2011年4月20日水曜日

TBSの「JIN-仁-(4/17)第一回 時空を超えた愛と命の物語」を見ました

 仁が幕末にタイムスリップして二年が過ぎていました。
 「オレはいつまでここにいるのだろうか…オレはここから抜け出せるのだろうか…せめて、君の腫瘍を治せるように何かをつかまなければ…オレは何のためにここに送られて来たのだろうか…」仁は自問自答をしていました。
 仁友堂は、外科の患者は少なく、福田玄孝の内科に収入を頼っていました。
 咲は、結納の席から逃げ出して勘当になり、そのまま仁友堂に居付いていました。
 仁や周りの医者たちが、咲が落ち込んでいるのに気付き、仁がそれを咲に聞くと、咲は「私は結納を放り出して、こちらにまいった身ですので…」と答えました。
 仁が「一度帰った方がいい…」と言うと…咲は「未来では、こういう事があるのですか。」と尋ねます。仁は「結婚式のドタキャンというのがあります。」と答えます。咲が「未来では許し難い事なのですか…兄より上役…その場合…」と尋ねると、仁は「ちょっと気まずいですね…」と答えます。咲は「そういうしだいでございますので、この件についてはお忘れくださいまし…」と言います。

 仁は咲のことが心配で、咲の実家を訪ねます。咲の兄の橘恭太郎に会って、咲の母栄が脚気であることを明かされます。恭太郎によると、数日前に栄の身を心配して、咲が橘家を訪れ、医師に診てもらうように進言したのだが、咲をいまだに許していない栄は、咲が橘家の敷居をまたぐ事を許さなかったということでした。そして恭太郎は、「先生に詫びて頂く筋合いではありません。」と言います。仁は恭太郎に「栄さんを診察させて下さい。」と言います。
 江戸時代脚気は、「江戸わずらい」といい、手足のしびれや末梢神経のしびれが起き、心臓に負担が掛かる死の病でした。江戸時代は、何よりも白米がごちそうであり、おかずをあまり食べる習慣が無かったので、ビタミンB等が不足して起きていました。

 仁は栄に会います。そして、「栄さんを診察させてください。」と言います。
 栄は守り刀を抜くと仁に「先生は守り刀のようなお人です。人を守る事もしますが、傷つけることもします。先生にお会いできて、恭太郎の命は助かりましたが、咲はあのようになりました…」と言います。そして、「診察だけはお受けいたします。せっかくご足労されたのですから…」と言って、仁の診察を受けます。
 そして、仁が「脚気は治ります。」と言うと栄は、「生きていたとして、これより先、私にどのような望みがありましょうか…恭太郎が武家としての誇りを取り戻し、咲が嫁ぐ事が出来るでしょうか…お引き取りを…」と言います。栄は生きる意欲を失っていたのです。

 仁は仁友堂に戻ると、咲と話します。
 咲は「私への罰です…私は黙って受けるしかありません。」と仁に言います。仁は「それは違います…咲さんは医者でもあります。黙って見ているというのは違うんじゃないですか…薬と悟らせずに食べさせればよいのですよ…」と言います。
 咲は「母は、江戸かりん糖が大好きでした…独り占めして食べるほどに…」と言います。
 仁は「甘いもので…甘いものだ…」と言うと、ドーナツを作る事を思いついて作ります。そして、栄にドーナツを食べさせる為に一芝居打つ事にしました。大吉屋で新商品を売り出す為に、試作したドーナツの味見をしてくれと喜市が持って来た事にしたのです。
 しかし、栄はドーナツを食べようとしませんでした。すると恭太郎が、「子供の気持ちがございます。食べて下さい。」と言います。栄は「では、一口だけ…」と言って、一口食べます。そして、「もう充分です。喜市ちゃん大変美味しゅうございましたよ…」と言って、喜市を返します。

 喜市がみんなと一緒に帰っていると、偶然に喜市の母親が辻斬りに会った場所に行きつきました。「おっかさん、この辺で切られたんだよな…」と言います。仁は喜市に「ごめんな、思い出させて…」と言います。すると喜市が「明日も明後日も、食べて下さるまで持って行こう…おいら、見送るのはもう嫌だから…」と言います。
 咲は「母は気付いたかもしれません…」と言います。

 そこへ龍馬が来ます。
 龍馬は「お手上げじゃ先生。京に上ってほしい。そこである人物を治療して欲しい…佐久間象山という日本一の蘭方医で蘭学者で砲術か…勝先生の先生じゃ…」と言います。
 仁は「少し時間を…栄さんが脚気なんです。いつ心臓が止まるかもしれない…ここを離れるわけには…」と言います。

 咲は仁と二人だけになると「母の事はお気にしないで下さい…いざとなれば私が…」と言います。
 仁は「そうじゃないんです。佐久間先生を助けていいものか…歴史が変わるかもしれない…」と言います。
 咲は「ですが先生は医者、黙って見ていてはいけないのでは…」と言います。
 結局仁は、京に行く事になります。仁は、ペニシリンが熱や湿気に弱いので、ペニシリンを乾燥させて持って行く事にします。
 咲は、母に少しでも多く食べさせる為に、餡ドーナツを開発します。

 この時代の旅は過酷です。京までは、蒸気船で行く事になりました。蒸気船の上で、龍馬と仁は、佐久間象山や世情の事について話します。
 龍馬は「象山先生を襲ったのは、松代藩の家老…象山先生は、百年先を見据える事の出来る天才や…それゆえに傲慢で敵も多い…海の向こうには、とんでもない敵が多いのに…この国はどうなるのか…薩摩と長州は犬と猿ぜよ…」とまくしたてます。
 仁は「オレにそんな事が出来るのだろうか…神はオレにそれを許すのだろうか…」と悩みます。

 仁は京に着くと、象山の隠れ家に案内されます。そして、診察をしようとした時です。首からかけて、身に着けていた物を見て「何ということだ、これは…」と思います。仁は動揺を隠すようにして診察をします。
 お付きの者に「この状態で生きている事が奇跡です…この身に付けてある袋はどうされた物ですか…」と言います。するとお付きの者が「もうずいぶん前から身につけられていました。子供のころからという話です…」と言います。
 仁は手早く処置をしながら考えます。「この袋の素材は、この時代の物ではない。これを自分で作ったのなら、象山先生は怪物だ…そうでなければ、未来から来た人かもしれない…先生と話してみたい…」
 仁は処置が終わると、意識が無く寝ている象山に聞きます「この時代は、あなたの目にどう映りましたか…私はここで、何をすべきでしょうか…」だが、象山が答えるはずもなかった。
 象山の様態が安定していたので、仁は象山の部屋から離れていました。そこへ、お付きの者が象山の急変を知らせに来ます。仁は象山の部屋へ駆けつけます。象山は心停止をしていました。仁は懸命に蘇生を行います。そして象山は蘇ります。
 象山が仁を見て言います。「わしを呼び戻したのはオマエか…」そして、点滴を見た象山は「はずせ…」と言います。象山は、仁の正体を直ぐに悟りました。

 「オマエは未来から来たのか…わしは行ったくちじゃ…まだ10歳のころじゃった…木から落ちて頭を打った…気がつくと、白い服を着た者たちが、わしを治療していた…点滴はそこで初めて見た…ある日、窓から外を見た。そこで見た景色は、今まで見たこともない建物が立ち並び、夢のようであった…しかし、建物の向こうには、故郷の山があった…全てが驚きであった…
 しばらくしたら階段から落ちて、また頭を打った…そして、もとへ戻った…夢かと思った。しかし、この網があった。
 わしは未来へ近づこうと思い、あらゆるものを学んだ…オマエがうらやましい…オマエには知識がある…その知識を使え…」
 仁は象山に「それは許される事でしょうか…」と聞きます。
 すると象山が仁に言います。「それこそが神の意思じゃ…歴史を変える為につべこべ言わずに進め…もしオマエのやったことが意に済まぬ事であったならば神は取り消す。神はそれほど甘くはない…進め、進むのじゃ…」
 ちょうどその時、薩長の戦で放たれた火が、象山の隠れ家を襲い始めた。仁は象山に言われるままに隠れ家を後にした。

 外の世界は変わっていました。大火事でけが人があふれていました。仁はけが人を助けようとしますが、山田純庵に「一人助ければ、我も我もと押し寄せます。止めた方がいいです。ペニシリンはあと僅かしかありません。」と言われます。
 しかし仁は、「出来る事だけはしましょう…象山先生に会わせる顔が無い…とにかく、安全な所に治療所を確保しましょう…」こうして仁たちは、けが人の治療を始めます。
 そこへ坂本龍馬が、けがをした長州兵を連れてきます。仁はその長州兵を治療するのですが、長州兵は生きる気力を失い、素直に治療を受けようとしませんでした。すると龍馬が「やり残した事はないのか…」と問い質します。長州兵は「一つだけ…」と答えます。龍馬は「それじゃ、生きろ…」と言います。
 そこへ、長州の残党狩りがやって来ます。龍馬は、残党狩りを自分に引き寄せて逃げて行きます。長州兵は仁に「先生、あのごじんは…」と聞きます。仁は「土佐の坂本龍馬です。」と答えます。

 仁たちの噂を聞きつけて、新撰組がやって来ます。そして、一ツ橋慶喜の命と言って仁を薩摩藩邸へ連れて行きます。そこで仁は、西郷隆盛と会います。
 西郷は虫垂炎に掛かり苦しんでいました。仁が診察すると、西郷の病状は重く腹膜炎をおこしかけていました。仁は西郷に病状を説明し、手術が必要である事を伝えますが、西郷や取り巻きの者は、手術する事を認めませんでした。そして西郷は仁に帰るように言います。仁は、そこから帰ろうとするのですが、西郷の苦しんでいる姿を見て「切らせろ…オレに腹を切らせろ…オレが治していた人たちは、あんたたちが焼け出した人たちだ…でも、今ここで西郷さん、あんたを見殺しにすれば、オレはあんたたちと一緒になる…だから助けさせて下さい。私の為に助けさせて下さい。」と言います。
 西郷は、仁の必死な様子を見て手術する事を決意します。そして「オイが助からんやった時も先生に手出ししたらならんぞ…先生お願いします。」と言います。
 仁は思います。「いくらオレが歴史音痴でも知っている。西郷隆盛は、明治維新の立役者だ…」

 仁から山田純庵のもとへペニシリンを持って来るように知らせが行きます。純庵は「ペニシリンはこれまでだ…先生が必要と仰るのならば持って行く…」
 こうして仁と純庵は、西郷隆盛を手術します。仁は「歴史が変わる…これで歴史が変わるのか…ただ、今は…」葛藤しながら手術をします。
 手術中に、長州の残党が押し寄せてきます。そして切り合いが始まります。長州の残党は、薩摩藩士に切り殺されます。仁は恐怖で呆然とします。その様子を見て、純庵は仁の頬を叩きます。「先生、手術中です。」我に戻った仁は、手術を続行します。こうして、西郷の手術は成功します。

 仁たちが治療所に帰って来ると、仁が治療していた子供が、母親に抱かれて死んでいました。ペニシリンが無くなっていたのです。
 仁は「西郷さんを助ける代わりに子供が死んだ…」と悩みます。そして「それから数日間、オレは患者を見送り続けた…オレは無力だった…神の定めた歴史の前に…オレは何の為に来たのだろう…この時代に…」と思い続けます。

 江戸に帰る途中の蒸気船上で、龍馬と仁が話しています。
 龍馬は「一つしかない、もういっぺん産まれて来たいと思えるような国にしなければ…」と言います。
 仁は思います。「だけど龍馬さんもそう遠くない日に死ぬ。運命を知っていれば避ける事が出来るかも…」そして、その事を龍馬に言おうとします。「龍馬さんは、これから日本中を掛けづり回ります…その途中であん…」ここまで言うと、仁は発作を起こします。そして、頭を抱えて倒れます。これが神の定めなのかもしれません。

 仁は夢を見ていました。咲の実家に行くと誰もいない夢でした。栄がいない…仁はあわてます。そして気がつくと蒸気船は江戸についていました。仁は蒸気船を降りると急いで咲の実家へと向かいます。そして栄の部屋を開けると、そこには栄の。夢と同じ光景でした。すると後ろの方から、栄の声がしました。「お久しゅうございます。このたびは…」仁が振り向くと、栄の姿がありました。仁は「よかったです。よかった…」と言います。栄の脚気は治っていました。
 栄はドーナツを見て「これを考えたのは先生でしょう。一口食べて分かりました。」と言います。仁は「どうして食べたのですか…」と聞きます。
 すると栄は「意地でも食べるものかと思っていたのですが、喜市ちゃんが毎日訪ねて来ました。私が、もう生きたくないと言うと、オイラもそうでした…。でもオイラはあれから好い事がいっぱいありました。南方先生が来て、江戸は凄く変わりました。これからも変わります。咲様の事を今は分からない人もいますが、きっと江戸の最初の女医になると思います。神様は、きっと乗り越えられる試練しか与えられません…死んだら駄目なんです。生きてなければ笑えないんです。と言ってくれました。私は頂きますねと言って食べました。私はあの子に救われました。」と言います。
 仁も「私もです。」と言って、涙を流します。
 咲がそこに来ていました。栄は咲に「負けは許しませんよ、咲…お前は戦の様な人生を歩むでしょう…選んだのはお前です。橘の家に泥を塗った…勝ちなさい…くじける事は許しませんよ…楽しみにしております。咲…」と言います。こうして咲の勘当は解けました。

 仁はいつもの場所に来て考えていました。「神のゆるした行為、許さなかった行為。その違いは分からない…この手を止めては何も分からない…」
 仁は、象山からもらった網の袋の中から、平成二十二年の十円玉を見つけます。そこには咲もいました。「ある方からもらったものです…」と言って十円玉を見つめていました。
 「心のままに…まずは江戸の町から脚気を救おう…」

 仁友堂は、脚気の薬として、餡ドーナツを売る事にしました。これで収入を得る事が出来るようになりました。この続きが楽しみです。

 いよいよ仁の完結編が始まりました。物語自体はSFで有り得ない事なのでしょうが、現代の青年医師が、幕末の偉人達とかかわって、その考え方をどう変化させて行くか、興味の持てる作品です。
 第一部では、緒方洪庵という医学史に残る大学者と遭遇させました。もちろん技術的には現代の医学を学んだ仁の方が上ですが、医の道という哲学においては、仁は洪庵の足もとにも及びません。仁は洪庵からいろんな事を学びました。洪庵も仁が未来から来たという事を気付いた上で、仁をかばい育てました。
 第二部ではどうなるのかなと期待していたのですが、さすがになるほどと思わされました。それは、仁と佐久間象山を遭遇させた事です。佐久間象山と言えば幕末の怪物です。軍学者でありながら、エレキテルで電気治療器を発明したり、カメラを作ったりしています。その佐久間象山が、子供の頃タイムスリップして、現代に来た事があるという設定はうなずけました。
 そして、象山に言わせた言葉「オマエがうらやましい…オマエには知識がある…その知識を使え…」すると仁が「それは許される事でしょうか。」と聞くと象山が「それこそが神の意思じゃ…歴史を変える為に、つべこべ言わずに進め…もしオマエのやった事が意に済まぬ事であったならば、神は取り消す。神はそれほど甘くはない…進め、進むのじゃ…」と言います。
 この言葉を聞いて、仁は救われたと思います。目の前に患者がいる。医師として救うのは当然ですが、素直に救えない気持ちが仁にはありました。それは歴史を変えるという事でした。神への冒涜ではないかという考えでした。しかし、この言葉を聞いて、目の前が少しは開けたように思います。それは、仁が龍馬に、龍馬の未来を教えようとした時に、いつもの発作が起きた事でも分かります。龍馬に未来を教える事は、神の意に済まない事だったからです。神はちゃんと仁を制御していました。

 それから喜市は、かわいくて賢いですね。自分が母を思う気持ちと重ねて、栄の病気を心配する優しさ…子供で純粋だから出来るのでしょうが、断られても断られても、毎日餡ドーナツを持って行く根気強さ…栄は喜市の優しさに負けて、病気が回復しました。生きる意欲がわいて来たのです。そして栄は咲に「負けは許しませんよ、咲…お前は戦の様な人生を歩むのでしょう。…選んだのはお前です。橘の家に泥を塗った…勝ちなさい…くじける事は許しませんよ…楽しみにしております。咲…」と言います。これが江戸時代の母の強さと優しさなのかもしれません。

 最期に、仁を見ていて思い出した事があります。それは私が子供のころに見ていた、タイムトンネルというアメリカのドラマです。主人公がタイムトンネルという未完の装置を整備していて、誤ってタイムスリップするのですが、行く時代の先々で誠実に生きるのですが、悩む事はやはり仁と同じような事でした。時空を超えるSFの世界は、今も昔も史実と神の意志が大きなテーマなのかもしれません。
    

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