寄って来ます。そして「昨晩のことなんですが…」と言います。ホンドは「何のことだ?…」と聞き返します。ユンボクは「お酒を飲み過ぎて何も覚えていません…何か失礼は無かったですか…」と聞きます。ホンドは、あまり親しくなり過ぎない方がいいと思ったのか、素っ気なく「行け…」と言います。しかしユンボクは「言ってください…何かしましたか…」と言います。ホンドは、少し怒ったように「何も無かった…行け…」と言います。しかしユンボクは、ホンドの行く手を立ちふさいで「私が…何か言いましたか…」と聞きます。ホンドはユンボクの息が掛かり「酒臭い…冷たい水でも飲んでこい…」と言います。ユンボクはそれでも食い下がって「師匠…言ってください…私が何と言ったのか…師匠…」と言います。ホンドは何と言うべきか考えたのですが「主上殿下が命ずるまで、図画署の仕事をしろ…気付かれないように…」と怒ったそぶりで言います。ユンボクは困った表情で「師匠…」とホンドを見つめます。堪らなくなったホンドは「いびきで眠れなかった…」と言います。ユンボクは、手を鼻のところにやり、困った表情で「いびき…」と独り言を言います。そして「それだけですか…水を飲んで来ます…」と言ってその場を立ち去ります。

ユンボクがホンドの部屋から出て来る様子を二人の生徒から見られていました。一人の生徒が「檀園先生とユンボクが、最近はいつも一緒だな…」と言います。別の生徒が「類は友を呼ぶ…二人とも図画署では変わり物だ…」と言います。すると後で追い付いた一番年長の生徒が「何にしても画員じゃないか…オレ達も精進して来年は画員になろう…行こう…」と言います、一人の生徒は付いて行くのですが、ヒョウォンの腰巾着の生徒は「2人で何をしているのか…」と言います。





 朝廷の大臣達が階段をのぼりながら「主上殿下は何のつもりで…俗画で侍講をされるのか…」と言います。

 朝廷の中に入ると礼曹判事が俗画を見ていました。そして次々に回して見せます。二人の描いた絵を内侍に持たせて王様は「全員見たか…」と聞きます。朝廷の大臣達は一礼して「はい」と答えます。

 王様は「では…絵を見せた理由を考えろ…」と言います。すると右議政が口火を切って「恐れ多いですが殿下…心を磨いて政事を論じようとする侍講場(侍講場=王や東宮の前で学問を講義する場所)で…どうして俗画なのですか…」と聞きます。

 王様は「ウサンが言ったように、心を磨き政事を論じる為だ…絵の中に何かを見たか…ウサンから聞こう…」と言います。右議政は「はい殿下…二枚とも民の生活を描いています。あの絵の人々は身なりが粗末ながら…皆笑っていますが…この絵の人々は…身なりは良くても顔をしかめています。」と言います。王様は「やはり、ウサンの目は鋭いな…では、その理由は何だ…」と聞きます。右議政は「はい殿下…それは画工の性格の差です…あの絵は画工の性格が明るく度量が大きく…この絵を描いた者は…性格が暗く陰湿だからではないでしょうか…」と答えます。

 王様は「その程度の意見を聞く為に…侍講場にこの絵を持って来たと思うか…絵の中の花を見ろ…この花は、日が出ている間に咲…日が暮れれば散る花だ…花が咲いているのに…掖庭暑別監と義禁府羅将が…高官らしき両班と酒を飲んでいる…だから…これを見る画工が不機嫌になり…絵の人々の顔をしかめさせた…そして…これは予の心と同じだ…すぐに国の禄を受けるに値しない者を探し出し…厳罰に処せ…」と言います。朝廷の大臣達はしぶしぶながらも一礼して「殿下…仰せのとおりにいたします…」と一斉に言います。



 「御命である…すべての部署では、官吏の行いを…偽りなく報告するように…」こうして、いたるところで取締りが始まった。昼間から博打や酒を飲む両班たちは、一斉に摘発された。



 朝廷の大臣達が飲み屋で会合を開いていました。

 王大妃の兄キム・グィジュが「たかが卑しい画工の絵で、朝廷が騒ぐなどと…話になりますか…」言います。すると両班の中から「いかにも…先王なら血の涙を流すでしょう…」と相槌が打たれます。すると別の両班が「そうだ、俗画で侍講などとんでもない…」と言います。

 キム・グィジュは「主上殿下の考えが何か、それを知りたい…」と言います。別の両班が「分かり切っています…今回捕らえられたのは…尤庵先生の弟子たちではないか…罪人の息子が王になり、復習を考えている…」と言います。すると別の両班が「いよいよ本格的に?…」と言います。すると「ここにいる者は、皆その標的になる…」と言います。

 今まで黙って聞いていた右議政は「素行不良の者を捕らえただけだ…まだ、それほど騒ぐ必要はない…軽々しく言うな…とにかく、これ以上隙を見せるな…皆身を慎み…主上殿下に責められる隙を与えるな…分かったか…」と言います。すると全員一礼して「はい…そういたします」と答えます。





 ホンドとユンボクは街中を歩いていました。ホンドがユンボクに「何かいい素材でもあるのか…」と言います。するとユンボクが「師匠…」と言って人を指差します。そして「塀です…師匠は塀を見て何を感じますか…」と聞きます。ホンドは「塀は塀だろう、何を言っている…」と言います。するとユンボクは語気を強めて「違います…この塀に隠された秘密を知りたくありませんか…」と言います。ホンドは笑いながら「思ったより物好きだな…」と言います。丁度その時に、良家の女人が顔をかくして通って行きます。ユンボクはホンドに「見つけました…」と言うと良家の女人の後を付いて行きます。ホンドもその後ろから付いて行きます。



 その先で二人が見た者は、土俗の宗教のような女の霊媒師による踊りでした。

 霊媒師の女が踊りをやめて「天よりそなたの至誠を感じ…降りて参った…事情があるようだ言ってみろ…」と言います。すると一人の女人が「産神様…嫁に行った娘に息子が出来ません…娘が可哀想です…」と言うと、ひもでつながれたお金を差し出します。すると女の霊媒師がまた踊り始めます。



 ユンボクはその踊りを見ながらホンドに「息子ならどうで、娘ならどうなんですか…」と聞きます。実の母が、嫁に行った娘のお腹をさするところを見ながらホンドは「そのとおりだ…しかし、家門を継ぐ為にあんなに苦労している…これは厄介な問題だ…行こう…」と言いますが、ユンボクは「もう少し見てみます…巫祭(ムジェ)はめったに見られません…」と言います。するとホンドが「これを描くつもりか…」と言います。ユンボクは物珍しい巫祭に見とれて「はい」と気のない返事をします。

 ホンドは「これを描いたら何が起きるか考えたか…」と言いますが、ユンボクには意味が通じず「巫祭こそ風俗のものではないですか…国法を違えても…男の子を産もうとする朝鮮の女の心は…悲しすぎませんか…」と言いますが、ホンドは首を小さく横に振り「ダメだ…ややこしくなる…行こう…」と言います。ユンボクが「師匠…」と言いますが、ホンドは「行くぞ…」と言って、後ろから口をふさいで無理やりそこから離れさせます。



 先ほどの女人は右議政の屋敷に入って行きました。

 右議政は女人に「何処へ言っていた…女どもが…」と言います。母親が「大監、お早いお帰りですね…」と言います。右議政は「産み月にどうして出歩く…」と叱りつけます。母娘は黙ってそこを立ち去ります。



 王様はホンドの絵を開けて見ます。そしてユンボクの絵も…

 王様はユンボクの絵に注目すると目をひそめます。そして「この絵は…見て描いたのか、それとも想像で描いたのか…」とユンボクに聞きます。ユンボクは「見て描きました…」と言います。王様は「まだ都城で、こんな巫祭が?」と言います。ユンボクは「さようです、殿下…」と答えます。ホンドが心配して「殿下…この画工は…善悪の偏見を持たずに描きました…ありのままを描いたものです…」と言います。王様は「ありのままだと?…」と言います。



 王様は「経国大典の刑典、禁制で…都城内の巫女に罪を問うというのは…都城には住めない事と同じだ…なのになぜ怪しげな術で…民を惑わせる巫女が横行するのか…ウサン…言ってみろ…国の政治を担う右議政が…都城内で巫祭をしたことをだ…」と言います…

 右議政は「恐れ入ります…殿下…」と言って謝ります。しかし、となりにいたキム・グィジュは「しかし殿下…親が子を愛するのは天の理です…娘三人で後継を埋めねば…女の道理に反します…その親の心はどうでしょう…血縁の情が興したことですから…何とぞ寛大な措置を願います。」と言います。

 王様は「寛大だと…法とは…市井の民と商人だけでなく…便殿に集まる堂上官にも適用されてこそ…その厳格さが一貫する…法を破った者が民に法を守れと言えるか…右議政チョ・ヨンスンは…禁止された行為をしたので、その罪を問うべきだ…ウサン…文武百官の前で謝罪し国法の厳格さを示せ…」と言います。

 右議政は前に進みより、膝まづき、冠を取って「臣チョ・ヨンスン至厳な国法を破った罪で…主上殿下と文武百官の前で謝罪します…これを貴重な前例として…二度と起こさないようにいたします…罰をお与えください…大罪を犯しました…」と深く低頭します。



 その様子を尚宮が王大妃に耳打ちします。王大妃は、顔色を変えて「大臣達の目の前で?…」と聞き返します。そして「私の叔父にそんな侮辱を与えるとは…」と言って怒ります。



 宮中では王様と王大妃がお茶を飲んでいました。

 大大妃は「主上…最近主上は…卑しい者の絵を侍講で使うそうですね…事実ですか?…」と言います。王様は「時には一枚の絵が百の言葉よりも多くを語ります…」と答えます。王大妃は「つまらぬ絵一枚で…政治を預かる大臣を跪かせるのが…正しいことですか…」と聞きます。王様は「大臣ではなく王大妃でも同じことです…」と答えます。王大妃は「卑しい画工の短慮です…」と言います。王様は「善悪を論ずるのに身分は関係ありません…“下門を恥じず”と言います…良薬は苦くても受け入れるのが賢明です…」と答えます。王大妃は「主上の考えは真っすぐで剛直です…しかし…時には柔軟さを失いがちです…真っすぐすぎると…終局は折れてしまうものです…」と言います。王様は「肝に銘じます…」と言います。



 大臣達は朝廷で会議をしていました。

 右議政は、凄い剣幕で「たかが画工に、大臣達が踊らされるとは…朝廷は何処まで権威が落ちたのだ…」と言います。すると他の大臣達が「絵描きが主上の威光で過度にでしゃばり…生意気になっている…主上殿下が可愛がるから、大層な官職でも得たように…得意になって…絵描きごときが立場を勘違いしている…そのとおり…絵描きは絵描きとして扱うべきです…違いますか…」と口ぐちに言い出します。

 右議政が「そうだ…高位の者も卑しい者も身分に応じた仕事をしてこそ…上から下まで無事平穏ではないか…」と言います。するとキム・グィジュが「そうです…それを悟らせましょう…」と言います。右議政は「忠言を無視し、雑技に溺れ…政治を顧みない主上殿下も…このままに出来ない…これは大王妃様の意思でもある…」と言います。



 そして夜になると宮殿に、矢文が放たれます。王様がその矢文を見に来て家臣に「持ってまいれ…」と言います。

 文を開けてみるとそこには「罪人の子は、王になれない…拏戮法(ネリュクホウ)を施行しろ(拏戮法=大逆の罪人の場合)…」と書いてありました。

 王様は「奴らが動き出したな…」と言います。側近のホン・グギョンは「殿下…」と答えます。

 

 市中至る所に、罪人の子は王になれないと書いた張り紙がしてありました。民がそれを読んでいると、役人が来てそれをはがします。



 王様は、成均館の儒生の上奏文を読んでいました。

 「街の各所に紙が張られ…拏戮法を施行しろと言う…実に由々しき問題です。」と書いてありました。



 図画署では、生徒や画員たちが連行されていました。皆悪いことを何もしていないのに…右議政たちの腹いせが、図画署の画員達に八つ当たりをしているようでした。



 ここで、第7話 正風は終わります。







 ユンボクは、チョンヒャンを人間として愛していました。心の中をさらけ出される人だと思っていました。しかし、チョンヒャンは、ユンボクを男として愛していました。ユンボクは、どんな気持ちで服を脱ぎ始めたのでしょうか…前回の終わりの部分で、チョンヒャンは、自分が卑しい妓生だから抱けないのかと迫りました。ユンボクはそうではないと説明しましたが、チョンヒャンはそれを聞き入れてはくれませんでした。ユンボクはこれ以上、チョンヒャンの心を傷つけてはいけないと思ったのではないでしょうか。

 ユンボクは、父ハンビョンに部屋から引きずり出されそうになったときに、今日が最後です…私にもう少し時間をください…この女人に伝えることがあります…と言いました。ユンボクは、チョンヒャンの心を傷つけない為にも、自分が女であるという秘密を打ち明けようとしたのではないでしょうか…

 それにしても可哀想な場面でした。チョンヒャンの涙も分かりますし、ユンボクの涙も分かります。自身が女であるという秘密を隠さなければ生きて行けない事も分かります。それでもチョンヒャンの気持ちを大事にしたユンボクの心根の優しさ、何とも表現しようがありませんでした。ただ、この事で、ユンボクを女として疑いを掛ける人はいなくなったのではと思います。ただ一人、ホンドを除いては…



 ホンドは、王様に絵を見せた後に、ユンボクを居酒屋に連れて行きます。ユンボクは酔った勢いで、チョンヒャンのことをホンドにしゃべりました。ホンドは、興味を持って聞いていたのですが、酔い潰れたユンボクをインムンの家の自分の部屋に連れて帰ると、寝ているはずのユンボクの目から涙が流れているのを見ます。

 ホンドはその姿を見て、脳裏に鞦韆で女装をして絵を描いているユンボクの映像とダブらせます。そして、ユンボクのことを愛おしくなり、手で涙をふいてやります。確かに、ユンボクに対して、ホンドは愛情を感じ始めているようです。ただ、理性でそれを抑えようとしているのがよく分かります。本当は、親友ソ・ジンの一人娘であると、いつ気付くのでしょうか…まだまだ、先のような気がします。



 最後に、王様はホンドとユンボクに、自分の目として絵を描かせていましたが…それにしてもユンボクの無邪気さと言うか、先の読めない子供っぽさには困ったものです。絵の才能に対して、心がまだ追い付いていないようです。次回は図画署で、ひと波乱ありそうな雲行きになって来ました。それでは次回をお楽しみに…

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