2012年6月5日火曜日

NHKドラマ「あっこと僕らが生きた夏(後篇)」を見ました


あっこと僕らが生きた夏(後篇)



 冒頭から、ナレーションや回想シーンが流れています。

 ナレーション「2007年夏の甲子園、大分県代表の私立高校が初出場でみごと全国ベスト8という快挙を成し遂げました。その快進撃の裏には、一人の女子マネージャーの存在がありました。」……映像は、甲子園で楊志館高校(実在の高校)が活躍しているシーンの実写やあっこが元気だったころのマネージャーとして働く姿(ドラマ)が映し出されています。



 回想シーン

 ミーティングの時に、あっこは野球部員や監督の前で「検査を受けたら、私の病気はガンやち言われました…」と話します……あっこが話し終わって部室を出ると、野球部員が追いかけて来て、スタンドのところで、シンジがあっこに「オレ達、甲子園に行くけん…あっこと一緒に絶対に…」と話しかけます………あっこが病院のベッドで横になって、抗がん剤の副作用に苦しんでいる様子や放射線治療をしている様子の映像が流れています。

 ナレーション「厳しい闘病生活を支えたのは、彼女の為に甲子園を目指す仲間たちでした。彼女が入院中書き綴っていた日記には、彼らへの熱い想いが記されています。『みんな凄いな…みんなキラキラしているよ…一人一人みんなが私のスーパーマンだよ…希望です…誇りです…』……このドラマは、実在した一人の少女と仲間たちの物語です。

 映像は、由志館高校が活躍している映像や実在の日記……そして大分県予選で優勝して校歌を歌う野球部員や病院で携帯電話を耳に当て、泣きながら野球部員と一緒に校歌を歌うあっこの姿が映し出されています。




 20078月、甲子園から帰って来た監督の本宮先生が、あっこの見舞いに来て「甲子園の土やで…」と言うと、小瓶に入れた甲子園の土をあっこに差し出します。あっこは、嬉しそうに両手で受け取ると「先生ありがとう…みんな本当にすごかった…男前やった…」と言います。圭子は、そんなあっこを見ながら嬉しそうに「もうこの子ったら、甲子園の間、興奮しっぱなしで…」と言います。するとあっこが興奮して「お母さん、甲子園やで…そんで由志館、全国でも強かったんやで…なあハンさん…」と同室の老女に同意を求めました。老女も嬉しそうに「ああ…えらい強かったとよ…」と言いました。圭子はそんなあっこを見て、嬉しそうに笑っていました。そして監督に冷たい飲み物を出しました。


 あっこは「ああ…私も早く元気になって、野球部に戻りたい…そんで来年、絶対甲子園へ行こう…あっ、その前に修学旅行にも行きたいなあ…」と言います。監督はあっこの目を見ながら「みんな、まっちょるけんな…」と言いました。あっこも監督の目を見ながら笑顔で「はい」と答えました。



 あっこの声で日記が読まれます「マイナス思考なんてキライぢゃ!…マイナスに考えてるヒマねんじゃ…!」と…

 あっこは、放射線治療室にに入ると笑顔で「おはようございます…よろしくお願いします…」と言うと、放射線技師たちに深々と一礼をしました。放射線技師たちもあっこに礼をします。そして「おはようございます。じゃ、あっこちゃんどおぞ…」と言います。あっこが、治療台に腰かけると技師の一人が「変わりないですか…」と声を掛けました。あっこは「大丈夫です…」と答えました。



 病院のカウンセリング室で、あっこと圭子は、主治医の澤田が来るのを待っていました。そこへ澤田が「すいません…お待たせしました…」と言いながら入って来ました。あっこは、澤田が椅子に座るのも待ち切れずに「先生、どうですか…」と、検査の結果を聞き始めました。澤田は椅子に座るとカルテを見ながら「はい、白血球の値が出ました…これやったら、一時退院しても大丈夫…」と答えました。あっこは真剣な眼差しで澤田を見つめながら「じゃあ…修学旅行は…」と聞きます。澤田は、あっこを見つめながら「うん…行けるでしょう…」と答えました。あっこは、思わず立ち上がって「やった!…」と叫びます。すると澤田が、すかさず「あっ、でも…無理したらいかんばい…四か月も入院しとったんやけん…」と注意します。あっこは椅子に座り直すと、嬉しそうな表情で「ハーイ」と答えました。圭子も嬉しそうに立ち上がってお礼をしながら「本当に先生のおかげです。ありがとうございます…」と言いました。すると澤田は圭子に「あっこちゃんが、頑張ったからですよ…」と言います。そして、あっこに視線を合わせて「でもなあ、治療をしながらの生活は変わらんよ…これからも定期検査はやって行きましょう…」と言います。あっこは嬉しそうに「はい」と答えました。澤田は圭子を見ながら「僕も嬉しかです。甲子園には行かせてあげられんかったから…」と言います。圭子は、頷きながら「はい」と答えました。澤田は、あっこを見ながら「あっこちゃん、野球部のみんなに会うのが楽しみやない…」と聞きます。あっこは嬉しそうな笑顔で「はい」と答えました。

 あっこの声で、日記が読まれます。「欲張ったらダメ…一時退院がゴールぢゃない…完治がゴールやしね。だからまだ5回裏…」と…映像は日記が映し出されていました。



 映像は、野球部の練習グラウンドで、部員達の練習風景が流れています。あっこがスタンドから懐かしそうにその様子を眺めていると、それに真紀が気づきます。真紀は「あっこ…あっこ!…」と声を掛けると、あっこの元に駆け寄ります。あっこは嬉しそうに手を振るとグラウンドに降りて行きました。それに気づいたシンジとヨシユキが「あっこ」と言いながら駆け寄ります。



 シンジが「おい、あっこや…みんな、あっこや…あっこが帰ってきたで…」と、みんなに声を掛けました。野球部員たちもそれぞれが「あっこ…」と呼びながら駆け寄って来ます。真紀が「あっこ!…」と言いながら、あっこに抱きついて喜びました。三年の女子マネジャーも…野球部員全員があっこの側に駆け寄って来ました。

 シンジが「あっこ、お帰り…」と言うと、真紀が飛び跳ねながら嬉しそうに「お帰り…」と叫びました。そして、野球部員全員で「お帰りなさい!」と声を掛けました。あっこは、嬉しそうな笑顔で「みんな、ただいま…」と答えました。その場にいた全員が、両手を上げて「イェー!」と叫びました。



 東京の街中を修学旅行のバスが走る映像が映し出されています。

 バスの中では、窓の外を見ながら真紀が「ウァー大きい!」と叫びました。あっこは、写真を撮ると「私、東京タワー初めて見たちゃ…アア…東京タワーデビューや…」と叫びました。そんな様子を見て、担任の高梨先生が「ちょっとちょっと…そこ…はしゃぎ過ぎやで…」と、大声で注意しました。

 浅草の雷門の前で記念撮影をしている映像が映し出されています。真紀が「はい、チーズ」と言って写真を撮ると、今度は違う生徒と変わって真紀も入って来ました。そしてまた「はい、チーズ」と声が掛かると、あっこは、右手でヨシユキのホッペタをつまみながら、左手でVサインを出して、物凄い形相のポーズを取っていました。

 参道の土産物店に立ち寄ったあっこは「いっぱいあるけん、迷うね…」と、仲間たちに喋りかけました……みんなは、本堂の前で線香の煙を自分の体にかけていました。あっこが線香を立てると、女の子たちが「あっこにいっぱい…」と言うと、あっこに厄除けの煙を掛け始めました……あっことヨシユキは、二人並んで観音様にお参りしました。たぶん、来年の夏も甲子園に行かせてくださいとお願いしたのかもしれません……楽しそうな修学旅行の映像が流れていました。



 その日の夜、旅館の部屋には布団が敷き詰められ、みんな寝そべりながら話をしていました。これが修学旅行の最も楽しみな行事なのかもしれません…

「マジで…」「シー…」「なあ、オサムのどこが好きなん…」「アイツ天然バカや…」「……そうそう、ただの筋肉バカ…」すると、あっこが女の子を叩きます。「イター…」「オサムに告白したの…」「いやまだ…」と百合が答えました。あっこは、百合の顔に懐中電灯を当てて「言ったら好いやん、バシッと…」と言います。すると百合が「あっこ、好きな人おらんの…」と聞き返しました。あっこは「エッ…」と言うと、驚いたように体を引いて顔が固まりました。すかさず百合が突っ込みます「あっ、おるん…」と…真紀が「えっ、そんなん、誰…」と言いながら、あっこの持っていた懐中電灯を取りあげて、あっこの顔に向けました。あっこは「いないっちゃ…そんな…」と、少し語気を強めて言いました。しかし、あっこは動揺を隠すことはできませんでした。百合は「もう、隠さんでよ…みんな告白したんやから…」と言いました。

その時、入口の方から物音がして、みんなは布団の中にもぐり込みました。担任の高梨先生の見回りでした。高梨先生は戸を開けると、部屋中を見渡して、また戸を閉めて次の部屋へ行きました…

百合が「ヤバかったあ…」と言いながら起き上がります。あっこも起きると「真紀…」と呼びますが、真紀の返事がありませんでした。あっこは、懐中電灯を取ると真紀の顔を照らすのですが、真紀は眠っていました。あっこは「爆睡ヤン…」と言います。すると百合が「マジで…」と言いました。あっこは、他の生徒達の顔も懐中電灯で照らして見ました。みんな眠っていました。あっこと百合は、顔を見合わせて笑いました。

あっこは、窓の方を向くと、東京の夜景を見ながら「今日は好いな…」と、ポツリと言うと、百合が「うん…」と聞き返しました。あっこは「夜な…病院の天井を見よると思うんや…もしかしたら、このままずっと夜なんやないか…眠ったら目が覚めんやないかち…でも、こんだけみんなで眠ちょったら…絶対、誰かが起こしてくれるやろ…」と言います。百合は、そんなあっこをじっと見つめていました。あっこが笑顔で振り向くと、百合はホッとした表情を見せました。



修学旅行から帰って来たある日のこと……あっこは、元気にグラウンドの上の土手を走って来ました。スタンドの手すりの前に立ち止まると、ニッコリ笑って、グラウンドに深々と一礼しながら「よろしくお願いします。」と言いました。この日も一番最初の到着でした。

あっこがドリンクを作っていると真紀が笑顔で「これ先に持って行くけんな…」と言って、給湯室を出て行きました。あっこは、真紀の変わりように驚き「エッ…ウッソー…」と言いました。あっこが入院している間に、真紀も一人前のマネージャーになっていました。

グランドでは、監督によるシートノックが行われていました。あっこは、その球出しをしていました……そして次は、トスバッティングのトスを…あっこは「ナイスバッティング…好い感じや…」と選手に声を掛けました。

練習が終わると、グラウンドではミーティングが行われていました。

シンジが「オレ達三年は、今日で引退です。本当にあっという間でした。来年は、甲子園ベスト8…これを超えって行ってほしい…」と言います。部員全員で「はい」と答えました。さらにシンジは「次期キャプテン…中根ヨシユキ…まかせたぞ…」と言います。ヨシユキは「はい」と答えました。野球部員の一人が「きよつけ…礼…」と号令を掛けました。そして部員が一斉に「お疲れさまでした…」と言うと、一二年生が、引退した三年生の元に歩み寄り、握手を交わし始めました。あっこと真紀は、三年の女子マネージャーの元に歩み寄り「平島先輩、ありがとうございました…」と言いながら頭を下げて挨拶をしました。平島は笑顔で「真紀、あっこ…野球部頼んだで…」と声を掛けました。二人は笑顔で「はい」と答えました。平島は、両手を広げて、二人を同時に抱きしめて「ありがとう…」と言いました。あっこと真紀は平島の背中を軽く叩きながら「ありがとうございました…」と答えました。

 

 この日の夜、哲夫は、あっこの帰りが遅いので、壁に掛けてある時計を見ながら心配していました。哲夫は「遅いの…あっこは…」と言います。圭子もリビングにいる哲夫にお茶を持って来ながら心配そうに「ほんとやな…なあ、きついんやないやろか…」と言います。その時、あっこが「ただいま…」と言いながら帰って来ました。哲夫は、元気そうなあっこの顔を見て、ホッとしたのか声量のある声で「おお…あっこ大丈夫か…」と声を掛けました。圭子も「ああ…お帰り…きついんやないかち、心配しとったんよ…」と声を掛けました。あっこは「ああ…ごめん、ごめん…」と答えました。圭子は嬉しそうな顔をして「それで…」と、今日一日の出来事を聞きました。あっこは「今日で、三年生引退やったんよ…明日からは、私たちがみんなを引っぱって行くんで…」と、笑顔で話しました。あっこの笑顔を見た哲夫は、嬉しそうに「そうか、そうか…」と言います。圭子も嬉しそうに、笑顔であっこを見つめていました。あっこは、お腹を手で押さえながら笑顔で「ああ…お腹ペコペコ、ペコゾーや…」と言います。圭子は笑顔で「手を洗って、うがいしてきいーよ…」と言うと、あっこの食事の用意をする為に立ち上がりました。あっこも「は~い…」と立ち上がりました。その時、和樹が「ただいま…」と言いながら帰って来ました。みんなで和樹に「お帰り…」と言います。和樹は、帰って来るなりあっこに歩み寄り「あっこ、どうやった部活は…」と尋ねました。あっこは和樹の顔を見ながら、うざい表情で「お兄ちゃん、今話したばっかりや…」と言うと、振り返って自分の部屋に行こうとしました。和樹は「オレも聞きたいんや…なあ…教えてくれ…教えて…」と言いながら、あっこの背中をつかんで引きもどしました。あっこは迷惑そうな表情で「ああ…もう、めんどくさいも…」と言いました。



 あっこが大分の病院で、定期検査を受けている映像が流れています。

 学校では、担任の高梨先生が教室で「みんな…いよいよ三学期に入りましたよ…今すぐに決めろとは言いません…でも、進路のこと、そろそろ真剣に考えて下さい…」と言います。しかし、あっこは、うわの空で野球ノートを書いています。あっこは、真紀が渡そうとしている進路希望調査のプリントに気づかずにいました。真紀が「あっこ…」と言うと、あっこは気づいて、プリントを受け取ります。そして一枚だけ取ると、残りを後ろの席に回しました。あっこがプリントを見ていると、担任の高梨先生が別のプリントを差し出して「大宮さんは、補習のスケジュール…」と言いました。あっこは驚いて「エー…」と大きな声で言いました。すると高梨先生があっこの顔を見ながら「まずはみんなに追いつかんとな…野球だけやなく、勉強もな…」と言いました。あっこは、つまらなそうに「は~い」と答えました。

 休み時間のトイレの帰りに、百合があっこに「そう言えば野球部、昨日練習休みやったん…」と話しかけました。あっこは不思議そうな顔で「えっ、練習あったで…」と答えました。すると百合は「えっ、でも見たんよ…ハルヒコ君たちが、女子高の子たちとカラオケに行くのを…」と言いました。あっこは不審そうな顔で「えっ、百合…それ詳しく聞かせて…」と言いました。

 放課後、ハルヒコ達が制服姿でグラウンドの土手を降りて来ると、あっこはジャージー姿で待っていました。ハルヒコは、笑顔であっこに「どうしたん…恐い顔して…」と言います。あっこは、ハルヒコを睨みつけながら「昨日どこいっちょったん…」と聞きました。ハルヒコは「エッ…」と言うと、笑ってごまかします。あっこは、強い語調で「練習さぼって何やちょったん…」と問い詰めました。その様子をグラウンドからキャプテンのヨシユキが見ていました。ハルヒコは気まずそうに「しょうがねえやん…昨日…その…友達の女の子が誕生日で…どうしてもオレらと一緒にカラオケ行きたいっち…いつもなら行かんのやけど…」と言うと、あっこは遮るように大声で「ふざけるな!…あんたら由志館の野球部やろう…甲子園目指すんやろう…なあ…ここで野球出来ることがどんなに……それやのに何で…」と言います。あっこの声に、野球部全員が気づき、心配そうに見ていました。そこへヨシユキが駆けつけて、心配そうに「あっこ…」と声を掛けました。しかし、あっこの怒りは、ヨシユキにも向けられました。あっこは「ヨシユキ…あんたは何…キャプテンやろが…自分のことだけやっちょったら…そんなキャプテン失格や…チームのこと真剣に考えんあんたらスゲームカツク…大嫌いや…」と言うと、あっこはその場を立ち去り、土手の階段を登ってグラウンドを後にしました。ヨシユキとハルヒコ達は、あっこの後姿をすまなそうに見つめていました。真紀が心配して「あっこ!」と声を掛けますが、あっこは、そのまま走って行きました。



 あっこは、自宅の自室で、野球部全員が写っている記念写真を見ていました。写真には、赤のマジックで、由高全員野球や!…そして緑のマジックで絶対に甲子園や!と書かれていました。その時、ドアを叩くノックの音がしました。

 圭子が「入るよ…」と言って部屋に入って来ると「どうしたん……何かあったん……あっこ…」と、優しく尋ねました。あっこは、写真を見ながら小さな声で「嫌になった…」と答えました。圭子は、優しく「何が…」と尋ねました。あっこは、写真を見ながら振り向きもせずに小さな声で「自分がや…部活に戻ったばかりやのに…あんなに偉そうなこと…カーッとなって酷いことを言い過ぎて…」と答えました。圭子は、あっこを諭すように「悪いち思うんやったら…謝ったら…」と言います。あっこは振り向くと、悲しそうな顔で圭子を見つめていました。

 あっこは、夜のグラウンドに戻って来ました。グラウンドの照明が、懸命に練習をしている野球部員たちを照らし出していました。あっこはスタンドから、その姿を食い入るように見ていました。ヨシユキとハルヒコが部員全員の前で、ダイヤモンドを何周も全力疾走していました。あっこは、思わずグラウンドに歩み寄って行きました。








 ヨシユキがハルヒコに勝って「ヤッター!…」と叫びながらガッツポーズを取っていました。その時、ヨシユキがあっこに気づいて「あっこ…」と呼びます。ハルヒコも気づいて「あっこ…」と呼びます。あっこは、グラウンドに降りていました。あっこは、感染予防のためのマスクをあごに外して「さっきはごめんな…」と声を掛けました。するとヨシユキが「いや…オレが悪かったんや…オレ…キャプテンとして必ず…みんなを甲子園に連れて行くからな…」と言いました。あっこは、ニッコリ笑って「うん」と答えました。その姿を見て、真紀がニッコリ笑いました。あっこは歩み寄り、深々と頭を下げて「みんなもさっきはごめんな…」と言いました。するとヨシユキが「ヨッシャー!…もちっと練習続けるぞ…」と、声を掛けました。すると部員たちから「ヨッシャー!…」という掛け声が返って来ました。そしてまた、部員たちはダイヤモンドを走りだしました。あっこも部員達に混じって「イケー!…」と大声を掛けていました。あっこを送ってきた哲夫は、その様子を土手の上に駐車している車の中から、笑顔で見つめていました。



 あっこは、ガツガツと朝食を食べていました。その様子を見ていた圭子が「あっこ!…少しは女の子らしく食べられんのね…」と注意しました。あっこは、口の中にご飯を入れたまま「早くいかんと、朝練始まってしまうわ…」と、またガツガツと食べ始めました。そしてあっこが、みそ汁のおかわりをしようとして、お椀を持って立ち上がった時に、突然腰に痛みが走り、お椀をテーブルに落としてしまいました。あっこは、腰に手をやり「イッター…イッター…」と言いながら、座り込んでしまいました。その様子を見た圭子が心配そうな声で「あっこ!…あっこ!…」と声を掛けました。



 あっこは、福岡ガンセンターで精密検査を受けていました。あっこはCTスキャンに掛けられていました。圭子は、検査室の外で心配そうに待っていました。

 主治医の澤田が険しい表情でCTの写真を見ているとドアのノックの音がしました。澤田が「どうぞ…」と言うと、圭子が「失礼します…」と言いながら、部屋に入って来ました。あっこも圭子の後ろに付いて入って来ました。澤田が「どうぞ…」と言うと、あっこと圭子はテーブル越しに座りました。

 澤田が「今から、厳しい話になりますが、お話してもいいですか…」と言うと、あっこは心配そうな表情で澤田を見つめながら「はい」と小声で答えました。澤田は「今回、腰が痛くなっている原因ですが、背骨にガンの転移が見つかりました。血液を経由して、背骨に転移しています。上咽頭から遠く離れている背骨に転移していると言うことは、治療しても、もう完治しないと言うことです。」と説明しました。圭子の表情が険しくなりました。あっこも表情が固まり、澤田を見つめていました。あっこは、恐る恐る「完治しないと言うことは、どういうことですか…」と尋ねました。澤田は冷静に「ガンが、体の中から無くなってくれないと言うことです…」と答えました。あっこは、澤田を見つめながら「じゃー、ガンが大きくなるかも…」と尋ねました。澤田は「可能性はあります。」と答えました。あっこは「それで…死んじゃうことも…」と尋ねました。澤田は、苦しそうな表情で「状態が悪くなることがあれば……」と答えました。あっこは、悲しそうな目で、澤田を見つめていました。



 その時圭子が、切羽詰まった表情で、訴えるように「待ってください…完治しないって…まだ試してない治療法があるんじゃないですか…薬だって…」と言いました。澤田は圭子に「もちろん、これ以上悪くならないように最善はつくします…」と答えました。あっこは、澤田から視線を外して、虚ろな表情で考え込んでいました。圭子は食い下がるように「他の病院ならどうなんですか…違う先生のお話を聞かせてもらうだけでも…」と、訴えかけました。澤田は「はい。ご希望であれば、他の病院もご紹介します…」と答えました。

 あっこは、しばらく考えて「先生…私…これからどうすればいいんですか…」と尋ねました。澤田は、あっこの目を確り見つめながら「あっこちゃん…あっこちゃんには、二つ方法があるよ…一つは、ここで治療をつづける…背骨に転移しているので、痛みが酷くなる可能性があります。だけん、まず、背骨のガンの治療ばして、痛みを取り除きましょう…ガンが神経に噛みついたら下半身麻痺になる可能性が出て来るし……それからもう一つは、治療ば止めてお家に帰る…大分でゆっくり生活して、近所の病院で痛み止めなどをもらいながら…」と、説明していると、圭子が遮るように険しい表情で「待ってください…この子にそんな話…」と言いました。澤田は冷静に「お母さん…辛いですが…遠隔転移したということは、残された時間が限られていると言うことなんです…」と答えました。圭子は、弱々しい声で「そんなあ…」と言いました。あっこは、悲しそうな表情でうつむいていました。

 澤田は、あっこを見つめながら優しく「あっこちゃん…あっこちゃんが、どげんしたいのか…一番好い選択ができるように、きちんと事実をお伝えしたいんです………あっこちゃん…時間ば掛けて考えてくれてよかとよ……」と語りかけました。あっこの目からは涙が流れ、すすり泣く表情で「ここで治療します。澤田先生以外の治療を受けるつもりはありません。」と答えました。圭子は、悲しみを堪えながら、あっこをじっと見つめていました。澤田は「分かりました…あっこちゃん…また一緒に頑張ろうね…僕も精一杯頑張るけんね…」と言いました。あっこは、涙を流しながら「先生…」と言います。澤田が「なあに…」と聞き返すと、あっこは「私…あとどれくらい生きれる…」と尋ねました。澤田は、じっとあっこを見つめていました。圭子は、手を口に当てて、泣き声を噛み殺していました。

 

 圭子は一人で、病院の薄暗い廊下を歩いていました。目に涙を浮かべ、泣き声を噛み殺しながら帰宅していました。

 家では、哲夫と和樹が、茫然とリビングのソファーに座ってうつむいていました。

 あっこは、病室のベッドの上に座って、これからのことを考えていました。そして、日記を書き始めます。

 「本格的な入院、始まりますよ…先生にこれからのことについて聞きました…私ね…もう長くないんだって…奇跡で2年生きてる人おるけどっち…ドラマ?みたいでな…本当…転移して治るのは、殆どないち…0%に近いっち…もうなあ…治れなんて言わんわ…夏に帰れればいいわ…私の人生は野球なんよ…」と…あっこは、日記を書き終わるとウイニングボールを両手で握りしめながら祈っていました。

 グラウンドでは、監督が野球部員達を前にして「今朝、大宮のお母さんから電話があった。しばらく検査入院するそうや…」と報告しました。野球部員達の顔が暗く重いものに変わりました。監督はさらに続けて「アイツのことや…また元気に戻って来るやろう…お前ら負けんように、確りせんとな…」と言うと、部員達は一斉に「はい」と答えました。ヨシユキが「ヨシ!」と言って前に一歩踏み出して、部員達の方を振り向くと「みんな練習や…いいか、あっこを絶対甲子園に連れて行くぞ!」と、声を掛けました。部員達は全員で「オー!」と答えました。部員達は、それぞれに懸命に練習をしていました。



 監督は、病院にあっこの見舞いに来ていました。監督があっこのベッドの横に座って「みんなも頑張っちょるで…お前の為にもってな…」と言うと、あっこは、ベッドに座りながら笑顔で「真紀がいつもメールをくれて、楽しみに見てます。」と答えました。監督は「うん…今年のチームは、個々の能力では、昨年のチームより上や…」と言います。するとあっこは「じゃー、間違いないですね甲子園…」と言いました。監督は、頷いていました…

 あっこの声で、日記が読まれます。「私、もう長くないと聞いたけど…それは絶対に誰にも言わん…言ってどうするの??解決なんてしない…」と…

 あっこは、笑顔で監督に「私も頑張って、絶対夏には帰りますから…」と語りかけました。



 圭子とあっこが病室に入って来ると、看護師が二人でハルさん(老女)のベッドをかたずけていました。看護師も圭子も、そしてあっこも一言も喋らずに、ただ頭を下げるだけでした。あっこはただ、看護師の様子をじっと見ていました。ここで、あっこの声で日記が読まれます。「死んだら人はどうなるの…また、新しい人間になるの…でも、私という存在は、思い出になって、私自身は無くなってしまうの………生まれてすぐ死んじゃう子と、17年間も思い出がある私…どっちが辛いんかな?……何も分からないまま、死んじゃうのって悲し過ぎる……思い出が恋しい…思い出がせつない…思い出しかない…みんなの思い出になりたくない…」と……あっこは、壁に貼っている野球部員全員が写っている写真を見つめていました。



 あっこは、ベッドに横たわって痛みを堪えていました。圭子は、あっこの背中をさすりながら「あっこ…あっこ…」と心配そうに声を掛けていました。あっこの手には、昨年のウイニングボールが握られていました。

由志館高校のグラウンドでは、ヨシユキがバッティングピッチャーをしていました。その時、ヨシユキの肩に違和感が走りました。



20085月。哲夫と圭子は、福岡がんセンターで、主治医の澤田からあっこの病状の説明を聞いていました。

澤田は「背骨のガンは変わりませんが、残念ながら上咽頭と首のリンパ節の腫瘍が大きくなっています……治療を続けますが、状況は非常に厳しいと思っといてください…」と言います。哲夫と圭子の表情は、辛く重たいものでした。圭子は、か細い声で「あとどのくらい…あとどのくらい時間があるんですか…」と尋ねました。澤田は、沈痛な表情で「おそらく、お正月は迎えられないでしょう…」と答えました。圭子の目には、溢れんばかりの涙が溜まり、唇を噛み締めて泣くのを我慢していました。哲夫の目は焦点が定まらず、ただ押し黙っていました。

あっこは、病院の屋上から海を眺めていました。そこへ哲夫がやって来ます。哲夫は、あっこの後姿を見ながら、悲しげな表情を浮かべていました。哲夫は悲しみを振り払いながら、あっこの元へ歩み寄ります。




哲夫は「あっこ…」と声を掛けると笑顔で「母さんに聞いたら、ここにおるって…」と言うと、手すりに手を掛けて海を眺めました。その目は、焦点が定まらず、どことなくぎこちないものに感じられました。あっこは「父さん…」と声を掛けます。哲夫は「うん…何ね…」と聞き返します。あっこは「私、大人やったらよかったのになあ…そうしたら、先生の話も一人で聞けて、お母さんを泣かせんですむんに…」と言いました。哲夫は、精一杯の明るい顔を作って「あっこ…お前がそんなこと気にするんやないよ…父さんも母さんも、いつでんあっこの味方よ……あっこがやりたいことする為やったら、何だってするけん…」と答えました。あっこは、しばらく考えて笑顔で「お父さん…」と言います。哲夫が「うん…何ね…」と聞き返すと、あっこは「話が重い…」と言います。哲夫が「エッ…」と聞き返すと、あっこは「エヘヘ…」と笑い出します。哲夫も「アッハハハ…」と笑い出します。二人の笑いは、ぎこちないものでした。あっこは、海を見ながら「夏…」と言います。哲夫は、あっこの顔を見ながら「うん…」と聞き返します。あっこは海を見ながら「早く夏が来ると好いのに…」と言います。哲夫は、あっこの顔を見ていると堪らなくなり、必死で泣くのを我慢していました。


あっこの日記には「私は、あと何年?…何ヶ月?…何日?…何時間?…何分何秒?…みんなと繋がっていられるん?…」と書かれていました。



あっこは、一人で部室の掃除をしていました。そこへ真紀がやって来て「あっこ、こんなところで何やっちょるん…」と言います。あっこは「え、何って…」と聞き返しました。すると真紀が「時間や…早くせんと…」と言うと、部室を出て行きます。あっこは、驚いた表情で「ウソ…もうー…」と言いました。

あっこは、キャッチャー用のプロテクターとレガースを付けてグラウンドに現れました。そして、キャッチャー用のマスクを右手で取ると、両手を上げて「ヨッシャー!しまって行くぞ!」と声を掛けました。すると、マウンドのヨシユキの隣に、野球部員が四人現われて、「頑張れ!!あっこ」と書かれた大きなカードを胸に掲げました。周りからは「あっこガンバレ!ファイト!ファイト!…」と声が掛かりました。すると主審があっこに「ダメだよ、女の子が試合に出たら…」と注意しました。あっこは、驚いた表情で「えっ!」と聞き返します。主審はまた「ほら…早く交代して…」と注意しました。その時、真紀や野球部員達が一斉に「あっこは、いいの!…」と声を掛けました……



あっこは、ここで目が覚めました。夢でした。あっこは、起き上がると笑い出しました。そして、ベッドから降りるとカーテンを開けて、外の景色を眺めます。海に映える綺麗な朝日でした。



カウンセリング室で、あっこと圭子は、主治医の澤田から病状の説明と治療法について説明を受けていました。

澤田は、あっこに「また、抗がん剤治療ばして行くけんね…」と言います。あっこは「はい」と答えました。すると澤田が「一つ聞いてもらいたいのは、治療を始めると言うことは、この夏を病院で過ごしてもらうということです…」と言いました。あっこは、澤田の目を見ながら静かな声で「じゃあ、甲子園は…」と尋ねました。澤田は、明るい声で「うん、ここで、みんなで応援しよう…」と答えました。あっこは、しばらく考えていました。澤田が沈黙を破るように「あっこちゃん、なあ…僕も一生懸命応援するけん…頑張って治療しよう…」と言いました。しかしあっこは、黙ってうつむいたまま考えていました。そしてあっこは、澤田に視線を合わせると「先生…じゃあ…もう治療しません……帰ります…みんなのところに……私、みんなと一緒にいたい…みんなも私が帰って来るのを待っててくれていると思います……」と言いました。あっこの目から、一筋の涙がこぼれ落ちました。しかし、あっこの顔は笑顔でした。そんなあっこを澤田と圭子は確りと見つめていました。

澤田は静かな声で「あっこちゃん…それが、あっこちゃんの探しよった答えね…」と聞きました。あっこは、微かに笑みを浮かべて頷きました。圭子は、じっとあっこの顔を見つめていました。澤田は、あっこに「分かりました…でも、何時でも戻って来てくれてよかけんね…」と答えました。あっこは、澤田を見つめながら、黙って首を横に振りました。





あっこの家では、哲夫と圭子、そして和樹が、あっこのことを話していました。

和樹は「あっこが死んで行くんを黙って見ているんか…治療を続ければ少しでも長く…」と言います。圭子は和樹を見つめながら「和樹…これはなあ…あっこが真剣に考えて、考えて出した答えなんや…」と、諭すように言いました。和樹は少し興奮して「何を言いよるんや…おかしいやろそんなの…」と言うと、立ち上がって台所に行きます。圭子は「和樹!」と呼びとめると立ち上がって、和樹の元へ歩み寄り「野球部の子らと一緒に…最期の夏は、笑って過ごしたい……それが私の一番の望みやって…」と言いました。哲夫も立ち上がって、和樹の元へ歩み寄り「和樹…今、あっこの為ち、何か……あっこの幸せち、何か……あっこがやりたいことをやらしちゃろうや…」と言います。和樹は泣き崩れながら膝をつき、テーブルにもたれかかりながら号泣しました。哲夫は和樹の肩を両手で持ちながら「和樹」と言いました。圭子は、両手で顔を押さえながら、リビングのテーブルの前に座り込みました。圭子は、和樹の号泣に耐えられなくなって、和樹の元へ行き、肩を抱きしめながら声を出して泣き始めました。哲夫はリビングの自分の座イスに座ると、泣き声を噛み殺すようにして泣いていました。







病室では、あっこが一人で日記を書いていました。

「もう治療はしませんって、ついに言ってしまった…だって、この夏と引き換えになるものはない…きっと終わって、治療しておけばもっと長生きできて、治るかもしれなかったのにっていう後悔は、ちっとも思わないと思う…きっと、きっと、夏…みんなといれて幸せだったって思うやろな……」と……



 あっこは、哲夫と圭子に付き添われて退院しました。あっこを乗せた車は、自宅の前に泊まりました。車から降りると、圭子はあっこの肩に手をやり優しく「あっこ、大丈夫ね…」と声を掛けます。あっこは、元気に「うん」と答えました。哲夫と圭子が先に家の中に入ると、あっこは一人立ち止って、じっと家を見つめていました。

 あっこの声で、日記が読み上げられます。「私の負けですか…治療がいやだって止めるのは、私が頑張れなかったからですか…私は今まで、頑張って来ましたか?…」と……あっこは、一歩一歩踏みしめながら玄関へと向かいました。



 グラウンドに野球部員が整列している前で、あっこは挨拶をします。「また、みんなの野球を一生懸命応援させてもらいます…一緒に甲子園目指して頑張りましょう!…」と…野球部員達は全員で「オス!」と声を掛けました。

 練習が始まりました。あっこは、監督のシートノックの球出しをしながら「しっかり!…ガンバリヤー!…」と声を掛けます。

 トスバッティングの球出しをしているあっこの映像を流しながら、あっこの声で日記が読み上げられます。「私は頑張れる…私は頑張れる…」…そして、授業中のあっこの映像を流しながら「私の体、頑張れ!…」と…

 あっこは、ヨシユキのアイシングの手伝いをしながら「今日のピッチングよかったでー…」と言います。ヨシユキは「そうか…」と答えました。あっこが「肩は大丈夫そう…」と聞くと、ヨシユキは「うん、大丈夫や…」と答えました。あっこはヨシユキに「こん調子やったら、今年もいけそうやね…頼むで…」と声を掛けました。

 あっこは、洗濯物やボール磨きなどマネージャーの仕事を真紀と一緒にこなしていました。その時、あっこの体に変調が起きました。あっこは突然座り込みました。それに気づいた真紀が心配して「あっこ、大丈夫…」と声を掛けます。あっこは、立ち上がりながら「大丈夫…大丈夫やけん…」と言います。そして「絶対、みんなには言わんでな…」と言います。真紀は、心配そうな目つきで、あっこを見つめていました。


 あっこは、選手達のバッグに、手作りのお守りを一つ一つ付けると小さな声で「頑張れ!」と言って祈りました。



 いよいよ第90回全国高校野球選手権大分大会が始まりました。あっこは、真紀と一緒に、試合開始の挨拶に向かう選手達をベンチの中で、拍手をしながら「頑張れ!」と言って見送りました。その様子をスタンドから見ていた女子マネージャーの先輩が「あっこ、ベンチに入れたんやな…」と、一緒に応援に駆けつけていたシンジとヤスヒロに言いました。

 初回、ヨシユキがホームランを打たれます。あっこはベンチで立ち上がり、目を丸くしてボールの入った外野スタンドを見つめていました。こうして一回戦は、思わぬ一点ビハインドから始まりました。その裏、由志館高校の攻撃は三者凡退で終わりました。スタンドで応援していたヤスヒロが、相手のピッチャーの投球を見て「ああ…丁寧に投げよるな…」と言います。女子マネージャの先輩が「相手…相当にうちを研究しちょる…」と言いました。シンジが心配そうな表情をしていると、ヤスヒロが「まだまだ、これからや…」と言いました。シンジは頷きながら「ああ…」と答えました。

 しかし、マウンドに上がったヨシユキは、肩を気にしているようなしぐさをしていました。その様子を、昨年バッテリーを組んでいたシンジが、心配そうな表情で見つめていました。そして、ヨシユキが連打をされて、大量の追加点を取られました。敵のベンチは勢いづき、由志館のベンチは思いもしない大量点で、沈滞ムードが漂っていました。4回までに7点を取られ、734点差で負けていました。あっこは心配そうな表情で、マウンドのヨシユキを見つめていました。そして、沈みきったベンチを見渡していました。

 5回の表にも1点を取られました。その裏の攻撃の前に由志館高校は、ベンチの前で円陣を組んでいました。監督は「たかが5点差や諦めるな…」と声を掛けました。選手たちは「はい」と答えるのですが、いつもの元気はありませんでした。キャプテンのヨシユキが「さあ行くぞ!…」と声を掛けると、選手たちは「オー…」と答えました。あっこと真紀は手を叩きながら「ファイト!…」と声を掛けて、ベンチのムードを盛り上げようとしていました。

 由志館の攻撃が始まると、真紀がスコアーブックと鉛筆をあっこに差し出して「あっこ、書きよ…」と言います。あっこに気を使ってのことでした。女子マネージャーにとって、公式戦のスコアーをベンチで書き取ることは、何物にも代え難い晴れ姿だったからです。しかし、あっこは「私はいいんよ…ここで、ずっと祈っちょる…」と言うと、両手を握りしめて祈りました。しかし、点差は離れるばかりでした。ベンチには、焦りの色が見えていました。あっこは、じっと戦況を見つめていました。


 ヨシユキがバッターボックスに立つ前に、あっこを見つめました。あっこは立ち上がり、ヨシユキに視線を合わせて、小声で、しかし大きな口を開けて「頑張れ!」と言いました。ヨシユキは頷いて、バッターボックスに向かいました。しかしここで、監督が「代打!」と審判に告げました。あっこと真紀は、監督を茫然と見つめていました。そしてヨシユキも……監督はピンチヒッターに「行って来い!…」と冷静に声を掛けました。

 

 スタンドではシンジが「この回抑えられるとコールド負けや…」と言います。8回の表を終わって123と大差をつけられていました。あっこは、両手を握りしめながら祈っていました。その後ろでヨシユキは、力なくうなだれていました。選手たちの多くは、すすり泣きをしていました。監督は、そんな選手達に「試合の途中で泣いたらいかん!…最後まで戦うんや!…」と檄を飛ばしました。選手たちは、すすり泣きながら声を出していました。「最後まで諦めるな…」と……あっこは、そんな選手達を黙って見ていました。そして、祈っていました。しかし、あっこと由志館高校野球部の夏は、1回戦8回コールド負けで、あっけなく終わりました。思いもしない出来事でした。あっこの目からも涙が溢れ出ていました。







 ベンチに帰って来た選手の一人が泣きながら「あっこごめん…オレ達……オレ達お前と約束したこと守れんで…」と言いました。あっこは、首を横に振ると泣き声で「ううん…ううん…みんなありがとう…みんながおったけん私頑張れた…」と言いました。ヨシユキは、あっこを見ながら泣いていました。そして真紀も……あっこは「よかった!…由志館のマネージャーで……一緒に戦えて、最高の夏やった!………お疲れ!………ありがとう!…」と言うと、選手一人一人の肩を叩きながら「お疲れ…ありがとう…カッコよかったよ…」と言って回りました。監督の本宮先生は、そんなあっこをじっと見つめていました。





 家では、哲夫と圭子が夕食の準備をしていました。哲夫は、テーブルに食器を並べながら「あっこ…遅いのう…」と言います。圭子は、団子汁の団子を練りながら「今日は野球部の子らと、何時までも一緒にいたいんやない……とにかく、あっこが帰ってきたら、お疲れさんって声かけてやろうな…」と言いました。哲夫は「ああ…あっこの高校野球…今日で終わったんやのう……」と言いました。

 あっこは、暗くなった球場に一人立っていました。そして「動かんようになるまでやろう……動かんようになるまで精一杯動こう…」と心の中で言いました。



 翌朝、朝日の昇り始めたグラウンドでは、野球部員達が朝練の準備をしていました。あっこの家では、哲夫、圭子、和樹の三人が、朝食を食べていました。哲夫が「あっこ、起きてこんな…」と言うと、和樹が「しょうがねいべ…昨日、あんな負け方したんやけ…」と言いました。圭子は、心配そうな顔をしていました。すると和樹が立ち上がり「オレ、ちょっと見て来るわ…」と言うと、あっこの様子を見に行こうとします。その時あっこが、小走りで台所にやって来ました。「うあ…寝坊した…お母さん、何で起こしてくれんの…」と言いながら……圭子も哲夫も「えっ!」と言って驚きます。和樹もあきれた表情で、あっこを見つめていました。圭子は「ああ…御飯用意するね…」と言うと立ち上がります。するとあっこが「パンだけでいいわ…時間ねえけん…」と言いました。哲夫は驚いて「えっ…何処か行くんか…」と聞きます。あっこは「野球場…」と答えました。和樹が呆気に取られた表情で「野球場?だって…」と聞き返すと、あっこは「補助員の仕事があるの…他の学校の試合手伝うんや……お母さん早よう…」と言いました。圭子は「ああ…わかったわかった…」と言うと、あっこの朝食の用意をしました。あっこは、急いで朝食を食べ始めました。和樹は唖然とした表情で、あっこを見ていました。圭子と哲夫は、驚きながらもあっこの元気な様子を見てホッとしていました。



 あっこと真紀は、球場内の関係者用通路を歩いていました。そこへ反対側から、別府実業高校の選手達がやって来ました。あっこと選手達がお互いに「今日は…」と挨拶を交わしました。するとあっこは立ち止って「あのう…今日の試合頑張ってください…」と、笑顔で言いました。選手達は「ありがとうございます。」と言うと、一礼して歩いて行きました。あっこの目は、生き生きと輝いていました。


 あっこは、場内アナウンスをしていました。「5回の裏、別府実業高校の攻撃は、三番ファースト鈴木君…」と……

 試合が終わって、あっこと真紀は、球場の門を出ようとしていました。真紀が「球場に来るのも今日で本当に最後なんやね…」と言うと、あっこは何か思い出したのか立ち止り「ごめん、先に行っちょって…」と言うと、振り向いて走って戻って行きました。

 あっこは、球場のスタンドに入ると、試合が終わった後のグラウンド整備をしている様子をじっと見つめていました。そして目を瞑り、球場の風や匂いを感じていました。あっこは、目を開けると深く一礼をして、笑顔で「ありがとうございました……さようなら…」と球場に別れを告げました。



 あっこは、教室の自分の席から窓の外を眺めていました。クラスメートの一人が、携帯のメールを見て「うあ…」と言います。別のクラスメートが「どうしたん…」と聞くと「バイト先から、もっとシフトに入ってくれっち…」と答えました。百合が「えっ、バイトしよるの…」と聞くと、メールをもらった生徒が「春には車の免許を取りたいけん…」と答えました。すると別の生徒が「私も来月から就職試験やけん…」と言います。百合は「二人とも、その前に進路模試もあるんで…勉強せんとな…」と言います。それを受けて、メールをもらった生徒が「百合は好いよな…頭いいけん…」と言いました。あっこはこの会話を黙って聞いていました。何気ないクラスメートの会話でしたが、先の見えないあっこには、心に突き刺さる物がありました。



 あっこは、自宅の自室で猫のクーちゃんを抱きながら、物思いにふけっていました。その時、百合からメールが届きました。「ちゃんと勉強しよる?あっこは、やればできるんやからね。あたしもがんばるで。」と……あっこは、じっとメールを見つめていました。そして、暗い表情で「私はもうすぐ…他界する…(笑)」と返信しました。初めて、自分の死が近づいていることを他人に告げました。



 あくる日、百合は学校の実習室で、あっこと二人っきりになると「どういうこと…」と聞きました。あっこは、百合に視線を合わせずに「お医者さんに言われたんよ…もう、治りきらんて…みんなには言わんでな…」と答えました。百合は茫然としていました。そして「言えんよ、そんな…」と言うのがやっとでした。あっこは笑顔で「ゆり、ありがとう…ごめんな…」と言いました。百合は、目に涙を浮かべながら「何かないの…あっこ…私にできること……私、あっこの為に何か…」と言いました。あっこは、しばらく黙って考えていました。そして「あんな…勉強って………私も今から、勉強できるかな…」と尋ねました。

 あっこは図書室で、百合に数学を教えてもらっていました。あっこが「出来た…」と言うと、百合は「うお…どれ、見せて…」と言います。百合は、あっこのノートを引きよせて、赤ペンで採点を始めました。採点が終わると「すごい…全部出来ちょるで…」と言いました。あっこは「マジで…」と言います。百合は「言ったやん、あっこ勉強すればできるっち…」と言います。あっこは、採点された自分のノートを笑顔で嬉しそうに見つめていました。そして「何か今、凄くうれしい…」と言います。百合は、そんなあっこを見ながら、笑顔で頷き「うん」と言いました。



 あっこが教室の自分の席で、友達と話をしていると、野球部員がやって来ました。野球部員が「あっこ…」と呼ぶと、あっこは「おう、タダヒコ…どうしたん…」と言います。するとタダヒコが心配そうな顔で「ヨシユキから連絡ねいか…」と聞きます。あっこは「ヨシユキ…別にないけど…どうかしたん…」と答えました。すると別の野球部員が「全然連絡つかんで…」と言います。タダヒコは「今日も学校に来てない…」と言います。あっこは驚いて「えっ…」と聞き返しました。タダヒコが「あいつ、肩怪我しとったんや…」と言います。あっこは心配そうに「怪我?どうして…」と聞き返しました。タダヒコは「たぶん、オーバーワークや…無理しとったけん…」と答えました。

 放課後、あっこは自転車に乗ってヨシユキを探していました。ヨシユキは川原の石段にポツリと座って、川面を眺めていました。あっこは、自転車から降りると、土手の上から「ヨシユキ…」と声を掛けました。ヨシユキは声のする方を振り向いて「あっこ」と言います。あっこは「何で学校にこんの…」と言いました。ヨシユキはしょんぼりした顔で「あっこに合わせる顔がねえ…」と言いました。あっこは、少し考えて「ヨシユキ…キャッチボールしよう…」と言います。ヨシユキは驚いた表情で「えっ…」と言いました。あっこは石段を駆け下りると、ヨシユキの手をつかんで、キャッチボールのできる場所に連れて行き、手提げからグローブを出すと「はい」と言ってヨシユキに渡しました。そして自分もグローブをはめると「いくよう…」と言って、ヨシユキにボールを投げました。


 ヨシユキは、ボールを受けると気の乗らない表情で、あっこに軽く投げ返しました。あっこはまた、ヨシユキにボールを投げると「時間がもったいないで…」と言いました。ヨシユキは、意味が分からずに「えっ…」と聞き返しました。あっこは笑顔で「そんなことやったら気にせんで……時間がもったいないけん…」と言いました。ヨシユキは、不思議そうな顔をしながらもキャッチボールを続けました。しばらくしてあっこは「なあ…野球だけは絶対嫌いにならんでな………あたしな…好きやったで…あんたの投げよる姿…」と言いました。ヨシユキは、黙ってきゃちボールを続けました。





 卒業後の進路を決める為の三者面談が行われていました。あっこは笑顔で「先生、私、就職したいんです。」と言います。圭子は何とも言えない表情で、あっこを見つめていました。あっこは「だから、勉強も真面目にやり始めました。」と言います。担任の高梨先生は「どんな仕事がしたい…」と聞きます。あっこは「こんな体だから、介護したり、体力を使う仕事にはつけないと思います。でも、座って出来る事務の仕事とかだったら、頑張れば出来るんやないかと思います。」と答えました。

 高梨先生は「分かりました。でも、何で急に就職を…」と聞きました。あっこは答えに詰まりました。それを見ていた圭子が「あっこ、ちゃんと答えんと…」と言います。あっこは、下を向いて小さな声で「はずかしい…」と言います。高梨先生は、笑いながら「どうして…」と聞き返しました。あっこは照れくさそうに笑いながら「自分がやりたいことは何か考えたんです。そしたら、一つだけあって……自分でお金を稼いで、ちょっとは恩返ししたいなって……父と母に…」と答えました。圭子は、あっこを見つめながら驚いた表情で「えっ」と小さな声を出しました。高梨先生も何とも言えない表情で、あっこを見つめていました。

 あっこは「前は何となく、福祉の仕事や保育園で働けたらいいなあと思っていました。それから結婚して、子供を二人産んで、80歳ぐらいまで普通に生きているんだろうなって思っていました。でも、それはもう無理になったけん……でも、病気になんかなりたくなかったけど、なって分かったこともあったんです。前には気がつかなかったことに、いっぱい気付いたんです……空が綺麗なこととか…勉強って大事なんだなあとか…大切な仲間がいてくれたこととか…家族ともいっぱい喋るようになって…前は部活ばっかりだったから、家族はいて当たり前っていうか…何も考えていなかった…でも、今は思うんです…この家に生まれて…みんながいてくれて…私…幸せだなあって…」と言いました。あっこの目は、涙で潤んでいました。でも、笑顔でした。隣で聞いていた圭子の目からは、大粒の涙がこぼれ落ちていました。そして高梨先生の目も潤んでいました。今にも崩れそうな顔を堪えるのが精一杯のようでした。



 200810月、あっこは、病状が悪化して病院のベッドに寝たっきりとなっていました。この日は、監督の本宮先生が見舞いに来ていました。監督は、あっこの寝ているベッドの横に座って「大宮…卒業アルバムに載せる言葉を書いてくれるか…」と言いました。するとあっこは、寝たまま手を差し出します。監督は、あっこの手にマジックを握らせます。そして、あっこのお腹の上にスケッチブックを立てると、あっこは精一杯の力を出して「ありがとう」と書きました。


 その日の夜、哲夫が見舞いに来て「みんなで毎日、あっこがようなるように祈っちょるけんな…」と、あっこに言いました。圭子があっこの手を握っていると、あっこは手を離し、圭子の手のひらに指で文字を書き始めます。圭子はその文字を一文字一文字読み上げます。「は・な・し・が・お・も・い…」と…圭子は哲夫の顔を見て「話が重いって…」と言います。哲夫と圭子は、軽く笑みを浮かべました。さらにあっこは、圭子の手に「ご・め・ん・ね…」と書きました。すぐに圭子と哲夫の顔が崩れました。圭子は、あっこに「何で謝るん…あっこ…あっこがいてくれて幸せやで…」と言いました。あっこの目から涙がこぼれ落ちました。




 二・三日後の昼間。哲夫はベッドの横に座って、あっこに布団を掛けながら「あっこ、今日も好い天気ぞ…」と言いました。和樹は、ラジカセを調節して、ベッド用のテーブルに載せました。そこへ圭子がカセットテープを持って来て「あっこ…またみんなが、テープ届けてくれたよ…今、聞かせてやるけんな…」と言うと、カセットテープをラジカセにセットして、あっこの耳にイヤホーンを付けてやりました。


 青空のグラウンドで…野球部の練習風景が…バッティングの金属音が…グラウンドを駆け巡る足音が…野球部員の掛け声と共に流れていました。あっこは、目を瞑って聞いていました。あっこの脳裏には、あり日しのシンジやヤスヒロ…そしてヨシユキの姿が映し出されていました…女子マネージャーの先輩や真紀…そして監督の映像も……あっこは、目を瞑りながら微笑んでいました。



 あっこの遺影を抱いた哲夫とあっこの棺を乗せた車が、由志館高校野球部のグラウンドへ向かっていました。

 遺影を抱いた哲夫と圭子…そして和樹が車から降りて、土手の上の道からグラウンドを見つめていました。グラウンドには、ダイヤモンド内に「あっこ ありがとう!」と石灰で書かれ、野球部員達が胸に帽子を当てて、一塁線と三塁線にVの字に整列し、全員で校歌を歌っていました。哲夫は「あっこ!…見ろ!…」と叫ぶと、あっこの遺影を高々と頭上に上げました。





 あっこの声で「死んだら…死んだら…きっと成仏できずに…グラウンドの空にいるから………きもい言うな!(笑)…」と日記が読み上げられました。そしてその日記の映像が映し出されました。

エンディングが流れ始めます。あっこがバッターボックスに立って打ち、一塁へ走りだします。一塁コーチャーボックスに立っていた監督が、左手をぐるぐる回して「走れ、走れ、走れ…」と叫びます。ファーストに投げられたボールがそれて、ボールはファールグランドへと転がって行きました。あっこは二塁へと向かいました。監督は左手をぐるぐる回しながら「あっこ、イケイケイケ…」と大声で指示を出しました。あっこは、笑顔で走り続けました。あっこは、いつの間にかダイヤモンドを外れて外野を走っていました。あっこの後ろを野球部員達が全員で追いかけていました。あっこは振り向くと、今度はマウンドへ向かって走り出しました。野球部員達は、いつの間にか、あっこを肩車のように持ち上げていました。あっこと野球部員達の笑顔がキラキラと輝いていました。






あっこの声で「やっぱ…野球が大好きや…」と、日記が読み上げられました。そして日記の映像が映し出されました。



ここで、『あっこと僕らが生きた夏(後篇)』は終わりました。





 このドラマを見て、主人公の高校生あっこに、人の生き方を教えられたような気がします。病と闘いながらも前向きに必死に生きたあっこ…副作用と闘いながらも完治を目指したあっこ…しかし、ガンが遠隔転移をして、命に限りがあることを知った時に、あっこは、治療ではなく甲子園を選びました。『最後の夏は、みんなと一緒に過ごしたい…』が、理由でした。残された命をベッドの上で過ごすのではなく、甲子園を目指して仲間と過ごしたい。思い残すことのない命の終わり方を望みました。ただ、延命のために生きるのではなく、好きな友人や家族に囲まれて、充実した生活を送りたいと願ったからだと思います。

 誰が言った言葉か忘れましたが「人の人生には、たとえ短くても春夏秋冬がある…」という言葉を思い出しました。あっこの人生は、17年という短いものでしたが、好きな家族や仲間に囲まれて、秋には立派な果実を実らせたと思います。17年という短い人生だったから、あえてこの道を選んだのかもしれません。

 人には、いろんな生き方があると思います。あっこの生き方がすべてだとは思いません。ボロボロになるまで這いつくばって生きる生き方もあると思います。最後の最後まで生きることにこだわって、苦しみと闘う生き方もあると思います。私は決して、それを否定はしません。個人の生命に対する価値観の違いだと思います。ただ、17歳の少女が下した決断は、素晴らしい決断だったと思います。そして、それを許したご両親、仕方なく受け入れた兄の決断も素晴らしかったと思います。



追記

 あっこと僕らが生きた夏(後篇)の掲載が遅れたことをお許しください。久しぶりの日本のドラマで、ノウハウを忘れてしまいました。外国のドラマだったら、幕字スーパーをそのままワードに打てばいいのですが、日本のドラマは音声を一度文字に起こして、ワードに打たなければならないので、返って時間がかかりました。また、このドラマはカット割りが難しくて、つなぎの文章や背景の説明が難しくて手こずってしまいました。本当に遅くなって申し訳ありませんでした。

 次回からは、NHKドラマ「陽だまりの樹」を書く予定にしています。漫画の神様、手塚治虫氏の原作をドラマ化した物です。手塚家は、代代医者の家系で、手塚氏自身も医師の免許を持っていらっしゃいました。晩年には博士号も取得されたように聞いています。ただ、学生時代には、すでに漫画家として活躍されていましたので、医師を職業とはされていません。そんな漫画の神様が、ご自分の御先祖様の蘭方医の目を通して、幕末から明治維新に掛けての激動の時代を描いた作品をドラマ化した物です。また、掲載が遅れることもあると思いますが、必ず最終回まで書くつもりですので、よろしくお願いします。

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