2012年4月19日木曜日

韓流ドラマ「秋の童話」第18回(最終回)運命を見ました


韓流ドラマ「秋の童話」第18回(最終回)運命を見ました




 冒頭から10分以上、回想が続きます。


 中学生のジュンソとウンソが、自転車で仲良く通学しています。雨に濡れながらも笑顔で通学する二人…実に仲の好い兄妹でした。

 まだ、自転車の運転が上手でないウンソ、先に行くジュンソを追いかけるのですが、交差点でトラックにはねられてしまいました。ジュンソは振り向いて「ウンソ…」と叫びます。ウンソは路上で意識を失っていました。

 病院で医師から「娘さんは、B型ですね…」と言われて驚くユン教授とキョンハ…「まさか、O型のはずです。2人ともO型だから…」と、医師に言うユン教授…この時初めて、病院で子どもを取り違えられた事に気づきます。

 ユン教授とキョンハは、スニムの家を訪ねて相談するのですが、スニムが興奮して「何だと…やるきかい?…」と言いながら、キョンハにつかみ掛ろうとしました。ユン教授は、スニムの腕を握りながら大声で「本当の子じゃない…」と訴えかけます。それに対してキョンハは「あなた…」と言って、喋らせようとしませんでした。スニムは驚いて唖然としていました。その様子を窓の外からジュンソが覗いていました。

 ジュンソはウンソに「もし、僕たちが兄妹じゃなかったら…出会ってたかな?…」と聞くと、ウンソは笑顔で「当然よ…私たちは運命で結ばれているんだもん…」と答えました。

 スニムが興奮して、シネに大声で「本当の親だ…嫌いなわけないさ…」と言う姿…その言葉を聞いて「本当の親?」と不思議がるシネ…

 シネに「…入れ替わったの…」と言われて、何も知らなかったウンソが驚いた姿…今まで一緒に育ったウンソをかばうために「シネ…」と言って、黙らせようとするジュンソの姿…泣きながら「私がこの家の本当の娘よ…」と叫ぶシネの姿…それを聞いて、混乱して泣きながら逃げ出すウンソの姿…

 ジュンソはウンソを見つけ出し、倉庫の前に二人で座って話をしていました。ジュンソはウンソに「僕の妹だ…決まっているだろう…」と言います。ウンソは涙を流しながら「シネが違うって…」と言う姿…

 別れの日、ジュンソが作った、ジュンソの似顔絵が書かれているコーヒーカップにキッスをして「それと…お兄ちゃん、さようなら…」と、一人淋しく泣きながら別れを告げるウンソの姿…スニムのぼろ家に、一人で歩いてきたウンソの姿…それを家の前で、じっと見つめていたスニムの姿…

 ユン一家が渡米する前に、ジュンソとウンソは二人だけで出掛けます。ウンソはジュンソに「ねえ…生まれ変わったら何になりたい?…生まれ変わったら、私は樹になりたい…」と言います。ジュンソは「樹に?…」と聞き返します。ウンソは「うん、そうよ…一度根を下ろしたら、二度と動かない樹になるの…そうすれば、もう誰とも別れずに済むから…」と答えました。二人は思い出作りに、海辺に行って遊びます。砂浜を走り回って、顔を見つめ合い、笑いました。

 学校の教室で、担任の教師が「突然ですが、今日からシネは来られません…アメリカの学校で、勉強することになったんです…」と言うと、ウンソの表情が一変します。一人だけ置いていかれる淋しさや、兄や母に会えなくなる心細さが、ウンソの心を動揺させました。ウンソは立ち上がり、教室を出て泣きながら走りだし、育った家に向かうのですが、ユン教授の運転する車が、目の前を通り過ぎて行きます。ウンソは懸命に追いかけるのですが、追いつくわけがありませんでした。ユン教授が運転する車は、トンネルの中へ入って行きます。ウンソはトンネルの入り口で立ち止り、泣きながら「お兄ちゃん…お兄ちゃん…」と叫んでいました。

 ジュンソは、大人になるとウンソを探す為に、何度か韓国に帰国しました。しかし、ウンソの消息はつかめませんでした。ぐれていたウンソの実兄が、借金を重ねて、夜逃げ同然に故郷を離れてしまったからです。そしてジュンソは、婚約式を挙げるために、また帰国していました。ジュンソは、ホテルのゴルフ場で、友人のテソクと再会しました。二人は再会を喜び、笑顔で抱き合います。テソクが「ジュンソ…」と言うと、ジュンソは「元気か?」と言いました。

 ジュンソはテソクノ運転する車に乗っていました。自転車に乗っているウンソとすれ違うのですが、二人は気づく事が出来ませんでした。ジュンソはユミと婚約式を挙げました。

 テソクは「お前の名前は?…」と聞きます。婚約式では、ユミがジュンソに「その子の名前は?…」と聞きます。ジュンソは「樹だよ…」と答えます。ウンソはテソクに「ウンソ…チェ・ウンソ…」と答えました。

 ウンソはテソクの顔にコップの水を掛けました。そして「あなたみたいな人は大嫌いよ…」と泣きながら言いました。テソクは、じっとウンソを見つめていました。

 ジュンソはウンソを探し続けていました。そして、渡し船ですれ違う二人…ジュンソは、偶然にウンソの姿を見るのですが、すれ違った船の上では、どうする事も出来ませんでした。ジュンソは、すぐに後戻りをしてウンソを探すおですが、探し出すことが出来ませんでした。

 ジュンソは、ホテルのテソク専用の部屋を借りてウンソを探します。その時、テソクはジュンソに「オレのメイドには、手を出すなよ…」と言います。ジュンソは「メイド?…」聞き返しました。

 テソクは、ホテルの自室で、まだ勤務中のウンソの手を握って「オレとつきあうか?…」と聞きます。そして、ウンソに無理やりキッスをします。

 ウンソは、テソクの友人で、ホテルの客のジュンソと電話をしていました。お互い相手の事を分かりませんでした。ただ、何かを感じ合っていました。ジュンソは「その気持ちが、別人と錯覚させるんだ…」と言います。ウンソは「そうですか…」と答えました。

 ウンソとテソクは、実兄の働く会社の社長から逃げて、海辺へ来ていました。テソクはウンソに「いくらだ?…オレがアイツより高く買ってやる…」と言いました。ウンソはテソクの顔を平手で叩きました。

 ウンソは、道路沿いの店で買い物をしているジュンソの姿を偶然見つけます。そして、ジュンソを追いかけます…ウンソは、思い出の海辺で、ジュンソの背中を目がけて走り寄り抱きつきました…ジュンソは「ウンソなのか?…」と聞きました。ウンソは「夢じゃないよね?…」と答えます。感動の再会でした。車で帰る途中、何も知らないテソクは、嬉しそうな笑顔で「お前がジュンソのいとこだったなんて…」と言いました。

 テソクとウンソは、笑顔で並んでいました。テソクが遅れてきたジュンソに「遅いぞ、早い者勝ちと言ったろ…」と言います…

 テソクは、ホテルのロビーで、まだ勤務中のウンソに「好きなんだ…お前が好きなんだ…」とプロポーズしました。

 ウンソとジュンソは、背中あわせに、ジュンソのアトリエの窓をみがいていました。ウンソは「ねえ…私に会えて幸せ?」と聞きます。いつの間にか、二人の指と指が触れ合いました。ウンソとジュンソは次第に意識し始めました。兄妹ではなく男と女として…

 ウンソとシネが会っていました。シネはウンソに「あなたとは赤の他人だって、ユミに言ってないもの…」と言います。ウンソは「私が去ればいい…」と聞きました。

 ウンソはジュンソに「会わなかった事にすれば、みんな幸せになれる…」と言います。ジュンソはウンソを抱きしめながら「妹じゃなくったていい…一緒にいよう…」と言います。ジュンソの目からは涙が流れていました。

 ユミがジュンソのスケッチブックを開くと、ウンソの顔を描いたデッサンが現れました。それを見て不審に思うユミ…ユミはジュンソに泣きながら「私の事を愛しているの?…」と、問い質します。ジュンソはユミに「努力すれば愛せると…」言います。

 ウンソは、ジュンソのアトリエで、洗濯物を干しながら「本当にユミさんと別れたの?…なぜ?…」と聞きました。ジュンソは「ほかに愛する人がいるんだ…」と答えました。

 ユミとウンソは、ホテルの庭のベンチに座って話をしていました。ユミは泣きながら「私から彼を取ったら何も残らない…」と言いました。ウンソは、涙を流しながら聞いていました。

 テソクとウンソは、ホテルで会っていました。テソクはウンソに「お前の力になるよ…」と言いました。二人は手をつないでジュンソに会いに行きます。ジュンソはウンソに「本当にテソクを愛しているのか?…」と聞きます。ウンソは、ゆっくり振り向くと、涙目でジュンソを見つめていました。

 ジュンソはウンソに「死ぬまで一緒にいよう…兄妹として…」と言います。ウンソは涙を流しながらうなづきます。

 ジュンソはテソクに「ウンソのこと…本気で好きか?…」と聞きます。テソクは嬉しそうに「ああ…」と答えます。その夜、ジュンソとテソクは砂浜に寝ていました。ジュンソは「アアー…」と大声で叫びました。テソクも笑顔で一緒に「アアー…」と叫びました。

 ジュンソがアトリエの駐車場を歩いていると、ウンソがジュンソの背中に抱きつきました。その様子を遠くからテソクが見ていました。テソクは二人が愛し合っていることを初めて知りました。

 ユミとジュンソが電話をしていました。ユミは「泊まって来るの?…」と聞きます。ユミの横には、ウンソと電話をしているテソクがいました。ウンソもまた泊まって来るとの事でした。ユミとテソクは同時に振り向いて視線を会わせました。そして、ジュンソとウンソが一夜を共にすることに気づきます。最後の思い出の旅行がバレテしまいました。

 あくる日、ジュンソの車から降りてきたウンソをテソクは確認しました。テソクはウンソに凄い剣幕で「お前は、ジュンソを愛しているんだ…」と怒鳴りつけます。ジュンソは「テソク…」と叫びます。ウンソは泣きながらテソクの顔を平手で叩きます。

 シネはみんなのいる前で両親に、怒りをぶちまけるように「お兄ちゃんとウンソの関係を?…愛し合っているの…二人は恋人なのよ…」と、告げ口をしました。その後庭で、ジュンソはウンソに「逃げよう…」と言います。ウンソは涙を流しながらじっと聞いていました。

 二人はバスに乗って駆け落ちをしました。二人は、ウンソの母親が働いていた牧場に行きました。しばらくの間そこで、二人は幸せに過ごしました。ジュンソが野の花を摘んで「誕生日おめでとう…僕と結婚してほしい…」とプロポーズをしました。その日の夜、焚火にあたりながら、指輪をウンソの指にはめて遣ります。二人は見つめ合っていました。ウンソの目からは、涙がこぼれ落ちていました。

テソクは二人を見つけ出しました。ジュンソはテソクに「僕らは結婚する…」と言います。テソクは「オレを裏切るのか…」と言いました。テソクは二人を家に連れ戻します。ジュンソはみんなの前で「結婚します…」と宣言します。そしてウンソと二人っきりになると「幸せになろう…」と言います。ウンソは嬉しそうに「うん…」と言いました。二人は、お互いの手をお互いの頭に載せて笑顔で「汝の罪を許す…」と言いました。この言葉は、子どもの頃、二人でよく交わし合った言葉でした。

テソクはホテルで「愛したことはなかったのか…」と、ウンソに想いをぶつけます。ウンソは「なかったわ…」と答えました。

ジュンソはユミに「幸せにな…」と言います。ユミは悲しそうな表情をしていました。

ユミは手首を切って自殺未遂を図りました。病院でユミの母親が、ジュンソの胸を両手で叩きながら「この人でなし…」と叫びます。ジュンソは「無事なんですか?…」と聞きました。ユミは病院を抜け出して、海の中へ歩いて行きました。そこへジュンソがやって来て、海の中からユミを助け出します。ユミは半狂乱になって「私を捨てないで…」と懇願しました。

ウンソは待ち合わせの場所でジュンソを待っていました。ユミはベッドで寝ながら「そばにいて…」と言います。ジュンソは「そばにいる…」と言わざるを得ませんでした。ウンソは、何時まで待っても来ないジュンソを想いながら涙を流していました。

ウンソはジュンソに会いに来ていました。ウンソがお別れの握手をしようとして手を差し伸べると、ジュンソは「ウンソ…今…この手を握ったら…二度と離せなくなるから…」と言うと、握手を断りました。ジュンソは、悲しそうにうなだれていました。ウンソは、笑顔でジュンソの肩に手を置いて「汝の罪を許す…お兄ちゃん…さようなら…お兄ちゃん…」と言いました。

テソクとウンソは、ホテルの庭のベンチに座っていました。テソクは「家を追い出されるかも…」と言います。ウンソは驚いてテソクの顔を見なした。テソクは「お前と結婚するって言った…」と言います。

ウンソは、ジュンソの個展の帰りにバス停で倒れます。その時、鼻血が出ていました。ウンソは依然倒れた時に担ぎ込まれた病院に行きました…ウンソは医師に「白血病って、ガンですよね…」と、問い質していました。

ウンソは渡し船の上で発作が起きて苦しそうにしていました。

テソクはウンソが白血病であることを知るとウンソに「必ず助ける…」と言います。そしてウンソを抱きしめながら「もう一度チャンスを…」と言いました。目からは涙がこぼれていました。

ウンソはテソクの部屋で倒れていました。病状が次第に悪化して行きました。

病のことで悩んでいたウンソは、ジュンソを訪ねて「半年だけ…私といてくれない?…」と頼むのですが、ウンソが白血病に掛かっていると知らないジュンソは、悲しそうな顔でウンソを見つめていました。

テソクはウンソに「このまま死にたいのか?…」と、必死の表情で訴えました。ウンソは、悲しそうな表情で「生きていたい…」と言いました。

入院するためにソウルに向かう日、テソクはウンソをジュンソの元へ連れて行きました。ジュンソは「テソクと二人で暮らすのか?…」と聞きます。ウンソは「本気よ…」と答えます。ジュンソは「すごく後悔している…」と言います。ウンソは立ち去って行きました。

ウンソはテソクに「生涯の恩人よ…」と言います。テソクは「生涯の恩人?…」と聞き返しました。

ウンソはテソクに、検査の苦痛を耐えるために「お守りをちょうだい…」と言います。テソクは検査の日に指輪を渡しました。

ジュンソはユミに「気持ちを整理したい…何日かくれないか…その後渡米しよう…」と言いました。ユミは心配で仕方がなく、涙を流しながらジュンソを見つめていました。

ウンソは、テソクがソウルにいない間に、思い出の牧場へ行こうとしていました。ウンソは、テソクからもらった指輪を見ながら「一日だけちょうだい…」と言います。

牧場へ行くバスの中から偶然に、車を運転しているジュンソの姿を見つけました。ウンソは、慌ててバスから降りて、ジュンソに声を出しながら合図を送ります。ジュンソはウンソに気づいて戻って来ました。二人は思い出の野山を散歩しました。ウンソはジュンソに「私たち、心の中でずっと愛し合おう…」と言います。二人は熱い口づけを交わしました。ジュンソは疲れたウンソをおんぶしていました。ウンソは「お兄ちゃん…愛している…」と言いました。

テソクは、ウンソの病室に駆け込んで行く医師たちを見て、ウンソの為に用意したバナナとコーヒーを廊下に落としました。テソクは、意識を失ってベッドのまま運び出されるウンソを見て、取り乱しながら「ダメだ…負けるな…」と叫び続けました。

テソクからウンソが危篤と知らせを受けたユミは、泣きながらジュンソに「ウンソさんが危篤なの…」と知らせます。ほんの数日前に、ウンソと会ったジュンソは信じられませんでした。ジュンソはユミと二人で病院に駆けつけました。

ジュンソは病院の集中治療室の前で取り乱します。そして、テソクと看護師に取り押えられながら、約束の言葉「ウンソ愛している…」と叫びました。

集中治療室では、以前として懸命の治療が行われていました。ウンソの意識は戻らず、瞳孔の検査が行われていました。

主治医は家族の前で「このままお亡くなりになる恐れもあるのです…」と説明します。テソクは語気を強めて主治医に「亡くなるだと?もう一度いってみろ…」と挑むように言いました。横にいたユン教授が、テソクの体を捉まえて「やめないか…」と必死で止めに入ります。テソクの興奮は収まらず「ウンソが死ぬって…」と言いました。それを聞いていたジュンソは、沈んだ顔で何も言わずに病院を出て行きました。

数日たって、意識の戻らなかったウンソは、また発作を起こして集中治療室に運びこまれました。主治医は家族の前で「今夜が峠になるでしょう…」と伝えました。

自室に戻されたウンソの横に座っていたテソクは、ウンソの手を握りながら「オレがジュンソを連れてくる…」と言いました。

テソクはアトリエにジュンソを迎えに行きました。大きな樹の根元に茫然と座っていたジュンソを見つけると、テソクはジュンソともみ合いながら「来いよ…」と言って、ジュンソを投げ飛ばしました。テソクはジュンソを懸命に説得しました。テソクは泣きながら「彼女が愛するのはお前だから…」と言って…ジュンソは「僕が行かなければ…生きていてくれるかも…」と、想いをテソクにぶつけました。

ジュンソは、病院のウンソの側で一夜を明かしました。夜が明けるとウンソがジュンソを呼ぶ微かな声がしました。「お兄ちゃん…」と…ジュンソはその声で眠りから覚めました。ウンソの顔を見るとウンソの目が開いていました。ウンソは、ジュンソを見つめて「お兄ちゃん…」と呼びました。ジュンソは「ウンソ…」と…答えました。

ジュンソは、家に帰りたいと言うウンソを車に乗せて、アトリエに連れて帰りました。

アトリエから車で、思い出の海辺に向かう二人を自分の車の中から見守るテソク…ウンソとジュンソは思い出の海辺で楽しそうに過ごしていました。その様子を遠くから見守るテソク…テソクの表情は、嬉しくて寂しそうな複雑な表情でした。

ジュンソはウンソに「ウンソ愛してる…」と言いました。

ウンソは嫌がるジュンソに頼み込んで写真を撮ってもらいました。思い出の写真を…

ウンソは、起き上がるとベッドの上で喀血をしてしまいました。ついに別れの時が近づいて来ました。鮮血が白いベッド用のマットを赤く染めていました。

ジュンソが掃除をしていると、ベッドの下から血に染まったベッド用のマットを見つけました。ジュンソはウンソの病状の悪化を察知しました。

テソクは、久しぶりにジュンソのアトリエに行った帰り道…思わず教会を見つけて入って行きました。祭壇の前に座って「どうか救ってください…」と泣きながら祈るテソクでした。

回想はここで終わりました。



ウンソはベッドの上に腰かけていました。ジュンソの様子がおかしいと気づいたウンソは、ベッドの下を覗き込みました。そこに隠しておいたはずのマットがありませんでした。ウンソはジュンソに病状の悪化を気づかれた事を察知しました。ウンソは大きな溜息をしました。

ジュンソは玄関口のベンチに一人で座って考え事をしていました。そこへウンソがやって来ました。ウンソはジュンソの隣に座るとジュンソに撮りためた写真を渡しました。ジュンソは写真を見ながら「よく取れてる…」と言います。ウンソはジュンソを見つめながら「私の具合…かなり悪いみたい…病気が進行しているのね…」と言いました。ジュンソの顔に緊張が走ります。ウンソは「ねえ…お父さんやお母さん…みんなを呼んで…食事しない?…」と言います。ジュンソはウンソの顔を見るのですが黙っていました。ウンソは「この写真…お兄ちゃんが持っていて…写真写りが良くても悪くても…お兄ちゃんに持っていて欲しいの…大切に持っていてね…私は…もうダメかもしれないから…」と言いました。

ジュンソはウンソを見つめながら「ウンソ…」と言います。ウンソはジュンソの体に身を寄せました。ウンソはジュンソの目を見て心配したのか「違うの…もしもの話よ…決まったわけじゃない…私を嫌いにならないで…病気のせいで悲しい思いをさせてるけど…嫌いにならないでね…お兄ちゃんの愛さえあれば…この世の誰よりも幸せに思える…」と言いました。ジュンソは、手をウンソの背中にまわして、ウンソを抱き締めました。そして「愛してる…お前だけをずっと…お前は…僕の人生すべてだ…これほど愛してるんだ…絶対に逝かせたりしない…」と言いました。

ジュンソはウンソをベッドに寝かせつけると、ベッドの横に座ってじっとウンソの寝顔を見ていました。そして「心配するな…お前を…一人では逝かせない…」と言いました。

ジュンソは画室に行くと、机の前に座り、何とも言えない辛そうな表情でこれから先のことを考えていました。そして机の引き出しを開けました。そこには茶色の薬の瓶がありました。ジュンソは、その薬の瓶をじっと見つめていました。



家族がジュンソのアトリエに集まって来ました。ウンソはユン教授とキョンハを車の前まで出迎えました。ウンソは笑みを浮かべて嬉しそうに、両手を広げて二人を抱き締めました。ユン教授とキョンハの顔にも笑みがありました。その様子を後ろからジュンソは見つめていました。一人沈んだ表情で…

スニムの家では、店先でスニムが一人で酒を飲んでいました。客が「昼間から酒か…」と言うと、呆れて店を出て行きました。スニムはすでに酔っているようで「いつ酒を飲もうが、あんたに関係ないだろう…」と大声を挙げました。そして泣きながら「あんたに何がわかる…死にゆく娘を救えない…親の気持ちが…わかってたまるか…」と言いました。

そこへシネがやって来ました。シネは店の入り口に立って、じっとスニムを見つめていました。シネは、黙ったまま店に入ると、スニムの前に座りました。

スニムはシネに、か細い声で「お前…なぜここへ?…」と聞きました。シネは優しい声で「お酒…つきあうわ…」と言うと、スニムのコップに酒を注ぎます。スニムは、力の抜けた表情で「ウンソを見舞わないのか?…」と言います。シネは「お母さんこそ…」と言います。スニムは虚ろな表情で「合わせる顔がないよ…向こうのご両親も来るのに…」と言います。シネは、スニムの顔を見ながら優しく「そう言うと思ったから、ここに来たの…一緒に飲むわ…」と言いました。スニムはうつむきながら首を振り「そんな必要ない…何もいらない…私のことはいいから…」と泣き声で言いました。シネは心配そうに「お母さん…しっかりしなきゃ…希望を捨てないで…お母さん…」と言うと、スニムの手を握りました。スニムは泣きながら、シネの顔を見つめていました。そして、シネの顔に手をやり頬を触りました。シネは、ウンソが願った約束を覚えていたのです…

アトリエでは、食事会が始まろうとしていました。「じゃあ、グラスを…」という声が…そして「乾杯…乾杯…」という声が続きました。ジュンソの友人ジファンと恋人のキムが、仲良さそうに寄り添っていました。キムはジファンに「美味しそうでしょ?…」と言いながら果物をむいていました。そして隣に座っているテソクにも同意を求めました。ジファンは「はいはい…食べますよ…」と言います。テソクはうらやましそうに見ていました。ウンソは両親に挟まれて嬉しそうな笑顔を見せていました。テソクとジュンソはグラスを合わせて「乾杯」と言いました。

ジュンソはウンソを見つめていました。ウンソは笑顔でジュンソを見つめ返していました。ジュンソは心の中で「あの日のお前は、とてもきれいだった…」と言います。



食事が終わるとウンソは、鏡の前に座っていました。髪飾りを取り、髪をほどくとキョンハが部屋に入って来ました。キョンハはウンソに「お母さんがやってあげる…」と言います。ウンソは嬉しそうでした。キョンハがウンソの髪にブラシをかけてやります。ウンソは、鏡越しにキョンハの顔をじっと見つめていました。それに気づいたキョンハも、手を休めてウンソの顔を見つめました。キョンハの目は潤んでいました。キョンハは、またウンソの髪をとき始めます。すると抜けたウンソの髪が、ブラシにこびりついていることに気づきました。キョンハは深刻な顔でブラシを見つめていました。そして鏡越しにウンソの顔を見つめると、後ろからウンソを抱き締めました。ウンソはキョンハに病状の悪化を知られたと気づき、表情が暗く沈んでいました。キョンハはウンソを抱きしめながら「神様…私を先に連れて行って下さい…この子より先に私を…」と、声を震わせながら言います。ウンソは心配を掛けまいと「私は負けたりしない…泣かないで…」と言います。ウンソはキョンハの手を離して振り向き立ち上がります。その時に、鏡台の上に置いてあったキョンハのハンドバッグに手が触れて、ハンドバッグを鏡台から落としてしまいました。ウンソが床を見ると、ハンドバッグの中から写真が飛び出して散らばっていました。

ウンソはキョンハに「お母さん…この写真…」と聞きます。キョンハは「ジュンソに頼まれたの…この写真を持って置くように…自分は、持っていられないからって…」と言いました。ウンソは嫌な予感がしました。



時間はあっという間に過ぎ去って、夜になっていました。それぞれが車で帰宅して行きました。ジュンソとウンソは玄関口に並んで見送っていました。車が見えなくなるとジュンソはウンソに「片付けるから先に入っていて…」と言います。ウンソは「うん…」と返事をするとアトリエの中へ入って行きました。

ウンソは、思いつめた表情で、ジュンソの画室に入りました。ウンソは画室を見渡すと、何かを探し始めます。袋戸棚などを開けて探し回るのですが、思っているものは見つからないようでした。ウンソは最後に、ジュンソの机の引き出しを開けました。そして茶色の薬の瓶を見つけると手に取ります。ウンソは困った表情で、思いを巡らせていました。

ジュンソは後片付けが終わると、アトリエの戸締りをして画室へ向かいました。画室に入るとウンソが写真を破り捨てていました。ジュンソはその姿を見ると、表情を変えてウンソに近寄ります。ウンソは「固過ぎてうまく破れないわ…」と言います。ジュンソはウンソの横に座ると「なぜだ?…あんなに撮りたがっていたろう…」と言うと、ウンソから写真を取りあげようとしました。ウンソは写真を取られまいと抵抗しながら「私の写真を破ろうが勝手でしょ…」と言いながら、さらに破り続けました。ジュンソは語気を強めて「ウンソ…」と言います。ウンソは泣きながら「怒鳴らないで…そんな資格はないわ…」と言うと、また写真を破り始めました。ジュンソは「いったいどうした?…」と言うと、辛い表情をして顔を反らせました。すると、反らした視線の先に、茶色の薬の瓶が置かれていました。ジュンソの視線が固まりました。

ウンソはジュンソの顔を見ると「一緒に死ぬって言うの?…私の後を追って死ぬ気なの?何とか言って…お兄ちゃん…ひどい…なぜ死のうなんて思うの?…」と泣きながら訴えました。ジュンソは堪らなくなり、ウンソを抱き締めました。ウンソは泣きながら「約束して…私の後を追ったりしないと…約束して…今ここで約束してよ…約束して…」と懇願しました。ウンソはジュンソから離れると、ジュンソの顔を見つめました。ジュンソはウンソから視線を離し、虚ろな目をしていました。ウンソは泣きながら「お願いよ…」と訴えかけました。ジュンソはウンソの手を振り払うと「ダメだ…できない…」と目をそらして言います。そして「お前なしじゃ生きていけない…」と言います。ウンソはジュンソの目を見つめながら「約束して…」と言います。ジュンソもウンソの目を見ながら「嫌だ……ウンソ…僕に…一人で生きろと?…あんまりだ…お前のいない人生なんて辛すぎる…生きていけない…とても耐えられない…」と言います。ジュンソはウンソから目をそらしました。ジュンソの目からは、止めどもなく涙がこぼれ落ちていました。そして、ジュンソはウンソの目を見て「お前ならできるか?…」と言います。ウンソは「それでも生きて…私のために…“お兄ちゃんまで死ぬ”って思いながら…残り少ない時間を過ごすのは嫌よ…最期に悲しませないで…私を愛しているのなら死んだりしないで…約束して…」と懇願しました。ジュンソは堪らなくなって、ウンソを抱き締めました。ウンソはそれでも「約束してよ…」と懇願しつづけました。ジュンソはついに「約束する…」と言いました。ジュンソは苦しそうに目を瞑り、ウンソを抱きしめながら泣き続けました。

 

 数日後の夜、ウンソはベッドで寝ていました。目が覚めると、そばにいるはずのジュンソはいませんでした。少しだけ開けられていた窓のカーテンの隙間から、星屑のように煌めく灯りが入って来ました。ウンソは不思議に思い起き上がりました。窓際に立ってカーテンを開けると、庭の大樹にイルミネーションの灯りが煌めいていました。大樹には、白いウェディングドレスと花束が掛けられていました。そして大樹の陰からジュンソが正装をして現われました。ジュンソはウンソを見るとニッコリと笑って振り向き、紹介するように手でウエディングドレスを指し示しました。そしてまた、ウンソを見ると微笑んでいました。ウンソは、その光景を見て自然と顔がほころびました。

 大樹の周りにはキャンドルが灯されていました。その中にウンソとジュンソが座っていました。ジュンソは自分の上着を脱いで、ウンソに着せ、膝の上には、純白のウエディングドレスが掛けられていました。ジュンソはウンソの指に指輪をはめてやりました。ウンソは嬉しそうに、ジュンソに身を預けました。

 ジュンソは、右手でウンソを支えながら左手を挙げます。そして「宣誓…」と言いました。するとウンソも右手を挙げジュンソを見つめました。ジュンソは「私、ユン・ジュンソは…チェ・ウンソを生涯…愛すると誓う……汝は、ユン・ジュンソを…生涯…愛すると誓うか?…」と言いました。ウンソはジュンソを見つめながら、はにかむように微笑んで「はい…」と小さな声で答えました。二人は宣誓した手を握り合い、見つめ合っていました。そしてジュンソは、ウンソの頭に右手を乗せると「汝らの結婚を許す…」と神の声を代弁しました。するとウンソも、子どもの頃のようにジュンソのマネをして「汝らの結婚を許す…」と言いました。ウンソの顔が嬉しそうに輝いていました。ジュンソはウンソの額に口づけをしました。二人だけの結婚式でした。



 ウンソとジュンソは林の中で背中合わせに座っていました。ウンソの顔は、衰えて行く表情の中にも幸せが満ち溢れていました。ススキの野原を散歩する二人…ベッドの上に横たわって、ジュンソを見つめているウンソ、視線の先には、本を読み聞かせているジュンソの姿が…二人は、一日一日を大切に生きていました。



 ジュンソが自分のベッドで居眠りをしていると、ウンソがやって来て「お兄ちゃん…お兄ちゃん…お兄ちゃん…」と呼び掛けました。ジュンソは、ウンソの声に気がついて起き上がると「どうした?…」と聞きます。ウンソはやつれた表情で「私をあの海に連れて行ってほしいの…」と頼みました。ジュンソは、ウンソをじっと見つめて黙っていました。ウンソは精一杯微笑んで見せます。ジュンソは、それでもしばらくの間、黙って考えていました。そしてウンソの顔を見つめて、小刻みに頷きました。ジュンソは心の中で『最後の海かもしれない…』と覚悟を決めたようでした。

 ウンソとジュンソは、思い出の海を見ながら砂浜に座っていました。二人の前には、ジュンソが中学時代に作った、二人の似顔絵入りのコーヒーカップが並んでいました。ウンソはコーヒーカップを見ながら「このカップのように…私たちはいつも一緒だった…」と言います。ジュンソは、寂しそうな表情で「そうだな…」と言います。そして「ウンソ…心残りはないか?…」と聞きました。ウンソはジュンソ見ますが、何も言わずに頭をジュンソの肩に寄せて身を預けました。そして「うん…何もないよ…お兄ちゃんがいるから…みんなのこと…お父さんとお母さん…それにテソクのことも…何も心配していないわ…お兄ちゃんが支えてくれるはず…そうでしょう?…」と答えました。ウンソは小刻みに頷きました。二人の目からは、いつの間にか涙がこぼれ落ちていました。

 ジュンソは「ああ…大丈夫だ…ウンソは、何も心配しなくていい…」と言います。ウンソは「生まれてからずっと…一時も変わることなく…どんなときだって…お兄ちゃんを愛してたよ…」と言いました。ジュンソは「わかってる…僕もずっと愛してた…」と言います。ウンソは「ありがとう………」と言いました。ウンソの姿は、意識が遠のくのを懸命に我慢しているようでした。そして「私……眠くなっちゃった…おんぶして…」と言います。ジュンソは、ウンソをおんぶして砂浜を歩きだしました。

 ウンソはジュンソの背中から「お兄ちゃん…お話して…私が眠るまでの間…明日は…何をするの?…」と話しかけました。その声は、弱々しいものでした。ジュンソは言葉を選びながら「明日は…起きたらまず、お前のことを考えて…それからその後…お前の写真を整理して…起きているか?…」と言います。ウンソは微かな声で「うん…」と答えました。ジュンソは「それから…父さんに電話しよう…結婚したって…それから昼御飯だ…それから…」と言うと、ジュンソの首の前にからませていたウンソの手が、力なく落ちて行きました。そしてウンソの首が、ジュンソの肩越しにうなだれました。ジュンソは、背中のウンソの異変を感じて立ち止りました。ジュンソの目が見る見るうちに赤くなりました。ジュンソは優しく「ウンソ…愛している…愛している…心から愛している…わかっているよな…わかっているだろう?」と言いました。ジュンソは、目を確りとつぶり、顔を歪ませて横に向けました……

そして、また歩き始めました。ジュンソはウンソに話しかけます。「昼食の後は何したい?…昼寝でもしようか?…ウンソ…ウンソ…いや…やっぱり散歩しよう…お前の好きな散歩を…一緒に歩こう…それから夜は…庭で焚火して…ビールでも飲もう…オッ…ウンソ…」と…しかし、ウンソからの返事は返って来ませんでした。ジュンソはウンソをおんぶしたまま、思い出の海辺を歩き続けました。日は西に傾き暗くなっても、ジュンソはウンソと歩き続けました。



アトリエには祭壇が飾られていました。ジュンソとウンソの実兄が祭壇の前に並んで、弔問客に礼をしていました。ウンソの遺影の前には、供え物が並べられ、ロウソクの燈明が揺れていました。ジュンソやウンソの友人たちが、弔問客への食事の世話などを手伝っていました。シネは一人窓際に立って何か思いつめているようでした。二人の母親は、花壇の側壁に腰をおろしてウンソのアルバムを見ていました。

スニムは、ウンソの子ども時代の写真を見ながら、指で写真を触っていました。二人は写真を見ながら大きな溜息をつきました。ユン教授は、裏口の石段に一人座って、うなだれていました。

ジュンソは、弔問客が一段落すると廊下に出てきて疲れ切った表情をしていました。ふと顔を挙げると、ユミが歩いて来ました。ユミが「ジュンソ…」と言います。ジュンソは「来てくれてありがとう…」とか細い声で言いました。ユミは目に涙をためながら「ジュンソ…」と言います。ジュンソは、心配掛けまいと精一杯の明るい表情で「テソクも来てるよ…」と言うとあたりを見回しました。近くにテソクがいないことに気づくと「呼んでくる…入って…ウンソにお別れを…」と言うと、今にも泣き出しそうな顔で、ジュンソを見つめているユミの横を通り過ぎて行きました。

テソクは、庭のベンチに座って、タバコをふかしながらうつむいていました。ふと顔を挙げて空を見ると、ウンソの思い出が脳裏を走り始めました。ウンソの笑顔が次々と…二人で並んで自転車を走らせた映像が…噴水の前でプロポーズした時の映像が…ウンソのながした涙の映像が…ウンソが病と闘う映像が…ウンソに久しぶりに会って花束をプレゼントした時の映像が…ウンソの喜んだ映像が…次々駆け巡りました。テソクはまたうなだれました。悲しみをじっと耐えていました。そこへジュンソが、力なく歩いて来ました。ジュンソは、テソクの前で立ち止まると、黙ったままテソクを見つめていました。

テソクはうつむいたまま「ウンソ…何でこうなるんだ…絶対に負けないと言ったのに…なぜなんだ?…」と言いました。ジュンソはテソクの横に座りました。テソクはジュンソに「お前は何をしてた…彼女を守るはずだろう…このザマは何だ…」と、今まで我慢して来た想いをぶつけました。そして大きな溜息をつきながら空を見ていました。ジュンソは黙って聞いていました。

テソクは「昨日からウンソの顔が…思い出せないんだ…何も思い出せない…この先…どう生きれば?…どう生きればいい?…オレにはもう何もない…すがるものさえも…ウンソの顔さえ忘れたら…どうすればいい…ジュンソ…これから…どうするんだ…」と言いました。ジュンソは静かに「ウンソとの約束を…守るよ…それだけだ…」と言います。テソクは泣きながら、小さく顔を何度も縦に振って「うらやましいな…本当に…うらやましいよ…守る約束があってさ…」と言いました。ジュンソはテソクに顔を向けると「そう思うか?…どんなにつらい約束か…想像できないだろう…テソク…頼みがある…」と言いました。テソクは「何だ?…」と聞き返しました。ジュンソは「僕の代わりにお前が…ウンソを見送ってくれ…」と言いました。ジュンソの目からは、今まで堪えていた涙が…大粒の涙が…次から次へと流れ出していました。そして「僕は僕なりに…彼女に別れを告げたい…だから頼む…受けてくれるか?…ウンソもお前なら喜ぶよ…」と言いました。テソクは何度も頷きました。



思い出の海辺には、シネとユミが立っていました。二人の視線の先にはテソクの乗った船がありました。テソクは船に座って、白い粉となったウンソの遺骨を手にとって、思い出の海に流していました。

ジュンソは車に乗って、故郷の細い道を走っていました。ジュンソの目には、ウンソと並んで自転車に乗った、幼い日の二人の映像が映っていました。故郷の川で水遊びをしていた二人の映像が…ジュンソは心の中でウンソに語りかけます。「お前との約束を守る前に…もう一度戻りたかった…一番幸せだったあの場所へ…ここでお前に…最後の別れをしたかった…」と…ウンソは思い出のトンネルの中へと吸い込まれて行きました。

テソクは、ウンソとの思い出をかみしめながら、別れの儀式を続けていました。ジュンソは、心の中で語り続けていました。「…そして僕は…お前が去った世界で…淡々と生き続けるだろう…」と…

ジュンソは、母校の中学校の門の前に立っていました。ジュンソは心の中で語り続けます。「お前の元に行ける日を心待ちにしながら…」と…すると子どもの頃のウンソの声が聞こえました。「お兄ちゃん…ウンソ…お兄ちゃん…」と…まだ、自転車の運転が下手なウンソが、懸命に追いかけて来る姿が…そして交差点で、出会い頭にトラックに跳ねられたウンソの姿が…シネがウンソを見ていた姿が…ウンソの友人が大声で「ウンソ…」と叫ぶ姿が…先に行っていたジュンソが振り向いて「ウンソ…」と叫ぶ姿が…ウンソが路上に倒れている姿が…ジュンソの脳裏に映し出されていました。この日から、二人の運命は大きく変わって行きました。

ジュンソはウンソの声がした方向へ歩いて行きました。その足取りは、おぼつかないものを感じさせていました。ジュンソは立ち止り、事故現場を見つめていました。目から一筋の涙がこぼれ落ちました。その時、クラクションの音が鳴り響きました。ジュンソは振り向いてトラックを見つめていました。トラックは、ジュンソに向かって走り続けてきました。何度もクラクションを鳴り響かせながら…しかし、ジュンソは避けようとはせずに、ただトラックを見つめていました。そして、急ブレーキの音が鳴り響きました。

テソクとウンソの別れの儀式は、まだ続いていました。テソクは一握り、一握り思い出をかみしめながら、ウンソの遺骨を海に流していました。

ジュンソの体が、まるでスローモーションのように舞いあがりました。その瞬間に、ジュンソの脳裏をウンソとの思い出が駆け巡っていました。現在から過去にさかのぼるようにして…

最期の思い出の海で、ウンソをおんぶしながら歩く姿が…そして二人だけの結婚式の姿が…二人で歩いたススキの野原を…思い出の海で写真を撮った姿が…ウンソが顔色の悪さを笑顔で隠す姿が…二人で砂浜に座って夕暮れの海を見る姿が…ウンソが危篤と知らされて病院に駆けつけた時に、集中治療室の前で『ウンソ…愛している…』と約束の言葉を叫んだジュンソの姿が…思い出の牧場で偶然に出会った時に『心の中で愛し合おう…』と誓い合った時の姿が…その後で二人で交わした口づけの姿が…病院で療養しているウンソの姿が…苦しみに耐えかねて酒に酔ったジュンソの姿が…ウンソがテソクと駆け落ちしてソウルで暮らすと嘘をついて別れた時の姿が…渡し船で発作を起こしてしゃがみ込むウンソの姿が…ウンソがテソクノ部屋で倒れた時に、テソクがウンソを抱えて病院に運ぶ姿が…ユミが自殺をして仕方なく泣きながら別れる二人の姿が…ジュンソと待ち合わせた約束の場所で、涙を流しながら待っていたウンソの姿が…ユミが二度目の自殺を図った時に、海の中でユミを抱きとめながら泣き叫ぶジュンソの姿が…ウンソとジュンソが、お互いの手をお互いの頭の上に置いて『汝の罪を許す』と言った時の姿が…牧場に駆け落ちした時にウンソの指に、指輪をはめてやった時の姿が…牧場で野草を摘んで花束にして、ウンソにプレゼントした時の姿が…二人で牧場の野山を歩き回った姿が…両親にウンソとの結婚を反対されて、バスに乗って駆け落ちした時の姿が…ウンソと再会して幸せだった日々の姿が…二人でアトリエの窓を拭いている姿が…そして自然とお互いの指が触れ合った時の姿が…ジュンソとユミとテソクが思い出の海辺に立っていると、遠くからジュンソの姿を見つけて駆け寄り『お兄ちゃん』と叫びながらジュンソの背中に抱きついたウンソの姿が…まだお互いが、ウンソとジュンソとは知らなかった時に、なぜか引きつけられた電話の遣り取りをしている姿が…偶然すれ違った、渡し船から見たウンソの姿が…車と自転車ですれ違っても気がつかなかったウンソとジュンソそしてテソクの姿が…渡米するユン一家の乗った車が、トンネルに消えてゆくのを泣きながら見ていたウンソの姿が…お別れの思い出作りに、海辺の砂浜で、二人で遊んだ姿が…雨上がりの田舎道を自転車で家に帰る二人の姿が…倉庫の前で雨宿りした二人の姿が…まだ物心のつかない幼いジュンソが、産院で悪戯をした時の姿が…

そしてジュンソが路上に舞落ちる時に、ウンソの声が聞こえてきました。「汝の罪を許す…」と…幼い時から二人で言い合った言葉でした…その瞬間、ジュンソの脳裏に映った映像は、幼き日に二人で自転車に乗って、トンネルを抜け出そうとしていた映像でした。暗闇の向こうの光に吸い込まれるように…まるで、二人で一緒に天国に駆け登るように…そして幼い二人の影は、光の中に吸い込まれて消えて行きました…



『秋の童話』第18回(最終回)運命は、こうして幕を閉じました。





 何もこんな終わり方をさせたくてもと思いました。テソクにウンソの散骨を任せて、ウンソとの思い出の場所を巡るところまでは分かりましたが、何もウンソが交通事故に会った運命の現場近くで、ジュンソもトラックに跳ねられて死ぬなんて…逃げようと思えば逃げられたのに…ただトラックを見ながら立ちすくんでいたなんて…あれほどウンソが『お兄ちゃん死なないで…私の為に死なないで…私の為に生きて…』と願っていたのに…死にたい気持ちもよく分かるけど…ウンソにしてみれば、愛するジュンソには生きて幸せになって欲しかったはず…生きて、ウンソの愛した父母やテソク、そして友人たちを支えて欲しかったに違いないはず…男なら我慢して生きるべきだったと思います。それがウンソの供養にもなったはずだと……

それにしても、韓国のトラック野郎の運転マナーの悪さには頭に来ました。…さほど広くもない見通しの良い田舎道。日本ならスクールゾーンで登下校には、警官やPTAの人たちが立って、交通マナーを喚起するような道で、クラクションを鳴らしつづけながら突っ走ってくるなんて考えられません。国が違えば事情も違うのだから、考えられる設定と諦めなければいけないのかもしれなませんが…それにしても、こんな終わり方はないような気がしました。ただ、ジュンソの体が舞落ちる寸前で、ウンソの「汝の罪を許す…」と言う声が聞こえた時に、ウンソはいつも優しいな…と思いました。そして、この後の映像は素晴らしかったと思います。幼き日に、二人で自転車に乗って、トンネルを抜け出そうとしていた映像でした。暗闇の向こうの光に吸い込まれるように…まるで、二人で一緒に天国に駆け登るように…そして幼い二人の影は、光の中に吸い込まれて消えて行きました…天国で、ウンソとジュンソは幸せに暮らすんだろうなと思いました。



でも、『秋の童話』は好い作品でした。昭和の時代に生まれ育った者として、何か懐かしさを感じました。昭和50年代(1970年代)以前の日本には、まだこのような考え方が残っていたような気がしました。家族制度がかろうじて生き残っていた時代…家という考え方にとらわれた時代が、日本にもあったような気がします。

それぞれが懸命に生きて、前を向いて歩いて行った時代があったように思います。いつの間にか、西洋文明に毒されて、日本古来の考え方を失って行った日本人…それが悪いことだとは決して思いませんが、豊かで便利な世の中になったけど、人と人の心のふれあいは、昔ほど暖かくないように思います。秋の童話を見ていると、私には懐かしさが感じ取れました。無い物ねだりなのかも知れません…時代に流されて、自分を見失っている、昭和生まれの日本人の象徴なのかもしれません…

2012年4月15日日曜日

韓流ドラマ「秋の童話」第17回時間を見ました


韓流ドラマ「秋の童話」第17回時間を見ました



 テソクは、車でジュンソのアトリエに駆けつけます。アトリエからは煌々と明かりがもれていました。テソクは車から降りると、すぐにアトリエの中へ入って行きました。テソクがジュンソの画室を覗くと、部屋の中央に書きかけのキャンパスを残して、ジュンソの姿はありませんでした。テソクは、すぐさま庭へと飛び出てジュンソを探します。

 ジュンソは、大木の根元にある庭石にもたれかかって、座り込んでいました。その姿には生気がなく、生きる力を感じさせませんでした。テソクはジュンソを見つけると歩み寄って行きます。そして「来いよ…ウンソがお前を待っている…」と言います。ジュンソは茫然とした表情で、小刻みに首を横に振るとテソクから視線をそらします。テソクは語気を強めて「どういうつもりだ…」と言うと、ジュンソの肩をつかみながら膝をつき「おい、オレを見ろ…」と怒鳴りつけます。それでもジュンソは、視線をそらしたままで何も言いませんでした。

 テソクは、必死の表情で「ジュンソ…ウンソが待っている…行こう…一緒に来てくれ…」と、訴えかけます。ジュンソは、何も言わずにテソクの手を払いのけて、立ち上がり背を向けます。テソクはジュンソの背中に「お前…何しているんだよ…ウンソを見捨てるのかよ…」と怒鳴りつけます。ジュンソは気が抜けたようによろめきながら、テソクから逃れようと歩きだします。テソクはジュンソを後ろから羽交い絞めにして「来いよ…」と言います。ジュンソはテソクを振り払おうと抵抗しながら「やめろ…放せ…」と力なく言います。テソクは「来いよ…」と言いながら、ジュンソを投げ飛ばしました。そして、腕をつかみ「立つんだ…」と言いながらジュンソを立たせようとしますが、ジュンソは「いやだ…放せ…」と言いながら抵抗しましす。その反動でテソクは後ろに飛ばされてしまいます。

 テソクは転んだまま悲壮な顔で「ジュンソ…オレの気持ちが分かるか?…お前をウンソの元に連れて行くことでしか…彼女への愛を示せない…他に何もしてやれない…彼女が愛するのはお前だから…オレの気持ちが分かるか?…」と、ジュンソに想いをぶつけます。

 するとジュンソの表情が変わり、背を向けたまま静かに「テソク…僕が何を考えているか…わかるか?…」と言います。そしてジュンソは「僕を見たら…ウンソは逝ってしまうかも…顔を見たら安心して…旅立ってしまうかも…僕が行かなければ…生きていてくれるかも…このまま会わなければ…僕を待ちながら生きてくれるかも…怖いんだ…どうしていいかわからないほど…」と言います。二人の顔は、苦悩で歪んでいました。テソクもジュンソもお互いを理解し合っていました。



 病室では、ウンソは依然として意識が戻らないまま眠り続けていました。そこへジュンソが入って来ます。ジュンソは、恐る恐るウンソに近づいて、ベッドのそばの椅子に座ります。ジュンソはウンソを見つめていました。そして、乱れた髪をそっと整えて遣ります。

 ジュンソはウンソの耳元で優しく「ウンソ…ウンソ…ウンソ…」と呼び掛けるのですが、何の反応もありませんでした。ジュンソはそれでも「目を開けてくれ…お兄ちゃんだぞ…お兄ちゃんが来たんだ…目を覚ましてくれ…眠りから覚めたら…もっと苦しいかもしれない…でも僕の頼みだ…僕のわがままを…お前は、いつも聞いてくれたろ…いつも待ってくれた…いつも許してくれた…だから目を開けてくれ…どんなにつらくても…僕のために頼む…僕は…お前と一緒に食事したり…息をしたり…話をしたい…もっと一緒にいたい…愛していると言いたい…」と、優しく語り続けました。ジュンソの目からは、いつの間にか涙があふれ出していました。表情は歪み、堪らなくなってウンソの肩に顔を寄せてしまいます。

 ジュンソはすすり泣きながら顔をあげて「どうか連れて行かないで…神様…聞こえますか…ウンソを助けて下さい…もう少し、僕に時間をください…もう少しだけ…お願いします…お願いします…」と、祈りとも、叫びとも取れる心の内を天に投げかけます。そしてジュンソは泣き崩れ、ウンソの胸に顔を伏せてしまいます。



 あれから何も起きずに夜が明けていました。病院の別室では、キョンハが心労で倒れたままベッドに寝かされて点滴を受けていました。その横には、スニムとシネが付き添いに疲れ果て、ベッドに顔をつけて寝ていました。ユン教授とテソクは、待合室のソファーで仮眠を取っていました。

 ウンソの病室にも朝の光が射していました。ジュンソはウンソの寝ているベッドに顔をつけて寝ていました。その時です。微かにウンソの「お兄ちゃん…お兄ちゃん…お兄ちゃん…」と呼ぶ声がしました。ジュンソは、その声に気づき目を覚まします。ジュンソがベッドから顔を上げるとまた「お兄ちゃん…」と呼ぶウンソの声がしました。ジュンソがウンソの顔を見るとウンソの目が開いていました。神様にジュンソの祈りが届いた瞬間でした。神様は、ジュンソの願いを受け入れられたのです。奇跡としか言いようがありませんでした。

 ウンソがまた「お兄ちゃん…」と呼び掛けました。ジュンソも「ウンソ…」と返事をします。ウンソとジュンソの視線が結びつきました。ジュンソがウンソに「気分は?…」と聞くと、ウンソは「私、家に帰りたい…」と答えました。



 テソクは「ウヮー」と息を吐き出すと仮眠から目が覚めます。そしてすぐに駆けだしてウンソの病室へ向かいます。病室の前で立ち止まると、扉の引き手を持って目を瞑り、大きく深呼吸をして病室へ入って行きました。テソクがベッドの前まで来るとそこには誰もいませんでした。ベッドの上には、ウンソの寝巻が綺麗にたたんで置いてありました。テソクの顔に微笑みが蘇りました。ウンソに起き上がれる体力が戻ったことを察知したからです。



 ジュンソはウンソを車に乗せて、アトリエへと向かっていました。アトリエに着くとジュンソはウンソに「さあ、家に着いたぞ…」と言います。

ジュンソはウンソを抱きかかえて歩いていました。ジュンソは玄関まで来ると「ウンソ…今日から二人暮らしだ…」と言います。ジュンソはウンソを抱えたまま、背中で玄関の扉を押してアトリエの中に入って行きます。



病院では、誰もいない病室のベッドの前に、ユン教授がうなだれて座っていました。そこへ、知らせを聞いたキョンハとスニムが、慌てた様子でやって来ました。キョンハはユン教授に「ウンソがいなくなった?…」と聞きます。スニムも「じゃあ…あの子…目を覚ましたんですね?…」と聞きます。ユン教授は、うつむいて何とも言えない表情で「朝早くに、ジュンソが連れて帰ったんだろう…」と答えます。二人の母親は「アアー…」と大きく息を吐き出しながら、体全身で安堵の表情を見せます。スニムは思わず「神様ありがとうございます…ありがとうございます…」と感謝の言葉を唱えます。キョンハは、ベッドの上の綺麗にたたまれた寝巻を手にして抱きしめながら「ウンソ…ウンソ…ウンソ…」と涙を流していました。



ユン教授は、主治医の部屋にいました。そして、「今後、治療と手術はどうすればいいですか?…」と尋ねます。主治医は「手術できる状態ではありません…自宅療養をお勧めします…」と答えます。ユン教授は、一時的な回復と悟ったのか、表情は暗く笑みはありませんでした。



ジュンソはウンソを車に乗せて出かけました。その後に一台の車が……車の中にはテソクがいました。テソクは車を止めると窓を開け、そっと二人の様子を覗いていました。ただ、テソクの表情には明るさが感じられました。

ウンソとジュンソは、思い出の海辺にいました。ウンソは車いすに座っていました。ジュンソは砂浜に絵を描いていました。子どものときに、お別れの為に、最後の思い出を作りに来たときのように…ウンソはジュンソに絵を指でさして、何かを言っていました。ジュンソはウンソに、ポーズの指示をしていました。ああでもない、こうでもないといった感じで、その様子は実に楽しげでした。ウンソは笑い、ジュンソは首をかしげながら砂浜の絵を足で消しては、また描き始めます。

テソクは、二人の楽しげな様子を遠くから、そっと見つめていました。その表情は、嬉しげでもあり、寂しげでもありました。テソクは何も言わずに返って行きました。

ウンソとジュンソは、砂浜に座って、海を行き交う船を眺めていました。ウンソは「お兄ちゃん…私に言うことない?…」と聞きます。ジュンソはとぼけた顔で「言うことって?…」と、聞き返します。ウンソは「ないの?…がっかりだな…約束してくれたのに…」と拗ねて見せます。ジュンソは、少し笑みを浮かべながら「何だっけ?教えてくれよ…」と、またとぼけます。ウンソは、少しムッとした表情で「教えない…」と答えます。ジュンソが「じゃあ、仕方ないな…」と言うと、ウンソはジュンソの顔を見ながら「エッ?…」と言います。ジュンソの顔は笑みを堪えた複雑な表情でした。ウンソは、少し開き直ったように「もういい…私は何度でも言えるのにな…」と言います。すると突然ジュンソが「ウンソ…愛している…」と言います。ウンソは思はず、ジュンソの顔を見つめます。ジュンソはまた、ウンソの顔を見つめながら「愛してる…」と言います。ウンソの顔に笑みがほころびました。ジュンソはウンソをそっと抱き寄せます。ウンソはジュンソに身を任せます。ウンソの目から涙が一筋ながらていました。

テソクは、車を飛ばしていました。これでいいんだという思いと、やるせない想いとが複雑に絡み合っていました。テソクはウンソと知り合った頃からのことを思い出し始めます。ゴルフバックを担いで歩いている横を自転車に乗って通り過ぎて行くウンソの姿を…ウンソの実兄が、勤め先の社長と強引に突き合わせさせようとしたときに、ウンソの手を握って助け出した時のことを…ホテルのゴルフ場で、制服姿のウンソにネックレスのプレゼントをした時「大切にするよ…頑張るよ…努力するよ…」と言った事を…ジュンソのアトリエで、一緒に洗濯物を干した時の事を…車のトランクいっぱいに、鉢植えの花を乗せて、ウンソに「結婚してほしい…」と告白した時の事を…ホテルのテソクノ部屋で、ウンソが初めて倒れた時の事を…そのウンソを抱きかかえて車に乗せ、病院に連れて行ったときの事を…ウンソを抱きしめながら「チャンスをくれ…」と言うと、ウンソが「ダメよ…ダメ…私には、そんな資格はない…ダメよ…」と言った時の事を…ウンソが検査をする前に、お守りの指輪を渡した時の事を…ウンソが手術に怯えて、病院の庭のベンチに、震えながら座っていた時に、そっと近づいて抱きしめながら励ました時の事を……



その日の夜、ウンソは突然、口を手で押さえて、外の洗い場に駆け寄って来ました。その後ろから、慌てた様子のジュンソが追いかけてきました。ウンソは、洗い場で嘔吐としました。ウンソの様子は、口を手で押さえ、身を屈めて苦しそうでした。ジュンソがウンソの背中を叩きながら心配そうに「大丈夫か?…」と言います。ウンソは空いている手で、ジュンソの手を振り払いながら「いいから中に入ってて…」と言います。それでもジュンソはウンソの背中を叩きながら「大丈夫か?…」と言います。ウンソは苦しそうな息使いをしながら「中に入ってて…こんな姿、見せたくないの…行って…」と言います。ジュンソは悲しく辛そうな表情を浮かべて、ウンソの背中を見つめていました。



ジュンソはベッドの上で、ウンソを抱きよせて寝かせていました。ジュンソはウンソに「寝てるのか?…」と聞きます。ウンソは、薄眼を開けるとまた瞑り、微かな声で「うん…」と答えます。ジュンソは「横になる?…」と聞きます。ウンソは気持ち良さそうに「ううん…こうやって眠りたい…いいでしょう?…」と言います。ジュンソは「もちろんいいさ…決まっている…」と言います。ウンソは甘えるように「何かお話して…私が眠るまでの間に…」と言います。ジュンソは「何を話そうか…」と言います。ウンソは「明日、何をするか教えて…」と聞きます。ジュンソは「明日?…まず、朝早く起きて、久しぶりに掃除をする…」と言います。するとウンソが「掃除?…私、手伝えそうにないわ…」と言います。ジュンソは「お得意のがあるだろ…お兄ちゃんの応援…」と言います。ウンソは「うん…そうね…」と答えます。ジュンソは「掃除がすんだら…大学に行って教授に会うよ…」と言います。ウンソは「早く戻ってね…」と言います。ジュンソは「ああ…」と答えます。ジュンソの目からは涙がこぼれ落ちていました。そして「昼ごはんは何を食べようか…ああ…明日考えよう…」と言います。ウンソの表情は幸せそうでした。ジュンソはウンソに「起きてる?…」と聞きます。ウンソは微かに「うん…」と答えます。ジュンソは「午後は、ここで絵を描くから…お前は休んで…わかったな…それから夜は………ウンソ…」と言うと、ウンソの反応がない事に気づきます。ウンソは幸せそうに眠りについているのですが、ジュンソの表情は次第に硬くなって行きます。ジュンソは「ウンソ?…」と呼び掛けるのですが、返事が返って来ません。ジュンソの表情は緊張を増して行きました。ジュンソは、人差し指を恐る恐るウンソの鼻の下に持って行きます。そして、ウンソが息をしていることを確認して、ホットした表情に変わりました。ジュンソは静かに息を吐き出すとウンソに優しく「おやすみ…また明日な…」と言います。ジュンソはしばらくの間、ウンソを抱きしめ続けていました。



ウンソは、実家の自分の部屋で寝ていました。実兄が甲斐甲斐しくウンソの世話をしていました。以前の事を考えたら、まるで夢のような光景でした。実兄は手持無沙汰なのか、たばこを吸おうとしますが、そこへスニムが入って来ます。スニムは息子の姿を見るなり、強い語調で「ここで吸わないで…」と叱りつけます。実兄は「わかった、外で吸うよ…」と言うと、怒って部屋を出て行きました。

スニムは、ウンソの寝ている布団の横に座ります。ウンソはそれを見て、体をおこします。そしてウンソは「ごめんね、迷惑掛けて…今日だけだから…明日には、お兄ちゃんが戻るわ…」と、すまなそうに言います。スニムは、ウンソの顔を見ながら、わざと怒ったように「本当に手のかかる子だよ…」と言います。スニムは言葉と裏腹に、ウンソの世話をし始めます。スニムはウンソの体を濡れたタオルで拭こうとして「さあ、手を出して…」と言いながらウンソの袖をまくります。するとウンソの手首の上のあたりに、大きな皮下出血の跡を見つけました。スニムはそれを見ると驚きます。ウンソは、見せてはいけないものを見せてしまったと思い、すぐに袖を降ろそうとします。そして、心配させまいと「何でもない…ちょっとぶっつけただけよ…」と言います。スニムは、少し興奮したのか「あんたを置いて、何でソウルなんかに…」と言います。ウンソは「お友達の展示会に行って…人にも会うって…大切なようなの…」と言うと、甘えるように、スニムの膝の上に寝ます。スニムは、ちょっと怒るように「子どもみたいなマネをして…」と言うのですが、すぐに頭をなぜながら「具合はどう…痛むかい?」と、ウンソの顔をに自分の顔を近付けながら聞きました。ウンソは「大丈夫…たまに痛むだけよ…」と答えます。スニムは優しい声で「お母さんが治してやるよ…」と言うと子守唄を歌い始めます。

「母さんの手は魔法の手…痛いの飛んでいけ…母さんの手は魔法の手…」と…そして「どうだい?…」と、聞きます。ウンソは嬉しそうに「ずっとよくなった…お母さんのおまじないは初めてだね…」と答えます。スニムは「そうだね…」と言います。スニムの目から涙が流れ始めます。そしてまた歌い始めました。「お母さんの手は魔法の手…痛いの飛んでいけ…お母さんの手は魔法の手…」と……まるで、ウンソが生まれて再開するまでの空白を埋めるかのように……



ジュンソの友人の展覧会場では、友人が客に説明をしていました。「ご覧になったとおり、今回の作品は…」と…そこへジュンソがやって来ました。友人は、ジュンソの側に来て「ジュンソ…驚いたな…来てくれたのか…」と言います。ジュンソは「当然ですよ…」と言います。そして会場を見渡しながら「キムさんは?…」と聞きます。友人は、照れくさそうな表情をして「わざわざ来るわけ…」と答えます。すると、ジュンソの後ろの方から「ジファンさん…何か飲む?…」と言う声が聞こえてきました。ジュンソが振り向くと、恋人のキムさんが、甲斐甲斐しく展覧会の手伝いをしていました。友人は、照れくさそうに「いや、実は昨日も来てくれたんだ…」と言いました。ジュンソは友人の顔を見ながら、微笑み始めます。そして恋人のキムさんを見ると、キムさんが「こんにちは…」と挨拶をしました。そして、首で合図しながら「来てるわよ…」と言います。ジュンソは、合図された方向に視線を向けると、ユミの姿がありました。ユミと視線が合うと、しばらくの間見つめ合っていました。



二人は、近くの公園を散歩していました。ジュンソが、自分のマフラーを取ってユミの首に掛けて遣ります。ユミが「暖かいわ…」と言うと、ジュンソが「渡米するって?…」と尋ねます。ユミは首を縦に振りながら「誰に聞いたの?…直接言おうと思っていたのに…」と答えます。ジュンソは「会って話したかったんだ…君が行く前に…」と言います。ユミは「つらいでしょう?…苦しむ彼女を見るだけなんて…」と聞きます。ジュンソは素直に「つらいよ…本当につらい…」と答えます。ユミは、涙が出そうになるのをこらえながら「私ってバカね…あなたが言うと…何とかしたいと思ってしまう…笑っちゃうわ…」と言うと、一人で先に歩いて行きました。ジュンソは、何も答える事が出来ませんでした。ユミは振り返ると手を差し伸べて「ここでお別れよ…」と言います。ジュンソは、そっと手を出してユミの手を握り、無言で握手をしました。ユミは「全部忘れましょう…私も忘れるから、あなたも忘れてね…わかった?…」と強がって見せます。ジュンソは、何も言わずにユミを見つめていました。ユミはジュンソに「さようなら…」と言うと歩きだします。ジュンソが振り向くと、ユミも振り向きました。ユミは「ジュンソ…」と言うと戻ってきて、首に掛けていたジュンソのマフラーを外して、ジュンソの首に掛けて遣ります。そして「気が変ったわ…私はあなたを忘れる…でも、あなたは、私の事を忘れないで…時々でいいから思い出してね…私が心から愛していたこと…忘れないでほしいの…でなきゃ今までの愛が悲しみだけになるから…忘れないでね…」と、今にも泣き出しそうな顔で言います。ジュンソはユミを見つめながら「ああ…忘れないよ…忘れない…」と答えました。



その夜、ウンソはジュンソと電話で話をしていました。ウンソは「うん…」と返事をします。そして「ホテルはどう?…じゃあ、明日ね…ゆっくりして、午後に戻って…うん…」と言うと電話を切りました。隣に寝ていたスニムが気づいて「お兄さん、明日の午後に戻ってくるって?…」と聞きます。ウンソは嬉しそうに「うん…」と答えます。スニムは「おやすみ…」と言うと、寝ろうとするウンソの頭に会わせて、枕の位置を調節してやります。

ジュンソは電話を切ったあと、ホテルの前で考えていました。

夜が明けて、スニムが店のカギを開けて外に出ると、ジュンソの姿を見つけました。ジュンソは車を止めて、店の前の海を見ていました。スニムは「ジュンソさん…」と声をかけます。ジュンソは振り返って「おはようございます…」と言うと、店の方に歩いて来ます。スニムは、驚いたように「午後に戻るはずじゃ?…夜通し運転を?…」と聞きます。ジュンソは、恥ずかしそうに笑いながらうなずいて「ええ…眠れなくて…」と答えます。その時、ウンソは店の窓際からジュンソの姿を見ていました。ウンソは「お兄ちゃん…」と言います。ジュンソは、微笑みながら「迎えに来たよ…」と言います。ウンソは、嬉しそうに笑顔で「うん…」と答えました。

ジュンソは、ウンソを病院に連れて来ていました。ウンソは、血液検査をする為か、注射器で血を抜かれていました。それが終わると、医師は注射針の跡を「押さえていてください…」と言います。ウンソが振り向くと、すぐそばには、鋭い眼差しで心配そうに見守っているジュンソの姿がありました。

二人は主治医の部屋にいました。主治医は、検査結果が書かれている書類を見ながら、「特に変わりはありません…また、来週来てください…」と言います。ジュンソが「ありがとうございます…」と言って、立ち上がろうとすると、ウンソが「あの…病気が悪化したらどうなるんですか…特別な症状が出るんでしょうか?…」と主治医に尋ねます。ジュンソは、ウンソの後ろで、深刻な表情で聞いていました。主治医は「そうですね…様々な症状が出てきます…喀血はまだ経験ないでしょか?…」と言います。するとジュンソが「喀血って、咳き込んだ時に血を吐く症状ですよね…」と尋ねます。そして心配そうに、ウンソの顔を覗き込みます。ウンソは振り向いてジュンソの顔を見ると微かに微笑みました。



二人は車でアトリエへ向かっていました。

ウンソがジュンソに「ねえ…写真を撮って欲しいの…」と言います。ジュンソは「写真?…」と聞き返します。ウンソは、甘えるような声で「うん…」と言います。しかし、ジュンソからの返事はありませんでした。ウンソはまた「撮ってよ…」と言います。そして「病気が悪くなる前に撮っておきたいの…」と言います。ジュンソは、黙って運転をしていました。ウンソは「撮ってくれるでしょ?…」と聞きます。ジュンソは、少し怒った表情で「嫌だ…撮って誰に見せるんだ…?」と言います。ウンソは、少し淋しそうな表情で「いつの日か思い出す為よ…病気が治ったら…“あのときは、辛かったね”って…思い出すの…」と言います。そしてジュンソの顔を覗き込むようにして「撮ってくれるよね…」と頼みます。

ジュンソは辛そうな表情をしていました。ウンソにしてみれば、ときには写真を見て思い出してほしいのでしょう。でも、ジュンソにしてみれば、迫り来る別れのときまでは、その日、その時を精一杯に過ごしたい。そして、一日でも一分でも長くという思いがあるのでしょう。その先の事など考えたくもない。この身が、この心が耐えられるかなど考えられなかったのでしょう。



ウンソはアトリエの花壇の石に腰かけていました。ジュンソはカメラを手にして、腰を屈めていました。ジュンソはウンソにカメラを向けます。ウンソは思いっきりの笑顔を作りました。しかし、ジュンソはなかなかシャッターを切る事が出来ませんでした。死を前提にして笑顔を作るウンソの顔をまともに見る事が出来ずに、顔からカメラを外し、うつむいていました。ふとウンソの顔を見ると、それでもウンソは笑いながらジュンソを見つめていました。ジュンソは思い直してカメラを構え、写真を撮り始めました。公園のススキの中でのポートレイト…思い出の海を背景にしたポートレイト…車いすで連れ回しながらの撮影でした。海鳥が海上を飛び回り、二人は砂浜に座りながら肩を寄せ合い遠くを見ていました。

ジュンソは、ウンソの顔を見ながら「大丈夫か?…」と聞きます。ウンソはジュンソの顔を見て、少し疲れた表情で、納得したように、小さく首を縦に振ります。ジュンソは何も言わずにウンソを抱きよせます。二人はしばらく海を眺めていました。



ウンソの寝ているベッドの上に、秋の陽が射していました。ウンソは起き上ると上布団を横に寄せます。すると突然咳が出始めます。ウンソは思わず口を手で押さえました。指の隙間から鮮血が、すたすたと落ち始めます。ベッド用の白いマットが赤く染まっていました。

ウンソは、口から手をゆっくりと離して、じっと見つめていました。その表情には、明らかに動揺が感じられました。ウンソの目からは涙があふれ出し、息遣いが荒くなっていました。そしてウンソは、来るべき時が来た事を悟りました。ウンソは慌ててベッドから降りると、白いマットを取り外し、丸めてベッドの下に隠しました。ジュンソに見つからないようにと願いながら…

ウンソはベットの横で、秋の陽射しにあたりながら、木製の背もたれのある椅子に座って体を休めていました。時折目を開けて、これからの事を考えていました。



ウンソとジュンソは昼食を食べていました。二人の間には会話もなく、ジュンソは時折不機嫌そうにウンソの顔を見ていました。ウンソもまた、喀血をして動揺しているのか、暗い表情で、ただ義務感からご飯を流し込んでいるようでした。

ウンソはジュンソに「これ、驚くほどまずいわ…全然、味のないお粥ね…」と言います。ジュンソは、ご飯を食べながらうつむき加減で「塩っ辛いものはダメだ…我慢しろよ…」と言います。ウンソはジュンソが食べているものを見て「それは、美味しい?…」と聞きます。ジュンソは小さな声で「まあな…」と答えます。ウンソはジュンソの皿にスプーンを伸ばして、味見をしました。すると、すまなそうな表情で「私のと同じだわ…合わせることないのに…何か作ろうか?…」と言います。ジュンソはウンソの顔を見ながら、少し笑みを浮かべて「いいんだ…他の物は食べたくない…食べよう…」と答えます。そして「本当に、驚くほどまずいな…」と言うと、笑顔で食べ続けました。ウンソは、黙ってうつむいていました。



ジュンソはウンソの部屋を掃除していました。モップを掛けているうちに、ベッドの下に引っ掛かる物を感じました。ジュンソが腰を屈めて見ると、ベッド用のマットが隠されていました。ジュンソがマットを引きだして見ると、大量の血痕がついていました。ジュンソの表情が歪みました。ジュンソはウンソの病状の悪化を察知しました。

ウンソは庭のベンチに座りながら、背もたれに手と顔を置いて、一人物思いにふけっていました。そこへテソクがやって来て、ウンソの目の前に花束を置きます。ウンソは花束に気づき振り向くとテソクの姿を捕らえます。ウンソは嬉しそうに「テソク…」と名前を呼びます。テソクは笑顔でウンソの横に座りました。

テソクはウンソに「ちゃんと食っているか…」と聞きます。ウンソは微笑みながら、黙ってうなづきました。テソクは優しく「検査、さぼってないか?…」と聞きます。ウンソはまた、微笑みながら黙ってうなづきました。テソクは「オレに会いたかったか?…」と聞きます。ウンソは、黙って微笑むだけでした。テソクは「いつも笑ってごまかすな…」と言います。ウンソは優しい表情で「会いたかったわ…なぜ来てくれなかったの?…」と答えます。テソクは上を向きながら「オレは忙しいんだ…お前たちがイチャツク姿は見たくないしな…」と、ちょっと拗ねたように言いました。そして、ウンソの顔を見ながら、優しく笑って「バラ、きれいだろ?…」と言います。ウンソはバラの花束を見ながら「ありがとう…とてもきれい…」とお礼を言います。テソクはおどけるように「お前の方が綺麗だ…」と言います。ウンソは、少し淋しそうに「まさか…日ごとにひどい顔になるわ…」と言います。テソクは突き放すように「そんなこと言っていると、本当にひどい顔になるぞ…」と言いました。テソクは、懸命にいつもの自分を装っていました。

ウンソはテソクを見ながら「テソクまで、私を嫌いになる?…」と、つまらなそうに言います。テソクは「何だよ…ジュンソがいるだろう…」と、軽くあしらいました。ウンソは「最近、嫌われちゃってるの…」と言います。その時、ジュンソがアトリエから姿を見せます。二人の視線は、ジュンソに向けられました。

ジュンソは暗い表情で、二人の方へ歩き始めます。ウンソはテソクに「ほらね…」と同情を求めます。テソクは軽く笑いながら「ああ…」と言います。そして「ジュンソ、しばらくだな…」と声をかけます。ジュンソは「ああ、来たのか…」と返しました。



三人はアトリエの中でお茶を飲んでいました。

ウンソはテソクに「この間バスに乗った時に…咳が止まらなくなったの…そしたら男の子が、それをマネするのよ…」と、明るく話しかけました。テソクは笑いながら「本当に?…」と相槌を打ちます。ウンソは笑顔で「咳き込みながらも可笑しくて…」と言います。そしてジュンソに「おかしいでしょ…」と、同意を求めました。しかしジュンソは、沈んだ顔つきで「ああ…そうだな…」と言いました。ウンソは明るい表情を振りまきながらテソクの方を向いて「そうだ…テソク、せっかくだから私と写真を撮って…」と言います。テソクはウンソを見ながら「写真?…」と聞き返します。ウンソは笑顔で「最近、たくさん撮っているの…」と言います。テソクは、「ああ…そうか…」と言うと、少しさびしい表情を見せました。

ウンソはジュンソの方を向くと「お兄ちゃん…カメラ取って来て…みんなで写真を撮ろうよ…テソクとも取っておきたいの…」と言います。ジュンソは、不機嫌そうで、寂しそうな表情を見せて、黙っていました。ウンソはそれを見て「わかったわよ…自分で取ってくる…せっかく面白い話もしたのに…」と言います。テソクは、ただ下を向いて聞いているだけでした。

ジュンソはうつむきながら、暗い表情で「取って来る…」と言うと立ち上がります。ウンソは「いいわよ…」と言いますが、ジュンソは「取って来るよ…」と言って、部屋を出ろうとするのですが、振り向いてウンソを見ながら辛そうな表情で「何が面白いんだ…咳をして苦しむことか?…死ぬ前に写真を撮ることか?…」と言います。

今まで下を向いて聞いていたテソクが、ジュンソを見上げて「ジュンソ…」と、止めますが、ジュンソは「さぞ面白いだろうな…お前に何かあったらと…毎日おびえる僕を見るのは…ウンソ…今朝、お前の部屋で……」ここまで言うと、ジュンソは次の言葉を思いとどめました。ジュンソとウンソの目には光るものが見えました。ジュンソは「テソク…すまない…」と言うと部屋を出て行きました。テソクはジュンソの後姿を見つめていました。ウンソはジュンソに喀血の事を知られたと悟ります。そして、ウンソはテソクの方を振り向くと「言ったでしょ…凄く嫌われているの…」と言います。テソクは、ウンソの目を見て笑いながら「みたいだな…」と答えます。



テソクは、ジュンソのアトリエを出ると、夜の道を車で走っていました。ただ、思い出だけが蘇ります。

まだウンソが、ホテルの電話交換手をしていた時に、テソクは酔っぱらってクレームの電話を入れました。「おい、この部屋、換気が悪すぎるぞ…」と…年齢を偽っていたウンソは、電話でテソクに指示をします。「……次にシャワーのボタンを押します…」と…ウンソの指示どうりにしたテソクは、洋服を着たままバスルームでシャワーを浴びます。テソクは「オーイ…」と叫びます。電話からは「何の礼儀も知らないなんて、年いくつ?…こっちは37歳で2人の子持ちよ…」と、ウンソの声が響きました…

テソクは、交換手の声の正体が知りたくて、ホテルの交換代に電話をかけて、受話器の上に携帯を置き、もう一つの携帯から受話器の上の携帯に電話をかけて交換手に話しかけました。ウンソは「もしもし?」と話しかけます。テソクは携帯で電話をかけながら、交換手のいる部屋に入って来ました。テソクはウンソを見ながら「チェさん…」と呼びます。ウンソは振り向いてテソクを確認しました。

ウンソは、ホテルの社長の末息子で、理事でもあるテソクに呼び出されて「女性にすぐ手を出す方と聞き、怖くて嘘をつきました…」と答えます…

ウンソは、ホテルのプールで泳ぐテソクに、プールサイドから大声で「責任とってよ…」と叫びました。テソクは泳ぎを止めて「責任を取るって、どうすればいい?…」と、開き直ります…

ウンソはテソクの部屋に呼び出され「時計だよ…」と言われ、時計が無くなったと騙されます。ウンソは驚いて「ゴミ箱に…」と言いながら、慌てて探し始めます。テソクは後で笑いながら「ところで、今何時かな?…」と言って、腕にはめた時計を見せます。ウンソは驚いて「あったんですか…」と言います。テソクが「少しからかっただけだ…」と言うと、ウンソはテーブルの上に会ったコップの水をテソクの顔に掛けました。そしてウンソは泣きながら「あなたみたいな人は大嫌いよ…」と言います。

次第にウンソに愛情を抱いて行ったテソクは、さらにウンソと関わって行きます。テソクは腕時計を見ながら「贈り物だけれど、前のより気に入っている…」と言います。そして、ウンソの腕を握り真剣な表情で「オレとつきあうか?…」と言うと、強引にウンソを抱きよせキッスをします。

実兄の働いている会社の社長と付き合わされようとした時に、テソクが現われてウンソを連れ出した時の事が……テソクは海辺で「オレがアイツより高く買ってやる…」と言います。ウンソは平手でテソクの顔を叩きました。そして「あなたなんかと来た事、一生後悔するわ…」と言った事が…

ジュンソとユミ、そしてテソクが思い出の海辺で話していると、遠くから駆け寄ってきたウンソが、いきなりジュンソの背中に抱きついて再開した時に、テソクは「ウンソ…」と名前を呼びました。そして帰りの車の中で、何も知らずに「いとこだったなんて…」と喜んだ事を…

テソクがウンソに「その笑顔、ほかのヤツに見せるなよ…」と言うと、吹き出したウンソの姿…ある時は、怒ったウンソから「少しはいい人だと思っていたのに…」となじられるテソク…ホテルのロビーで「好きなんだ…お前が好きなんだ…だから左遷した…」とプロポーズしたテソク…

ホテルの自室で、ウンソをソファーに座らせて、手を付きながら「オレにはお前しかいない…オレの恋人になって欲しい…本気なんだ…」とプロポーズしたテソク…

笑いながら「オレを信じさえすればいい…」といいたテソク…

ゴルフ場のグリーンのカップに、プレゼントのネックレスを仕込ませて、それをウンソに拾わせるテソク…

ウンソとジュンソが愛し合っていることを知った時のテソク…そっと二人の様子を遠くまら見ていたテソク…

ウンソを見つめて「近づかない方が身のためだぞ…」と言ったテソク…

ウンソから涙ながらに「絶対に許さないで…」と言われた時のテソク…

嫉妬から、ウンソを解雇した時に、ウンソに「お前はいくらだ?…」と言うと、ウンソから「いくらなら買ってくれる?…」と言われたテソク…部屋で倒れたウンソを抱きかかえて病院に運ぶテソク…

ウンソが重病だと知って、病院に駆け込んで医者に「ウンソがガンですって?…」と問い詰めた時のテソク…そして、ウンソが気弱になった時に「必ず助ける…もう一度チャンスを…」と言った時のテソク…

ウンソが発作を起こして病院に担ぎ込まれた時に、処置室で「助けて下さい…」と医師に懇願しているウンソの姿を見た時のテソク…

ウンソが気弱になった時に、必死の表情で「このまま死にたいか?…」と叫んだテソク…そして「生きていたい…」と言ったウンソの姿…

ウンソから、検査の苦痛に耐える為に「お守りをちょうだい…」と言われた時のウンソの姿…そして検査の前に、お守りの指輪を渡すテソク…

ウンソの心から、手術の恐怖を取り除く為に、五つの生きていてよかった事を考えた時に、最後に思い切ってユン・ジュンソと言ったテソク…その後でウンソが「生きていてよかったと思うこと…テソク、あなたよ…」と言ってくれた時のウンソの姿…それを聞いて、ウンソを抱きしめて涙をながしたテソク…

ウンソが危篤状態になった時「ダメだ…負けるな…」と叫び続けたテソク

ウンソが寝ているベッドの横で「目を開けてくれ…」と涙ぐんだテソク

ジュンソが病院にやって来て、ウンソが奇跡的に回復したあと、二人が思い出の海辺で、楽しそうに過ごしている様子を遠くからそっと見つめていた時のテソク…

そして今日、久しぶりにジュンソのアトリエでウンソに花束をプレゼントした時、「オレに会いたかったか?」と言ったテソク…「会いたかったわ、なぜ来てくれなかったの?」と答えたウンソ…

ウンソの想いが分かりすぎて「死ぬ前に写真を撮ることか?」と、想いを吐き出すジュンソ…ジュンソを見ながら涙ぐむウンソ…二人を見ながらウンソの病状の悪化を悟ったテソク…

 車を走らせながら脳裏を駆け巡るのは、ウンソへの愛と、これ以上ウンソの病状を悪化させたくないという思いでした。テソクが、ふと横を向くと十字架の灯りが目に映りました。白い小さな教会、十字架だけがイルミネーションの灯りで浮かびあがっていました。テソクは、通り過ぎようとした車を止めて、一度バックをして、脇の細い道へと入って行きました。

教会の中に入り、祭壇の前に立つテソク…十字架を見つめながら膝まづくテソク…頭を下げて「お願いします…どうか救ってください…彼女の命を…彼女を救ってください…二人は愛し合っています…だからオレは諦めた…どうかウンソを…連れて行かないで…」と…テソクは、涙を流しながら祈りました。



17回『時間』はここで終わりました。次回はいよいよ最終回です。この続きはどうなるのでしょうか。結末が楽しみです…





神様は、時として、想像もつかない試練をお与えになります

清貧を貫いて、懸命に生きている人の上にも

人は、何と理不尽なことかと思うのですが

それは、なぜと聞いても

神様は、答えを教えては下さいません

私たちは、ただ、信じ、祈ることしか出来ません

ジュンソは、愛するウンソの為に

神を信じ、祈りました

そして、奇跡的にウンソは蘇りました

神様は、二人に束の間の愛と生活をお与えになりました

その姿を遠くから見守り、涙するテソク

それを幸せと感じるか、不幸せと感じるかは

人の心の持ちように掛かっていると思います

日頃、斜に構えて

世の中に拗ねていたテソクが

教会で、ウンソの為に祈りました

神様は、何時も下界を覗き続けていらっしゃると思いたい……

人の心は、愛によって成長し

愛によって、神様に近づくのかもしれません


                  『秋の童話』 You Tubeからの歌と映像です