仁は、江戸への帰路、蒸気船の中で未来(ミキ)の夢を見ていました。未来が手術前に、仁に話した「坂本龍馬と同じですね…龍馬が死んだ日も確か…」を…
ただ、途中で目が覚めます。
恭太郎は上役から呼び出されていました。そして上役が「坂本を探れ…坂本は倒幕をたくらんでおる謀反人じゃ…もし出来ねば、その方を疑うことに…」と言います。
恭太郎は自宅に戻り着替えていました。母の栄が「奥詰歩兵頭(おくづめほへいがしら)とはどのようなお役ですか…」と聞きます。本当のことを言えない恭太郎は、ちょっと思案した様子で、「世が動いておりますから、治安の維持などを…」と言ってごまかします。
仁は仁友堂に戻って来ました。
仁が玄関口で「ただ今戻りました…」と叫ぶと、仁友堂のみんなが、喜んで仁を出迎えました。そこには、ペニシリンを製造する為の免許状が並べてありました。そこへ咲が、外出先から戻って来ます「追加分の免許状の紙はこのくらいで…」と言いながら…
咲は玄関口で仁と会うと喜びます。そして、旅で汚れた足を手桶の水で洗ってやります。
仁は「いつまでたってもなれませぬ…」と言います。咲は「未来では、この様にして足を洗わないのですか…」と聞きます。そして「無事にお帰りになられて良かったです…」と言います。咲の顔は幸せそうな笑みであふれていました。
そこへ恭太郎がやって来ます。
恭太郎は仁に「坂本殿とは、長崎で会えたのですか…」と聞きます。
仁は龍馬のことを思い浮かべます「この戦は、どうしても必要なんじゃ…」「暴力は暴力を産むだけです…」そして恭太郎に「いろいろあって、けんか別れになってしまいました…」と言います。
恭太郎は仁に「世は複雑になってまいりました…世情が落ち着くまでは、坂本殿とは合わない方がいいと思います…ここには咲もおりますので…」と言います。
仁は「そうならないようにと言っているんですけど…分かってもらえないようで…」と言います。
恭太郎が帰って、仁は咲と二人になったときに「恭太郎さん、何かあったのですか…」と咲に聞きます。
咲は「坂本様のことは、兄には言わない方が好いと思います。兄も旗本でございますから…」と言います。
仁は思います。「一ツ橋慶喜が将軍になったことが、江戸にも聞こえてきた…オレでも知っている、最後の将軍が慶喜ということぐらいは…」と
仁は龍馬暗殺について思いだしていました。
「確か、大政奉還と明治の間だった…」その時、手術前の未来の言葉を思い出します「坂本龍馬と同じ日ですね…」
「未来は何を思っていたのか…」
その時、仁にいつもの発作が起きます。
「オレは、この頭痛に殺されることを覚悟せねば…歴史を変えようとすれば、何かないのだろうか…歴史の修正力をあざむける方法は…
咲は仁宛の手紙を受け取ります。そのうちの一つの差出人の名前が才谷梅太郎となっていました。これは、龍馬がこの当時使っていた変名です。龍馬は、坂本家の本家筋で、土佐の豪商才谷姓を名乗っていました。
仁は、勝の所にいました。
「勝先生、幕府はどうなっているのですか…」
すると勝がべらんめい調に「知るもんかい…オイラ首になってしまったから…慶喜さんは、オイラのことが嫌いみたいで、言う事を聞いてくれないんだよ…」と言います。そして、「このところ急に、四候会議というのが出て来たよ…薩摩・越前・土佐・宇和島の殿様が、話し合って重要な事を決めるそうだ…」と言います。
仁は「龍馬さんは、そのことに関わっているのですか…」と聞きます。勝は「急に土佐の名前が出て来るということは、関わっているんだろうな…」と言います。
仁は勝に「今は何年でしょうか…」と聞きます。勝は「慶応三年だが…」と答えます。すると仁は「西洋の暦では何年でしょうか…」と聞きます。勝は不思議そうな顔をして「確か、1867年だが…何でそれを…」と言います。歴史音痴の仁にしてみれば、和暦よりは学校の歴史で習う西暦の方が理解しやすかったのでしょう。
仁が仁友堂に帰ると、咲から手紙を渡されます。仁は筆跡から、才谷梅太郎の手紙が龍馬からの物であることが分かりました。手紙の中には、長崎の写真館で撮った写真が入っていました。そして写真の裏に「長芋の中より 出たる虫たちは 江戸の芋にも すくいたるかな」と書いてありました。仁の現代の理系の頭では、その意味を理解することが出来ませんでした。
すると咲が「長芋は長州と薩摩と考えられます。つまり、長州と薩摩から出て来た人間は、江戸を食う…となりませんか」と言います。仁は「やっぱり、龍馬さんには分かってもらえないのかな…」と思います…
もう一通は、野風からのものでした。そこには「このたびは、お願いがあって手紙を書きました…幕府から正式な許可が出て、このたびルロンさんと結婚することになりました…」と書いてありました。
仁が咲に「私と咲さんと二人で横浜に来て、結婚式に出席してくださいと書いてあります…」と言うと、咲は驚きます。そして「外国人と正式に結婚することはゆるされないと思っていましたのに…」と言って喜びます。
仁は「すると、これはすごい事なのですね…」と言って喜びます。その時咲は、ふと龍馬から来た手紙のことを思い出します。「龍馬さんから来た手紙ですが…腑に落ちませぬ…そのような手紙(薩長で江戸を食う)をわざわざ送って来るでしょうか…」と言います。
その時龍馬は、薩長土の間を駆けずり回っていました。
そして東が龍馬に「道を間違えていたと言われたのはよろしいのですか…」と聞いていました。
仁と咲は、野風の結婚式に出席する為に横浜に来ていました。咲にとって、横浜は見るものすべてが別世界でした。咲は仁に「未来では、この様な風景が当たり前なのですか…」と聞きます。仁は「ええ…」と答えます。
そして仁は「不安ですよね。咲さんは…幕府がどうなるかも分からないですからね…」と言います。咲は、ちょっと悪戯っぽく「では、教えて下さいまし…」と言います。仁は、困った表情で何も答えませんでした。
すると咲は「不安でないと言えば嘘になりますが…私の成すことは、一人でも多い人を助けるだけです…」と言います。
仁と咲は、ルロンの家の椅子とテーブルのある応接間に通されていました。
咲は、コーヒーを見ておどろきます。「この黒い水の様なものは何ですか…薬ですか…」と聞きます。仁は「西洋のお茶みたいな物です…」と言うと、美味しそうに飲みます。
咲も「では、私も…」と言って、コーヒーを飲みます。しかし咲には、初めて飲むコーヒーが口に合わず「先生には、これが美味しいのでございますか…」と聞きます。
仁は「だんだん癖になるんです…」と答えると、咲は「作用でございますか…」と言います。
そこへ野風とルロンがやって来ます。
仁と咲は「おめでとうございます…」と言います。
野風は「遠い所をわざわざ来て頂いてありがとうございます…お二人には、どうしても婚礼に出てもらいたいのです…」と言います。
そして野風は「お二人は、同じお部屋でよろしいですか…」と聞きます。すると仁が「出来れば、別々の部屋にしてもらえると有り難いのですが…」と答えます。野風は、仁と咲を見て呆れていました。
野風は「ではまた…」と言うと、二人を別々の部屋に案内します。
野風は、咲と二人になると「先生は、まだあの思い人のことを…」と言います。
そして、咲を案内した部屋の中で「この様なところ、咲様には不慣れでくつろげないでしょうが…」と言います。すると咲は「なぜ私にだけ、この様な所ではくつろげないと言われるのですか…」と言います。
野風は、咲の反応に驚きますが「南方先生は、こちらで外国の人へ講義をしたりして、お馴れになられているかと…咲様は、みょうな事を聞かれますな…それだけですよ…」と言います。
野風は、部屋を出ると「くわばら、くわばら…」と言ってほっとします。野風は、仁の正体に気が付いているようでした。
食堂では夕食の支度が出来ていました。みんなはシャンパンで乾杯をしていました。
「チンチン、チンチン…」
咲が「これも癖になるのですか…」と聞きます。仁は「はい。たぶん…」と答えます。そして、美味しそうにシャンパンを飲みます。咲は、口の中で気泡がジュワ―とする感覚に驚きます。
野風が「先生は、どこでシャンパンを…」と聞くと、仁は少し困った表情で「はい、横浜で…長崎でも…」と答えます。
ルロンが「野風さんはどこに連れて行っても可笑しくないです…フランス語もマナーも…」と言います。
仁と咲が「野風さんは、フランスへ行くのですか…」と聞くと、野風は「もうしばらくしたら、ルロンさんがフランスに帰られるので、その時に…」と答えます。
すると野風が「お二人は、いつ夫婦になられるのですか…」と聞きます。仁は、少し困った表情で「正直に言うと、私は…その…」と話しだすと、咲が焦って、シャンパンやワインをがぶ飲みして、仁にその先を言わせませんでした。
咲は、酔っぱらってしまいます。仁は、咲を寝室へ連れて行きますが、その途中で…
「咲さん、大丈夫ですか…」
「野風さんは、まことに幸せなのでしょうか…」
「あんなに幸せそうではありませんか…」
「お芝居では…野風さんは、嘘がお上手ですから…」
仁は、酔った咲の声が大きいので「聞こえますよ…」と言って心配します。
咲は「では、私も幸せになってもよいのですか…」と言います。
仁は「何を言っているのですか…」と言います。
咲は「私は、オババに成ってしまいますよ…元々オババのオババですけどね…」と言います。
仁は咲をベットに寝かせつけると、野風の所に戻ります。
野風は仁に「咲様は、大トラでありんしたか…」と言います。そして仁に「実は、今から見てもらいたい病人がいるのですが…」と言って、仁を部屋に案内します。
野風と仁が部屋に入るとそこには誰もいませんでした。
仁は野風に「あのう、患者さんは…」と聞きます。すると野風が「先生とお会いするのはこれが最後…わちきの全てを見てもらいたい…」と言って、突然着物を脱ぎ始めます。仁は何か勘違いをしたようでおどろきます。
すると野風が「患者はわちきです…」と言います。そして「左のわきの下に、いくつかしこりを感じるのですが…」と言います。仁は何か嫌な予感がしました。
仁は野風をベッドに寝かせると触診を始めます。
野風は仁に「先生、正直に言って下さい…」と言います。
仁は触診が終わると野風に「腫れて大きくなったリンパ節が10か所位あります…それはたぶん、転移性の乳がんだと思います…」と言います。
その時、野風が咳をします。仁は野風に「寒いから、着物を来てください…」と言います。すると野風が「寒いから咳が出ているのではありません…最近よく咳が出るのです…ときには息苦しくなることもあります…」と言います。仁は心配そうに野風を見ていました。
すると野風が「これもがんのせいですか…」と聞きます。仁は「たぶん…肺に転移しているのかもしれません…」と言います。
仁は土下座をして「すいませんでした…あの時、もっと徹底的に取り除いておけばよかった…」と言います。
野風は「先生に、謝られることではありません…先生に手術して頂けなかったら、あの時、死んでいたかも知れません…こうやって、幸せな人生を与えていただきました…先生には感謝しています…」と言います。仁は深刻な表情で「ですが…」と答えます。
野風は仁に「もう一つだけ…子にはがんの毒は回りますか…わちきのお腹には子がおります…」と聞きます。
仁は野風に「子供にガンが転移することはないですが…」と答えます。すると野風は「では、いつまで生きていられますか…」と聞きます。仁は「転移性ガンの生存率は2年で5割です…もちろんもっと長く生きる方もいます…」と答えます。
野風は「2年、それならこの子を抱けますね…笑い顔を見ることも声を聞くことも出来ます…手をつなぎ歩くことも出来るやもしれません…」と言います。
その時、恭太郎は仁友堂に忍びこんでいました。仁の部屋で、文箱の中から、仁宛の龍馬の手紙を見つけます。
物音に気付いた祐輔は、純庵と一緒に仁友堂の中を見回っていました。
純庵は祐輔に「物音がしたのはまことか…」と言います。祐輔は「こちらの方から聞こえて来ました…」と言います。恭太郎は、押入れの中に隠れて、二人をやり過ごします。
横浜では、仁と野風の話し合いは続いていました。
仁は野風に「ルロンさんは、この事を知っているのですか…」と言います。
野風は仁に「子供のことは伝えていますが、ガンの事は言っておりません…」と言います。
仁は野風に「妊娠出産は、母体に影響があります…お勧めできません…ルロンさんに伝えた方が…」と言います。
野風は「どうせ治らないのならば…この子は、あちきの夢でありんす…あちきは駄目だけど…この子は生きる…100年…200年と命の川が続けば、あちきは未来を夢見ることが出来ます…」と言います。
仁は「未来をですか…」と言います。
そして、仁は思います。「未来…命の川…野風さんの夢はオレの夢…歴史は赦すのか…未来(ミキ)が生まれてくることを…」
あくる日、咲が気づくと陽は高く昇っていました。咲は二日酔いで、寝坊をしてしまいました。
「今、なん時…」
咲はあわてて起き上り、みんなのいるところへ行きます。
咲は「申し訳ございません…」と言うと仁の隣に座ります。
野風は使用人に「咲様の食事を…」と言います。
咲は仁に「先生、途中から記憶がございませぬ…」と、野風に分からないように、小さな声で言います。
野風は咲に「先生に、いつ結婚してくれるのかと叫んでいましたよ…」と、悪戯っぽく言います。咲はあわてます。すると野風は、「今のは、戯れでありんす…」と言います。咲は、ほっとするのですが、野風は「今のが戯れでありんす…」と言って、咲をもてあそびます。
野風は、にこっと笑うと「あちきは準備がありますので、先に天主堂へ行きます…」と言って部屋を出て行きます。
咲は仁に「あのう先生、何かあったのでございますか…」と聞きます。
仁は咲に「野風さんの乳癌が、転移していました…すでに全身のリンパ節に…そしてたぶん肺にも…野風さんが産みたいと…この子が生まれれば、命をつないでいけると…」言います。
咲は仁に「安全にとりだす方法はありませぬのか…」と聞きます。
仁は咲に「未来には、帝王切開という手術の方法がありますが…」と言います。すると咲は「仁友堂では出来ませぬのか…」と聞きます。
仁は「この時代の麻酔では、子供に与える負担が大きすぎます…それに、私には産科の経験がありません…自然分娩をするのなら、上手な産婆さんに取り上げてもらうのが一番です…」と答えます。
咲は「先生は恐れていらっしゃるのでは…歴史の修正力を…もし、野風さんの子供を目の前で死なせてしまったら…」と言います。
いよいよ野風の婚礼が始まろうとしていました。そこには、野風のいた女郎屋の主人もいました。
「南方先生、咲様…」
「いらしてたのですか…」
「親代わりとしては…あいつには、実の親がいませんから…」
咲が「野風さん、まるで天女のようでございますね…」と言います。
仁は「思い出しますね…あれも(最後のおいらん道中の事)綺麗だったが…今日も綺麗です…」と言います。そして、仁の頭の中を思い出がよぎります「この美しい人に、オレはどれほど愛情をもらってきたのであろうか…この五十両を使ってくんなまし…これより先は、わちきの心配は御無用に…先生も我が身だけの事…先生、この子はわちきの夢でありんす…」
仁は思います「野風さんが、やっとつかんだ夢を…オレはその夢をかなえてやれないのだろうか…」
咲は仁に「野風さんの夢はかなうのでは…歴史は修正されないのでは…野風さんが未来をかなえようとしたのなら、修正されるべき歴史ではなく、歴史を作ろうとしているのでは…野風さんは、たぶん知っているのでは…先生が未来から来られたことを…先生の思い人が、ご自分の子孫であることも…先生といずれ巡り会う人を…だから命を掛けて産みたいのでは…もちろんルロンさんの子供だから…でも、後の世で先生と会える可能性を作りたいと…」言います。
仁は思います「この夢を天が握りつぶすわけがない…私はそう信じる…」
その時、野風の声がします「咲様」
野風は咲にブーケを投げます。咲はそのブーケを受け止めます。
仁は咲に「花嫁の花束をもらった人は、次に幸せになると言われています…」と言います。
咲は仁に「先生、私に野風さんのお子を取り上げさせてもらえませんか…」と聞きます。仁は「お願いします。」と答えます。
仁は、未来(ミキ)の事を思い出します。
「いいよ、仁先生。きっとまた会えるから…」そして仁は「そういう意味だったのか、未来(ミキ)…」と思います。
仁と咲は、野風とルロンに会っていました。
野風は「先生方が、わちきの子を取り上げて下さるのですか…」と言います。
仁は「はい…」と言います。そして「ルロンさん、私たちは野風さんの体に少し不安を感じています…」と言います。
ルロンは「無理はしないで下さい。子供はいいです…野風さんが側にいてくれればいいです」と言います。
野風は、「ルロンさん、せめてこれくらいのお礼はさせて下さい…先生がいれば大丈夫です…」と言います。
ルロンは「先生、野風さんと子供を宜しくお願いします。」と言います。
仁は「絶対に守って見せます…」と言います。
仁と咲は、横浜からの帰りに、喜市の働く茶店によります。喜市は餡ドーナツの中に餅を入れた新商品を開発していました。その餅入り餡ドーナツを見て、咲は、龍馬の歌の真意を読み取ります。
咲は仁に「龍馬さんの歌ですが『すくう』は『江戸を巣食う』ではなく『江戸を救う』という意味ではないでしょうか…」と言います。
仁友堂に帰ると、龍馬から手紙が届きます。
「先生、ホトガラ(写真)は届いたやろか…あん歌の気持ちで、わしは再び走り回っちょるぜよ。なかなか難しいけれど、戦をせずにこの国を立て直せんかと無い知恵を絞っているぜよ…この間、ふと野風を思い出したぜよ…野風は、真の心を隠して、嘘ばっかりついちょった…けれど、大切な物を守る為に、野風は嘘の鎧で固めんといかんかったと違うやろか…先生、わしはこれから大嘘つきに成るぜよ…先生が教えてくれた、明るい道をつぶされんように…全てをあざむいて、この道を未来につないでみせるぜよ…」
仁は手紙を読むと、龍馬が考えを変えた事を喜びます。そして、以前に龍馬から来た手紙と写真を読みたくなります。仁は、文箱を開けて探すのですが…
「あれ、手紙が…無くなっている…」
仁は文箱を持って、みんなの所へ行きます。そして、「誰か知りませんか…龍馬さんからの手紙をここに入れておいたのですが…」と言います。すると祐輔が「あっ、やはり物取りが入ったのでは…この間、物音がしたので探してみたのですが、誰もいませんでした。それで気のせいかと思っていましたが…あれはやはり物取りでしたか…」と言います。
仁は思います。「仁友堂にも忍び寄る影が…ここも安全ではないのか…」
仁は勝の家にいました。そして、勝に龍馬から来た手紙を見せます。
仁は勝に「龍馬さんは何をしようとしているのでしょうか」と聞きます。
勝は仁に「あいつはひょっとして、あれを仕掛けようとしているのかも…」と言います。
仁は考えます「薩長は倒幕…薩長は官…土佐は幕府…朝敵…」そして仁は勝に「大政奉還ということですか…」と言います。
仁は未来(ミキ)の事を思い出します。「坂本龍馬と同じ日に…」「確か…いつだった…」
今週はここまでです。次週へ続きます。
先週私は、作者が仁の言葉「龍馬さん…こんな方法しかないのですか…新しい国を作るのは、戦争しかないのですか…たとえ政権を取っても上手くいかない…暴力は暴力を産む…」から、龍馬による大政奉還へとつなぐのではないかと書きましたが、本当にそうなりましたね。しかし、この考え方は、本来は勝海舟の考え方に近い物だと思います。
この物語では、勝海舟をどこかヒョウキンでユーモラスな人物に描いていますが、本当は、若い時に剣の修業をして免許皆伝をもらい、道場で師範代をするほどの剣の達人だったのです。だからもっと神経の研ぎ澄まされた人物だったと思います。勝は成人してから勉学に励み、蘭学を修めています。特に軍事関係では、この時代では右に出る者がいない専門家だったのです。
当然、薩摩の後ろには英国がいることを知っています。幕府の後ろにはフランスがいます。薩長と幕府が戦争をすることは、英国とフランスとの代理戦争になると考えていました。そして日本が、いずれは清国のように植民地化されると思っていたのです。ただ、幕臣である勝は身動きが出来ませんでした。当然、坂本龍馬は勝海舟の弟子ですから、この事は知っていたはずです。そして、龍馬の自由奔放な性格が大政奉還を成し得たのです。決して、ただの平和主義から成し得た訳ではありません。ただ、史実とつじつまを合わせるのが上手いなと感心しています。
この先、勝と西郷による江戸城の無血開城が、この物語で描かれるかどうかは分かりませんが、大政奉還以後の勝海舟は、徳川方の宰相として、毅然として江戸の町民を戦火から救うことになります。
それから野風は、どうも仁の正体を知っているようですね。「命の川をつないで、100年、200年後の未来を見たい」などとは、この時代の人がとても言えるような言葉ではないと思います。
野風はルロンさんを本当に愛しているのでしょう。しかし、初恋とは言いませんが、若き日に心から愛した仁の為に、未来で仁が愛した自分の子孫を存在させる為に子供を産もうとする気持ちは、分かるような気がします。次回は決定的なシーンが見られる予感がします。
最後に、咲は可愛いですね。お酒を飲み過ぎて、つい本音が出てしまいました。本当は仁と幸せになりたいのでしょうね。仁友堂にかこつけて、確り仁を守っています。「兄の恭太郎には、本音を言わない方が好い」などとはなかなか言えないと思います。
それでは次回をお楽しみに…次回に続きます。
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