2012年10月24日水曜日

韓流ドラマ「神様お願い」の最終回を見て思う事(日韓の違い)




 好い作品でした。家族の愛情や周辺の思惑が折り重なって、韓流ドラマらしいハラハラドキドキのドラマでした。最後には、成るように収まって、良かった良かったのドラマでした。しかし、冷静になって考えてみると、日本人の私には、ここまで重たく考える必要があるのかと思ってしまいました。これが日韓の文化の違いというものかもしれません。ここまで、四角張って考えなければいけないのかと思った次第です。


 私の思った事を書く前に、この物語の大まかなあらすじを書いておきます。

 ヨンソンは、アメリカで知り合った夫とアメリカで生活していたのですが、夫を急病で亡くし、韓国に帰国していました。家族構成は、息子のワンモ(先妻の子でテレビ局の記者)と娘のスラ(大学生)、そして、姑のマリアの四人で、仲良く暮らしていました。しかし、ヨンソンの過去には、誰にも言えない秘密がありました。

 ヨンソンは学生時代に、裕福な家庭で育ったホンパと相思相愛の仲だったのですが、ホンパの母ランシルに反対されて、ホンパと引き裂かれていました。しかし、その時すでに妊娠していたのです。その後、実家が火事に遭い、両親が亡くなり、精神に異常をきたして、自分が出産したかどうかも分からない状態でした。そんなヨンソンには、子育ては無理だと判断した教会の牧師が、生まれてきた娘を養子に出し、ヨンソンの将来の事を考えて、ヨンソンをアメリカで生活させていたのです。

 ヨンソンの結婚生活は幸せなものでしたが、次第に娘を出産した事を思い出し、まだ見ぬ娘を思い浮べながら、いつかは娘を探し出そうと決意していました。そして、夫が亡くなって自由な時間が持てるようになったヨンソンは、興信所に頼んで娘を探し出す事ができました。娘の名はジャギョンといい、メイクアーティストをしていました。ジャギョンが、幼い頃から養母のベドゥクにいじめ抜かれ、苦労をしていることを知ると居ても立っても居られずに、ジャギョンの働いている店に客として行きます。しかしヨンソンは、ジャギョンを幸せにする為に、母であると名乗りを上げませんでした。ヨンソンとジャギョンの関係は、客とメイクアーティストとの関係から、年の離れた友人関係へと進展して行きました。

 そんなおり、血は繋がっていないけど、幼い頃から手塩にかけて育て上げた息子のワンモが、テレビ局で朝のニュースショーのメインキャスターに抜擢される事になりました。ヨンソンは、ワンモにジャギョンを紹介して、メイクの担当に成ってもらう事にしました。こうして、ジャギョンとワンモは付き合う事になりました。二人は次第に魅かれあって行きます。ヨンソンは、そんな二人を見て、自分がジャギョンの母であると名乗りさえしなければ、ワンモがジャギョンを幸せにしてくれると思い始めます。

 しかし、ジャギョンは自分の生い立ちにコンプレックスを持っていました。韓国の身分社会では、自分のような人間が良家の男性とは結婚できないと思い込んでいました。その上、考えられないような養母の嫌がらせや集りにあい、精神的にズタズタになってしまいます。その時、ヨンソンは二人を暖かく見守って支え、二人を結婚へ導きました。


 そんなおり、ソウルの街中でランシルがヨンソンを見かけました。ランシルはホンパの嫁と仲が悪く、不満を持っていました。ホンパと嫁の間も一人息子が亡くなり、冷え切っていました。ランシルはホンパにヨンソンを見たと告げます。ホンパもヨンソンへの想いが募り始めます。

 ある日、ホンパは、アメリカから一時帰国している学生時代の親友と食事をしました。そこで、親友が思わぬ発言をしました。ヨンソンが妊娠していたと…たまたま病院で出産の為に入院している姿を見たと…ホンパは、時期を考えてみるとヨンソンの産んだ子は自分の子どもに違いないと確信しました。それからホンパは、血眼になってヨンソンを探し始めます。ヨンソンが入院していた病院の出産記録から住民番号を割り出したり、さまざまな手を使って探しました。しかし、なかなか見つかりませんでした。ヨンソンは、アメリカ国籍を取っていたのです。夫が亡くなり、韓国に帰って来て、韓国籍を取る手続きをしていなかったのです。

 そんなおり、ホンパは、デパートのエスカレータでヨンソンとすれ違います。ヨンソンの隣には、ヨンソンの若い頃にそっくりのジャギョンがいました。ホンパはジャギョンを見て、自分の娘であることを確信しました。しかし、上りと下りですれ違ったホンパは、ヨンソン達を見失ってしまいました。


 ここで、幾つかの偶然が重なり合います。ジャギョンが自分の生い立ちにコンプレックスを持って、ワンモとの関係がギクシャクしていた頃、ジャギョンはワンモのメイクの担当を降りて、突然姿を消しました。それは完璧なものでした。店を辞め、家を出て、携帯を変えて、誰も行く先を知りませんでした。そして、裕福な家庭の奥様のファッションやメイク、インテリアなどのトータルアドバイザーとして働いていました。その奥様の御主人がホンパでした。ジャギョンは、ホンパ夫人に、とても気に入られていました。ホンパの家にも出入りしていたのですが、ホンパと顔を合わせる機会は偶然にもありませんでした。ただ、電話で話を交わす機会は何回かありました。ホンパは妻からジャギョンの事を好印象で伝えられていました。そして、ニュースキャスター(ワンモ)と近く結婚する事も…

 また、ホンパの母ランシルとヨンソンの姑マリアは、たまたまペットショップで知り合い、茶飲み友達に成っていました。ランシルは、マリアに嫁の愚痴やホンパの昔の恋人(ヨンソン)が出産していた事などを相談していました。後継がいないと思っていたのが、この世の何処かに自分の孫が生きていると…そんなおり、ランシルは、マリアの孫(ワンモ)が結婚することを知ります。ランシルはワンモの結婚式の御祝いに、式場へ駆けつけるのですが、そこでヨンソンがワンモの結婚式の来賓達に挨拶している姿を見ました。ランシルは、あまりの衝撃で気が動転して倒れてしまいます。そして病院へ担ぎ込まれてしまいました。ランシルは、病院で意識を取り戻すと、直ぐに式場へ駆けつけるのですが、すでに結婚式は終わっていました。

 そして、またまた奇跡のような出来事が起きます。ホンパの妻が、学生時代の男友達とドライブの最中に交通事故に合い死んでしまいます。周辺は、不倫のはての死と囃したてます。しかし、ランシルとホンパにとっては、幸いの出来事でした。邪魔者が消えたのですから…ホンパは、葬式が終わると身辺の整理をします。その過程で、ジャギョンを呼びだして、結婚式の祝い金を渡し、仕事や道具の整理をさせる事にしました。そして、ジャギョンと対面したのですが、何とデパートのエスカレータで、ヨンソンの隣に立っていた娘でした。ホンパは驚きます。しかし、直ぐには名乗りませんでした。確実な証拠をつかむまではと考えたのです。

 ホンパは、この事をランシルに話します。ランシルは、気分転換にメイクをして欲しいと言って、ジャギョンを自宅に呼び出します。そこで、ジャギョンには感づかれないようにして、ジャギョンの髪の毛を数本手に入れます。この髪の毛をDNA鑑定した結果、ジャギョンは、99.999%の確率でホンパの娘である事が分かりました。ランシルは、自分の娘を血は繋がっていないとはいえ、自分の息子の嫁にするとはと言って、ヨンソンに対して怒りを感じました。ランシルは、ヨンソンを呼びだします。

 ランシルはヨンソンに、ジャギョンは、あなたとホンパの間にできた子供だろうと問い質しました。ヨンソンは、最初のうちは違うと抵抗したのですが、ランシルにDNA鑑定を突き付けられて、認めざるを得ませんでした。折角、ジャギョンとワンモが幸せに過ごしているのに、自分さえ黙っていれば分からないと思っていたヨンソンでしたが、その秘密をランシルとホンパに暴かれて目の前が真っ暗になりました。

 ランシルは、ヨンソンをなじります。自分の娘を血が繋がっていないとはいえ、自分の息子の嫁にするなんて…何と大それたことを仕出かしてくれたのかと…ヨンソンは、私は罪を持って死にます。ジャギョンとワンモには罪はありません。私が悪いのです。だから、二人には黙っていて欲しいと懇願します。

 ランシルは、冷静になって考えてみると、この原因は、ホンパとヨンソンを無理やりに引き離した自分にあると悟ります。しかし、人間は欲が出るもので、目の前に現れた孫娘と一緒に暮らしたいという欲望に駆られます。そしてヨンソンに、ホンパと結婚するようにと命じます。ジャギョンの秘密が公になった時に、戸籍だけでも切り離していた方がいいという口実で…ヨンソンは、最初は結婚を渋るのですが、ジャギョンの秘密を握られている以上、抵抗する余地はありませんでした。それに、元々は好きあっていた仲、ホンパに、秘密がばれない様に話しを進めるからと言われると、結婚を受けざるを得ませんでした。

 これで怒りだしたのが姑のマリアです。ヨンソンに、あなたは再婚はしない、私と余生を二人で暮らすと言ったじゃないと拗ね始めます。このマリアを説得したのがワンモとジャギョンでした。どうにかこうにか納まりが付いて、ホンパとヨンソンは結婚をしました。そして、ジャギョンが妊娠していることが分かりました。ヨンソンは、ジャギョンを自分の手元に置いて出産させたいと思い始めます。ジャギョンとワンモの結婚に反対していたマリアやスラに気兼ねをして、ジャギョンが神経を使って流産でもしたらと思ったからです。ランシルやホンパもそれを口実に娘と一緒に生活が出来ると喜びました。しかし、マリアが癇癪を起しました。ヨンソンを取られ、孫夫婦も取るのかと言って…そんなマリアをヨンソンやワンモがなだめて納得させます。心を安らかにさせて胎教を整えさせたい…お腹の子の事を一番に考えさせて下さい…出産したら必ず家に戻しますからと言って…こうしてワンモとジャギョンは、ホンパの家で過ごす事になりました。しかし、またまた運命のいたずらが起きてしまいます。

 ジャギョンの養母ベドゥクは、働きもせずに周辺にお金を集って生活していました。そんなある日の事、ヨンソンが、結婚する前に子どもを産んでいたという話を小耳にはさみます。ベドゥクは、話しの元になっている証人を呼び付けて詳しく事情を聞きます。すると、ヨンソンの子どもは、ジャギョンではないかと思い始めます。ベドゥクは、証人との会話を確りと録音していました。ベドゥクは、確認の為に病院で、ヨンソンの出産記録を調べました。ヨンソンが生んだのは女子で、年月日がジャギョンの誕生日と一致しました。 ベドゥクは、ジャギョンがヨンソンの子であることを確信しました。そして、父親はホンパである事も…なぜなら、ベドゥクの姉ミヒャンが、ヨンソンとホンパを引き裂いた直接の原因であることを知っていたからです。

 ベドゥクは、この事を利用して金儲けをしようと考えます。最初はホンパに会い、ジャギョンの秘密をちらつかせて金をせびろうとしますが、ホンパは動じませんでした。次にベドゥクはワンモを呼び出して、ジャギョンの秘密を打ち明けました。ワンモは、最初は信じようとしませんでしたが、ベドゥクが隠し取った録音を聞かせると、ワンモも信じざるを得ませんでした。ワンモはベドゥクに、この事はジャギョンには秘密にしてくれと懇願しました。ベドゥクは、ワンモが所有していた豪華マンションと引き換えることを条件に、秘密を守ると約束しました。ただし、ジャギョンには、マンションを借りている事にしました。ワンモは、事務処理を行い、隠し撮りをした録音と引き換えに登記を済ませました。しかし、狡猾なベドゥクは、ワンモとの会話をすべて録音機で隠し撮りしていました……この頃、ヨンソンとホンパは、ホンパの会社の中国支社の視察の為に、中国へ行っていました。ランシルとマリアもそれぞれが気晴らしに海外旅行を楽しんでいました。ワンモだけが、重大な秘密を知らされて、心を悩ませていました。

 ベドゥクは、豪華マンションに引っ越しをして、掃除をしていました。今まで、狭い半地下のアパートに住んでいたので、怠け者のベドゥクにとっては、掃除するだけでも大変な事でした。そしてここで、ベドゥクの悪知恵がまたまた働きます。この豪華マンションを売り払い、半分の広さのマンションを買って、残りの金で鰻屋と株を買いました。鰻屋は自分が経営する為のものでした。

 ジャギョンは、養母のベドゥクが働き始めたと聞き喜びます。ジャギョンは、九か月の身重の体でベドゥクの店に会いに行きます。個室でベドゥクと話しをしていると、店でトラブルが起きて、ベドゥクは部屋を出て行きました。その時、店員が料理を運んできました。ジャギョンが店員にここの社長は誰ですかと聞くと、店員はベドゥクと答えました。ジャギョンの脳裏にいやな予感が浮かび上がりました。ジャギョンは、料理も食べずに店を抜け出し車に乗ると、お抱え運転手にワンモのマンションに行くように言います。

 ワンモのマンションに着くと、マンションは売り払われ、すでに次の所有者が入居していました。ジャギョンは、ベドゥクの引っ越し先を聞き出し、ベドゥクの住むマンションを見つけ出しました。ジャギョンはベドゥクに、直ぐに家に帰ってくるように電話を掛けました。そこへ、母のミヒャンにお使いを頼まれたイリが遣って来ました。イリは、血は繋がっていませんが、ジャギョンには従兄弟にあたる青年でした。俳優志望で、心根が優しくワンモの妹スラとも親しい間柄でした。ジャギョンは、車を降りてイリに会います。イリは、スラの顔を見ると驚きました。なぜ、ここが分かったのかと…イリは、ジャギョンの体を心配して、ベドゥクの部屋に案内します。

 ベドゥクが帰って来ると、ジャギョンとベドゥクの口喧嘩が始まりました。ジャギョンはベドゥクをなじります。どうしてこんなことをしてくれたのかと…少しは私の立場も考えてくれと…どうして自分で働いて生きようとしないのかと…勝気なベドゥクは負けずに言い返します。そして、感情の爆発するままにジャギョンの秘密をばらしてしまいました。ジャギョンは、最初は信じようとしませんでしたが、ベドゥクはワンモとの会話の録音を聞かせました。ジャギョンは、ショックを受けて放心状態に陥りました。その一部始終を見ていたイリは、伯母のベドゥクを諌め、録音機を奪い取ると、放心状態のジャギョンを抱きかかえるようにして、車の所まで連れて行きます。イリは、ジャギョンを車に乗せると、運転手に、自分も車で来たので一緒に行けない…姉さんの事を宜しくお願いしますと頼みました。

 ジャギョンは、車に乗っても放心状態でした。そして、精神的な疲れからか、車の中で破水してしまいます。家にはスラと家政婦しかいませんでした。ワンモは、この日は忘年会で連絡が取れませんでした。スラはジャギョンを病院に連れて行きます。心配になったイリが、スラに電話をかけると、ジャギョンが破水をしたので病院に連れて行く途中だと聞きます。イリはすぐに病院に駆けつけます。やっと連絡の取れたワンモも病院に駆けつけました。

 医者の診断では、このままの状態では、母子ともに危ないとのことでした。急きょ帝王切開による分娩が行われました。生まれてきた子どもは、男の子で未熟児でした。そしてジャギョンは、失語症になり、目の焦点も定まらないような精神状態に陥り、記憶も定かではないようでした。ワンモは、なぜこんな事になったのか…あれほど待ちに待った子どもが生まれたというのに…なぜだと頭を抱えました。スラがイリに、あなたは、一緒に居たんでしょう。いったい何が会ったのと聞くのですが、イリはスラの前では言おうとしませんでした。それは、スラを守る為でした。そして、スラとジャギョンが実の姉妹だという事は、自分の口からは言うべきではないとも思っていました。イリは、スラの居ない場所で、ワンモに一部始終を話しました。そして、ベドゥクから奪い取った録音機を渡しました。その夜、ワンモは車の中で、一人で録音を聞きました。

 あくる日、イリが病院に着くと、玄関口の前でワンモとすれ違いました。ワンモの顔は悲壮感に満ち溢れていました。イリは、ワンモの顔を見て、何かが起きそうな予感がして後を付けました。ワンモはベドゥクのマンションへ向かいました。ワンモはエレベーターも待たずに階段を登って行きます。イリはエレベーターを使って登って行きました。イリの方が、一瞬早くベドゥクの部屋に着くのですが、直ぐにワンモが部屋に入って来ると、ベドゥクに何で秘密をばらしたんだ!と叫びながら、部屋にあった金属バットでガラス窓や鏡をめちゃくちゃに叩き壊し始めました。イリとたまたま来ていたイリの母でベドゥクの姉のミヒャンがワンモをなだめながら止めに入るのですが、ワンモは気が狂ったように暴れました。ワンモはベドゥクに、あれほど待ちに待った子どもが生まれたのに、ジャギョンは、言葉も喋れずに記憶も定かでは無くなった!おまけに子どもは未熟児で、命も危なくなってしまった。この責任をどう取ってくれると言って、ベドゥクを追い廻しました。ジャギョンが、そんな状態になっているとは知らなかったベドゥクとミヒャンは驚きました。そしてベドゥクは、今更ながら自分の犯した罪を悔い改めワンモに許しを請いました。それでもワンモは、ベドゥクを許そうとはしませんでした。ベドゥクは逃げ回り、洋服ダンスの中に隠れようとします。ワンモは、金属バットを持って襲いかかろうとしました。イリは、ワンモに罪を犯させてはいけないと思い、必死になって止めに入りました。ワンモは、ベドゥクを襲うのを諦めて泣き崩れました。

 ワンモは、病院に戻ると、懸命にジャギョンの看病をしました。スラも献身的にワンモを手つだって、ジャギョンの看病をしました。しかしジャギョンは、自分が出産した事も分からない状態でした。食事ものどに通らず、自分では食べる事さえ出来ませんでした。そんなジャギョンにワンモは、匙で食べさせながら語りかけました。子どもが生まれたよ…男の子だったよ…何も心配いらないから…みんなで仲良く暮らそうと…

 ジャギョンが、こうなった原因を知らないスラは不安になり、ワンモに母や祖母達に知らせなくてもいいのと聞くのですが、ワンモは、心配掛けたらいけないので知らせなくてもいい、みんなが帰って来る前にジャギョンが良くなるかもしれないからと言いました。スラは、ワンモの言うとおりに母や祖母から電話が掛かって来ても知らせませんでした。しかし、ワンモの希望的観測に終わってしまいました。

 最初に帰国したのはマリアでした。ワンモはマリアを空港に迎えに行きました。家に着くと、ジャギョンに男の子が生まれた事を伝えました。マリアは、跡取りが出来て喜びました。しかしワンモが、子供は未熟児である事、ジャギョンが失語症になったことを伝えると心配しました。マリアがどうしてそんな事になったのかと聞くと、ワンモは、まだ仕事があるので、後でゆっくり説明すると言って家を出ました。

 病院から返って来たワンモは、もう隠しきれないと思い、マリアに会ってジャギョンの秘密を打ち明けました。ただし、偶然の出来事で、ヨンソンは何も知らなかった事にしました。そして、この事をスラが知ったら傷付くので、スラには内緒にして欲しいと頼みました。マリアは、スラの事を考えると分かったという事しか言えませんでした。翌日、マリアは病院にお見舞いに行きました。そこで見たのは、ジャギョンのあまりにも変わってしまった表情でした。マリアの事も覚えていない様子でした。そして、保育器に入れられているひ孫を見ると、無性に腹が立ち、その思いは秘密をばらしたベドゥクへと向かいました。マリアはベドゥクを自宅に呼び出して問い詰め、真実を知りました。マリアの怒りはヨンソンへ向かいました。何で、こんな事を仕出かしてくれたのかと…

 数日たって、手術の傷がいえたジャギョンは、退院してホンパの家に戻って来ました。しかし、失語症は治っていませんでした。ワンモは、まだ入院している我が子と、ジャギョンを懸命に看病していました。ジャギョンもワンモが夫と言う事だけは分かるようで、ワンモの側を離れようとしませんでした。

 次に帰国したのはランシルでした。ランシルが笑顔で家に帰って来ると、ジャギョンの姿形や様子を見て驚きました。ワンモがすべてを伝えると、恐れていた事が起きてしまった。この原因は、すべて私に責任があると言ってワンモに謝りました。ランシルが帰って来たと知ったマリアは、ホンパの家に押しかけて、何と言う事をしてくれたのかと怒鳴りつけて、つかみ合いの喧嘩になりました。今まで虐げられた心の屈折が一気に爆発しました。ランシルは、ただ謝るだけでした。

 そして、ヨンソンとホンパが帰国しました。ホンパが会社によるので、二人は別々の車に乗りました。ホンパは車の中からランシルに帰国した事を報告しました。するとランシルは、ジャギョンの秘密がばれた事を知らせました。ランシルはヨンソンに電話を掛けます。ヨンソンはマリアに電話をしたら来るように言われたので行く途中ですと言いました。ランシルは、ジャギョンの秘密がすべてばれたので、覚悟して行くようにと伝えました。ヨンソンは、恐れていた事が現実となって、ただ茫然と成りました。

 ヨンソンがワンモの家に着くと、スラは外出中でした。ヨンソンはマリアの部屋に会いに行きました。その姿は、憔悴しきっていました。マリアはヨンソンに、何と言うことを仕出かしてくれたのか…ワンモに自分の娘を嫁がせるなんて…と言って、怒鳴りつけました。ヨンソンは、ジャギョンには罪はありません…私が悪いのです…ジャギョンを許してください…と言って謝り続けました。その様子を外出から帰って来たスラが立ち聞きしていました。スラは、頭に血が上りマリアの部屋に入ると、ヨンソンを責め始めます。何ていうことをしたの…私は、生まれて来た子の父方の伯母なの…母方の伯母なの…世間が知ったら何と言うと思うの…私はいったいどうなるのと言って…ヨンソンは、ただ謝るしかありませんでした。しかし、これだけでは済みませんでした。マリアが、ジャギョンがショックで早産をした事、生まれて来た子は未熟児で保育器に入れられ、命が危ない事、ジャギョンが失語症になり、記憶を失い食事も自分で取れない事などを伝えました。ヨンソンは如何したらいいか分からずに、唯々茫然となるばかりでした。そしてスラが、追い打ちを掛けました。もう私に母親面しないで、最初から私には母親なんていなかったわと…ヨンソンは、立ち上がると放心状態で部屋を出て行きました。ヨンソンは、家を出る前にスラの部屋に行き、飾ってあったスラの写真入りの小さな写真立てを取ってハンドバックに入れました。

 ヨンソンは、車に乗ると泣き続けました。そして運転手に、子供は病院だろうし、嫁は?と聞きました。運転手は、いま息子さんは、病院から家に向かっているそうですと答えました。ヨンソンが家に着くと家政婦が庭を掃除していました。家政婦は、お帰りなさい…御祖母様は来客中です…息子さんは外出中です…と元気よく声をかけるのですが、ヨンソンは返事をする元気もありませんでした。

 ジャギョンは、部屋で一人テレビを見ていました。そこへヨンソンが心配そうな顔をして遣って来ました。ヨンソンとジャギョンは視線を合わせるのですが、ジャギョンの表情は、ただ茫然としているだけで、ヨンソンの事が分からないようでした。ヨンソンは歩み寄ってベットに腰を降ろしジャギョンと名前を呼ぶのですが反応はありませんでした。ヨンソンはジャギョンを抱き締めました。そして立ち上がると、洋服ダンスからコートを取り出してジャギョンに着せ、ジャギョンを連れ出しました。車の前まで来ると運転手に、私が運転すると言い、ジャギョンを助手席に乗せて出て行きました。

 ヨンソンがジャギョンを連れていなくなったので、周りは心配して探し始めますが、見つけ出す事が出来ませんでした。夜になるって、ヨンソンはジャギョンを連れて海の近くの料理屋にいました。ヨンソンは料理を注文すると二人きりになった部屋で、ジャギョンにスラの写真を見せて、あなたの妹スラよと言います。ジャギョンはスラの写真に視線を移しました。ヨンソンは、私があなたとスラを産んだの…だから、あなたたちは実の姉妹なの…信じられないでしょうけど本当よ…もう、嘘はつかない…私が許せないでしょう…ママにも事情があったの…私、如何したらいい…ワンモに会う自身がない…ワンモに嫌われたでしょう…と泣きながら話しかけました。しかし、ジャギョンの顔は無表情でした。ヨンソンは、注文していた料理が来ると匙でジャギョンに食べさせました。

 スラは泣きながら自分の部屋で寝ていました。ふと気付くと、飾っていたはずの写真立てがありませんでした。暫くして、ランシルが訪ねて来ました。そして、ランシルはマリアにヨンソンとジャギョンがいなくなった事を伝えました。スラは心配して、母が私の写真を持って行きましたと言います。

 ヨンソンは、浜辺に車を止めてジャギョンに話しかけていました。スラに子守唄を歌っても、殆ど最後まで歌う事が出来なかった…あなたの事を思い出して歌えなかった…スラの面倒は殆ど義母が見てくれたと…子どもは誰に似ているの…父親に似ていると好いけど…私は姑じゃなくて、あなたのママよ…でも、育てられなかった…それで、あなたを幸せにしたくて…ワンモと結婚させたのよ…明らかになって…私はみんなに、どう顔向けすればいいの…と泣きながら……その時、ジャギョンがヨンソンを見ると頭をヨンソンの肩に寄せて来ました。ヨンソンは、やっと、こうして抱きしめられたわ、私の娘…と言いました。ジャギョンの目から、一筋の涙がこぼれ落ちました。ヨンソンは、スラが私を異常だと…あなたもそう思う?…精神病院に送られたらどうしよう…スラは…面会に来ないは…と言います。ヨンソンは、ジャギョンを残して車を降り波打ち際に向かって歩きました。ジャギョンはヨンソンの後姿をじっと見つめていました。ヨンソンは砂浜に座り込むと、唯々声を出して泣きました。ジャギョンは、ヨンソンの姿とワンモを忘れる事が出来ずに海で自殺しようとした時の自分の姿をダブらせました。ジャギョンに記憶が戻り始めました。ヨンソンは天を仰いで、神様、過酷すぎます…どうして娘まで、無意識のまま出産する試練を?…罪は私が犯したのに…どうして娘を…戒めるのですか…娘には何の罪もないのに…と訴えました。

 ヨンソンは、ジャギョンを連れてホテルへ行きました。ホテルで同じベットに寝ると、ヨンソンはジャギョンに今まで歌う事の出来なかった子守唄を歌って遣ります。ジャギョンは、安心して寝付きました。その頃、家族のみんなが懸命になって二人の事を探していました。スラもどうか無事でありますように…と祈っていました。

 朝起きると、ヨンソンはジャギョンに洗顔をして遣ります。そして髪をとかし、一つにまとめて横結びにして、可愛らしい女の子のようにして遣ります。ヨンソンはジャギョンを抱き締めました。ジャギョンの顔に笑みが浮かびました。

 ヨンソンは、イリを呼び出していました。待合場所にイリが来ると、車を降りて、ジャギョンを家に送ってくれるように頼みました。自分は病院に行って、孫の顔を見て来るからと……ヨンソンはジャギョンに、家で待っていてね…と言います。しかしジャギョンは、ヨンソンから離れようとせずに、車から降りようとしました。ヨンソンは、イリが送ってあげるから…と言います。そしてイリに、出発してと言いました。車が出発すると、ジャギョンは後ろを振り向き、窓越しからヨンソンの姿をいつまでも見つめていました。

 車を運転しているイリにスラから電話が掛かって来ました。スラは、ママに何かあったらどうしよう…と言います。イリは、何かある訳ないだろう…さっき会った…お姉ちゃんを送ってくれと…言います。スラは驚いて、本当…と聞き返しました。イリは、ああ…お姉ちゃんも隣にいる…と答えました。するとスラが、お母さんはと聞きました。イリは、病院だ…と答えました。スラはホッとしました。その知らせは、直ぐに家族全員に伝わりました。みんなもホッと胸をなでおろしました。

 しかし、ここでまたまた運命のいたずらが起きました。ヨンソンの乗っているタクシーに、暴走トラックが真正面から突っ込んで来ました。タクシーの運転手は即死でした。ヨンソンは、かろうじて息をしていましたが、意識不明の重体でした。ヨンソンは、駆けつけた救急隊によって病院に運ばれて行きました。そして救急隊員は、ハンドバックの中から見つけた携帯を掛けました。ワンモが電話に出ると救急隊員は、携帯の持ち主が事故に合いましたと告げました。ワンモ達は、直ぐに病院に駆けつけました。

 ワンモ達が病院に着くと、ヨンソンはベッドに寝かされて検査の途中でした。医師は、骨折はありませんが、頭を強く打っています…検査をしないと何とも…と説明しました。

 検査が終わると、主治医がCTの画像を映し出し、説明を始めました。検査の結果によりますと…硬膜下出血と言いまして、脳内に出血が見られます…硬膜下出血は命にかかわりますので、一刻でも早く手術を受けなければなりませんと…するとランシルが、治るんですね?…と聞きます。主治医は、脳というものは、とても複雑なものでして…手術が成功しても後遺症がある可能性も…まずは患者の命を救って、術後の経過を見なければ何とも言えません…と答えました。ワンモが手術にかかる時間は、と聞くと、医師は四時間と答えました。するとホンパがお願いしますと言いました。

 ヨンソンを手術室に運んでいると、スラとマリアが駆けつけて来ました。スラはヨンソンの顔を見ると泣きながらお母さん…お母さん…と声をかけ続けました。スラは、ヨンソンと最後に別れた時に、感情に走って投げかけた言葉を後悔していました。スラはイリに抱きとめられます。手術室の前に着くと、ワンモがスラを抱き寄せます。ホンパはヨンソンの手を確りと握りしめました。ヨンソンは、看護師に連れられて手術室の中へ入って行きました。

 ヨンソンは、手術室の中で夢を見ていました。夢の中で、神様…まだ死にたくありません…孫の顔も見ていないんですよ…ワンモにも謝らなければならないし…何としてでも娘が喋れるようにして…一度でもママという言葉を聞いてから…死なせて下さい…お願いします…と言いました。

 ジャギョンは、一人で留守番をしていました。ベッドの上で膝を抱えながら、昨日の夜の浜辺で泣いていたヨンソンの姿を思い出していました。そして、自分が海で自殺をしようとしていた時の姿をダブらせていました。その時、家政婦が薬の時間だと言って遣って来ました。家政婦は、ベッドに腰を降ろしてジャギョンの髪形を見ると、みっともない髪形ねと言って、ジャギョンの髪に触ろうとしましたが、ジャギョンはそれを嫌って家政婦の手を跳ねのけました。母親に結んでもらった髪に、他人の手を触れさせたくないという思いが芽生えたのかも知れません。

 手術室の前でワンモ達が待っていると、家政婦に連れられてジャギョンも遣って来ました。ジャギョンを椅子に座らせるとワンモが、母さんが、ケガをして手術中だ…と説明しました。しかし、ジャギョンの表情は変わらずに、一点を見つめているだけでした。

 手術が終わると、執刀医が出て来て説明を始めました。最善を尽くしましたが、とても重症だったもので、患者の意識が戻るまでは何とも言えませんと……ホンパが、治る見込みはありますかと尋ねると、執刀医は、あまり期待されない方が…と答えました。それを聞いたスラは、気を失って倒れかけます。側にいたイリがスラを受けとめて遣りました。

 ワンモは、ICUでヨンソンに面会して手を握りながら、母さん、僕達の為にも目を覚ましてくれ…何があっても俺は諦めないから…絶対に死なせない…孫にお祖母ちゃんって呼ばれたいだろう…孫に会いたくないか…それに…ジャギョンのママっていう言葉も聞かなきゃ…悔しくないのか…もし死んだら…俺達は幸せになれない…どうか、頑張ってくれ…と、心の中で語り続けました。ワンモの目から一筋の涙が零れ落ちていました。

 意識を失っていたスラは、そのまま入院して点滴を受けていました。意識を取り戻すと側にはマリアとイリがいました。スラは、ヨンソンの事が気がかりで、マリアにママはと尋ねました。マリアは、集中治療室よと答えました。スラは起きようとしますが、マリアに止められます。イリもスラに、お前も病人だ…と言いました。マリアはスラに、泣かないで、神様を信じましょうと言いました。ワンモがICUから出て来ると、ホンパはワンモに疲れただろう、ここで二人で待つ必要はない。自分がいるから帰りなさいと言います。ワンモは、大丈夫ですと言って、椅子に腰掛けました。イリは、ICUのナースステーションに行って、娘が気絶したので、親の顔を見ていない。五分で好いから面会させてくれと頼み込みました。スラは面会できる事になりICUに入って行きました。

 スラは、ヨンソンの全身を見回します。そして、泣きながらママと呼び掛けました。するとヨンソンの手が微かに動きました。スラはヨンソンの手を両手で握るとまた、ママ…神様、どうかママを助けて下さい…私が悪かったから…これからは優しい子になります…ママだけ助けて下さい…と言いました。その時、心なしか、心拍と血圧を示す機械が息を吹き返すようなリズミカルな音を立て始めました。

 ワンモが家に帰ると、ジャギョンはベッドの上に座って待っていました。ワンモは上着を脱ぐと突然歌を歌い始めました。結婚前にふざけて歌った歌でした。しかしジャギョンの表情は変わりませんでした。ワンモは、ベッドに腰を降ろすとジャギョンを見つめながら、覚えていないか…寒い冬の日に俺が唄っただろう…口紅を塗ってた…笑っただろう…と言うと、立ち上がり鏡台に行き、鏡を見ながら口紅を塗って、その時のポーズを取ってジャギョンに近寄りました。でもジャギョンの顔は、きょとんとしているだけで、表情の変化はありませんでした。ワンモはジャギョンに話し続けます。結婚二日前に…ボートに乗った事は?…二日後には、同じ人生の船に乗ると…どちらかが船を下りない限り同じ運命だと…俺は約束した通り…一生懸命に漕いでいる…船が転覆する危険に見舞われたら協力して…乗り越えようと言ったじゃないか…思い出してくれ…俺だけは信じると言って置いて…これは何のマネだ…約束したなら…最期まで守れと…ワンモは感情が高ぶり涙声になって、懸命にジャギョンに訴えかけました。ワンモはさらに続けます。俺も辛い…辛くて死にそうだ…胸が張り裂けそうなんだ…頼むから、喋ってくれ…と、泣きながら訴えかけました。するとジャギョンの手が、ワンモの髪に伸びて行きました。ジャギョンは自分の指で、ワンモの髪の毛をすかしました。ワンモは、ジャギョンを見つめ、ジャギョン…ジャギョン…一言だけでいい…俺の事はいい…ママと…なあ…ママ…と、呼び掛けました。すると、ジャギョンの目から涙が流れ始めました。ワンモはジャギョンを見つめながら、母さんに…言ってあげるんだ…そしたら…目覚めるはずだと……ジャギョンの目からは、止めどもなく涙が流れていました。そして、小さいながらもすすり泣く声が…ワンモは、さあ…ママ…と呼び掛けます。するとジャギョンは、懸命に声を出そうと試みるのですが、うん…うん…と言葉になりませんでした。ワンモは、ジャギョンを抱きしめ、二人で泣きました。こうして、ジャギョンの回復の兆しが、少しではありますが見えて来ました。


 スラは、以前として病院に入院していました。目が覚めると、ワンモとジャギョンが結婚した当初の頃、ジャギョンが姉とも知らずにいじめていた事を思い出していました。アガシは、一般的にお譲さんっていう意味で、夫の妹は、エギシです…知らなかったの?…信じられない…と、まるで学歴の無いジャギョンをバカにしているように…また、ジャギョンが床掃除をしていると、スリッパの裏も拭いて下さい…と言って、自分の吐いているスリッパをテーブルの上に蹴上げたりした事を…さらに、嫁ぐ時、普通は数千万は用意するのに…貯金しなかったの?…と嫌味を言ったりした時の事を…スラは後悔していました。スラの目から涙が零れ落ちていました。そこへ、イリが花を持って遣って来ました。イリは、スラの涙顔を見て、一生分の涙を流す気か…と言います。スラは、自分がした事を後悔しているわ…と言います。イリは、完璧な人はいない…と諭しました。

 スラは、ヨンソンに面会に来ていました。ママ…辛いでしょ…ゆうべ一晩乗り越えてくれてありがとう…と呼び掛けると、両手でそっとヨンソンの手を握りました。スラは、また話しかけます。六歳の頃の記憶だけど…ママが韓国へ来て…私に…子守唄を歌ってくれながら泣いたの…覚えてる?…私が、なぜ泣くのと聞いたら…ママは、歌が悲し過ぎてと答えたわ…悲しいって何なのと聞くと…スラは意識の戻らないヨンソンの胸に手を置いて、ここが傷むことなのよと答えたの…私は…その時、触ってみたら何も感じなかった…でも…ママがなぜ泣いたのか…やっと分かったわ…やっとママの苦しみが分かったわ…私…今…胸が痛いの…ママは…頭が痛いでしょうけど、私は…胸が痛いの…お願い…ママ起きて…まずは目を覚まして…私を見て…お願いだからと…その時、ヨンソンはスラに気付いていたのか、目を瞑ったまま心の中で、スラ…私の可哀想な娘…必ず回復して見せるわ…神様が…私の最後の願いを叶えてくれるはずよ…泣かないで…泣くと胸が痛むわ…泣かないで…と言いました。その時、看護師が入って来て、もう時間ですとスラに伝えました。

 マリアは、保育器に入れられたひ孫を見て微笑んでいました。子どもは順調に生育していました。マリアはスラの病室へ行きます。スラは、病室のベッドの上で体を起こして考え事をしていました。スラはマリアに座ってと言います。マリアが座るとスラは、ママが回復したらまた叱るの?…私の為にもママを許してあげて…と言います。マリアは、許すも何も…と気の無い返事をします。スラは、そんなふうに言わずに、以前のように温かく接して…と言います。マリアは、周りが知るのは時間の問題だし、噂になるわ…と言います。するとスラは、人が何と言おうと気にしなければいいわ…と言います。マリアは、でも後ろ指さされたら…と言いました。スラは、構わないわよ…私は恐くない…と答えました。マリアが溜息をつくと、スラは、家族の健康と無事が一番だってやっと分かったの…お義兄さんでもかまわないわ…呼び方なんて形式的なものに過ぎない…重要なのは、愛する家族だってことよ…たった数十年の短い人生よ…怒るのはもっともだわ…でも、私を産んでくれた母親でしょ…お兄ちゃんにも大切な母親だし…とマリアを説得しました。

 ワンモの仕事が終わった頃に、ホンパから電話がありました。ヨンソンの意識が戻ったと…ワンモは直ぐに病院に駆けつけました。ワンモがICUに見舞いに行って、母さんと呼び掛けると、ヨンソンは目を開けてワンモを見ました。ワンモが、まだ痛むでしょ…と聞くと、ヨンソンは、大丈夫よ…あなた達の…苦しみや…心の傷に比べたら…かすり傷よ…と答えました。ワンモは笑みを浮かべながら、苦しんでない…あっ、スラが今、こっちに向かっている…エレベーターが込んでて、捻挫して入院したんだ…今日ほどうれしい日はなかった…母さんの意識が戻ったから…と言います。ヨンソンは、本当は…言いたい事があるでしょう…と聞き返しました。ワンモは、沢山あるよ…早く起きて、サムゲタンを…お母さんの料理が食べたい…と言います。ヨンソンが涙を流しているとワンモは、なぜ泣くんだ、笑ってくれ…母さん…母さん…と言うと、ヨンソンの涙を手で拭いて遣りました。そして、俺に、お義母様と言う呼び方は期待しないで…そうだ、様だけは付けてやるよ…お母様…泣かないで…早く治ってくれ…孫を抱いて、ジャギョンと遊びに行く為にも…と言いました。ヨンソンは、ごめんね…申し訳ないわ…と言いました。ワンモは、俺は、お母さんに感謝している…ジャギョンを産んでくれて…俺を大事に育ててくれたから…俺の大事な妻を産んでくれてとても感謝している…と言いました。ヨンソンは、心の中で、神様、これは夢ではないですよね?…まさか、ここは天国ですか?…と言います。ワンモは笑顔で、お母さん…心から尊敬し、愛してる…スラも愛してると…言いました。ヨンソは、唯すすり泣くだけでした。

 マリアは、自宅でスラと話しをしていました。母さんは当然、向こうの家で暮らすだろうしと……スラは、お祖母ちゃん…昔みたいに…みんなで、一緒に暮らしちゃダメ?…と聞きます。マリアは、無理言わないで…コブが一人いるのよ…と答えました。スラは、コブ?…と聞き返します。するとマリアは、理事長の事よ…と答えました。スラは、お姉ちゃんのお父さんよ…と言いました。マリアは不満そうな表情をしていました。

 暫くして、ホンパが訪ねて来ました。スラがリビングで挨拶をするとホンパは、お祖母ちゃんは?…と聞きました。スラは、眠ってます…三十分後には起きるかと…と答えました。スラはホンパに、夕食はお済ですか?…と聞きます。ホンパは、ああ…と答えました。スラは、病院で?…と聞き返します。ホンパは笑みを浮かべながら、ああ…と答えました。そして、歩けないで退屈だろう?…と聞きます。スラは、仕方ないです…病院に行けないのが残念だけど…お姉ちゃんにも会いたいし…と答えました。ホンパは、無理するな…と言いました。スラは、ママが退院したら、ここで暮らしちゃダメですか?…と聞きます。するとホンパは、私も考えてみたんだ…一緒に暮したらどうかなと…スラも、うちで暮らした事があるし…お祖母様と私の家へ…と言いました。スラは少し考えながら、そうですね…私は構いませんけど…と答えました。ホンパは、お祖母様には私が話して見る…と言いました。

 ホンパは、マリアが起きるとマリアの部屋で相談しました。横にはスラもいました。ホンパはマリアに、家も広いから…家族が七人もいたら、赤ん坊の世話は楽かと思います…と言います。するとスラが笑顔で、赤ん坊まで入れて八人家族です…と言いました。ホンパは、マリアの顔を覗きこむようにして、どうですか?…と尋ねました。マリアはスラの顔を見ました。スラはマリアの顔を見て頷きながら、そうしましょう…と言いました。マリアは渋い顔つきで、モさんが納得しないと思うけど…と言いました。

 ホンパと入れ替わりにランシルが来ていました。ランシルはマリアに、何を言うんですか、大歓迎ですよ…姉さん…私とヨンソンを哀れに思って許してください…一緒に生活を…と言います。するとマリアは、心配なのよ…と言います。ランシルが、何がですか…と聞き返すと、マリアは、嫌味を言うから…と言いました。ランシルは笑みを浮かべながら、私ですか?…もう二度と言いません…信じて下さい…今後は、言葉に気お付けるようにします…と言いました。するとマリアは、ぶっきら棒に、タンスを一つ貸して…と言います。ランシルは、全部貸します…ここの荷物を全部運んで下さい…と言います。マリアが吹き出すようにフンと笑うと、ランシルは、本当です…台所の隣の部屋を衣裳部屋にしますから…嬉しいわ…私が大事にしますから…仲良く楽しく暮らしましょう…一緒にひ孫を育てながら…と言いました。マリアは、深く溜息をつくと、ジャギョンが早く快復して、ヨンソンに…後遺症が無いといいけど…と言いました。

 ホンパは病室で、ヨンソンの寝顔を見ながらスラの言っていた事を思い出していました。スラはホンパに、あの…これからは…パパだと思います…お姉ちゃんのお父さんは、私のお父さんだからと…ホンパは、驚きと嬉しさの入り混じった表情をしていました。その時、ヨンソンがめを覚ましました。ホンパはヨンソンに、頭痛か…と聞きます。ヨンソンは、ひどくはないわと答えました。ホンパは時計を見て、薬の時間まで後10分ある…と言いました。すると、携帯のベルの音が鳴りました。スラからでした。スラは、私です…一般病棟に移ったと…と言います。ホンパは、ああ…話すか…と聞きます。スラが、はい…と答えると、ホンパは、ちょっと待って…と言うと、ヨンソンに、スラだ…と言います。そしてスラに、代わる…と言うと、携帯をヨンソンの耳元に添えました。スラは、ママ…と呼び掛けました。ヨンソンは、私の娘…と言います。スラは、まだ痛いでしょう…と聞きました。ヨンソンは、大丈夫よ…と答えました。スラは泣きながら、会いたいけど、足をけがしちゃって…と言います。ヨンソンは心配そうな声で、なぜ気お付けなかったの…と言いました。スラは、ママ…この間の私の言葉は全部忘れて…と言います。ヨンソンは、スラ…本当にごめんね…と言います。スラは、そう言わないで…私はママをとっても愛しているわ…と言います。ヨンソンは、知っているわ…ママもよ…と答えました。スラは、早く快復して帰って来て、会いたいから…ママにも会いたいし…お姉ちゃんにも会いたいの…と言いました。ヨンソンは、涙で何も言う事が出来ませんでした。

 

 ワンモとマリアは、保育器のある病棟の前にいました。いよいよ息子が退院する日が来ました。看護師が息子を抱いて病室を出て来ると、ワンモに手渡しました。ワンモはぎこちない手つきで、我が子を抱きました。ワンモの顔からは、笑みが零れていました。ワンモがマリアに子どもの顔を見せるとマリアは、保育器の中で寂しかったでしょう…と話しかけました。

 ホンパの家では、ランシルがジャギョンに話しかけていました。もうすぐ息子が来るわよと…しかし、ジャギョンは無表情でした…ランシルは、ジャギョンの手を取ると両手でさすりながら、あなたの妹とワンさんと…みんなで暮らすことにしたの…と言います。

 ジャギョンは、ベッドに寝転がって、一人で考え事をしていました。ヨンソンが夜の浜辺に座り込んで泣いている姿と、以前自分がワンモと別れようとしても別れきれずに泣きながら海で自殺しようとした時の姿をダブらせていました。ジャギョンは悩んでいました。ベッドから起き上がると、眉間には皺が寄っていました。向こうの棚に飾ってあった、ワンモとの結婚写真を見つめていました。しかし、それが快復の兆しのようにも見えました。二人の結婚式の映像が、脳裏によみがえり始めました。ジャギョンは、険しい表情をして立ち上がりました。そして両手を合わせ祈り始めます。

 ジャギョンがベッドに座って、苛立ちながら考え事をしていると、ワンモが息子を抱いて部屋に入って来ました。ランシルがジャギョンに、我が家の宝物よ…と言います。ワンモは、ジャギョンに歩み寄って、息子を抱いたままベッドに座りました。その横には、ランシルとマリアもいました。ワンモが息子を差し出すとジャギョンは自ら手を出して息子を抱き締めました。ジャギョンは、我が子の顔をじっと見つめていました。すると、ジャギョンの脳裏に楽しかった日々の思い出が蘇りました。そして、ベドゥクに秘密をばらされて放心状態になった時の事も蘇りました…様々な思い出が蘇り始めました…ワンモは、そんなジャギョンをじっと見つめていました。するとジャギョンが片言で、赤ちゃん…赤ちゃん…と声を出しました。ワンモは、そう、赤ちゃんだ…お前が産んだ息子だ…と声を掛けました。ジャギョンはワンモを見ると頷きました。その目からは、涙が零れ落ちていました。ランシルとマリアは、それぞれ私が分かると聞きました。ジャギョンは、涙目で二人を見つめていました。そして、我が子に頬ずりしながらすすり泣いていました。その様子を見ていたワンモの目からも涙が零れ落ちていました。ワンモはジャギョンに、無理して喋らなくてもいい…ゆっくり…泣くな、赤ちゃんが悲しむぞ…と言うと、手でジャギョンの顔を拭いて遣りました。ジャギョンが何か話したそうにしているとワンモは、どうした…と聞きます。するとジャギョンは、お義母様…と言います。ワンモは、母さんか?…具合が悪いんだ…と言います。するとジャギョンは、何か喋りたい様子でしたが、言葉がなかなか出て来ませんでした。ワンモは、ジャギョン、俺を見ろ…母さんの事を全部知っているんだろう…お義母さんから聞いた…と聞きました。ジャギョンは、大きく頷きました。ワンモは、ジャギョンの目を見ながら、みんなも知っているし、受け入れた…難しく考えるな…母さんの立場では、そうするしかなかった…それに俺達は、必ず結ばれる運命だったんだ…だろう?…だから…みんな一緒に暮らすことにした…この家で…と言いました。するとジャギョンが、本当に?…と聞きました。マリアとランシルが泣きながら、ええ、本当よ…と答えました。マリアが、明日、私とスラが引っ越すの…と言いました。ジャギョンは泣き続けました。ワンモは、ジャギョンから息子を受け取ると、スラは、お前の妹だろう…お姉ちゃんが泣いてどうする…妹のスラは、お前と暮らすのを楽しみにしているんだ…と言いました。ジャギョンは、泣きながら大きく頷きました。するとマリアが歩み寄って、ジャギョンの腕を握って、そうよ…泣かないで…母親を探したのよ…喜ばなきゃ…と言います。ジャギョンはワンモに手を差し出して、我が子をまた受け取りました。そして、じっと見つめていました。その様子を見てワンモが、俺の名前を呼んでくれ…と言います。ジャギョンは、ワンモを見つめながら、ゆっくりとワン…モ…と言いました。するとワンモが、あだ名は…と聞きます。ジャギョンは泣き笑いの顔で、ドルセ…と答えました。ワンモは手で、ジャギョンの涙を拭いて遣りました。その様子を見て、ランシルがマリアに、出ましょう…と声を掛けました。二人は部屋を出て行きました。ワンモは、我が子を抱いているジャギョンを軽く抱きしめました。

 それから二人だけの会話が続きました。ワンモはジャギョンに、俺がどれだけ心配したか…と言います。するとジャギョンが心配そうに、どうなるの?…これから…どうしたらいいの?…と尋ねました。ワンモは、母さんにか?…と聞き返しました。ジャギョンは、頷きました。するとワンモは、大事にするんだ…そうすれば、母さんもすぐに快復出来る…と言いました。ジャギョンは心配そうに、何処が悪いの?…と聞きます。ワンモは、手術を受けた…と言います。そして、手を差し出して、赤ちゃんを受け取りながら、赤ちゃん、お腹がすいているはずだ…ゆっくり、すべてを話すから…と言いました。二人は、我が子を挟んで幸せそうに向かい合っていました。

 ホンパはヨンソンのベッドの横に座っていました。そこにランシルから電話が入ります。ホンパは電話を聞いて、喋った?…と聞き返します。ランシルは、少しだけどね…と答えました。ホンパが、記憶は?…と聞くと、ランシルは、戻ったから喋ったのよ…と答えました。ホンパは嬉しそうに、何よりだ…と言いました。ランシルは、ええ…と答えました。ホンパは、分かった…と言うと電話を切り、ヨンソンに、ジャギョンが喋ったそうだ…と伝えました。ヨンソンは複雑な表情で、恨まれたら…どうしよう…と言いました。

 ランシルの部屋では、マリアとランシルが話しをしていました。マリアは、スラが喜んでいる様子でした…実の姉が出来て…と言います。ランシルは、笑みを浮かべながら、何よりです…と言いました。そこへワンモが入って来ました。ランシルはワンモに、ミルクは?…と聞きます。ワンモは座りながら、飲ませました…と答えました。ランシルはマリアに、早く戻って荷造りをして下さい…と言います。マリアは、そうね…と答えて立とうとすると、ワンモがマリアの腕を握って、その必要はない…と言いました。マリアは座りなおしてワンモを見ながら、どうして?…と聞き返しました。ワンモは、ジャギョンが家に帰ろうと…言います。するとランシルが不思議そうな表情で、どうして?…と聞きました。ワンモは、混乱しているらしい…整理がつくまで向こうの家に…と答えました。ランシルは沈んだ表情を見せました。ワンモはランシルに、ジャギョンにも時間が必要です。御理解を…と言いました。ランシルは仕方がないという表情で頷きました。マリアも折角上手くいきそうだったのにと思ったのか、表情を曇らせていました。ランシルは俯きながら、忘れてたわ…大人のせいで…私のせいで…実の母親と別れて…辛い人生を送ったのに…怨まれて当然ね…実の父親と知って喜ぶより…怨んでしまうのは当り前よ…と言いました。するとマリアが、根が優しいから直ぐ許すはずです…と慰めました。ランシルはワンモに、私の顔も見たくないと言っているでしょう…と聞きます。ワンモはランシルに視線を合わせると、それは違います…と答えました。ランシルは悲しそうな表情で、ホンパが落ち込むわね…と言いました。するとマリアが、ワンモに視線を合わせて、ヨンソンには会うと?…と聞きました。ワンモは頷くだけでした。ランシルはワンモを見て、いつ行くの?…と尋ねます。ワンモは曇った表情で、それが…今日です…と答えました。ランシルの表情が悲しそうでした。それを見かねたマリアが、食べ物も無いわよ…と言います。するとランシルが、うちから持っていって下さい…わかめスープもあります…と言いました。ワンモは、何とも言えない表情をしていました。ランシルの目には涙が溜まっていました。

 夜になって、ホンパは車で帰宅の途中でした。車の中でランシルからの電話を思い出していました。ジャギョン達が、今日、出て行くそうよ…と言う言葉を…ホンパの顔は、寂しそうで、複雑な表情をしていました。

 ホンパの家では、ランシルが一人でリビングに座っていました。その後ろでは、家政婦が懸命にジャギョンの荷物を運んでいました。ワンモとジャギョンの寝室では、ジャギョンはベッドに腰を降ろして、我が子を抱いていました。その横では、ワンモが荷物の整理をしていました。

 ジャギョンがワンモに、正直に教えて…お義母様に何かあったの?…と尋ねます。ワンモは手を休めてジャギョンに視線を合わせ、今は大丈夫だ…と答えました。ジャギョンは心配そうな表情で、帰る途中にちょっとだけ病院によって…と頼みました。するとワンモは、今は母さんが無理だ。喋るのもやっとで…と答えました。ジャギョンは泣きそうな顔で、そんなに重傷なの?…と聞きました。ワンモは、ジャギョンに歩み寄ると腰を屈めて、ジャギョンの両膝の上に手を置いて、お前が治ったら直ぐに快復する…お前も安静が必要だ…子どもの世話で、一週間なんて直ぐだ…と諭しました。そこへ、荷物を持ってマリアが部屋に入って来ました。マリアは荷物を降ろしながら、着替えだけまとめなさい…と言います。ワンモがはいと答えました。マリアはジャギョンを見ると、どうしてまた泣くの…体に障るわよ…と、声を掛けました。ワンモが心配そうに、病院へ行くと…と言います。マリアは、ジャギョンに視線を合わせると、病人の為に我慢しなさい…と言いました。ジャギョンは、仕方なく頷きました。

帰宅したホンパがリビングに入って来ました。リビングにはランシルが一人でポツンと座っていました。そこへ、赤子を抱いたマリアを先頭にして三人が二回から降りて来ました。ランシルは、肩を落としながら立ち上がり、三人の処へ歩み寄りました。ホンパの表情は寂しそうでした。ワンモが、ランシルとホンパに、こんな形で出てしまい、申し訳ありません…と挨拶をしました。ジャギョンは、何か言おうとするのですが、言葉が出なくて何も言わずに家を出ようと振り向きました。その時ホンパが、ジャギョン…一言だけ…と、話しかけました。ホンパの目から涙が零れ落ちていました。ジャギョンは、また振り向き直しました。ランシルが、必ず、また会えるわよね?…と話しかけます…ジャギョンは視線を上げて二人を見ました。ランシルは、ママとパパには責任はないは…すべて私のせいなの…私が謝るわ…許して…と言いました。ジャギョンの目からも涙が零れ落ちていました。ジャギョンは、やっとの思いで話し始めます。30年の歳月です…今すぐは…私は大丈夫です…でも…ママの人生は…記憶を失うくらいのショックだったんです…と言います。ランシルは泣きながら、ホンパの肩に手を置きます。ホンパは、俯きながら黙ってジャギョンの話を聞いていました。ジャギョンはさらに、ゆっくりと話し続けます。私も母になって分かりました…子どもに対する母親の愛情がどれほどなのか…自分の子供の…消息も知らずに数十年も…その心境が…分かりますか?……私もとても辛かったし…とても会いたかったです…今までの歳月が、私を冷たい人間に…したみたいです…何事も…無かったかのように…お二人に接する事が出来ません…あまりにも混乱して…と言いました。ホンパは、頬に涙を流しながら唯一言、許してくれ…と言いました。周りにいる全ての者が泣いていました。ジャギョンは、とにかく…努力します…と言いました。ランシルは泣き声で、私のせいで…と言うと、ひ孫の顔を覗きこみました。三人は、静かにホンパの家を出て行きました。ランシルは泣き続けました。ホンパは、悲しさと寂しさをじっと我慢して耐えていました。

スラは、家のリビングで一人待っていました。スラの脳裏には、過ぎ去った出来事が蘇っていました。ヨンソンが、指輪しないの?…と聞くと、うん…メイクの人もしているから…と答えました。ヨンソンが、それがイヤなの?…と聞くと、拗ねた表情で、気が乗らないだけよ…同じ物はしたくないのが女よ…と憎たらしく答えました。

その時、門のベルが鳴りました。スラは、松葉杖を手にすると立ち上がり、セキュリティーシステムを解除しました。ジャギョンはマリアに支えられて、玄関の階段を登っていました。その後ろには、ワンモが我が子を大事そうに抱きかかえていました。マリアはジャギョンに、ゆっくり歩いてね、転んだら大変だから…と声を掛けました。ジャギョンは頷くと、ゆっくり歩きました。スラは、リビングの入口のドアの前で、不安と期待に駆られて立って待っていました。その時、玄関に四人が入ってくる音がしました。

マリアは、後ろを向くとワンモに手を差しのべながらちょうだい…と言います。ワンモは、大事そうに赤ちゃんを渡しました。スラは、一つ一つの音に反応しながら、不安そうに立って待っていました。マリアが赤ちゃんに、寒かったでしょう…と声を掛けながらリビングに入って来ました。その横に、ワンモが荷物を持って付き添っていました。二人はスラの横を通り過ぎて行きました。スラはじっとジャギョンが入って来るのを待っていました。ジャギョンがリビングに入って来ると、スラの視線とジャギョンの視線が重なりました。二人はじっと見つめ合います。そして、一歩一歩、歩み寄ります。二人は自然に胸と胸を合わせました。姉妹と分かって初めての対面でした。二人は抱きしめ会いました。二人の目からは涙が零れ落ちていました。ワンモとマリアがその様子をじっと見つめていました。スラはジャギョンに、お姉ちゃん…ごめんなさい…と言います。ジャギョンは、声を詰まらせて、唯首を振ることだけしか出来ませんでした。そして、やっとの思いで、妹がいる友達が…うらやましかったわ…と言います。その顔には笑みが浮かんでいました。スラも、私もお姉さんがいる子が…と、後は言葉になりませんでした。


スラは、ベビーカーに乗せられている甥っ子を物珍しそうに見つめていました。そして、指で甥っ子のホッペタを触ろうとしました。側にいたマリアが、起きちゃうわよ…と注意します。すると、満面の笑顔でマリアを見ながら、可愛い…と言いました。マリアは、自分の子どもはもっと可愛いわ…と言って笑いました。

 ジャギョンは、寝室で布団の上に座って物思いにふけっていました。その表情は硬く、不安に満ちていました。まだまだ、疑心暗鬼が続いているようでした。そこへワンモが入って来ました。ジャギョンはワンモに座って…と言います。ワンモはおどける様に、はい、奥様…と言うと、ジャギョンの真正面に座りました。ジャギョンは不安そうな表情で、正直な気持ちを聞かせて…今は…私に気を使って…自分の気持ちを出していないんでしょう…と聞きました。ワンモは真剣な表情で、そんな事はない…俺がどれだけ嬉しいか?…独り言の毎日だったから…と答えました。それでもジャギョンは不安そうに、人の気持ちは…みんな一緒だと言うでしょう…数カ月後に…私、離婚されるの?…と聞きます。ワンモは、ジャギョンの目を見つめながら、なぜ…と聞き返しました。ジャギョンは言い辛そうに、愛相を尽かしたから…と言います。ワンモは、誰に?…と聞き返します。ジャギョンは答える事が出来ませんでした。ワンモは静かに、意味は分かるけど、それはない…俺は、お前に面目なかった…事実を知って…母親の愛情を俺が一人占めしちゃって…申し訳なかった…お前にすべて打ち明けて…謝りたかった…と言います。するとジャギョンの目から涙が零れ始めました。

 ワンモは、さらに話し続けます。目のホコリも…お前じゃなく、俺が取ってもらって…童話を読んでもらって…捻挫したら…マッサージをしてくれた…すべて、お前に注がれるはずの愛情だった…俺が幸せだった時…お前は苦労を…俺が勉強しているとき…お前は、思いメイクバックを持って走り回っていた…本当に…すまない…と言いました。ジャギョンは、ワンモを見つめながら黙って首を横に振りました。涙が止めどなく頬を流れ落ちていました。ワンモは、一生…大事にしながら…お前に償う…と言いました。ジャギョンは、一種の…責任感で…私の側に?…と聞きました。ワンモは、真剣な表情でジャギョンを見つめながら、そうじゃないのは分かるだろう…と答えました。ジャギョンは頷くと、責任感だとしても構わないわ…離婚届を持ってきたら…破いてやる…私…絶対に…別れないわよ…イヤだから…もう私は一人じゃないの…私たちの…子供に…寂しい思いはさせたくない…と言いました。ワンモはジャギョンを抱きしめます。そして、離婚何か考えるな…別れないぞ…お前が別れようと言い出したらと…心配していたんだ…逃げたら、地球の果てまで追い掛けるぞ…結婚の前に言っただろう…同じ船に乗って…船が難破する危機に見舞われたら…一緒に乗り越えようと約束しただろう…この程度で離婚だと?…ふざけるな…と言いました。ジャギョンは、ありがとう…と言いました。ワンモは、こっちの台詞だ…と答えました。二人は、体を離して見つめ合います。ジャギョンは、泣き笑いの表情で、世の中で…私が一番幸せだと思う…と言いました。ワンモも頷きながら、俺もだ…二人で、俺達の息子を…幸せに育てよう…なあ…と言います。ジャギョンは笑みを浮かべながら頷きました。ワンモは手で、ジャギョンの頬の涙をそっと拭いて遣りました。そして、まったく…こんなによく喋るのに…辛くなかったか?…と聞きます。ジャギョンは、ただ微笑むだけでした。ワンモはまた、ジャギョンを抱き寄せました。二人とも幸せそうに抱きしめ合っていました。


 ジャギョンが、ワンモの家に帰って来て一週間がたちました。ジャギョンとワンモは、ワンモの運転する車で、ヨンソンの入院している病院にお見舞いに行きました。ジャギョンは、ワンモに支えられながらゆっくりと廊下を歩いていました。ジャギョンの脳裏には、ヨンソンとの思い出が蘇っていました。店でヨンソンに初めてメークをする映像が…その時突然、ヨンソンが泣きだした姿が…ヨンソンが両手でジャギョンの手をさすりながら見つめてくれた時の姿が…登山に行って一緒に写真を撮った時の姿が…ジャギョンが入院した時に、優しく看病をしてくれたヨンソンの姿が…何時しかジャギョンの目から涙が零れ落ちていました。

 ジャギョンは、ヨンソンの病室の前に来ると立ち止りました。ワンモがドアを開けようとするとジャギョンは、待って…と言います。そして後ろを向くと、涙を手で拭きました。ワンモは心配そうにジャギョンに寄り添いました。その時、部屋から付き添いの伯母さんが出て来ました。伯母さんはワンモに、こんにちは…と挨拶をしました。ワンモは、一人ですか…と聞きました。伯母さんは、はい…お祖母様が来てました…と答えました。

 その時ヨンソンは、ベッドの上で体を起こして、じっと何かを考えているようでした。ジャギョンとワンモが部屋に入って来ても、暫くは気付きませんでした。ヨンソンがふと入口に目をやると、そこには涙を流しながらヨンソンを見つめて立っているジャギョンの姿がありました。ジャギョンは何も言わずにゆっくりと歩み寄りました。ヨンソンは、そのジャギョンの姿を確りと見つめていました。ジャギョンは、ヨンソンの頭にしている白いネットを触ると、手を下に移して頬にも触りました。ジャギョンはベッドに腰を降ろすと、そっとヨンソンに近づき抱きしめました。二人のすすり泣く声だけが聞こえていました。ジャギョンは、心の中でママ…と言いました。ヨンソンも心の中で、私の娘よ…と言います。ジャギョンは、温かいわ…とても恋しかったわ…と言います。ヨンソンは、あなたも、ついに母親になったわね…と、二人の声なき会話が続きました。そしてジャギョンは、ついに言葉を発しました。ママ…ママ…と、するとヨンソンも泣き声で、ジャギョン…ジャギョン…と呼びました。ジャギョンが、ママ…と言うとヨンソンが、私の娘よ……ジャギョン…と答えました。ワンモは、二人の姿を黙って見つめていました。

 その時、ホンパが部屋に入って来ました。ヨンソンは、ジャギョンと抱き合って頭をなでながら、あなたは、私の娘よ…ジャギョン…と言いながら泣いていました。二人の姿を見つめていたホンパは、居た堪れなくなったのか、遠慮して部屋をそっと出て行きました。ヨンソンとジャギョンは、抱きしめ合って泣き続けました。ヨンソンが、ママを許して…と言いました。


 ベドゥクが、車の中からワンモの家の門を見つめていました。門の横には、行商の果物売りのトラックが止まって客を相手していました。その時、ワンモの家の門が開き、家政婦が子供を背負って出て来ました。ベドゥクの視線が、家政婦に背負われた子供に注がれました。家政婦は、行商のトラックの前に立つと、果物を手に取って匂いをかいでいました。ベドゥクは、自分の初孫を一目見ようと車から降りて歩み寄りました。しかし、マリアが門から出て来ると逃げるように物影に隠れました。マリアは、家政婦に歩み寄ると、スイカも…と言います。家政婦は、マリアに、はい…と答えると、行商の叔父さんに、スイカもくださいと言いました。マリアが家政婦に、子供を…と言うと、家政婦は、子供をおんぶする帯をほどいて、お祖母様よ…と言います。マリアは、子供が落ちないように大事に手を添えながら受け取り、よしよし…と言いながら抱き抱えました。ベドゥクは、その様子を遠目から羨ましそうに見つめているだけでした。ベドゥクは、寂しそうに車に乗りました。

 イリはスラに、二年待ってて欲しいと伝えていましたが、二年も待たずにスターになっていました。一時期のチョンハのように、出迎えのファンが大勢待ち受けていました。これで、大威張りで、スラと結婚が出来そうでした。

 ワンモとジャギョンは、ワンモの漕ぐボートに乗っていました…バースデーケーキに蝋燭を灯し、仲良さそうにボートを漕いでいました。…ワンモが、神様…私は愛する者と…末永く…健やかに…離れることなく…山が無くなり、川が干からびても…冬に梅雨が来て、夏に雪が降っても…天地が一つになっても…私は愛する者と別れません…と心の中で誓いました。最後に、ボートを漕ぎ止めると、ワンモとジャギョンがバースデーケーキ越しにキッスをするシーンで、この物語は終わりを告げました。

 ジャギョン・ワンモ・マリア・スラ・イリ・二人の息子…それぞれが幸せになっていました。ヨンソンとホンパ、そしてランシルは、エンディングには出ていませんでしたが、ジャギョンやワンモの性格からして、それなりに幸せに暮らしていると思います。ただ、ベドゥクと意地の悪いイリの双子の妹イェリだけは、寂しい人生を送っているようでした。

 長々とあらすじを書きましたが、CM抜きの50分ドラマ、全85話という、現代の日本では考えられないような膨大なドラマでしたのでお許しください。最後の方は、ついついセリフを起こし過ぎてしまいました。申し訳ありませんでした。



 このドラマを見終えて、最初に思った事は、ああ…面白かったの一言でした。韓流ドラマらしく、ハラハラドキドキの連続でしたが、最後には、家族全員が、それぞれ治まるところに収まって、溜飲も下がって、めでたしめでたしのドラマでした。しかし、よくよく考えてみると、これが韓国文化だ、という前提で見ていたから面白かったのだと思います。日本人の私には、こんなに重たく考えるべき事なのかと、どうしても思わざるを得ませんでした。もっと、気楽に考えるべきではと思いました。私は、日本と韓国は、同じ儒教をベースにした、考え方の近い国と思っていましたが、これが日韓の違いかと、まざまざと思い知らされました。

 確かに、ジャギョンとワンモは、義理の兄妹になるのかもしれません。しかし、血は繋がっていないのですから、結婚しても何の差し支えも無いと思います。形式だけに捉われていては、人間は幸せになれないと思います。仮に、ジャギョンとワンモが、幼い時から兄妹として育てられていたのなら、日本人の私でも結婚は許しません。しかし、そうではないのですから…ジャギョンとワンモは、別々のまったく違った環境で育てられたのですから、赤の他人と言っていいと思います。結婚をした後に知ったことなのですから…その上、母のヨンソンの戸籍に入れる前に、養子に出されているのですから、法律的にいっても、まったくの赤の他人です。ヨンソンが、ジャギョンの母親だと知っているのは、家族や周辺のほんの数人しか知らない事なのですから、黙っていればバレル事は決してないと思います。周辺の者は黙るべき事なのです。ベドゥクのような悪賢い人間こそが責められるべき事なのです。

まあ、よその国の文化ですから、日本人の私がとやかく言うべき事ではないと思いますが、韓流ドラマの秋の童話にも、これと近い事が描かれていました。出産時に産婦人科で赤ちゃんを取り違えられ、中学生になって交通事故に遭い、手術前の血液検査によって、そのことが判明する。兄妹として育てられた二人は、強引に引き裂かれ別々の生活を送ることになりました。大人になった二人は、偶然に出会い、いつの間にか愛し合うようになったのですが、父親に反対され、一度は別れることになります。しかし、どうしても忘れる事が出来ずに、二人は愛し合うという物語でした。そして、兄だった青年の家は裕福で、妹だった女性の家は貧乏でした。この手のドラマが、韓国で視聴率を取るという事は、韓国内に矛盾を抱える考え方があるという事につながると思います。韓国は、儒教の国とも言います。儒教の考え方が、現代にそぐわない部分があるとするならば、改めるべきではないでしょうか。改めるに憚ることなかれとも言います。カトリックでは、地動説を唱えたガリレオを破門しました。それから350年後、過ちを認め、ガリレオに謝罪し、破門を解きました。伝統宗教には、必ず一部分に過ちが見つかるものです。過ちは認めるべきです。認めたからと言いて、伝統宗教全体の価値が下がるという訳はありません。改めるに憚ることなかれです。

ちなみに、日本の法律では、三親等以内の親族(父母・兄弟姉妹・叔父叔母)とは結婚できません。又は直系の親族とは結婚できません。四親等(従兄弟姉妹)から結婚できます。これは、ドラマでワンモがジャギョンに言っていましたね。日本では昔、従兄弟同士で結婚していたと…ただし、現在では従兄弟同士で結婚することは、まずありません。それはなぜか、遺伝の問題です。当り前の事ですが、日本国民は殆どが知っています。遺伝上問題があると…

また、こういうケースもあります。ものまねの三代目江戸家猫八さんの後妻の妹と、三代目の長男で、四代目江戸家猫八(初代江戸家子猫)さんは、結婚をしています。笑い話ですが、子供にお祖母さんと呼ばせるべきか、伯母さんと呼ばせるべきかと迷うと…日本中の誰もが知っている話です。御家族は幸せに過ごされ、御一家で伝統芸能を守り続けられています。

 ところで私は、このドラマで、どうしても納得できなかった事があります。それは、ベドゥクの心変わりです。ワンモに脅かされたからと言って、あんなに豹変出来るものなのでしょうか。ジャギョンを虐めるだけ虐めぬいて…一歩引いて、自分が悪かったと反省するのは理解するとして、血の繋がってもいない初孫を抱きたいという欲求が出るものなのでしょうか…おまけに、遠目からマリアがひ孫を抱く姿を羨ましそうに見るものでしょうか…私には考えられません。それどころか、初孫を見に行くことや、ジャギョンの家に近づくこと自体が、恥ずかしくて出来ない事だと思いました。これが、韓国の人の一般的考え方なのでしょうか。不思議でたまりませんでした。

 それから、このドラマを見て、もう一つ気付いたことがあります。西洋の人から見て、日本人の宗教観には節操がないとよく言われますが、その日本人の私から見て、韓国の人の宗教観には首を傾げざるを得ませんでした。たぶん、ク家の宗教は、プロテスタントのキリスト教だと思います。それは、ヨンソンや家族の言葉に牧師さんという言葉がよく出て来るからです。また、ヨンソンが神様にお祈りする時には、両手を組んで、キリスト教徒がよくするスタイルでお祈りをしていたからです。また、マリアの名前自体が、洗礼名か、聖母マリアから取られたものだと思います。伝統的な韓国の女性の名前に、マリアというような名前は無かったように思うからです。

 そのマリアが、仏教の伝統的な古式の礼拝方式で毎日礼拝をしていました。健康の為とは言っていましたが…スラに至っては、結婚の願掛けにお寺に行って、仏像の前で古式の礼拝を何度も繰り返していました。何と節操のないことか…

また、ヨンソンが遣ったことは、韓国の一般社会では、決して遣ってはいけないことかもしれませんが、ヨンソンが悔い改めているのに、マリアがあそこまで叱りつけることは、決して一般的なキリスト教的考え方ではないと思いました。キリスト教徒ならば、形式よりも中身にこだわると思ったからです。韓国のキリスト教の中には、他の宗教の影響が入り混じっているのだなあと思いました。

 そう考えながらドラマを見ているうちに、ふと思い当ることがありました。統一教会(世界基督教統一神霊協会)も、キリスト教と称していたと…そして、発祥の地は韓国だったと…統一教会の是非は、ここでは避けるとしても、やはり儒教的考え方や、韓国土着の呪術の考え方が、他の宗教に影響を与えているのだなと悟りました。

 最後に、もう一度言います。それでもこのドラマ、「神様お願い」は、本当に面白かったですよ…長かったけど、飽きることなく見させてもらいました………

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