2011年6月11日土曜日

TBSの「JIN-仁-第8回(6/5)歴史に逆らう命の誕生」を見ました

 仁は勝の家にいました。
 勝は「あいつはひょっとして、あれをしようとしているのでは…」と言います。
 仁は「大政奉還ということですか…それはいつごろ…」と言います。
 勝は「分かっている奴がいれば、オレが聞いてみたい…」と言います。

 龍馬は、土佐の後藤象二郎と話していました。
 後藤が「武力討伐が始まる前に、政権を天子様に還してしまう…」と言います。
 龍馬は「天子様や薩長でも、政権を投げ出した物を、まさか武力討伐は出来ないだろう…」と言います。
 後藤は「これで土佐は、時代のかじを握れるのか…そんな事、薩長が認めるのか…」と言います。
 龍馬は「そんな事は、ばれなければいいんだ…」

 恭太郎は上役から呼び出されていました。
 恭太郎が「仁友堂と坂本は、今は交わりを絶っています…」と言うと、上役は「では、引き続き調べよ…」と言います。
 恭太郎は家に帰ると「赦せよ…」と言って、仁と龍馬が写った写真と手紙を焼きます。

 仁は、龍馬の暗殺の時期について考えていました。「大政奉還から明治にかけて…確か寒い時期だった…今年は1867年…という事は、今年の終わりか来年の初めに…」と
 仁は未来の事を思い出していました。
 未来は「坂本龍馬と同じ…龍馬が死んだ日も確か…」仁はここまでしか思い出せません。「確か、何て言ったかな…」

 仁は仁友堂で、龍馬からもらった手紙を全部燃やしていました。
 咲は仁に「やはり燃やされるのですか…」と言います。
 仁は咲に「勝先生が、そうした方が好いと…」と言います。
 すると咲が「坂本様にも、この事をお知らせした方がよいかと思います…」と言います。

 そのころ龍馬は、蒸気船の中で新政府の構想を書いていました。(これは、俗に言う船中八策という文章ですが…後でわかることですが、この物語では少し変えられているようです。)
 「これはすごいぜよ、先生…」

 仁は、龍馬に手紙を書いていました。
 「土の龍 道の果てつる 寒き京」この俳句まがいの文章は、直接的な文章で龍馬に手紙を書くと、もしもの事があった場合に、龍馬を危険にさらすことになるからでした。仁の心遣いからでした。
 この時、またもいつもの発作に襲われます。

 咲は、福田玄孝と出かけようとしていました。そこへ仁がやって来ます。
 仁が「どこへ行かれるのですか…」と聞くと、福田玄孝は「咲さんに、産婆を紹介しようかと思いまして…」と言います。咲は、野風の子を取り上げる為に、勉強と経験を積もうと考えていました。
 仁は思います。「10月には、野風さんの子が生まれる…今は、どこにも動けない…龍馬さんが何処にいるか分からないのに動くのは、あまりにもリスキーだ…」

 仁は、仁友堂で仲間の医師たちを指導していました。
 そこへ「久留米の田中久重様から、お届け物が届きました…」と言って、届け物を持って来ました。仁が届け物を開けてみると、中には、新しく開発された無尽灯と手紙が入っていました。
 佐分利祐輔が「これで、夜の手術が出来ます。」と言います。
 手紙には、仁と龍馬の事を心配していました…

 咲は仁の部屋にいました。
 仁は「おそらく、龍馬さんのもとには、手紙は届いていないのでしょう…」と言います。
 咲は「御心配なら、もう一度手紙を出されては…」と言います。
 仁は「手紙が届かないのは、歴史の修正力かと…」と言います。そして、写真の入っていた文箱の中を見ますが、そこには何もありませんでした。
 咲は「私にも見せて頂けませぬか…」と言って、文箱の中を見ます。そして「写真は消えたままでございますね…」と言います。
 咲は「私には、先生の御存じだった未来様は、野風さんと御家紋の大殿様との間に生まれた御子の御子孫であったかと…だから写真が消えてしまったのではないかと思います…だとすれば、すでに先生は、歴史を変えられているのではないでしょうか…」と言います。
 仁は「歴史の修正力が働かないことも…少し変えてしまった事で、悪くなるというような事はないのか…」と思います。
 咲は仁に「歴史の修正力が、どのように働こうとも先生の望みは変わらないのでは…野風さんが子供を産み、未来様が生まれ変わること…」と言います。
 仁は、未来の写真が消えた文箱の中に、佐久間象山からもらった袋を入れてなおします。
 仁は思います「龍馬さんが暗殺されない歴史を作ること…歴史は変えられないと決まったわけではない…」と

 その時、龍馬のもとに「容堂候が幕府に建白書を提出することが決まったぞ…」という連絡が入ります。

 臨月になった野風が仁友堂に遣って来ます。
 野風は、仁と咲に「宜しゅうお願い致します…」と言います。二人は「はい…」と答えます。
 咲と仁は、野風を診察します。
 咲が「御子は、順調です…母体も順調です…」と言います。
 仁は「ガンもほとんど進行していません…」と言います。

 仁は、医学所の松本良順と会っていました。
 仁は「私を奥医師に…」と言います。
 良順は「上様が、南方殿を奥医師にと仰せになっております…上様には助けてもらった恩があるのでは…南方殿のまわりには、その上様に反旗を上げている御仁もいるとか…このご時世です。仁友堂が疑われない為にも、お受けなさった方が良いかと…」と言います。
 仁は直ぐに答えを出すことが出来ませんでした。今の身動きの取れない状態でどうすればいいかと考えながら、その場を立ち去り、廊下を歩いていました。
 その時、後ろの方から仁を呼ぶ声が聞こえました。
 「南方先生…三隅です…」
 「三隅先生…」
 三隅は、野風が御家紋の大殿に身受けされようとした時に、仁と一緒に野風の健康診断をした医者です。
 「私も奥医師に…あの時、乳癌を見抜けず大殿様に叱責されました。それで、初心に戻る事ができ、医学の研鑽を積むことが出来ました。これからも、ご指南を宜しくお願いします。」
 仁は、何か照れくさそうに笑いながら「分かりました…」と答えます。
 三隅は、そこから立ち去ると「もうじき、全てを失いますよ。南方先生…」と心の中で思います。仁の事を陥れる為に、何か考えているようでした…

 仁が仁友堂に戻ると、咲と福田玄孝が、野風を治療していました。
 仁は「何かございましたか…」と聞きます。
 「そうです。そうです。」咲は、玄孝の指導のもと、野風のお腹を手で回転させるようにマッサージをしていました。
 玄孝は仁に「子が、逆子に…元に戻るように整体術をしております…」と言います。
 仁は「こんな時期に、逆子になるのは珍しい…」と言います。
 仁は、野風に「大丈夫ですよ…まだ生まれるまでに時間がありますから…」と言います。そして、仁たちは部屋の外へ出ます。
 佐分利祐輔が仁に「このまま戻らなかったら、帝王切開をするのですか…」と聞きます。仁は「それは出来ません…子供に負担が掛かり過ぎます…」と言います。その場に重苦しい空気が漂います。
 すると玄孝が「とりあえず、灸をしてみましょうか…切羽詰まった考えはよしましょう…」と言います。

 玄孝と咲は、野風の部屋に行きます。そして、野風に灸をします。
 野風は「この子は、生まれて来たく無いのでしょうか…」と言います。
 玄孝は「逆子で産む方法もございますから…そう心配なさらぬとも…」と言います。
 野風は、何か思いだしたように「坂本様は、今頃どうなされているのでしょう…」と言います。

 龍馬は、後藤象二郎、東修介と三人で歩いていました。若年寄・永井尚志邸から戻る途中でした。そこへ薩摩の者たちが現われて、三人を取りかこみます。そして、三人を薩摩藩邸へと連れて行きます。
 大久保一蔵は「若年寄の永井の所に、何をしに行っていたんだ…」と言います。
 龍馬は「それは、敵の様子を探りに行っとったんじゃ…」と言います。
 大久保は「坂本さんは、土佐藩に大政奉還を建白させたのか…裏切る気か…」と言います。
 龍馬は「これは壮大な茶番やけ…」と言います。すると薩摩藩士が「武力討伐しかなか…」と言います。
 龍馬は「徳川が、二百六十年の政権をあっさりと朝廷に返上するわけが無かろうが…大政奉還を建白し、それを幕府が拒否すれば、堂々と幕府を討つ事が出来ようが…どうせ断るとやから…敵をあざむくには見方からち言うやろが…」と言います。
 すると、それまで黙っていた西郷が、「じつは、私たちは官軍になりもうした…」と言います。
 龍馬は「ちょっと待ってくれ…」と言います。
 すると西郷は「薩摩の事は薩摩が決めもす…」と言います。
 龍馬は「助けられたもんは、恩を感じる…ねじ伏せられたもんは、ねじ伏せられた恨みを忘れん…戦は戦を産む…どっちが楽じゃ…」と言います。
 西郷は「やっぱりそれが本心でごわすか…茶番でごわす…」と言います。薩摩藩の者たちは、殺気立ち刀に手を掛けます。
 龍馬は、置いてあった茶碗を手にとって、「お主らがやろうとしよる事は、この茶碗の中の喧嘩じゃ…国中の戦が長引けば、列強に付け込まれる…倒幕は叶っても、属国になっては元も子もないやろが…真の理はない…」と言います。
 すると西郷が「人は、理だけで生きている訳ではごわさん…人には、情ちゅうもんがごわす。己の裏をかいた相手を信じるこつは出来もはん…ねじ伏せられんやったこつば、有り難がるようには出来ておりもはん…」と言います。そして、薩摩藩の者たちが、龍馬を抱えて連れだします。
 龍馬は「南方仁は、そうは言わんやった…」と大声で叫びます

 その時、野風は体の変調に気づきます。
 「これは…」
 野風は起き上り、陣痛が始まったことを仁たちに知らせようとします

 仁は、未来の写真が入っていた、からの文箱を見ていました。
 咲が仁に「未来さんに、お願いをしているのですか…」と言います。
 仁は「これって、未来的にはどうなんでしょうか…」と言います。
 そこへ、野風がやって来ます。
 「始まったようでありんす…」
 仁と咲は、野風を抱えて、部屋に連れて行きます。
 仁は咲に「逆子はどうですか…」と聞きます。
 咲は「まだのようで…」と答えます。そして「大丈夫です、野風さん…」と言います。
 仁は「福田先生を呼んで来ます…」と言うと、走って福田を迎えに行きます。
 咲は、逆子を何とかしようと、必死で整体術を試みていました。
 野風は「咲様は、真っ白でありんすなあ…あちきが子を産めば、先生の思い人をもう一度作るやも知れませんのに…」と言います。
 咲は「やはり、野風さんはご存知でしたか…」と言います。
 野風は、痛みで苦しみます。咲は野風に「力を抜いて下さいまし…そうすれば少しは楽になるかと思います…」と言います。
 咲は「野風さん、私の心は真っ黒でございますよ…いつもいつも、嫉妬ばかりで…その度に己が嫌になりまする…野風さんには、敵いませぬ…」と言います。
 咲の言葉を不思議に思った野風は「敵わぬ…」と言います。
 咲は「野風さんは、何も見返りを求めぬではないですか…私は、そのような気持ちにはなれませぬ…」と言います。
 その時、仁と玄孝が戻って来ます。
玄孝は直ぐに処置をします。そして「灸で刺激をあたえたので、早まったのかもしれませぬ…」と言います。仁は「うまく言ってくれよ…」と言って、ただ祈る事しか出来ませんでした。咲は「頑張って…」と声をかけて、野風を励ましながら処置をしていました。

 京では、土佐の中岡慎太郎が、龍馬を怒鳴りつけていました。
 中岡は「大政奉還が本心だったのか…私の事をだましとったのか…」と言います。そして、長州から龍馬を護衛に来ていた東に同意を求めますが、東は「私は、大政奉還は悪くないと思います…」と言います。
 中岡は「徳川が、大政奉還の建白書を受けない時はどうするのか…徳川と心中するのか…」と叫びます。
 龍馬は「徳川は飲む……と思う」と言います。
 中岡は「何を根拠にオマエはそう言うのか…」と怒鳴ります。
 龍馬は「これが正しい道や…南方仁がそう言うた…」と言います。中岡が呆れていると、海援隊の隊士が、慌ててやって来ます。そして「坂本さん!在京四十藩の重臣たちが二条城に召集されたそうです!大政奉還についての評定がなされるとのことです…」と言います。
 龍馬は思わず「ヤッター!…」と叫びます。
 これは考えられない事でした。幕府はこれまで、外様大名の政治への参加を禁じていました。しかも諸侯ではなく、重臣と言えども陪臣達が、直接将軍に拝謁して政治へ参加することなどは…

 その時、仁友堂では野風が苦しんでいました。整体術をしたせいか、胎児の位置が横になり、胎児の片手だけが出て来ていました。
 仁は、野風の脈を取ります。そして「大丈夫、手はあります…福田先生、手伝って下さい…」と言うと、産室から出て行きます。
 仁はみんなを集めて話します「陣痛が始まって、15時間が過ぎています…母体の衰弱が激しい…そもそも、母体は健康体ではありません…野風さんの体だけ守りましょう…」と
 すると祐輔が「そんな…何とかなりませんか…」と言います。
 仁は「他に方法はありません…麻酔が使えないので帝王切開は出来ません…母と子のどちらかしか助けられません…どちらか一つ…それは母体です…子供はあきらめて、野風さんの命だけでも助けましょう…もう限界です…野風さんを手術室に…」と言います。

 手術室で、野風は「なぜこちらに移ったのですか…」と聞きます。
 仁は「こちらの方が、処置がしやすいからです…」と言います。そして、「少し処置をします…」と言います。
 野風は仁たちの様子がおかしい事に気づきます。そして、麻酔を使うのではないかと思います。野風は「子に害があるのではないですか…」と聞きます。
 仁は「大丈夫です…」と答えます。
 野風は、その様子を見て「先生は、嘘が下手でありんすなあ…」と言います。そして、残った力を振り絞って、手術道具を床に投げ倒します。
野風は「腹を切ってくんなまし…腹を裂き、この子を取り出して…」と言います。
 仁は野風を説得します。「麻酔が使えません…子供が耐えられないのです…このままでは野風さんも危ないのです…」と言います。
 野風は「ならば、このまま切ってくんなまし…」と言います。
 すると、山田純庵が「麻酔なしでは、痛みで死んでしまいます…」と言います。しかし野風は納得しませんでした。
 「わちきは、廓の中の籠の鳥でした…行きたいところにも行けず…会いたい人にも会えず…けれど、この子は違いんす…野山を駆け回る事も、愛しい人と肩を並べ歩くことも出来んしょう…天駆ける鳥のごとく生きて行けんしょう…どうか、わちきの夢を奪わないでくんなまし…」と懇願しました。
 その様子を見ていた咲は「先生!帝王切開を…大丈夫です!おなごは、子を産む為にはどんな痛みも耐えられまする…」と言います。
 仁は、咲のこの一言で、心が動きます。
 咲は野風に「死んではいけませぬ…この子の為にも生きて下さい…」と言います。
 野風は「わちきは死にんせん…この子を産むまでは…この子を抱くまでは…死にんせん…」と言います。
 仁は、女たちの決意と形相に、帝王切開を決心します。
 「帝王切開の準備を…」と言います。
 みんなは帝王切開の準備をします。仁は一人、精神を集中させます。咲はそんな仁の様子をみて、仁に近づきます。
 「準備が出来ました…」
 仁は咲に「帝王切開は、ほとんどしたことが無いんです…」と言います。
 咲は、仁の手を両手で覆います。これは、手術をするので、手と手を触れることが出来ないからです。そして「未来さんが、必ずお守り下さいます…」と言います。
 仁は咲に「どうして、そんな事が分かるのですか…」と聞きます。
 咲は「先生をお慕いしているからです…未来さんは、たとえ己が消えようとも、先生の幸せを願っておられるはずだからです…野風さんと同じように…」と言います。
 仁の心は、落ち着きます。咲は、仁の手を覆っていた両手をはずします。そして、「まいりましょう…」と言います。

 仁の「メス…」と言う声と共に手術が始まりました。
 野風は「うっううう…」と声を上げます。麻酔なしの手術は、野風の体全身に激痛が走り、苦しみます…そんな野風の体をみんなで押さえつけます…

 京では、二条城に在京四十藩の重臣を集めて、大政奉還の評定が行われていました。
龍馬は、夜風に吹かれながら、縁台で一人酒を飲んでいました。手には、仁と二人で写った写真を持っていました。そして、考えます。
「覚えとるか、先生…初めて野風に会いに行った時…先生は、遊郭の主人の頭の手術をしよった…ゴリゴリ頭に穴をあける音がしよった…わしは、ふすま一枚の隣の部屋で、野風と一緒におったやが…気づいたら死にかけとったもんが、安らかに息ばしょったがや…そうやから、わしは信じた…死にかけちょる者のことは、先生が一番よう知っちょる…
国も一緒じゃ…死にかけている国を生き返らせるには、先生の言う事が一番正しいと信じたぜよ…」と…

 仁友堂では、懸命の手術が続いていました。
 咲が「野風さん、もう少しですよ…」と言います。
 仁は、野風の腹部に手を入れます。野風に激痛が走ります。仁は手探りで、胎児を探します。そして、胎児をつかむと引っ張り出そうとします。
 「頭が…」誰かが叫びます。
 仁は、佐分利祐輔に「麻酔の準備を…取り上げたら直ぐに、野風さんにかけて下さい…」と言います。
 咲が「もう少しですよ…野風さん」と言います。そして、胎児の頭が完全に出たところで、咲が胎児を取り上げます。
 「生まれました…」
 しかし、産声がありません。その場に、一瞬沈黙がよぎります…

 龍馬は、ひたすら信じる道を走って来ました。しかし、大政奉還と言う結果が出るまでは、不安を感じていました。
 「けんど、これでおうちょるかい…」

 仁友堂では、野風の子が泣きません…
 咲は、赤子の両足首を握り、逆さにして尻を叩きます。そして「泣きなさい…」と言います。

 龍馬は「この国は、これで生まれ変われるやろか…」と言います。

 咲は、赤子の尻を叩きながら「泣いて…泣いて…泣け…」と言います。

 龍馬は「わしはまた、道を間違えたのやろか…先生!」と言います。

 仁友堂では、咲が赤子に産声を上げさせようと、懸命に処置を続けていました。そして、ついに産声が上がります。
 野風の目から涙がこぼれます。咲が赤子を見て「野風さん、可愛らしい女の子ですよ…」と言うと、野風の意識が薄れて行きます。
 その時、佐分利祐輔が「先生!子宮から出血が…」と言います。野風の子宮から大量出血が始ります。
 仁は、川越の道中に出会った、旅籠の娘、お初の事を思い出していました。
 仁は、急いで処置をしようとするのですが、いつもの発作に襲われます。仁は、懸命にこらえながら、「佐分利先生、出血点を探してください…」と言います。
 山田純庵が「脈が停止しました…」と言います。
 仁は「佐分利先生、お願いします…」と言うと、処置を祐輔にまかせ、野風の蘇生を始めます。
仁は、野風の言葉を思い出します。
「それならこの子を抱けんすな…」を
そして仁は、「子供を抱くんじゃなかったんですか!…この子の歩くところを見るんじゃなかったんですか!…この子を抱くまでは、絶対に死なないと言ったじゃないですか!…」と叫びながら、蘇生を続けます。
仁は「神は乗り越えられる試練しか与えないんじゃなかったのか…」と叫びます。
その時、山田純庵が「脈が戻りました…」と言います。
佐分利祐輔も「出血点が分かりました…」と言います。

 京では、龍馬のもとに後藤象二郎から書状が届きます。
 「坂本さん、後藤様からです…」
 龍馬は、書状を受け取ると、封を開き、読み始めます。
 「やった!やったぜよ先生…夜が明けたぜよ…」と言います。
 こうして、不可能と思われた大政奉還が、龍馬の手で成し遂げられました。

 仁友堂では、出産の疲れをいやす為に、野風は眠っていました。
 野風の横には、取り上げたばかりの赤子を抱く、咲がいました。
 咲は赤子に「あなたはね、私の恋敵をおつくりになるお方なのですよ…私とした事が、大変なことをしてしまいました…あなたに一つお願いがあるのですが…どうか、南方仁というお方に…傷つくことが多い、あのお方に…誰よりも幸せを…今度は、誰よりも幸せな未来を差し上げて下さい…

 龍馬は、大政奉還が成り、嬉しさのあまりに酒に酔ったのか、庭の石畳の上で大の字に寝ていました。
 東は、そんな龍馬を見て、刀を抜き、切っ先を龍馬の喉元に付きつけていました。そのまなざしは鋭く、何か思いつめているようでした。
 「殺されちゃいますよ…坂本さん…」と言うと、刀を鞘に納めます。そして、「もうよいですよね…兄上…」と、小さな声で言います。東と龍馬の間には、何か隠されたものがあるようでした。

 仁友堂には、ルロンさんが来ていました。そして、野風に銀の匙を渡します。その銀の匙には、安寿 Angeと彫られていました。生まれた子の名前でした。
 安寿とは、日本語では幸い、フランス語では天の使いを意味するものでした。二人は、幸せそうでした。
 山田純庵が野風に「何故に、銀の匙を…」と尋ねると
 野風は「西洋では、子が一生豊かに暮らせるようにと、誕生の祝いに、贈るそうでありんす…」と説明します。
 その時仁は、ふと未来の事を思い出します。病室で、臨終を看取った時の未来の言葉を…
 「坂本龍馬と同じですね…龍馬が死んだ日も…確か誕生日…誕生日…」
 仁は、龍馬の暗殺の日を知る事が出来ました。仁は慌てて病室を飛び出し、勝の元へ向かいます。

 勝の元には、大政奉還の知らせが、龍馬から届いていました。
 「勝先生…」
 勝は「15日に…成った…アイツやりやがったぜ…一から八つまではオイラが言ってた事だが、最後の一つは、オイラには覚えがない…」と言います。
 草案の九つ目には「皆が等しく必要な医療を受けられ、健やかに暮らせる保険なる仕組みを作る事…」とありました。
 勝は「知恵を付けたのは、先生か…」と言います。
 仁は、龍馬からの書状を受け取ると読みます。
 仁は「オレの足跡が歴史を作る…歴史は変えられない訳じゃない…」と思います。そして、龍馬の暗殺を防がなければと思います。
 仁は勝に「龍馬さんの誕生日はいつですか…」と聞きます。
 勝は「確か、1115日じゃなかったかな…」と答えます。
 仁は「あと、一月か…」と思います。

 その時、西郷は「してやられもしたな…」と言います。

 恭太郎は上役に呼び出されていました。上役の手には、仁が龍馬に宛てた手紙がありました。
 「お主とは別の密偵が、この手紙を手に入れたぞ…坂本と通じて、我らを謀ったか…」と、恭太郎は叱責されます。

 仁は、仁友堂に戻っていました。
仁は「京に行ってきます…龍馬さんは一月後に…」ここまで言うと、いつもの発作に襲われます。
仁友堂のみんなは驚いて「先生!…」と叫びます。

京の町には、民衆の「ええじゃないか」が吹き荒れていました。その真っ只中に、龍馬の姿もありました。

今週は、ここまでです。次週に続きます。


 今週の仁は、二つのハイライト(野風の出産と大政奉還)を同時に進行させて、めまぐるしい場面展開でした。私は、テレビを見ながら筆記しているのですが、なかなかついていけませんでした。
 さて、野風の出産ですが、ただでさえガンを患っている野風には、大変な出産なのに、よりによって逆子とは、神様も大変な試練を与えたものです。
咲は懸命に野風の出産を助けようとしますが、野風は、その咲の姿を見て「咲様は、真っ白でありんすなあ…あちきが子を産めば、先生の思い人をもう一度作るやも知れませんのに…」と言います。この時初めて、野風が仁の正体を知っていたことが分かります。
 咲は、野風に「私の心は真っ黒でございますよ…いつもいつも、嫉妬ばかりで…その度に己が嫌になりまする…野風さんには、敵いませぬ…野風さんは、何も見返りを求めぬではないですか…私は、そのような気持ちにはなれませぬ…」と心の内をさらけ出します。
 この二人は、遊女と旗本の子女という身分は違っていても、仁を愛したということで、心に通じ合えるものがあるようです。そして、逆子の分娩が始まるのですが、仁は母体の衰弱を見て、分娩をあきらめ、野風の命を助けることを決意しますが、その決意を変えさせたのが、咲の一言でした。
「先生!帝王切開を…大丈夫です!おなごは、子を産む為にはどんな痛みも耐えられまする…」
女は強し!です。現在では、考えられない事でしょうが、この時代の女性は強かったんでしょうね。ただ、咲には野風の気持ちが充分に分かっていたからこそ言えた言葉だと思います。

また、帝王切開を決めた、仁の心の不安を読み取った咲は、仁の手を両手で覆い「未来さんが、必ずお守り下さいます…」と言います。仁が「どうして、そんな事が分かるのですか…」と聞くと、咲は「先生をお慕いしているからです…未来さんは、たとえ己が消えようとも、先生の幸せを願っておられるはずだからです…野風さんと同じように…」と言います。この言葉で、仁の心は落ち着きます。
この土壇場で、この言葉が言えるとは…いかに江戸の女性が素晴らしかったかという事が良く分かります。そして咲が、いかに仁を愛しているかという事が…

 さて、もう一つのハイライト(大政奉還)についてですが、あの有名な「船中八策」が「船中九策」になっている事はいただけません。
 船中八策は、龍馬が大政奉還の大志を抱いて京に上る時に、蒸気船の中でまとめ上げられた、新政権の政権構想です。いくらSFの時代劇と言っても、あまりにも辻褄が合いません。

一、天下ノ政権ヲ朝廷二奉還セシメ、政令宜シク朝廷ヨリ出ヅベキ事。
一、上下議政局ヲ設ケ、議員ヲ置キテ万機ヲ参賛セシメ、万機宜シク公議ニ決スベキ事
一、有材ノ公卿諸侯及ビ天下ノ人材ヲ顧問ニ備へ官爵ヲ賜ヒ、宜シク従来有名無実ノ官ヲ除クベキ事。
一、外国ノ交際広ク公議ヲ採リ、新ニ至当ノ規約ヲ立ツベキ事。
一、古来ノ律令ヲ折衷シ、新ニ無窮ノ大典ヲ撰定スベキ事。
一、海軍宜ク拡張スベキ事。
一、御親兵ヲ置キ、帝都ヲ守衛セシムベキ事。
一、金銀物貨宜シク外国ト平均ノ法ヲ設クベキ事。
以上八策ハ方今天下ノ形勢ヲ察シ、之ヲ宇内万国ニ徴スルニ、之ヲ捨テ他ニ済時ノ急務アルナシ。苟モ此数策ヲ断行セバ、皇運ヲ挽回シ、国政ヲ拡張シ、万国ト並行スルモ、亦敢テ難シトセズ。伏テ願クハ公明正大ノ道理ニ基キ、一大英断ヲ以テ天下ト更始一新セン。

 要約すると、憲法制定・上下両院の設置による議会政治・不平等条約の改定・海軍の増強・御親兵の設置・金銀の交換レートの変更…となります。
(ウィキペディア参照)
 上に書いた船中八策だけでも、この時代としては、誰にも真似の出来ない、斬新な政権構想だと思いますが、作者は、草案の九つ目に「皆が等しく必要な医療を受けられ、健やかに暮らせる保険なる仕組みを作る事…」と付け加えています。そして、勝に「知恵を付けたのは、先生か…」と言わしています。
 確かに、龍馬は紀州の蒸気船と衝突した際に、海上における損害保険の必要性を感じていたと思います。それが証拠に、海援隊を引き継いだ岩崎弥太郎は、損害保険の仕組みを作っています。しかし、医療保険となると話は別だと思います。幕藩体制で地方の自治権は、まだ藩が持っている時代です。保険の原資を講の様な形にすると言っても中央政府にはその権限はありません。廃藩置県が行われたのは明治に入ってからです。以後、武士による反乱が起き、国が安定するのは西南戦争が終わってからです。大日本帝国憲法(明治憲法)が発布されたのは1889年(明治22年)です。社会保険制度は、1922年に制定された健康保険法により1927年から発足しました。国民健康保険制度は、1938年に成立しています。ただし、これは任意加入です。そして、国民皆保険が達成したのは、1961年(昭和36年)です。龍馬が死んで約100年後の事です。
 これだけの経緯があって出来上がった保険制度を龍馬に考えさせるという事は無謀だと思います。たとえSF時代劇で、仁に知恵を付けられたとしてもです。さや侍のように、最初からドタバタ喜劇と分かっていれば別ですが…
 ただ、最終回まで見ないと分かりませんが、歴史の修正力で、船中九策が船中八策になる可能性はまだ残っているのかもしれません。

 最後に、ルロンさんが仁友堂に遣って来て、子供の誕生のお祝いをしている時に、仁は未来の言葉を思い出しました。「坂本龍馬と同じですね…龍馬が死んだ日も…確か誕生日…誕生日…」と…そして、勝の家に行き、龍馬の誕生日を聞き出しました。
 龍馬の暗殺日は、1115日です。龍馬の暗殺は無かったと歴史を変えたい仁にとって、残された時間は、後一月しかありません。ただ仁は、龍馬の事を考えるといつも発作を起こします。神は歴史を変えることを赦すのでしょうか…
 来週は、仁は京で活躍するようです。それでは、このへんで…

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